出資金とは何か?仕訳、メリットとデメリットについて解説

2023.03.06

出資金

出資金とは、出資者から提供してもらったお金のことです。代表的なのは、新規事業や事業継続に必要な資金です。また、協同組合への出資やゴルフ会員権の購入に支払ったお金なども出資金に含まれます。出資者は、会社に出資した際には配当金や残余財産の分配を受ける権利が得られ、協同組合への出資やゴルフ会員権の購入の際は会員としての権利が得られます。

似たような用語に「投資」や「融資」があり、何が違うのか分からない方も少なくないでしょう。また、会計処理の際に勘定科目の「出資金」は、どのような出資を行った際に使えるのか困惑するケースも多く見られます。今回は、出資金について融資や投資との違いや受ける側のメリットとデメリット、さらに出資側が勘定科目として計上できる場面を紹介します。

出資金の仕訳~実務で使用する6つのケース~

ここからは、実務において計上する際に出資金として計上する代表的なケースを6つご紹介します。それぞれの項目には仕訳例も記載しているため、実務で使用する際には参考にしてください。

①信用組合や信用金庫などの金融機関へ出資した時の仕訳

信用組合や信用金庫などを金融機関として利用するためには、出資金を払って会員になることが条件です。これらの金融機関は、会員の出資金で経営するためです。会員になると、大きな金額の借入もできます。会員になるために必要な出資金の最低額は金融機関によって差はありますが、一般的には5千円から1万円です。そして、出資金の金額によって出資配当金が支払われます。また、信用組合や信用金庫などに払った出資金は会員をやめる際に返還されます。例として、信用金庫と取引を始めるために出資金20万円を支払った時の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
出資金 200,000円 現金 200,000円

②合資会社や合同会社などの株式会社以外へ出資した時の仕訳

会社の形態は株式会社だけではなく、合同会社や合資会社、有限会社があります。これらの株式会社以外へ出資するケースも出資金として計上可能です。これらの会社は資金調達する時、株式の発行ではなく出資金によって設立や運営をする法人です。ちなみに、株式会社への出資金は投資有価証券や関係会社株式などの勘定科目を使用します。例えば、合同会社に5百万円を出資したとすると以下のように仕訳します。

借方 貸方
出資金 5,000,000円 現金 5,000,000円

③農業協同組合や生活協同組合などの協同組合へ出資した時の仕訳

協同組合には①と同様、サービスを利用する際に出資して組合員になる必要のあるものがあります。農業協同組合や生活協同組合なども、組合員からの出資金で運営されているためです。組合員になると、非組合員より有利になることが多くあります。そして、必要な出資金の相場も千円から1万円と少額なことも特徴の1つです。また、これも①と同様に、組合員をやめる際に出資金は返金されます。例えば、生活協同組合の組合員になるために5千円を出資したとすると、以下のように仕訳します。

借方 貸方
出資金 5,000円 現金 5,000円

④事業を共同で営むために出資した時の仕訳

何らかの事業を営んでいると、共同して事業をするために任意組合やパートナーシップ、匿名組合として出資することがあります。これらの形態に対し、共同で事業をするために出資した場合も出資金としての計上が可能です。例として、任意組合に1千万円出資したとすると、以下のように仕訳します。

借方 貸方
出資金 10,000,000円 現金 10,000,000円

⑤パートナーシップや任意組合が決算した時の仕訳

出資者同士で特別な契約をしていなければ、共同事業で出た損益は出資者同士で分配します。分配の割合は、民法上で各組合員の出資額に比例すると定められています。つまり、④で出資した後に得た利益は出資者のものとなるのです。例えば、出資した任意組合の決算報告で1千万円の利益が発生し、こちらの出資比率が20%なので2百万円の利益を計上したとすると以下のように仕訳します。ただ、実際の比率は出資契約によって異なる場合があるため、法律や会計の専門家に一度相談しましょう。

借方 貸方
出資金 2,000,000円 投資収益 2,000,000円

⑥ゴルフ会員権の支払いをした時の仕訳

ゴルフ会員権とは、会員になったゴルフ場を優先的に使えたり、会員価格でゴルフ場が使える権利です。その会員になるための権利金も、出資金として計上できます。ただ、ゴルフ会員権に関する消費税は少し複雑です。ゴルフ場の運営に直接払い込んで返還されるケースは、課税取引にはなりません。一方で、返還されない入会金は消費税の課税取引に当たります。また、仲介業者を経由してゴルフ会員権を購入したケースでも課税取引に含まれるので注意しましょう。例えば、ゴルフ会員権を販売する仲介業者から会員権を購入するとします。会員権は消費税込みで220万円でした。これを出資金で仕訳すると以下のようになります。

借方 貸方
出資金 2,000,000円 現金 2,200,000円
仮払消費税 200,000円

出資は融資や投資とは異なる

出資金と区別しづらいものに「融資」と「投資」があります。ここでは、出資金が融資と投資とどのように違うのかを解説します。

①融資には返済義務がある

融資は出資と違い、「利息」と「返済義務」が発生します。融資とは、会社が金融機関や信用金庫などからお金を借入れることです。融資を受けたお金には利息がつき、借り入れた金額と併せて返済しなければなりません。

つまり、出資されたお金は返済する必要がなく純資産として扱えますが、融資されたお金は負債として扱われます。そのため、融資をうけることは、出資されるよりマイナスに感じるでしょう例えば起業時に融資を受けた場合、借り入れた金額と利息の返済を考えて経営をしなければならず、起業時の経済的負担は大きくなるといえます。

②投資には融資と出資が含まれる

投資とは、将来的に得られる利益を期待して、会社にお金を払うことです。代表的なものに会社の株式があります。株式は、会社が投資家にお金を出してもらう代わりに、株式を発行します。そして、投資家は持っている株式の分だけ、投資した会社が出した利益を受け取れる仕組みです。

出資金を受けるメリット4つ

ここからは、起業や新規事業を立ち上げる際、出資金を受ける側のメリットを解説します。

①返済不要

出資金を受けるメリットの1つは、返済の義務が原則としてないことです。融資との違いでも述べましたが、出資金には利息や返済期日がありません。返済金額や返済時期を気にしなくてもよいお金です。出資金としてお金を提供してもらえれば、返済のための資金を用意する必要はなく、会社の運転資金が安定します。つまり、会社経営にとってリスクの少ない資金調達方法は、出資金を受けることです。ただ、出資金を出す側にとっては多大なリスクを背負うことになるため、会社や事業にポテンシャルがあることを証明する必要があります。

②起業時には効果的なスタートダッシュがきれる

起業時において出資金を受ける場合、効果的なスタートダッシュがきれることがメリットのひとつです。出資金は、上場前に準備できる返済不要な資金のため、広告費や宣伝活動など、事業を始める前からあらゆる場面にお金を投入できます。例えば、起業当初から広告費にお金をかけられます。事業を新たに始める場合、初期から事業を広範囲の人に知ってもらうことが重要です。

起業にかかる諸々の必要経費に加えて、広告費まで自己資金で用意しようとすると、まとまった金額が必要でしょう。よって、出資金を受けることは、自己資金や融資より有利な事業スタートになるといえます。

③出資側の持つネットワークを使える

出資金を受けると、出資側のネットワークを自身のために使うことが可能です。出資した側としても事業の拡大は望ましいことのため、多くの場合快く協力してもらえます。

例えば、事業が成功して資金調達のステージが次の段階になったとします。そのような時に、出資金を受けていた場合に以下のことが出資側に期待できます。

  • 投資家を紹介してもらえる
  • 幹部人材を紹介してもらえる
  • 顧客を紹介してもらえる
  • PRをしてもらえる

④多額の資金を集めることができる

事業のポテンシャル次第では、最初から多くの資金を集められる可能性があることもメリットの1つです。事業にかかるお金すべてを自己資金で用意できればよいのですが、事業には多額の費用がかかるため、自己資金だけでそのすべてをまかなうことは難しいでしょう。融資に頼りたい場合でも、新規事業や起業にはリスクがともなうため、希望する金額を貸付けてもらえる可能性は高くありません。出資金であれば、出資する側が事業に期待できると判断すれば多額の資金を集められます。

出資金を受けるデメリット3つ

出資金を受けることには多くのメリットがあり、会社の経営を円滑化する上で、魅力を大いに感じるでしょう。しかし、出資金を受けることにはいくつかのデメリットもあります。この章では、出資金を受けるデメリットについて解説します。

①会社の経営権を握られることがある

出資金を受けると、会社の経営権を出資側に握られる可能性があります。個人や会社が出資金を受けたとき、その出資者に対して出資額に応じた株式を渡す必要があるためです。経営権とは、経営者が自身の会社を経営・管理する権利や、株主総会での議決権行使の権利を指します。つまり、株式の一部を渡すことは、株主総会での決定の一部に株主も関与できる余地を与えることです。さらに、出資側が経営者側より持っている株式の数が多い場合、出資側により多くの経営権を握られます。出資金を受ける際には、経営権を完全に握られてしまうほどの、必要額以上の出資金額を提案されていないかに留意しましょう。

②上場できないケースがある

出資者の素性次第では、上場できないケースが存在します。上場する際には、反社会的勢力や反市場勢力との関係性がないかを厳しく審査されます。その厳しさは、反社会的勢力や反市場勢力との関係がないことを証明する確認書の提出が必要なほどです。例えば、出資を受けた先が反社会的勢力だったことを知らずに上場した場合、その事実が確認され次第、上場は廃止されてしまいます。出資金自体は会社にとってメリットが多いものですが、出資者の身元確認はしっかりとすることをおすすめします。

③投資家へ提出する資料を作成するコストが発生する

出資金を受けた場合、会社の財務諸表を作成し、定期的に株主に対して会社の経営状況を報告する必要があります。出資した以上、出資側はその企業の経営状況を把握しておかなければなりません。出資側次第では、詳細な資料を求められるケースもあります。事業のアドバイスをもらうための資料作成なら会社の成長につながるのですが、手間だけかかって事業や会社の利益にならないことも少なくありません。さらに、出資者が多ければ多いほど資料をその分作成しなければならないため、時間的・人員的なコストは多くなるでしょう。

出資金まとめ

出資を受ける場合は多くのメリットがあり、出資する側に立つと計上が難しくなる特徴を持つのが出資金です。事業を始める、または事業を営んでいる以上、出資金はどこかで利用します。トラブルに巻き込まれる、または無駄な損失を出すことを避けるためにも、会計や法律の専門家にいつでも相談できる準備をしておきましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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