預け金とは?預り金との違いや仕訳内容を解説

更新日:2024年08月27日

預け金

預け金は、企業が一時的に外部へ資金を預ける際に使用する勘定科目です。事務所賃貸の保証金や、交通系ICカードの保証料などが身近な例です。預け金は、将来、返還されることを前提にしています。本記事では、預け金の概念を詳しく解説し、預り金との違いやさまざまなビジネスシーンにおける預け金の仕訳例を具体的に紹介します。

目次

「預け金」とは

預け金とは、一時的に取引先・金融機関・役員・社員などの第三者に預ける資金や資産のことを指します。この預け金は、一時的な預け入れが前提であり、返還が確実に保証されている場合に限られます。返還されるという保証がない場合、預け金に該当しません。

ここでは、預け金に該当するものの具体例や、有価証券取引における「担保差入金」の処理方法などについて詳しく解説します。

預け金に該当するもの

預け金に該当する主なものは、下表のとおりです。

預け金の種類 特徴
運用資金 外部に資金運用を委託する際の運用資金
担保としての預け金 有価証券の担保差入金
差入保証金 営業保証金、事務所賃貸の保証金など
デポジット 交通系ICカードの保証料など

預け金は一時的な預け入れであるため、消費税の課税対象外であり、費用として扱われず貸借対照表資産の部の流動資産として位置付けられます。

有価証券の担保差入金を処理する場合の預け金

有価証券の担保差入金も、とくに問題がなければ最終的に返還されるため、預け金として仕訳します。信用取引(資金または有価証券を証券会社から借りて、株式などの売買をする取引)をする際に必要となる担保が、預け金に該当します。

信用取引での有価証券の売却時に生じた代金を、証券会社への担保差入金として仕訳します。一方、買付けの場合は、有価証券を購入すると同時に担保として差し入れたと考え、証券会社からの債務として処理しなければなりません。

預け金と預り金との違い

預け金と預り金は、企業の資金の動きを正確に把握するための対となる重要な勘定科目です。預け金は企業が外部に一時的な金銭の移動を示し、一方で預り金は外部からの一時的な金銭の預かりを示します。本記事では、これら2つの勘定科目の違いを明確にし、預り金の具体例や関連するルールについて詳しく説明します。

預り金は預け金の対となる勘定科目

預り金は、預け金とは反対の概念であり、企業が取引先や役員、従業員などから一時的に金銭を預かる際に使用する勘定科目です。預け金と同様、一時的な性質を持ち、将来的には返還しなければなりません。

預り金の特徴は、その一時的な性質にあります。最終的に返還する義務がある金銭を預り金として扱い、返還の予定がない資金には別の勘定科目が適用されます。

預り金に該当するもの

  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 社会保険料
  • 財形貯蓄
  • 取引先から受け取った営業保証金
  • 役員や従業員の社内預金
  • 身元保証金

たとえば源泉徴収は、従業員に代わって税務署に納付するための資金として、預り金として処理します。また、社会保険料の源泉徴収も同様です。この場合も、従業員に代わって社会保険庁に納付する資金として預り金に計上されます。つまり、預り金の返済先が必ずしも預かった本人ではないという点がポイントです。

預り金に関するルール

預り金には、1年以内に返還されるものに限るというルールがあります。預り金は第三者から預かり、それを本人や他の第三者に返還することが基本です。返還が必要なため、債務と同様のルールが適用されます。貸借対照表の負債の部の流動負債として考える場合、「1年以内に返還」が適用されます。

まず、社会保険料や住民税などは毎月納付する必要があるため、預り金として処理して問題ありません。ただし、1年以内に返還されないものは固定負債として「長期預り金」や「預かり保証金」といった勘定科目で仕訳します。

さらに、金額が大きい預り金は、個別の勘定科目で処理する必要があります。とくに役員や従業員からの預り金で、負債・純資産の合計の1%を超えるものについては、別掲が必要であることにも注意が必要です。

パターン別:預け金の仕訳例

ここでは、以下の4パターンにおける仕訳方法を紹介します。

  • 運用資金を預ける場合
  • 有価証券を売却する場合
  • 差入保証金を支払う場合
  • デポジットを支払う場合

運用資金を預ける場合

金融機関などの外部組織に資産運用を依頼する場合、会計処理上は「預け金」として扱います。これは、特殊な契約がない限り、将来的に元本が戻ってくることを想定しているためです。

ここで重要なのは、この預け金の帳簿上の金額が、最初に預けた額から変化しないことです。運用にかかる手数料などが生じた際は、預け金とは別に経費として仕訳します。

【外部機関に運用資金を預けた場合の仕訳】
⚪️⚪️社に資金運用を委託するため、500万円を支払った。

有価証券を売却する場合

有価証券の担保差入金も預け金の一種に該当します。たとえば、信用取引において有価証券を売却した際には、その売却によって得た代金を証券会社への担保差入金として計上します。

※信用取引とは、顧客が証券会社に「委託保証金」を預け、証券会社から資金や有価証券を借りて実施する取引です。株式の売却時に得た代金は、証券会社への担保差入金として仕訳されます。

【有価証券を売却する場合の仕訳】
信用取引で有価証券を30万円で売却し、その売却代金を証券会社への担保差入金として会計処理する。

差入保証金を支払う場合

差入保証金は預け金の一種であり、営業保証金や事務所賃借の際の保証金が該当します。預け金は返還が前提のため、返還されない部分は預け金として処理できません。

不動産賃借時の保証金には、償却50%や100%の物件もあります。このような場合、償却部分は「長期前払費用」として処理します。

【差入保証金50万円の半分が償却される場合の仕訳】

デポジットを支払う場合

デポジットは、預り金や保証金とも呼ばれ、特定のサービス利用時に預ける金銭です。これは、サービス提供者と利用者間でトラブルが発生した場合に、料金の未払いによる損失を防ぐためのシステムです。

交通系ICカードを発行する際、チャージ金額とは別に数百円の料金を支払います。この金額は、解約まで預けておくため、預け金に該当します。

【交通系ICカードの利用開始のため、デポジット金として500円を支払った場合の仕訳】

パターン別:預り金の仕訳例

ここでは、以下の3パターンにおける仕訳方法を紹介します。

  • 給料から税金を天引きする場合
  • 税金を支払った場合
  • 専門家に報酬を支払う場合

給料から税金を天引きする場合

給与支給時には、所得税と住民税が天引きされます。ここでは、給与(額面30万円)から税金・保険料などの預り金合計6万円を差し引き、支給した場合の仕訳について例示します。続いて年末調整をした結果、還付金1万円が判明したため、給与と合算して支給する場合の例です。

年末調整の結果、還付金が預り金を上回る場合や、預かりと納付のタイミングにずれが生じた際には、預り金の残高がマイナスになることがあります。

この状況は、その後の預り金の仕訳により解消されるため、そのまま処理しても問題ありません。また、マイナス分を「立替金」として計上し、預り金の残高をゼロ以上に保つ方法も選択可能です。

税金を支払った場合

給与支給時に発生する預り金には、所得税、住民税、社会保険料などの公租公課が含まれます。これらの納付時期は厳密に規定されており、適切に管理しなければなりません。

たとえば、従業員から預かった所得税と住民税は、給与支給月の翌月10日までに納付する必要があります。具体的には、9月25日に支給した給与から控除した源泉所得税の納期限は10月10日です。

以下は、従業員から預かった住民税1万円を納付した際の仕訳例です。

専門家に報酬を支払う場合

源泉徴収が必要な報酬には、「原稿料や講演料」「デザイン料」「顧問弁護士や税理士への報酬」「外交員やホステスへの報酬」「広告宣伝のための賞金」などが該当します。

名目が取材費や旅費でも、実態が報酬であれば源泉徴収が必要です。弁護士や税理士への調査費や日当も対象ですが、実費の交通費や宿泊費は除かれます。ホステスの衣装代負担、販売促進やクイズ番組の賞金なども源泉徴収の対象です。

以下は、個人事務所の税理士に顧問料3万円(源泉所得税を3千円と仮定)を支払った際の仕訳例です。

預け金まとめ

企業が第三者に一時的に預ける金銭や資産を「預け金」と呼びます。これは、返還が確実に約束されている場合に限定され、そうでない場合は預け金として認識されません。典型的な例としては、運用資金・担保・差入保証金・デポジットなどです。

預け金の特徴として、一時的な性質であるため消費税の課税対象外となり、費用ではなく貸借対照表上の流動資産として計上されます。

対照的に、「預り金」は企業が第三者から一時的に預かる資金や資産のことです。毎月の社会保険料や住民税なども、預り金として処理されます。預り金は通常、1年以内に返還されるものとされ、流動負債としての扱いです。ただし、1年を超えて返還しない場合は固定負債となり、「長期預り金」や「預かり保証金」といった勘定科目で仕訳されます。

ただし、金額が大きな預り金や、役員・従業員からの預り金で負債・純資産合計の1%を超えるものについては、別途記載をしなければなりません。

預け金の仕訳例としては、「運用資金の預け入れ」「有価証券売却時の担保差入金」「差入保証金」「デポジット金の支払い」などがあります。一方、預り金は、「給与からの税金天引き」「税金の納付」「専門家への報酬支払い」などです。

預け金と預り金の違いや具体的な仕訳方法を理解することにより、正確な会計処理を通じて財務状況を適切に管理できます。日々の業務においてこれらのルールを適切に運用していきましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加