電子マネーの仕訳に使う勘定科目とは?チャージする際のポイントも紹介

2023.11.24

電子マネーの仕訳

電子マネーの仕訳には、預け金や未払金などの勘定科目を使用します。ただし、種類やチャージの有無などによって、仕訳方法が異なる点に注意が必要です。

本記事では、電子マネーの種類を説明した後で、それぞれの仕訳方法を解説します。

目次

電子マネーの種類を理解する

電子マネーとは、現金などをデータ化(電子化)して決済するサービスのことです。主に交通機関で使う交通系電子マネーやスーパーやデパートなどで使う流通系電子マネー、クレジットカードに紐付けるクレジット系電子マネーなどがあります。

また、電子マネーの方式の違いも理解しておくことが大切です。電子マネー(キャッシュレス決済)の主な種類として、以下が挙げられます。

  • プリペイド方式
  • ポストペイ方式
  • デビット方式

それぞれの特徴を解説します。

プリペイド方式

プリペイド方式とは、利用者のカードやスマートフォンにあらかじめ入金(チャージ)し、支払時に店舗の機械で読み取る方式です。交通系の電子マネーが、具体例として挙げられます。

チャージした金額以上は使えない点が、プリペイド方式のメリットです。ただし、高額な支払いには適していません。

また、プリペイド方式の中にはオートチャージ機能が搭載されているものがあります。オートチャージ機能とは、電子マネーの残高が一定額を下回った場合に、紐付けた銀行口座やクレジットカードを通して自動でチャージされる機能です。

ポストペイ方式

ポストペイ方式とは、店の代金を立て替えたクレジットカード会社に、買い物した分の金額を後で支払う方式です。具体例として、クレジット系電子マネーが挙げられます。

事前のチャージが不要で購入できる点がメリットです。代金を支払えるだけの残高があるか不安になる必要もありません。

ただし、支払いと決済のタイミングにずれが生じる点に注意が必要です。とくに経費支払が高額の場合、会社は資金繰り管理を徹底しなければなりません。

デビット方式

デビット方式とは、店の機械で読み取る段階で自身の銀行口座から即座に支払う方式です。電子マネーに銀行口座やデビットカードを紐付けている場合、デビット方式といえます。

デビット方式は、事前のチャージが不要な点、支払いと決済のタイミングにずれが生じない点などがメリットです。ただし、プリペイド方式やポストペイ方式と比べるとデビット方式に対応している電子マネーが少ない点がデメリットとして挙げられます。

また、指定した銀行口座の残高が不足している場合、基本的に決済不能になる点にも注意が必要です。

参考:経済産業省「キャッシュレスのある毎日! 便利でお得な生活」

電子マネーで仕訳が必要なケース

会社の事業に必要なお金を電子マネーで支払った場合、基本的に経費の対象のため仕訳が必要です。電子マネーで仕訳が必要なケースとして、以下の例が挙げられます。

  • 流通系電子マネーで従業員が業務に使用する文房具を購入した
  • 従業員が交通系電子マネーを使い、公共交通機関に乗車して取引先を訪問した
  • 取引先とカフェで打ち合わせをして、クレジット系電子マネーでコーヒー代を支払った

なお、実際に事業に関するものに使うかはわからないため、プリペイド方式の電子マネーにチャージしただけでは、経費の扱いにはなりません。ただし、チャージした段階で仮払金・預け金・前払費用などの勘定科目を使った仕訳の作業は必要です。

企業が電子マネーを用いて経費計上するメリット

企業が電子マネーを用いて経費計上するメリットは、主に以下のとおりです。

  • 小口現金管理の負担を軽減できる
  • 経費精算時に発生するミスを軽減できる
  • 利用履歴を確認できる

各メリットを解説します。

小口現金管理の負担を軽減できる

企業が電子マネーで経費を決済するようにすれば、小口現金管理の負担を軽減できる点がメリットです。

小口現金管理とは、切手代やコピー用紙代など日常的な経費精算のために、社内に少額の現金を置き、小口現金出納帳を使って管理することを指します。小口現金を扱えば、都度従業員が支払いを立て替える必要がない点がメリットです。

しかし、小口現金管理にあたって、以下の作業をしなければなりません。

  • 経理担当者が小口現金を出し入れする
  • 毎日経理担当者が小口現金出納帳をつけて残高を確認する
  • 1日の終わりに経理担当者が残高を数えて帳簿と金額が一致しているか確認する

その点、従業員が電子マネーで決済するようにすれば、経理担当者は小口現金を出し入れしたり、小口現金出納帳をつけたりしなくてすみます。

参考)小口現金とは?その仕組みと管理方法について

参考)小口現金出納帳への記入例~月末と月初に補給したとき~

経費精算時に発生するミスを軽減できる

経費支払いに電子マネーを導入することで、経費精算時に発生するミスを軽減できる点もメリットです。

現金で決済する場合、誤って多く払ってしまったり、その反対に店員から多くお釣りをもらったりすることが起こりえます。一方、電子マネーを使ったキャッシュレス決済であれば、決済金額にミスが発生する可能性は低いでしょう。

利用履歴を確認できる

電子マネーで決済すると、利用履歴を確認できる点もメリットです。インターネット上で日時・場所・購入(利用)したものなどを確認できるため、都度領収書を発行してもらう手間を省けます。その結果、従業員が店頭で受領した領収書を紛失するリスクを軽減できるでしょう。

細かに利用履歴がわかることを周知すれば、従業員による不正使用の抑止にもなります。

また、サービスによっては利用履歴を会社で使用している会計ソフト・経費精算ソフトと連動可能です。連動すれば、申請書や伝票を起票する手間が省ける上に、記入漏れや入力ミスで数字があわなくなることを避けられるでしょう。

3つのメリットからわかるように、電子マネーで経費処理することが、結果的に会社の業務効率化につながります。

電子マネーで経費処理する際の注意点

企業が電子マネーに関する経費処理をする際の注意点は、以下のとおりです。

  • 従業員の私的な使用ではないか確認する
  • 個人事業主は電子マネーの仕訳で個人用・事業用を明確にする
  • 証拠があるか確認する

各注意点を解説します。

従業員の私的な使用ではないか確認する

従業員が経費を電子マネーで処理した場合、経理担当者は私的な使用ではないか確認することが大切です。従業員に不正の意図はなくても、出張時にプライベートのスマートフォンを使用する感覚で、業務用スマートフォンを使って電子マネーで私的なお土産を購入しているかもしれません。

電子マネー決済だからといってチェックを甘くせず、通常と同じく従業員の支出が目的にあったものなのか確認するようにしましょう。

個人事業主は電子マネーの仕訳で個人用・事業用を明確にする

個人事業主の場合、とくに個人用・事業用の区別を明確にすることに注意が必要です。便利だからといって、プライベートの支出もビジネスに関する支出も同じスマートフォンの電子マネーで決済していると、どれが経費でどれが私費なのかわからなくなります。

個人事業主も当然私費を経費に計上できないため、電子マネーの支出の中から事業に関するものを抜き出して帳簿に記帳しなければなりません。経費と私費の境界線が曖昧であれば、確定申告前に大きな手間がかかるでしょう。

最初は面倒に感じても、業務効率化のために個人用と事業用で電子マネーを使い分けることが重要です。

証拠があるか確認する

電子マネー決済した経費の中に、私的なものが含まれていないか確認するためには、証拠(エビデンス)のチェックが必要です。適切に経費処理するために、利用履歴と経費として申請されている金額を照合するようにしましょう。

また、社内で定期的に利用履歴を印刷するルールを作成すれば、異常・不審な出金がある場合にすぐに対応できます。

電子マネーの経費処理の仕訳方法

電子マネーの経費処理の仕訳方法を理解できるように、使用する勘定科目や仕訳例をいくつか解説します。

電子マネーに使用する勘定科目

電子マネーの経費処理に関連する主な勘定科目は、以下のとおりです。

  • 預け金(仮払金・前払費用)
  • 未払金
  • 預金

預け金とは、取引先や従業員などに金銭を一時的に預けている際に使う勘定科目です。プリペイド方式でチャージした際に、「預け金」として計上します。会社の仕訳方法によって、「仮払金」や「前払費用」でも計上できます。

未払金とは、商品を受け取ったり、サービスの提供を受けたりするも、現時点で代金の支払いが完了していない場合に使う勘定科目です。ポストペイ方式で決済する際やクレジットカードでチャージする場合に、「未払金」を使います。

また、「預金」は銀行口座から即座に支払うデビット方式や、ポストペイ方式で請求額が引き落とされる際に使う勘定科目です。

仕訳例1 電子マネーにクレジットカードでチャージ

電子マネーにクレジットカードで5千円分チャージする際の仕訳例が、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
預け金 5,000円 未払金 5,000円 クレジットカードで電子マネーにチャージ

チャージ額の代金支払いはまだ完了していないため、貸方の「未払金」で仕訳しています。また、チャージは実際に経費として認められないため借方の「預け金」で仕訳されている点もポイントです。

続いて、チャージした5千円分が後日引き落とされた際に以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
未払金 5,000円 預金 5,000円 電子マネーチャージ分

預金から引き落とされるため、貸方で「預金」5,000円を記帳しています。

なお、プリペイド方式で現金でチャージする場合の仕訳例が、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
預け金 5,000円 現金 5,000円 現金で電子マネーにチャージ分

チャージがその場で完了するため、「未払金」を使う必要がありません。

仕訳例2 電子マネーを利用

業務で電車に乗って3千円支払ったケースにおける仕訳方法を、プリペイド方式・ポストペイ方式・デビット方式に分けて説明します。

プリペイド方式の場合の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
旅費交通費 3,000円 預け金 3,000円 電子マネーで乗車料金を支払い

すでにチャージしている分から支払うため、貸方に「預け金」3,000円、乗車料金が発生しているため借方に「旅費交通費」を仕訳しています。

続いて、ポストペイ方式の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
旅費交通費 3,000円 未払金 3,000円 電子マネーで乗車料金を支払い

乗車した段階で、代金は未払いのため貸方に「未払金」3千円を仕訳しています。また、支払日が到来したときの仕訳例が、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
未払金 3,000円 預金 3,000円 電子マネー利用分

預金から引き落とされるため、貸方に「預金」3千円を仕訳しています。

最後に、デビット方式の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
旅費交通費 3,000円 預金 3,000円 電子マネーで乗車料金を支払い

基本的に即日引き落としになるため、貸方に「預金」3千円を仕訳しています。

参考)仮払金とは~仕訳、会計処理の注意点、立替金との違いを解説~

参考)前払費用とは何かわかりやすく解説!長期前払費用との違いや仕訳も紹介

参考)未払金の仕訳~購入したときと支払ったとき~

電子マネーで売上を計上したらどうする?

企業は、経費処理だけでなく、電子マネーで売上を計上するケースも検討しなければなりません。企業が電子マネーを導入するメリットや、電子マネーによる売上の仕訳方法を解説します。

企業が電子マネーを導入するメリット

業務効率化につながる点が、企業が電子マネーを導入するメリットです。電子マネーを導入することで現金管理の手間を軽減し、レジ締めの作業に取られる時間も削減できます。

また、セキュリティ面のコストを削減できる点もメリットです。現金を抱えないため、売上金額を盗まれる不安を解消できます。

さらに、現金を持たず電子マネー中心で普段生活している顧客層も、新たに獲得できるでしょう。

電子マネーによる売上の仕訳方法

2千円の商品に対し、顧客が電子マネーで決済した場合の売上の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
売掛金 2,000円 売上 2,000円 2023年7月31日売上

貸方に「売上」として2千円仕訳しています。また、まだ金銭を受け取っていないため、借方に記載するのは「売掛金」2千円です。

後日自社の口座に売上代金が入金になった際、以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
預金 2,000円 売掛金 2,000円 電子マネー決済2023年7月分

借方に入金になった分2千円を「預金」として仕訳しています。

電子マネー仕訳まとめ

電子マネーでチャージした場合や、経費を決済した場合は、仕訳が必要です。仕訳方法は、電子マネーの決済方式によって異なります。

たとえば、プリペイド方式のチャージには「預け金」、ポストペイ方式の利用時には「未払金」の勘定科目を使用することがポイントです。電子マネーの特徴や仕訳方法を理解し、業務効率化を心がけましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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