旅費交通費とは?交通費・通勤費との違いや仕訳例も紹介
更新日:2024年11月12日
旅費交通費とは、ビジネスでいつも働いている場所とは異なる地へ出張する際にかかる交通費などに用いる勘定科目です。計上する際は、課税・非課税の区分を理解しておきましょう。本記事では、旅費交通費と交通費の違いや、移動に関して支出した経費に用いるほかの勘定科目についても紹介します。
目次
旅費交通費とは
旅費交通費とは、帳簿などを記載する際に取引内容をわかりやすくするための見出し(勘定科目)のひとつです。一般的に、ビジネスでいつもの勤務地とは異なる場所へ出張する際にかかる交通費や、それに関連する費用に対して使います。
なお、いつもの勤務地と異なる場所に移動する場合でも、状況に応じてほかの勘定科目を使用することがあるため、注意しましょう。
旅費交通費と交通費の違い
旅費交通費と交通費の主な違いとして、「通常の勤務地における業務にあたるための移動費用か」という点が挙げられます。
旅費交通費は、会社の命令により「出張」で通常の勤務地から離れた場所へ向かうための費用やその関連費です。一般的に、出張に該当するかについては、「片道100km」のように社内規程や旅費規程などであらかじめ定義しておきます。
それに対し、交通費は主に通常の勤務地から近場へ移動する際にかかった費用に用いる勘定科目です。旅費交通費と交通費の違いをよりイメージしやすくするために、それぞれに該当する具体的なケースを紹介します。
旅費交通費に該当するケース
旅費交通費に該当する主なケースは、以下のとおりです。
- 勤務地から出張先まで移動する際に、かかる費用(飛行機代・電車代・バス代・タクシー代・ガソリン代・高速道路利用料など)を計上するケース
- 出張に伴いホテルなどに宿泊する際にかかる費用を計上するケース
- 出張に使っている車を宿泊するホテルなどに停める際にかかる駐車料金を計上するケース
- 人事異動に伴い新天地に赴任する際にかかる費用を計上するケース
なお、出張時の飲食代や出張中の諸経費を補うために支給される出張手当については、各会社で定めている規程によって旅費交通費に該当するかが異なります。旅費規程に記載されていない場合は、出張時の飲食代や出張手当が「所得」とみなされる可能性があるため注意が必要です。
交通費に該当するケース
交通費に該当する主なケースは、以下のとおりです。
- 日常業務の移動でかかる費用(電車代・地下鉄代・バス代・タクシー代・ガソリン代、高速道路利用料など)を計上するケース
- 訪問する取引先の近くの駐車場に停車する際にかかった費用を計上するケース
なお、自宅から会社まで移動する際にかかる費用については、「交通費」として計上する場合と「通勤費」として計上する場合があります。
旅費交通費・交通費の計上で気をつけること
旅費交通費や交通費を計上する際は、以下の点に気をつけなければなりません。
- 課税・非課税の区分を理解しておく
- 公私混同しない
- エビデンスが必要な場合がある
それぞれ解説します。
課税・非課税の区分を理解しておく
移動先によって、消費税の課税・非課税の区分が異なる点に気をつけましょう。「課税」に該当する場合、消費税の課税事業者は消費税の納付税額を計算する際に、課税仕入れとして課税売上げにかかる消費税額から課税仕入れにかかる消費税額を差し引ける場合があります。
国内における出張にかかった移動費用や宿泊費、日当などは、通常必要と認められる範囲であれば全額課税仕入れの対象です。一方、海外出張にかかった費用については、原則として全額課税仕入れとして認められません。
参考)国税庁「No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
公私混同しない
旅費交通費や交通費を計上する際に、公私混同しないよう注意しましょう。
経費として計上できるのは、業務に関連する移動や宿泊などのみです。たとえば、出張中に業務外で訪れた街の観光をした際にかかったバス代については、旅費交通費として計上できません。
また、個人事業主が出張と観光を兼ねて移動した際は、家事按分の処理が必要な点にも注意しましょう。家事按分とは、ビジネスとプライベートを兼ねた支出について、一定割合で経費計上する額と経費計上しない額に分ける処理のことです。たとえば、家族を帯同して観光と出張で自家用車を使って出張先に向かった際にかかったガソリン代は、一定額のみを旅費交通費として計上します。
エビデンスが必要な場合がある
旅費交通費や交通費を計上するにあたって、エビデンスが必要な場合があります。
仕入税額控除を適用するには、以下が記載された帳簿・請求書などを保存しなければなりません。
- 取引の相手方の氏名または名称
- 対象の取引を実施した年月日
- 対象の資産や役務の内容
- 支払額
そのため、出張や営業で移動した際にかかるタクシー代などを計上する際も、原則として必要事項を記載された領収書などが必要です。ただし、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、一定の事項を記載した帳簿の保存のみでも認められる場合があります。
なお、金額が3万円未満でも社内の規程で必要と定められている場合は、旅費交通費や交通費にかかったエビデンスを保存しなければなりません。
旅費交通費・交通費以外で移動経費に使う勘定科目
移動にかかる経費には、旅費交通費や交通費だけでなく以下の勘定科目を用いることもあります。
- 通勤費
- 交際費
- 福利厚生費
- 研修費
- 仮払金
各勘定科目の概要について、解説します。
通勤費
通勤費とは、勤務にあたって従業員が自宅と職場の間を移動する際にかかる費用に使う勘定科目を指します。
旅費交通費の場合、業務上と必要とされるものについては原則として所得税が非課税です。一方、通勤手当については「片道の通勤距離」にしたがって一定額までが非課税とされています。
そのため、従業員の通勤にかかる費用については、「旅費交通費」と区別して「通勤費」として計上することが一般的です。参考までに、マイカー・自転車通勤者(*)の通勤手当において、非課税となる1か月あたりの限度額を表にまとめました。
片道の通勤距離 | 1か月あたり非課税限度額 |
2km未満 | (全額課税) |
2km以上10km未満 | 4,200円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
*交通機関で通勤する場合は別途定めあり
なお、通勤で通常必要とする範囲内であれば、上記の限度額を超えていても消費税の課税仕入れは課税仕入れとみなされます。
参考)国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
交際費
交際費とは、法人が取引先などビジネスに関係する相手への接待や贈答にかかる費用に用いる勘定科目のことです。たとえば、取引先の接待に使うのであれば、タクシー代でも「交際費」として計上することがあります。
なお、法人は原則として交際費として計上する全額が損金不算入です。ただし、資本金・出資金の額が1億円以下の法人や、1億円以上100億円未満の法人については、それぞれ条件を満たす場合に一部損金として計上できる場合があります。
参考)国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
福利厚生費
福利厚生費とは、会社が従業員が働きやすい環境を作るため、給与や賞与以外で支出する費用を計上する際に使う勘定科目です。たとえば、社員旅行のために支出するのであれば、バス代でも「福利厚生費」として計上することがあります。
福利厚生費として計上するには、社会通念上常識の範囲内に収まる額であることがポイントです。金額や支出の頻度によっては、交際費など別の勘定科目で計上しなければならない可能性があります。
研修費
研修費とは、従業員に業務上必要な研修を受けさせる際や、業務に関連するテキスト代を購入する際などに支出する費用に用いる勘定科目です。たとえば、従業員が勤務先から離れた場所へ新幹線で行く場合でも、出張ではなく研修目的であれば「研修費」として計上することがあります。
移動に限らず、研修が宿泊を伴うものであれば、かかった宿泊代も研修費の対象です。
仮払金
仮払金とは、具体的な金額や目的などが決まっていない場合に、会社が概算で一時的に支出する費用に用いる勘定科目です。たとえば、出張にかかる費用でも、従業員の立て替えを防ぐためにあらかじめ大まかな金額を渡しておく場合には、「仮払金」を使うことがあります。
なお、「仮払金」を計上した場合でも、従業員が出張を終えてから実際にかかった金額を「旅費交通費」として計上しなければなりません。その際、「仮払金」の振替処理が必要です。
旅費交通費やその他移動経費の仕訳例
旅費交通費やその他移動経費に用いる勘定科目を使った仕訳の例を、従業員に出張費用を支払う場合と社員旅行の費用を支払う場合に分けて紹介します。
従業員に出張費を支払う場合
出張する従業員に出張の費用として現金6万円を渡し、実際にかかった費用5万8千円を精算するケースにおける仕訳例を紹介します。
まず、仮払時の仕訳が以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 備考 | ||
仮払金 | 60,000円 | 現金 | 60,000円 | 7月1日〜3日、□□課長〇〇市出張分 |
続いて、実際にかかった費用を精算する際の仕訳例が以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 備考 | ||
旅費交通費 | 58,000円 | 仮払金 | 60,000円 | 7月1日〜3日、□□課長〇〇市出張分 (精算) |
現金 | 2,000円 |
社員旅行の費用を支払う場合
社員旅行の移動に使う貸切バスの費用が7万5千円で、株式会社〇〇観光に金額を振り込む際の仕訳例を紹介します。この場合は、移動であっても旅費交通費を使わず、以下のように福利厚生費を用いることが一般的です。
借方 | 貸方 | 備考 | ||
福利厚生費 | 75,000円 | 普通預金 | 75,000円 | 11月1日〜2日、社員旅行バス代 (株式会社〇〇観光) |
旅費交通費計上の手間を軽減する方法
旅費交通費を計上するには、ある程度の手間がかかります。そこで、旅費交通費を計上する手間を軽減する方法は、以下のとおりです。
- 会計ソフトを導入する
- ビジネスカード・法人カードを利用する
それぞれ解説します。
会計ソフトを導入する
会計ソフトや経費精算システムなどを自社に導入すれば、旅費交通費など移動にかかる勘定科目を計上する手間を省けます。なぜなら、手動で仕訳をする場合に比べて、税区分や計上する勘定科目などで悩むことが減るためです。
領収書の読み取り機能など便利な機能が備わったシステムを導入すれば、経理担当者だけでなく出張から戻ってから申請書を記入する従業員の手間も省けるでしょう。
ビジネスカード・法人カードを利用する
ビジネスカードや法人カードを利用することも、旅費交通費計上にかかる手間を軽減する方法のひとつです。経費精算システムと連動できるカードを選べば、従業員が利用するたびに自動で経費を計上できます。
また、従業員が立て替える必要がなくなる点や、仮払金であらかじめ概算金額を渡す必要がなくなる点も、ビジネスカードや法人カードを利用することのメリットです。
旅費交通費まとめ
旅費交通費とは、従業員がいつもの勤務地とは異なる場所へ出張する際の移動でかかる交通費などに用いる勘定科目です。交通費は通常の勤務地における業務上の移動にかかる費用に使うのに対し、旅費交通費は主に勤務地から離れた場所への移動に用いる点が違いとして挙げられます。
そのほか、通勤費や交際費、研修費なども移動で発生する費用に使う勘定科目です。状況に応じて正しく勘定科目を使い分けましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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