建物附属設備とは?減価償却資産の耐用年数、定額法と定率法を解説

更新日:2023年08月30日

建物附属設備

建物附属設備には「建物」「構築物」「工具器具部品」との区別など、紛らわしいものが多く、減価償却の計上時に悩まされる人は少なくありません。

減価償却は、固定資産の取得にかかった金額を使用可能な期間にわたって、分割して経費計上することをいいます。固定資産の種類や用途、材質などによって法定の耐用年数が定められているため、事前に確認しておくことが大切です。

そこで本記事では、建物附属設備に該当する設備の範囲と間違えやすい建物、構築物・工具・器具部品との違いについて解説します。また、減価償却資産の耐用年数や計算方法も合わせて紹介します。

建物附属設備とは

建物附属設備とは、電気やガス、冷暖房設備、水道設備などといった建物に固着された設備を指します。また、建物の維持・管理をする上で必ず必要になるものも含まれます。

これらの取得に関して経費を処理する際は、「建物附属設備」の勘定科目を用いて計上します。ただし、建物附属設備に該当するかどうかは細かく指定されており、一見条件に当てはまるように思えても該当しない設備があります。

建物付属設備一覧

建物附属設備に該当する設備について、以下の表にまとめました。

建物に付属して単体で移動できないものが建物附属設備に該当します。大きく分けて「家屋」と構造上一体となっている設備」「家屋と分離しているが、家屋に付属する必要がある設備」「庭園に関する設備」の3つに区分されます。

電気設備 蓄電池電源設備および付随する配線・分電盤 など
工場の電灯用配線施設・照明設備 など
工場以外の受配電盤、変圧器、蓄電器 など
ホテルや劇場等における内燃力発電設備 など
給水設備に直結する井戸等 給水用タンク・給水に直結する井戸や浄化水槽
冷房、暖房、通風又はボイラー設備 冷凍機の出力が22kw以下の冷暖房設備
ダクトを通じて広範囲にわたり冷房するエアーコンディショナー
格納式避難設備 災害や火災などの緊急時に階段や避難通路となるもの
エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備 電動機、圧縮機、駆動装置やその他の付属機器
店用簡易装備 ルーバー・壁板などの装飾を兼ねた造作
陳列棚やカウンター など
可動間仕切り 取り外しができ他の場所で使用できるパネルやスタッド式などの簡易的な間仕切り
前掲のもの以外のものの例示 (1) 雪害対策のため、建物に設置された融雪装置で、電気設備に該当するもの以外のもの(当該建物への出入りを容易にするため設置するものを含む。)
(2) 危険物倉庫等の屋根の過熱防止のために設置された散水装置
(3) 建物の外窓清掃のために設置された屋上のレール、ゴンドラ支持装置及びこれに係るゴンドラ
(4) 建物に取り付けられた避雷針その他の避雷装置
(5) 建物に組み込まれた書類搬送装置(簡易なものを除く。)

建物の構造によって一部例外はありますが、基本的に建物付属設備は建物そのものとは別の耐用年数が適用されます。例外となる建物の構造や耐用年数の詳細については、後ほど詳しく解説します。

建物附属設備と建物の違い

建物附属設備が建物に固着している設備であることに対して、建物は「柱・壁・屋根で成り立ち、外空間と隔たりを確保するための構造物」を指します。

建物附属設備と間違いやすい例として挙げられるものが、防音のために設置した防音壁材の内部造作です。内部造作は建物附属設備には該当せず、建物と物理的・機能的に一体化しているため「建物」として考えられます。

この場合の減価償却は、当該建物の耐用年数によって計算されます。また、遮光や温湿度調整のために設置された内部造作も同様に考えられます。

建物附属設備と構築物の違い

建物附属設備と構築物の大きな違いは「建物に固着しているか否か」です。

建物附属設備が建物に固着しているものを指す一方で、構築物は「土地に定着している建物以外の建造物・工作物」を指しており、人間が継続的に居住・滞在する目的以外で設計されたものが該当します。

構築物に該当するものとしては、花壇・庭木などの緑化設備や、井戸、煙突、水槽などのように屋外にあるものが挙げられます。また、塀やアスファルト塗装された駐車場も構築物にあたります。

これらは、会計上の勘定科目として使用する以外にも、建築分野で区別する際にも用いられています。

建物附属設備と工具器具備品の違い

建物附属設備と工具器具備品の違いは「単体で移動が可能か否か」です。

耐用年数が1年以上、取得価額が10万円以上の工具・器具・備品は「工具器具備品勘定」として計上できます。計上する際は、応接セットはテーブルと椅子をセットとし、カーテンは1部屋あたりの枚数を1組として考えます。

建物附属設備と間違えてしまった場合、耐用年数に倍以上の違いが出てしまうため、注意しましょう。

構造・用途 細目
工具 裁断機、取付工具 など
器具 試験機器、測定機器、送風機 など
備品 キャビネット、応接セット、コピー機、計量器 など

また、工具器具備品は建物附属設備・建物・構築物とは異なり、取得価額が少額になるケースがよく見られます。少額の場合には、消耗品の勘定科目を使用し経費として計上しましょう。

耐用年数とは、使用開始日から効用喪失日までの期間

事業に使用する固定資産の中には、使用するにつれて劣化したり性能が落ちたりして、価値が減少してしまうものもあります。そのような固定資産に対しては「耐用年数」が定められており、一般的な使用期間にしたがって、毎年一定額、もしくは一定の割合で資産価値を差し引いて計上しなければなりません。

耐用年数は、国が「資産価値がこれくらいの期間でなくなる」と法的に定めたものです。間違いやすいものとして「耐久年数」と呼ばれるものが挙げられます。

耐久年数は法的に定められたものではなく、メーカーが独自の判断で「問題なく使用できる期間」としているものです。耐久年数には法律上の決まりはないため、あくまで推定として考えておきましょう。

経費計上の際、耐用年数が短ければ毎年の減価償却額は高く、長ければ減価償却額は低く計上されます。また、同じ構造でも用途によって耐用年数が異なるだけでなく、修繕で耐用年数が伸びた場合の費用は「資本的支出」として扱う必要があります。

建物附属設備の耐用年数

建物附属設備の耐用年数は、建物と区別して計算します。

主な建物附属設備における減価償却資産の耐用年数は、以下のとおりです。

建物附属設備の耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)

前述の建築物付随設備一覧の項目で述べた通り、店舗簡易装備の陳列棚や簡易カウンターなどは建物附属設備に区分されます。

また、ダクトを通じて広範囲を冷房するような設備は、工具器具備品ではなく、建物附属設備に該当します。耐用年数を調べる際は、建物付属設備として計上されるものの基本事項のほかに例外があることを把握しておくとスムーズです。

建物の耐用年数

建物の耐用年数は、建物の材料や構造によって定められており、同じ材料であったとしても、使用用途や厚みが異なれば耐用年数は異なります。

例えば、鉄骨はメンテナンスすれば50年から60年は使用できるとされており、骨組み次第では100年ともいわれています。しかし、野ざらしの環境や、潮風にさらされる立地では、建物の寿命は短くなるでしょう。

また、厚みに関しては4mmを超えれば重量鉄骨、4mm以下は軽量鉄骨とされており、「3mm以下であれば19年」「3mm以上4mm以下であれば27年」のように、1mmの差で大きく耐用年数に違いが見られます。

正しく減価償却するために、所有する建物の材質や厚みについても確認しておきましょう。

建物の耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)

構築物の耐用年数

構築物は、どのような用途で使用するかによって耐用年数が定められています。用途別に耐用年数が定められていない場合は、構造によって耐用年数を判定します。

構築物の耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(構築物/生物(農林畜産業向け))

工具器具備品の耐用年数

耐用年数が1年以上、取得価額が10万円以上であれば「工具器具備品」で処理します。耐用年数が1年未満、取得価額が10万円に満たないものは「消耗品」に区分して計上します。

工具器具備品と消耗品の耐用年数は、以下のとおりです。

【工具】

工具の耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(車両・運搬具/工具)」

【器具・備品】

器具・備品の耐用年数

出典:国税庁「耐用年数(器具・備品)(その1)

減価償却資産とは、時の経過などと共に価値が減少していく資産のこと

減価償却資産に該当するものを取得した際、すぐに全額を経費にするのではなく、使用可能期間の全期間にわたって分割して必要経費で計上することを「減価償却」といいます。

使用可能期間が1年未満であるもの、もしくは取得価額が10万円未満のものは減価償却に該当しないため、全額を業務に使用した年の経費として計上します。

建物附属設備の減価償却方法の改正

平成28年3月31日までは建物附属設備・構築物の減価償却方法は、「定額法」か「定率法」の2つを選択できました。しかし、平成28年4月1日以降、定率法は廃止されたため、建物附属設備・構築物を取得した場合は、定額法のみが適用されます。

償却方法改正後は、定額法・定率法を含む「償却率」以外にも「改定償却率」「保証率」が規定され、新たな定率法は「200%定率法」とも呼ばれています。

定率法は、耐用年数の初期に多くの減価が生じて、時間の経過とともに減価が少なくなると仮定するものです。初期に多く費用を計上して、税務署に届け出していないものは定率法であるとみなされるため、税務上有利であるとされていました。

これに対して、償却方法改正後に取得した建物附属設備・構築物に適用される定額法は、減価の程度に限らず、毎期にわたって同じ償却費を計上します。

定率法の計算方法

定率法で計算する場合、償却額は取得初年度が最も多く、その後は減少します。

減価償却費 = 未償却残高(購入年度は取得価額) × 定率法償却率

初期の減価償却費が多くなることで、節税効果が期待できる利点があります。ただし、毎年異なる計算が必要になるため、帳簿の管理が複雑になりやすくなります。

計算した減価償却費が償却保証額(資産の取得価額 × 耐用年数に応じた保証率)を下回った場合は、定率法ではなく「改定償却率」で計算して、その年以降の償却額は毎年同額を計上する必要があります。

改定償却率は、定率法で計上している償却額では償却完了までに多くの時間がかかってしまう場合に、強制的に償却を進める狙いがあります。なお、償却率・改定償却率・保証率は耐用年数ごとに異なります。

定額法の計算方法

定額法では、基本的に毎年同じ額を計上します。期の途中で新たに減価償却資産を購入した場合は、その年のみ月割りで計算します。

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
減価償却費(月割りの場合) = 取得価額 × 定額法の償却率 × 使用月分 ÷ 12ヶ月

定率法よりも初期の減価償却費が少なくなり、初期利益を多く見せられることが特徴です。また、毎年同じ額を計上するため帳簿の管理がしやすくなるといった利点もあります。

建物附属設備まとめ

減価償却費を正しく求めるには、建物附属設備なのか建物なのか、材質はどのようなものが使われているのかなどを把握することから始まります。耐用年数は細かく区分されているため、計上の際は個別に確認することが重要です。

減価償却を正しく実施することで、社内の損益を正確に把握できるほか、節税につながります。どのようなものが減価償却の対象になり、なぜ減価償却が必要なのかを知り、資産の種類に応じて正しく計上しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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