不動産所得とは何か~計算方法、確定申告時の注意点~

更新日:2019年01月25日

不動産所得とは

不動産所得は所有する不動産を活かした事業によって発生する収入が対象となります。賃貸経営以外にも不動産所得として処理するものもあるため、良く確認しておく必要がありそうです。ここでは不動産所得に分類される収入の基礎知識と、確定申告時の計算方法、必要経費について解説していきます。

不動産所得の基礎知識

不動産所得は譲渡所得や事業所得以外の所得で、次のようなものを指します。( 引用:国税庁「不動産所得とは」 )

  • 土地や建物などの不動産の貸付け
  • 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
  • 船舶や航空機の貸付け

自分が所有する賃貸物件からの家賃収入や、自分の土地に建てた看板の使用料、駐車場の運営などがこれに当たり、資産運用のためのワンルーム貸しも不動産所得となります。また、自宅を一時的に人に貸して家賃を受け取っている場合など、事業的なものでなくても不動産所得に該当します。不動産の売買による収入は、その規模や形態によって譲渡所得または事業所得に分類されます。

事業所得と不動産所得の違い

同じ賃貸経営であっても、規模によっては不動産所得ではなく事業所得として扱われることもあります。事業規模として認められるのは、一般的には以下のような条件です。

  • アパートの場合:独立した部屋の数が約10室以上
  • 独立家屋の場合:概ね5棟以上
  • 駐車場:50台以上

上記の規模以上であれば、事業所得として確定申告が可能です。事業所得は不動産所得とは計算方法が異なる上、青色申告特別控除が最高65万円まで適用されます。不動産所得の場合には10万円までの控除となります。そのほかにも、配偶者や親族の専従者控除の適用、貸倒損失の必要経費への計上、ほかの所得との損益通算などの優遇措置が受けられます。

不動産所得の計算方法

不動産所得は、以下のように計算します。

不動産所得=総収入金額-必要経費

収入金額の合計から、不動産収入を得るためにかかった必要経費を差し引いた部分が、不動産所得として扱われます。不動産収入の対象となるのは、地代家賃のほかにも名義書換料、更新料、返還の必要がない敷金・保証金、電気代・水道代・掃除代などの名目で徴収した共益費などが挙げられます。

必要経費として計上できるものには、土地・建物の固定資産税、損害保険料、減価償却費修繕費、土地や建物の借入金の利息などがあります。必要経費として扱えるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用であり、生活上の経費などとは明確に区別しなければなりません。

不動産所得の確定申告時の注意点

不動産所得の確定申告をする際には、以下のような点について注意が必要です。

必要となる書類が多い

不動産所得の確定申告をする場合には、青色申告では決算書(不動産所得用)、白色申告では収支内訳書(不動産所得用)を始めとして、多くの書類が必要となります。申告期限が迫ってから慌てないように、早めの準備を心がけていきましょう。

減価償却を上手に処理する

減価償却は建物部分のみに適用されますが、空室分も含めて計上できます。不動産の減価償却については所有者の裁量に任せられている部分が多く、設定の仕方によっては計上できる経費額が変わってきます。不動産の知識を高めておくことで、有利な減価償却の設定ができるようになるでしょう。

修繕費の扱いに注意

破損個所の修理は修繕費として計上できますが、元の状態よりも価値が上がると、資本的支出として固定資産への計上が必要となります。修繕費として認められる目安は、修繕費用が60万円未満、または取得価額のおおむね10%相当額以下です 。

親族などへの無償貸与

アパートなどの部屋を親族に無償貸与している場合、その部分の固定資産税や減価償却費などは経費として計上できません。

必要経費の項目

維持管理や修理は、内容によって修繕費やほかの科目と区別される可能性があるため、確認しながら計上していく必要があります。

不動産収入が20万円以上なら確定申告義務

不動産所得といっても、大規模な賃貸経営ばかりが対象となるわけではありません。自分の土地に小さな看板を設置しているなどという場合でも、年間の収入が20万円以上になれば申告の義務が発生します。申告の際には不動産収入の内容によって、経費として計上できるものが数多くあります。面倒がらずに収入と支出を把握し、確定申告に備えておきましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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