通信費とは?経費計上できる費用や仕訳例を解説

更新日:2025年01月16日

通信費

通信費とは、仕事での連絡や通信に支払ったコストを仕訳するための勘定科目のことです。この記事では、通信費の概要および通信費に該当する費用の種類を解説します。また、通信費の仕訳例と計上の際の注意点も紹介します。確定申告における通信費の取り扱いに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

通信費とは連絡や通信にまつわる費用のこと

通信費とは、業務で使用する通信手段にかかる費用を経費に計上する際に使う勘定科目のことです。

通信費に該当するのは、固定電話や携帯電話の利用料はもちろん、インターネットに関わる費用や郵便代金などさまざまです。また、取引先や顧客とのやり取りだけでなく、従業員同士のやり取りで発生するコストも、通信費として計上できます。

経費として計上された通信費は、事業所得から差し引きが可能です。所得税は事業所得を基に算出するため、経費をもれなく計上し所得を圧縮すれば、節税につながります。

通信費は種類が多いため計上忘れが発生しやすい項目ですが、具体的な種類を事前にしっかりと確認し、所得税の減税を目指しましょう。

通信費として計上できる費用

経費をもれなく計上するには、具体的にどのような費用が通信費に該当するかをあらかじめ押さえておくことが重要です。ここでは、通信費として計上できる費用を、以下の4つの項目に分けて詳しく解説します。

  • 電話の通話料金、通信費
  • 郵送や宅配に関する費用
  • テレビに関する費用
  • インターネットに関する費用

ぜひ、自社で利用しているサービスと照らし合わせながら確認しましょう。

電話の通話料金、通信費

通信費として計上できる費用の1つ目は、電話の通話料金や通信費です。電話による営業や顧客とのやり取りが多い場合は、この項目の金額が大きくなるでしょう。

具体的には、以下の費用があげられます。

  • 固定電話の通話料
  • スマートフォンの通話料・通信料
  • FAX送信代
  • テレホンカード代

近年ではほとんど使われることはありませんが、災害の備えとしてテレホンカードを購入したときは、通信費として計上できます。

郵送や宅配に関する費用

通信費として計上できる費用の2つ目は、郵送や宅配に関する費用です。商品の宅配による配送や、書類の郵送が多い会社は、この項目の費用が嵩みます。

具体的な費用は、以下のとおりです。

  • 配送料
  • 切手代
  • 官製はがきの購入代
  • 社内便利用料
  • バイク便利用料
  • 私書箱使用料

官製はがきは切手が印刷されているため、通信費に含まれます。切手が印刷されていない私製はがきは、通信費には含まれません。

切手をまとめて購入したときは、使用した分のみを通信費とし残りは貯蔵品(資産)として計上しましょう。

テレビに関する費用

通信費として計上できる費用の3つ目は、テレビや有線放送に関する費用です。店舗や事務所にテレビを設置したり、有線放送を流したりしている企業は、この項目が大きくなります。

具体的な費用は、以下のとおりです。

  • NHK受信料
  • ケーブルテレビ利用料
  • 衛星放送の視聴料
  • 有線放送の利用料

なお、通信費として認められるのは、あくまでも事業に必要な費用のみです。そのため、休憩室に設置したテレビに関わる費用は、通信費とは認められません。

インターネットに関する費用

通信費として計上できる費用の4つ目は、インターネットに関する費用です。Web関連事業を営む会社は、この項目が大きくなるでしょう。

具体的な費用は、以下のとおりです。

  • インターネット回線の使用料
  • レンタルサーバーの利用料
  • プロバイダー利用料
  • クラウドサービス利用料
  • 回線を引くための工事費

インターネットを契約する際の初期費用や工事費も通信費に含まれますが、事務所内のLAN環境を整備するために実施する工事費は「固定資産」や「消耗品費」として計上することは押さえておきましょう。

通信費として計上できない費用

次に、通信費として計上できない費用を、以下の3つの項目に分けて詳しく解説します。

  • コピー機やパソコンなどの購入費用、リース料
  • 宣伝目的の費用
  • 従業員への祝電やお悔やみの電報代

通信費に該当しない費用を正しく押さえ、ミスのない帳簿作成を目指しましょう。

コピー機やパソコンなどの購入費用、リース料

コピー機やパソコンなどの購入費用、リース料は、通信費に該当しません。一例を以下で確認しましょう。

摘要内容 勘定科目
コピー機やパソコンの購入費用 消耗品費
コピー機のリース代 リース費
FAX用紙の購入代金 消耗品費
すぐに使わない切手の購入代金 貯蔵品(資産
私製はがきや便箋・封筒 消耗品費
印紙代 租税公課

切手の取り扱いは、タイミングや購入した枚数などによって変わるため注意が必要です。切手をまとめて購入し一部を使用したときは、使用した分は通信費として費用計上できます。保管した分は、貯蔵品として資産に計上しましょう。

また、先述のとおり私製はがきや便箋、封筒は消耗品費に該当します。

宣伝目的の費用

宣伝目的の費用は、通信費ではなく広告宣伝費として計上します。広告宣伝費に分類される費用の一例を、以下で確認しましょう。

  • 商品やサービスの宣伝をするためのダイレクトメールの郵送料
  • プロモーションを目的とした、SNS利用料
  • 新サービスのお知らせを記したFAXの送信料

通信費と広告宣伝費はともに経費のため、科目を間違えても税額が大きく変わることはないでしょう。しかし、科目を間違えて計上すると、費用の発生要因が不明確になるため、財務諸表の正確性が損なわれることがあります。

経営状態を正しく確認するには、通信費と広告宣伝費を正しく使い分けることが肝心です。

従業員への祝電やお悔やみの電報代

従業員への祝電やお悔やみの電報代も、一般的に通信費以外の科目で計上します。祝電や電報は、送る相手によって勘定科目が異なります。

自社の従業員やその家族へ宛てる祝電や電報は、福利厚生費です。取引先など、社外の方に送る祝電や電報は、交際費としましょう。

なお、祝電や電報は通信費として計上できないわけではありません。ただし、従業員や取引先が多い場合、祝電や電報を通信費とすると、通信費の内訳が不明確になる可能性があります。そのため、お金の流れをより明確にするには、福利厚生費や交際費の科目を使い分けることをおすすめします。

一度計上した科目は、途中で変えることはできません。そのため、最初に通信費で計上すると、その後も通信費で計上し続ける必要があります。祝電や電報代を初めて計上する際は、しっかりと考えて科目を決めることが肝心です。

個人事業主が通信費を計上するには?

個人事業主も、業務に使用している通信費は経費計上できます。ただし、自宅をオフィスにしている場合や、スマートフォンを業務とプライベートで共用している場合は注意が必要です。

経費に計上できるのは、あくまでも業務遂行にかかった費用のみです。そのため、電話やインターネット回線等を業務とプライベートで共用している場合は、かかった費用を利用割合によって家事按分する必要があります。

通信費の家事按分方法に明確な規定はありませんが、一般的に使用時間や使用日数などを基に計算します。例えば、一日でインターネットを10時間利用しているとしましょう。そのうち仕事に利用したのが8時間、プライベートに利用したのが2時間の場合、按分比率は8対2です。

1ヵ月のインターネット利用料が5,000円だとすると、経費計上できるのは4,000円(5,000円×80%)と計算できます。

【ケース別】通信費の仕訳例

ここからは、通信費の仕訳の例をケース別に紹介します。具体的な仕訳方法は、摘要の内容によっても異なります。それぞれの例を確認し、正確な会計処理を目指しましょう。

【電話料金の支払い】通信費の仕訳例

1万円の電話料金を口座引き落としで支払った場合の仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方 摘要
通信費 1万円 普通預金 1万円 電話料金

1万円の電話料金をクレジットカードで支払った場合は、次のように仕訳をします。

借方 貸方 摘要
通信費 1万円 未払金 1万円 電話料金

クレジットカードで支払ったときは、すぐに利用料が引き落とされるわけではありません。実際の支払いは翌月以降のクレジットカード支払い日となるため、決済時点では未払金として処理します。

翌月のクレジットカード支払い日には、未払金を普通預金に振り替える処理が必要です。

借方 貸方 摘要
未払金 1万円 普通預金 1万円 電話料金

【インターネット使用料の支払い】通信費の仕訳例

インターネット使用料2万円を口座引き落としで支払った場合の仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方 摘要
通信費 2万円 普通預金 2万円 インターネット使用料

個人事業主で自宅を事務所として使用している場合、インターネット使用料は先述の家事按分をする必要があります。仮に、2万円のインターネット使用料を事業用7割プライベート用3割の按分比率で、口座引き落としにより支払った場合の仕訳は次のとおりです。

借方 貸方 摘要
通信費 1万4,000円 普通預金 2万円 インターネット使用料
事業主貸 6,000円

事業主貸は、個人事業主が事業用のお金をプライベート用に使ったときに使用する勘定科目です。事業主貸を使うことで事業用とプライベートのお金が区別されるため、正しい所得額や所得税額の算出につながるでしょう。

【郵送料金の支払い】通信費の仕訳例

切手の仕訳方法には、2つの方法があります。一般的な仕訳方法では購入時に貯蔵品、使用時に通信費として会計処理します。

例えば、切手を現金で1,200円分購入したときの仕訳は次のとおりです。

借方 貸方 摘要
貯蔵品 1,200円 現金 1,200円 切手代

その後、240円分を使用したときの仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方 摘要
通信費 219円 貯蔵品 240円 貯蔵品の切手を使用
仮払消費税 21円

この仕訳方法では、切手を使用するたびに会計処理をしなければなりません。そのため、切手の使用頻度が高いときは、例外的な方法で会計処理をすることもあります。

仮に、現金で84円切手を10枚購入した場合の仕訳方法は、次のとおりです。

借方 貸方 摘要
通信費 764円 現金 840円 切手代
仮払消費税 76円

期末時点で切手の枚数を確認し、未使用の84円切手が3枚あったときは次の仕訳をします。

借方 貸方 摘要
貯蔵品 252円 通信費 230円 切手代未使用分
仮払消費税 22円

通信費を計上する際の注意点

最後に、通信費を計上する際に気を付けるべき以下の3つの注意点を解説します。

  • 通信費は利用月に計上する
  • 海外出張時の課税区分に気を付ける
  • 電子マネーの支払い分は通信費から除く

注意点を事前に確認しておくことで、ミスのないスムーズな会計処理を実現しましょう。

通信費は利用月に計上する

通信費は、原則として利用月に計上するとされます。例えば、3月に使用したインターネット利用料は、3月の経費として計上が必要です。

しかし、場合によっては、利用月に支払えないケースもあります。例えばスマートフォン利用料は、翌月以降に支払いの請求が来ます。また、クレジットカードで支払った通信費も、実際の支払いは翌月以降のクレジットカード支払い日となるでしょう。

このように、利用した月に支払いをしない通信費は、ひとまず未払金で会計処理をしてください。その後、支払い月に未払金から普通預金に振り替える処理をします。

海外出張時の課税区分に気を付ける

海外出張時に通信費が発生したときは、課税区分に注意しましょう。国内で発生する通信費は、課税の対象です。国をまたいだ海外の相手とのコミュニケーションに使用した通信費は、免税されます。

海外での通話料や海外でのSMS送信料、ポケットWi-Fiの使用料といった、海外のみで発生する通信費は非課税です。

区分が間違っていると、正しい所得額や税額を算出できません。仕訳に不安があるときは、税務署の窓口や税理士など、専門家に相談すると安心です。

電子マネーの支払い分は通信費から除く

会社から支給されたスマートフォンの利用料は、通信費です。ただし、スマートフォンに付帯する電子マネーでモノやサービスの代金を支払ったときは、支払った目的に応じて勘定科目を分けます。

電子マネーの利用履歴は、一定期間が経過すると削除される場合もあります。そのため、定期的に利用明細を保存しておくとよいでしょう。

電子マネーは、業務用とプライベート用の支払いが曖昧になりがちです。正しい仕訳をするには、明確な区分けを心がけましょう。

通信費まとめ

通信費とは、業務で使用する通信手段にかかる費用の経費計上で使用する、勘定科目のことです。具体的には、電話料や郵送料、テレビ受信料、インターネット利用料があります。通信機器の購入代金や宣伝目的の通信費、電報は通信費には含まれないことを押さえておきましょう。

通信費の仕訳は、摘要の内容によって変わります。あらかじめ仕訳方法を確認し、スムーズでミスのない会計処理を目指しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
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