研修費とは?研修費用の計上に使う他の勘定科目の仕訳例も解説

更新日:2025年04月21日

研修費とは

研修費とは、従業員が研修を受ける際にかかる費用を経費として計上する際に用いる勘定科目を指します。計上する際は、あとからわかるように資料やエビデンスを残しておくことが大切です。本記事では、研修費とは何か説明したうえで、仕訳の例を解説します。

目次

研修費とは

研修費とは、従業員が業務に関係する知識や技術、ノウハウなどを得るために研修を受講するにあたってかかる費用です。研修には、新入社員研修・技術研修・マネジメント研修・コンプライアンス研修など、さまざまな種類があります。

研修費を経費計上する際には、そのまま「研修費」という勘定科目を使うことが一般的です。ただし、研修にかかる費用に使う勘定科目に法律上の決まりはありません。そのため、研修費以外の勘定科目でも、研修にかかった費用を経費計上できます。

研修費用を経費計上する際のポイント

研修費用を経費計上する際の主なポイントは、以下のとおりです。

  • 経費にできない場合がある
  • 「研修」でも交際費の対象になることがある
  • 資料・エビデンスを残しておく必要がある

正しく会計処理できるように、各ポイントについて確認しておきましょう。

経費にできない場合がある

従業員や経理担当者が研修費に該当すると考えていても、経費として認められないことがある点を押さえておきましょう。

一般的に、経費とは事業を営むために発生する費用や、収益を得るために使う費用のことです。そのため、事業に関係のない研修費用は、経費として計上できません。

たとえば、ITを営む会社の従業員が料理に関するセミナーを受講する場合は、研修費用でも経費計上が認められないことが一般的です。ただし、今後会社が新規事業として飲食店を立ち上げたり、インターネットで飲食に関するサービスを提供したりする可能性があれば、経費計上できることはあります。

「研修」でも交際費の対象になることがある

「研修」という名で実施していても、交際費の対象になることがある点もポイントです。

ビジネスでは、「〇〇研修会」や「◆◆セミナー」という名目で取引先と視察にまわることがあります。研修会やセミナーの主な目的が、研修よりも旅行や接待などであれば、交際費で計上しなければなりません。また、実際にセミナーを実施したあとに懇親会を実施する場合も、セミナーにかかった研修費と懇親会にかかった交際費を分けて計上することが大切です。

なお、交際費とは、得意先・仕入先など事業に関係のある人への接待・慰安・贈答などを指します。交際費を計上する際は、法人の区分に応じて損金算入できる額が異なる点に注意が必要です。

参考)国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

資料・エビデンスを残しておく必要がある

研修費を計上する際は、資料やエビデンスを残しておくことも重要です。

ここまで説明したとおり、研修会やセミナーの実態によって経費計上できないことや、研修費の代わりに交際費として計上する場合があります。税務調査で「研修費で経費計上すべきでないものを、研修費として処理しているのでは?」と指摘を受けた際、うまく説明できなければペナルティを与えられかねません。

その点、資料やエビデンスを残していれば、すぐに正当な支出であることを説明できるでしょう。資料・エビデンスの具体例としては、セミナーで使用したテキスト、講師から配布された文書などが挙げられます。

経費計上できる研修費用の具体例

経費計上できる研修費用の具体例として、以下のケースが挙げられます。

  • 研修を受けるためにかかった宿泊代
  • 研修先への移動費
  • 外部講師に支払う謝礼
  • 研修時に提供した食事の代金
  • 研修で使用する教材や書籍の購入代金

それぞれ具体例を交えて説明します。

研修を受けるためにかかった宿泊代

従業員がホテルなどに宿泊する際の費用でも、業務に関連する研修を受けるためのものであれば研修費などで経費計上できます。

研修費が発生する具体例は、福岡の支店で勤務する若手社員が大阪の本店で営業研修を受講するために、研修日前日に大阪のホテルに宿泊するケースです。ただし、研修の内容によっては、経費計上できない場合があるため、注意しましょう。

研修先への移動費

研修先へ移動する際にかかる費用も、研修費として経費計上できます。

研修費が発生する具体例は、北海道の会社に勤める従業員が、東京で開催されるセミナーに参加するために飛行機に乗車するケースです。ただし、一般的には研修の移動にかかる費用は、交通費や旅費交通費で計上します。(旅費)交通費とは、業務で通常の勤務地とは異なる場所に移動する際にかかる飛行機代・新幹線代・バス代・タクシー代などのことです。

外部講師に支払う謝礼

研修やセミナーを実施するにあたって招いた外部講師に支払う講演料や報酬などの謝礼も、研修費として経費計上できます。

研修費が発生する具体例は、マナー講師を招いて新入社員向けにビジネスマナー講座を開催するケース、経営者やスポーツの監督経験がある人などを招いて管理職向けにマネジメント研修を実施するケースなどです。

なお、講演料を支払う際は、所得税や復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。徴収する金額は、支払額が100万円以下の場合に「支払金額×10.21%」、100万円超の場合に「(支払金額 - 100万円)× 20.42%+ 102,100円」です。

参考)国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」

研修時に提供した食事の代金

研修を実施する際に食事を提供する場合も、研修費として経費計上できます。

研修費が発生する具体例は、研修当日の昼休みにお弁当を提供するケース、セミナー開催中にペットボトルのお茶を配るケースなどです。ただし、提供する食事が高額である場合や酒類を提供する場合は、基本的に研修費での経費計上はできません。交際費として計上するか、参加者に費用の負担を求めることが必要です。

研修で使用する教材や書籍の購入代金

研修に使う教材や書籍の購入代金も、研修費として経費計上できます。研修費が発生する具体例は、語学研修に使用する英会話のテキストなどです。

また、パソコンやタブレットなどを使ってオンライン上で学ぶ「eラーニング」を導入する際も、研修費として計上することがあります。ただし、研修内容や導入する設備、会社の規程などによって、別の勘定科目を使うこともあるため注意が必要です。

研修費以外に研修費用計上に使う勘定科目

研修費用を計上する際に、以下の勘定科目を使うこともあります。

  • 新聞図書費
  • 福利厚生費
  • 前払費用
  • 雑費

各科目によって、使用する状況は異なります。ここから、各科目の概要と、研修費用との関係について確認していきましょう。

新聞図書費

新聞図書費とは、事業に関する情報を収集したり、知識を習得する際にかかった費用に使う勘定科目です。具体例として、新聞・雑誌の購読料、メディア・情報サイトの定期購読料、書籍の購入費などが挙げられます。

セミナーを実施する際に用意するテキストの購入代金は、新聞図書費の対象です。研修費でまとめて処理せず、テキスト購入分を別に経費計上する際に使います。

福利厚生費

福利厚生費とは、自社の従業員のために保障やサービスなどを提供する際に使う勘定科目です。会社が各種保険料などを負担する法定福利費と、健康診断費用や社員旅行の費用などを負担する法定外福利費があります。

福利厚生費と交際費の主な違いは、対象が自社の従業員か、取引先など社外の相手かという点です。

従業員が資格の取得目的で受講するセミナーの費用を会社が負担する場合に、福利厚生費を使うことがあります。福利厚生費として計上するには、一部の従業員向けではなく、条件を満たせば誰でも対象にする点がポイントです。

前払費用

前払費用とは、事業に関連するサービスを継続的に受けるために先払いするも、まだ提供が完了していない場合に使う勘定科目です。具体例として、リース料や保険料などが挙げられます。前払金との主な違いは、サービスに継続性がある点です。

たとえば、従業員に10か月間のeラーニングを受講させるためにサービス提供会社に20万円支払うも、決算時点で2か月間しか経過していない場合に前払費用を使うことがあります。

雑費

雑費とは、事業に関する経費を計上する際、普段使用している勘定科目のなかに該当するものがない場合に使う勘定科目です。会社によっては、飛行機や飲食店のキャンセル代、オフィスのトイレットペーパーの購入代などに雑費を使うことがあります。

一般的には、研修にかかる費用には雑費を使いません。ただし、今回の研修に限りテキスト1冊(1,200円)の購入が必要なケースなど、金額が高額ではなく重要性も高くない場合に限り、雑費を使うことがあります。

研修費を用いる際の仕訳例

海外進出を検討している企業で、従業員が参加費3千円の外部セミナーに参加した場合に発生する研修費を仕訳してみましょう。今回紹介するのは、参加費を現金で支払うケースです。

借方 貸方 備考
研修費 3,000円 現金 3,000円 〇〇主催、
セミナー

今回は現金で参加費を支払っているため、貸方に「現金」3千円を計上し、借方に「研修費」3千円を計上しています。外部セミナーへの参加費に限らず、自社に外部講師を招いてセミナーを実施する際にかかる費用や、Webセミナーを実施する際に支払う費用を研修費で計上する場合も、基本的なやり方は同じです。

研修費以外の勘定科目を使う場合の仕訳例

研修費以外の勘定科目を使う場合の主な仕訳例として、以下のケースが挙げられます。

  • 新聞図書費を使う
  • 福利厚生費を使う
  • 前払費用を使う
  • 雑費を使う

具体的な数字を使って、各ケースの仕訳例を確認していきましょう。

新聞図書費を使うケース

従業員40名が参加する研修で1冊3千円(合計12万円)のテキストの購入が必要な場合に、新聞図書費を用いる仕訳をしてみましょう。普通預金から出版社に振り込む場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方 貸方 備考
新聞図書費 120,000円 普通預金 120,000円 ITスキル研修、
テキスト40冊分代金を▲▲出版に振り込み

今回は普通預金から支払うため、貸方に「普通預金」12万円、借方に「新聞図書費」12万円を計上しています。

福利厚生費を使うケース

従業員が業務に直接関係しない英語の資格向け対策講座を受講する際に、一部もしくはすべて会社が費用を負担する場合は福利厚生費を使います。会社が資格取得にかかった費用の補助として、従業員に現金で2万円支給する場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
福利厚生費 20,000円 現金 20,000円 A課長に支給
英語の資格向け対策講座受講費用

なお、福利厚生費として計上するためには、特定の従業員(今回はA課長)だけでなく、対象の講座の受講を希望する人全員に費用を支給しなければなりません。

前払費用を使うケース

外部講師に合計10回の研修を依頼して現金で10万円を支払うも、決算時点で2回しか研修を実施していない場合には、前払費用を使います。まず、講師に現金を支払う際に、研修費を使って仕訳をしましょう。

借方 貸方 備考
研修費 100,000円 現金 100,000円 営業研修(計10回)
◆◆講師に支払い

ここまでは、通常の研修費を計上する際の仕訳方法と同じです。続いて、決算時点で未実施分の研修費について、前払費用を用いて以下のように仕訳をします。

借方 貸方 備考
前払費用 80,000円 研修費 80,000円 営業研修未受講分
の代金振替(8回分)

決算時点で、まだ8回の研修が残っているため、10万円の10分の8(8万円)を借方で「前払費用」として計上し、貸方には同額を「研修費」として計上しました。

また、翌期に残りの8回分の研修を終えたら、以下のように仕訳をしましょう。

借方 貸方 備考
研修費 80,000円 前払費用 80,000円 営業研修
残り8回実施分

雑費を使うケース

本来テキストが不要なセミナーで、今回に限り1冊(3千円)のテキスト購入が必要な場合は雑費を使って処理します。代金を現金で支払う場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方 貸方 備考
雑費 3,000円 現金 3,000円 △△セミナー
テキスト購入

ただし、今後もテキストを購入することがあれば、新聞図書費などを使って管理したほうがよいでしょう。

研修費まとめ

研修費とは、従業員が研修を受講する際に、かかる費用を経費として計上するのに使う勘定科目を指します。ただし、研修の内容によって交際費として計上することや、経費計上自体ができないことがある点に注意が必要です。

また、法律上の決まりがあるわけではないため、支出の内容に応じて旅費交通費や新聞図書費などの勘定科目を使うこともあります。担当者が混乱しないように、社内でルールを決めておきましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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