不動産所得とは?不動産収入との違いや確定申告の必要なケースの解説
更新日:2026年04月15日

不動産所得とは土地や建物の貸付けで得られる所得です。ワンルームマンションの家賃収入も不動産所得に該当し、一定の条件を満たすと確定申告が必要です。この記事では、不動産所得と家賃収入の違い、計算方法、事業的規模の判定基準、確定申告が必要なケースを解説します。青色申告や損益通算を活用した節税のポイントも紹介します。
目次
不動産所得とは
不動産所得とは、所得税法で定められた10種類の所得区分の一つです。不動産の貸付けなどによって生じる所得を指します。給与所得や事業所得とは異なる計算方法・税務処理が適用されるため、不動産を活用して収入を得ている場合は正しく理解しておくことが重要です。
国税庁によると、不動産所得の対象となる主な収入源は以下のとおりです。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
自分が所有する賃貸物件からの家賃収入や、自分の土地に建てた看板の使用料、駐車場の運営などがこれに該当します。資産運用目的のワンルームマンション投資による家賃収入も不動産所得です。事業として本格的に行っている場合だけでなく、自宅を一時的に他人に貸して賃料を受け取るといった小規模なケースであっても、不動産所得に分類されます。
なお、不動産の売買による収入は、その規模や形態によって譲渡所得または事業所得に分類されるため、不動産所得には含まれません。
参考)国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
不動産所得・家賃収入(不動産収入)の違い
不動産所得と家賃収入(不動産収入)は混同されやすいものの、税務上は明確に区別されます。
家賃収入(不動産収入)とは、入居者から受け取る家賃・礼金・更新料などの「入ってくるお金の総額」を指します。家賃収入(不動産収入)に含まれる主な項目は以下のとおりです。
- 毎月の家賃
- 礼金、更新料、名義書換料
- 共益費や管理費
- 返還不要の敷金、保証金
一方で、不動産所得とは、総収入金額から必要経費を差し引いた後の「利益」です。税金が課されるのはこの利益部分であるため、収入金額がそのまま課税対象になるわけではありません。
必要経費として計上できるものには、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費、借入金の利息などがあります。必要経費として扱えるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用です。生活費や私的な支出は経費にできないため、不動産経営に直接関係する費用と明確に区別して管理することが重要です。
不動産所得の「事業的規模」とは
不動産所得における「事業的規模」とは、不動産の貸付けが一定以上の規模で行われている状態です。この規模に該当すると青色申告特別控除額の増額など税務上の優遇措置が適用されます。
判定基準は「5棟10室基準」と呼ばれ、この基準を満たすかどうかで控除額や経費計上の範囲が大きく異なるため、正しく理解しておくことが重要です。以下では、事業的規模と認められる基準とそのメリットを確認しましょう。
事業的規模と認められる基準
不動産貸付けが「事業的規模」に該当するかどうかは、一般的に「5棟10室基準」で判定されます。これは国税庁が示す形式的な判定基準であり、以下のいずれかを満たせば事業的規模として扱われる仕組みです。
- アパート・マンション等の貸付け:独立した貸室がおおむね10室以上
- 戸建て住宅の貸付け:おおむね5棟以上
ただし、国税庁は「原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断する」としています。上記の形式基準はあくまで目安であり、基準に届かない場合でも事業的規模と認められる余地はあります。判断に迷う場合は、税理士等への相談を検討するとよいでしょう。
参考)国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」
事業的規模と認められるメリット
事業的規模と認められると、最大65万円の青色申告特別控除をはじめ、複数の税務上の優遇措置を受けられます。事業的規模の不動産経営は税法上「事業」として扱われ、個人事業主に準じた優遇措置の適用対象となるためです。
主なメリットは以下のとおりです。
- 青色申告特別控除:最大65万円(または55万円)の控除が適用可能。事業的規模でない場合は最大10万円に制限される。
- 青色事業専従者給与:家族への給与を全額経費として計上できる。
- 貸倒損失の特例:賃料が回収不能になる前でも一定の要件を満たせば計上が認められる。
- 資産損失の全額経費算入:建物の取り壊しなどによる損失を全額必要経費に算入できる(事業的規模でない場合は不動産所得の金額が限度)。
事業的規模に該当すれば節税効果が大きくなるため、今後の規模拡大を検討する際の判断材料にもなります。
不動産所得で確定申告が必要なケース・不要なケース
不動産所得が発生したからといって、必ずしも全員が確定申告を行う必要はありません。会社員など給与所得者の場合、給与・退職所得以外の所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則として不要です。
ただし、注意点が2つあります。まず、所得税の申告が不要でも、住民税については別途申告が求められる点です。次に、不動産所得が赤字の場合は、申告義務がなくても確定申告を行った方が有利になる可能性がある点です。赤字を給与所得と損益通算することで、納めすぎた税金が還付されることがあります。
以下では、申告が必要となるケースと不要となるケースを解説します。
確定申告が必要なケース
所得税法では、給与所得者であっても給与・退職所得以外の所得が20万円を超えた場合は確定申告の義務が生じると定められています。
例えば、給与所得のある会社員が副業としてワンルームマンションを貸し付け、年間の不動産所得(収入-経費)が25万円だった場合は確定申告が必要です。また、不動産所得以外に副業などの所得がある場合は、それらを合算した金額で20万円を超えているかを確認しなければなりません。申告漏れは無申告加算税などのペナルティ対象となるため、正確な所得算出が求められます。
参考)国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
確定申告が不要なケース
給与所得者で、不動産所得など給与・退職所得以外の所得が年間20万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要です。所得税法の「確定申告不要制度」により、一定の条件を満たす給与所得者は少額の副業所得について確定申告を省略できます。
ただし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別途必要となる点には注意しましょう。また、不動産所得が赤字の場合は、損益通算により給与所得と相殺できるため、確定申告を行った方が有利なケースがあります。申告不要の条件を満たしていても、節税メリットを考慮して申告するかどうかを判断することが重要です。
不動産所得の計算方法
不動産所得は以下の計算式で算出します。
「不動産所得=総収入金額-必要経費」
総収入金額には家賃・地代のほか更新料や返還不要の敷金などが含まれ、必要経費には維持管理料・損害保険料・固定資産税・減価償却費・借入金利子などが計上されます。これらを正しく把握することが、適正な申告と節税につながります。次に詳しく見ていきましょう。
総収入金額に含まれるもの
総収入金額に含まれる主な項目は以下のとおりです。
- 貸付けによる賃料(家賃、地代)
- 名義書換料、承諾料、更新料、頭金
- 敷金や保証金のうち、返還を要しないもの
- 共益費、管理費として受け取る収入
総収入金額には、家賃・地代だけではなく、更新料や返還不要の敷金なども含まれます。不動産の貸付けに関連して受け取るすべての金銭的収入が対象です。
家賃以外にも収入として計上すべき項目があるため、漏れなく把握することが重要です。
必要経費に該当するもの
不動産収入を得るために直接必要な費用は、必要経費として総収入金額から差し引けます。所得税法では、収入を得るために必要な支出を経費として認めており、これを差し引くことで課税対象となる所得金額が算出されます。
必要経費に該当する主な項目は以下のとおりです。
- 固定資産税、都市計画税、不動産取得税
- 損害保険料(火災保険料、地震保険料など)
- 減価償却費
- 修繕費(通常の維持管理や原状回復のための修理費用)
- 借入金利子(土地・建物取得のための借入金の利息)
- 管理委託費、仲介手数料、広告宣伝費、立退料など
必要経費として認められるのは不動産収入を得るために直接必要な費用のみであり、生活費などとは明確に区別する必要があります。また、借入金の元本返済部分は経費にはならない点に注意が必要です。
経費として計上できる項目を漏れなく把握し、適正な申告をしましょう。
参考)国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
不動産所得に関する税金
不動産所得に関しては、所得税・住民税のほか、消費税、固定資産税、都市計画税など複数の税金が発生します。
所得税は累進課税により所得が増えるほど税率が上がり、住民税は前年の所得に基づいて課税されます。消費税は居住用物件の家賃は非課税ですが事業用物件は課税の対象です。固定資産税・都市計画税は不動産の保有に伴い毎年発生し、必要経費として計上可能です。
それぞれの税金の特徴と経費計上の可否を理解しておくことが、適正な申告と節税につながります。
所得税
所得税は個人の所得に対して課される国税であり、不動産所得も所得税の課税対象です。日本では「累進課税制度」が採用されており、所得が多くなるほど段階的に高い税率が適用されます。
不動産所得は、給与所得や事業所得など他の所得と合算して「総所得金額」を算出し、それをもとに税額が決まります。本業の収入に不動産所得が加わると合計所得が増加し、結果としてより高い税率区分が適用される場合もあるため注意が必要です。以下の速算表を用いれば、課税所得金額に応じた所得税額を簡単に算出できます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
なお、不動産所得の増加により総所得金額が上がると、適用税率も上昇する点に留意が必要です。
参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」
参考)国税庁「所得税のしくみ」
消費税
消費税は、物件の用途や事業規模により課税の有無が変わります。用途がマンション・アパートなど居住用の場合、家賃収入には消費税はかかりません。
一方、事業用(事務所、店舗、倉庫など)の場合は消費税の課税対象です。ただし用途が事業用であっても、規模が小さく前々年の課税売上が1,000万円以下であれば「免税事業者」となるため納税義務は発生しません。課税売上高が1,000万円を超えた場合、「課税事業者」となり、消費税の申告・納付義務が発生します。
また、2023年10月から開始されたインボイス制度により、事業用物件を貸し付けている場合は適格請求書発行事業者としての登録の検討が必要です。居住用物件のみを貸し付けている場合は消費税の心配は基本的に不要ですが、事業用物件がある場合は課税関係を確認し
参考)国税庁「消費税のしくみ」
参考)国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」
参考)国税庁「No.6501 納税義務の免除」
住民税
住民税は、前年の所得に基づいて地方自治体に納める税金であり、所得税の確定申告をしていれば別途申告は原則不要です。確定申告のデータは税務署から各市区町村に送られ、それをもとに住民税が計算されます。
住民税の税率は所得にかかわらず一律約10%(道府県民税4%+市町村民税6%)です。所得税の確定申告を行えば、そのデータに基づき住民税が自動的に計算されます。
ただし、所得税の確定申告不要制度を利用して申告しなかった場合は、住民税の申告を別途行う必要がある点に注意しましょう。
参考)総務省「個人住民税」
都市計画税
都市計画税は、市街化区域内に不動産を所有している場合に課される目的税です。都市計画事業や土木事業の費用に充てるための地方税であり、通常は4月から6月頃に届く固定資産税の納税通知書に合算して記載され、セットで納付します。この都市計画税も固定資産税と同様に、不動産経営の必要経費として全額計上が認められています。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税される地方税です。土地・建物の保有に伴って発生し、不動産収入を得るために必要な費用として認められています。
土地と家屋のそれぞれに課税され、標準税率は1.4%ですが、市区町村によって異なる場合があります。納付方法は年4回の分割または一括のいずれかを選択可能です。固定資産税は不動産所得の計算上、必要経費として全額計上できます。
不動産所得に関する確定申告のポイント
不動産所得に関する確定申告の重要なポイントとして、以下の3点があげられます。
- 青色申告の活用
- 赤字の場合の損益通算
- 減価償却の計上
青色申告を選択すれば最大65万円の特別控除が受けられ、不動産所得が赤字であれば給与所得と相殺して税負担を軽減できます。
また、減価償却費は実際の現金支出を伴わずに経費計上ができるため、手元資金を残しながら課税所得を圧縮できる点が大きなメリットです。これらを正しく理解し活用することが、税負担を適正に抑えるポイントとなります。ここでは、それぞれのポイントを詳しく確認しましょう。
白色申告ではなく青色申告を行う
不動産所得の確定申告では、白色申告よりも青色申告を選択した方が税制上のメリットが大きくなります。青色申告の最大のメリットは、最大65万円の特別控除が受けられる点です。事業的規模でない場合でも10万円の控除が適用されるため、白色申告と比べて課税所得を圧縮できます。
さらに、青色申告では赤字を3年間繰り越せるため、翌年以降に黒字が出た際に相殺して税負担を抑えることも可能です。青色申告を行うには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、複式簿記での記帳が必要ですが、会計ソフトを活用すれば記帳の負担を軽減できます。手間はかかるものの節税効果が高いため、不動産所得がある場合は青色申告を検討しましょう。
不動産所得が赤字でも確定申告を行う
不動産所得が赤字の場合でも、損益通算を活用するために確定申告を行った方が有利になるケースがあります。損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得などの黒字と相殺できる制度です。
例えば、不動産所得が100万円の赤字であれば、本業の給与所得からその100万円を差し引いて税額を再計算します。これにより、源泉徴収された所得税の一部が還付されたり、翌年の住民税が安くなったりする可能性があります。不動産所得が赤字の年こそ確定申告を行い、損益通算による節税メリットを享受しましょう。
減価償却費を活用する
減価償却費は、実際の現金支出を伴わないにもかかわらず経費として計上できる重要な項目であり、節税に大きく貢献します。建物や設備は時間の経過とともに価値が減少します。この減少分を耐用年数に応じて毎年経費として計上するのが減価償却費です。実際にはお金が出ていかないため、手元資金を残しながら課税対象の所得を圧縮できます。
なお、減価償却の対象は建物部分のみで、土地は対象外となる点に注意しましょう。減価償却費を正しく計上することで、キャッシュフローを維持しながら節税効果を得られます。
不動産所得まとめ
不動産所得とは、土地や建物の貸付けなどによって得られる所得です。家賃収入(不動産収入)は入ってくるお金の総額を指し、不動産所得は経費を差し引いた利益部分を指します。課税対象となるのは不動産所得であり、両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。
事業的規模(5棟10室基準)を満たすと、青色申告特別控除の増額など税務上の優遇措置を受けられます。給与所得者は不動産所得が年間20万円を超えると確定申告が必要ですが、20万円以下でも住民税の申告は別途必要です。
また、不動産所得が赤字の場合でも、損益通算により給与所得と相殺できるため、確定申告を行った方が有利なケースがあります。
不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算し、固定資産税・減価償却費・借入金利子などが経費として認められます。青色申告の活用、赤字時の損益通算、減価償却費の計上が節税のポイントです。これらを正しく理解し、適正な確定申告と節税を目指しましょう。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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