建設業会計の特殊な勘定科目、仕訳のポイントを解説

建設業

一般的な会計は、1年間で計算した業績を投資家等に対し提示します。しかし、建設業は着工から引渡しまで1年以上かかることが多いため、収益が発生しない期間が決算を跨ぐことがよく起こります。収支のバランスを管理するためにも、1年間で区切る一般会計と異なる方法で会計をしなければなりません。この会計を「建設業会計」と呼びます。

建設業会計で使われる勘定科目は一般会計の勘定科目とは異なり、「建設業法施行規則」という法律で定められた勘定科目を使用しなければなりません。そのため、建設業経理士といった資格があるほど、建設業会計の仕訳には特殊な知識が求められます。※2022年1月6日に更新

建設業会計と一般会計の対応表

前述の通り、建設業会計では一般会計とは異なる勘定科目で仕訳をします。建設業会計と一般会計の対応表は下記の通りです。

  • 貸借対照表

    一般会計 建設業会計
    売掛金 完成工事未収入金
    仕掛品 未成工事支出金
    買掛金 工事未払金
    前受金 未成工事受入金
  • 損益計算書

    一般会計 建設業会計
    売上高 完成工事高
    売上原価 完成工事原価
    売上総利益 完成工事総利益

なお、それぞれの勘定科目の意味などの詳細については後ほど解説します。

建設業会計の勘定科目と仕訳のポイント

一般会計と建設業会計の勘定科目の対応を表でご紹介しました。ここからは、建設業会計で使われる勘定科目の意味や、仕訳が必要な理由、仕訳の例をそれぞれご紹介します。

完成工事未収入金とは

「売掛金」にあたる「完成工事未収入金」とは、請負代金の未収額のことで、工事自体は完了しているものの資金が未回収である場合に用いる勘定科目です。入金が翌期以降になる場合に使用します。

完成工事未収入金の仕訳のポイント

工事が完了して引渡し後、まず完成工事高(売上高)に計上します。完成工事未収入金は、前述の通り翌期に代金が入金される場合に使用するため、仕訳例は下記の通りになります。

例)請負代金2,000,000円の工事について、顧客へ引き渡しが完了し、翌期に顧客より代金が振り込まれた。

  • 引渡し時の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    完成工事未収入金 2,000,000 完成工事高 2,000,000
  • 入金時(翌期)の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    現金預金 2,000,000 完成工事未収入金 2,000,000

未成工事支出金とは

「仕掛品」にあたる「未成工事支出金」とは、その名の通り未完成の工事現場で先行して発生した費用を示す勘定科目です。
未成工事支出金の仕訳をする目的は、売上は翌期で計上される工事で、先行して発生した費用を経費で計上してしまうと、未成工事支出金にあたる経費のみが当期に計上されてしまいます。すると、この工事に関する利益は、今期はマイナス、翌期がプラスになってしまい、売上と経費との対応関係が崩れてしまいます。そのため、決算時点では「未成工事支出金」という形で一旦計上します。

未成工事支出金の仕訳のポイント

未成工事支出金は、翌期に引き渡す工事に関わる支出のうち、今期に経費が発生した時に使用します。
具体的な仕訳例は下記の通りです。

例)翌期に完成及び引き渡し予定の工事について、材料費10万円を現金で支払った。翌期に工事が完了したため経費を計上した。

  • 今期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    未成工事支出金 100,000 現金 100,000
  • 翌期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    材料費 100,000 未成工事支出金 100,000

工事未払金とは

「買掛金」にあたる「工事未払金」とは工事費の未払額のことで、すでに工事は終えたものの、まだ費用の支払が済んでいない場合に利用する勘定科目です。なお、「工事未払金」と「未払金」は異なります。工事未払金は、材料費や労務費、外注費など、工事に直接要した費用の未払額を指します。一方で未払金は、販売費及び一般管理費の支払など、直接工事に要した費用以外の未払額を指します。工事未払金と未払金は混同されやすいため、勘定科目の使い分けには注意しましょう。

工事未払金の仕訳のポイント

工事未払金は、決算時点で工事に直接要した費用が未払の場合に使用します。実際に例を挙げて仕分けをしてみましょう。

例)工事に必要な材料費30万円を購入し、全額を掛けとした。その後、以前工事未払金として計上した材料費30万円を当座預金から支払った。

  • 購入時の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    材料費 300,000 工事未払金 300,000
  • 支払時の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    工事未払金 300,000 当座預金 300,000

未成工事受入金とは

「前受金」にあたる「未成工事受入金」とは工事の完成前の請負代金のことで、工事の完成または引渡し前に請負代金の一部を発注者から受領した場合に使用する勘定科目です。

未成工事受入金の仕訳のポイント

未成工事受入金は、当期に手付金または中間金として請求代金の一部を受け取ったが、翌期に完成して引渡す場合に使います。翌期に完成または引渡す工事でなければ、未成工事受入金として計上できません。
具体的な仕訳例は下記の通りです。

例)翌期完成予定の請負代金2,000,000円の工事について、今期に400,000円の手付金を受け取った。翌期に工事が完成して引渡した。

  • 当期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    現金 400,000 未成工事受入金 400,000
  • 翌期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    完成工事未収入金 1,600,000 完成工事高 2,000,000
    未成工事受入金 400,000

完成工事高とは

「売上高」にあたる「完成工事高」とは建設工事による売上高のことで、工事が完了し引渡した際に得られる収益を示す勘定科目です。

完成工事高の仕訳のポイント

建設業では、収益・原価の認識基準が工事完成基準か、あるいは工事進行基準かにより変わります。どちらの基準を採用するかにより、収益を計上するタイミングや金額が異なります。

工事完成基準では、工事完成時の会計期に、請負金額を一括して「完成工事高」として計上し、工事が完成するまでに発生した工事原価は「未成工事支出金」として計上します。

一方で工事進行基準では、工事が完成していなくても、各会計期に工事の進捗度合いに応じて「完成工事高」として計上します。収益として計上する金額は、請負金額に工事原価の発生状況より算定した進捗率を乗じて算定します。 それぞれの基準の仕訳例を紹介します。

  • 工事完成基準の仕訳

    例)請負代金1,000,000円の工事が完成した。

    借方 金額 貸方 金額
    完成工事未収入金 1,000,000 完成工事高 1,000,000
  • 工事進行基準の仕訳

    例)翌期に完成予定の請負代金1,000,000円の工事について、見積総工事原価が800,000円、当期に計上する未成工事出金が200,000円である。工事は翌期に完成した。

    当期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    完成工事未収入金 250,000 完成工事高 250,000

    まず、見積総工事原価が800,000円と、当期の未成工事出金が200,000円から、工事進捗率が25%であることが算出できます。
    次に、工事請負額(1,000,000円)に、工事進捗率(25%)を乗じることで、当期の収益は250,000円と算出できます。

    翌期の仕訳

    借方 金額 貸方 金額
    完成工事未収入金 750,000 完成工事高 750,000

    総請負代金(1,000,000円)から、前期までに計上した完成工事高(250,000円)を差し引いた金額(750,000円)を計上します。

工事完成原価とは

「売上原価」にあたる「完成工事原価」とは工事の原価のことで、完成工事高に計上される工事の原価を示す勘定科目です。材料費、労務費、外注費、経費が含まれます。完成工事原価を計上することで、完成工事の純利益を明確にできます。

完成工事総利益とは

「売上総利益」にあたる「完成工事総利益」とは、完成工事高から完成工事原価を差し引いた際に残った利益を示す勘定科目です。「粗利益」と呼ばれることもあり、工事施工による活動の成果を明確にできる勘定科目です。

工事にかかる原価の仕訳

完成工事原価は前述の通り、材料費、労務費、外注費、経費の4種の原価から構成されます。それぞれについて、仕訳例とともに詳しく解説します。

  • 完成工事原価の4要素①材料費の仕訳

    材料費とは、工事に使用した材料の仕入金額の合計額です。

    例)工事で使用する材料4,000,000円を仕入れ、代金は掛けとした。

    借方 金額 貸方 金額
    材料費 4,000,000 工事未払金 4,000,000
  • 完成工事原価の4要素②労務費の仕訳

    労務費とは、工事現場の作業員に支払う給料や賃金、手当です。アルバイトや正社員などの雇用形態は関係なく、作業員に支払われる費用は全て労務費として計上します。

    例)工事現場の作業員に給与2,500,000円を現金で支払った

    借方 金額 貸方 金額
    労務費 2,500,000 現金預金 2,500,000
  • 完成工事原価の4要素③外注費の仕訳

    外注費とは、他社に工事を外注した際に発生した費用です。ただし、外注費として計上するのは、材料や道具を全て他社が用意した場合のみです。材料の一部のみを他社が用意したした場合や、人員不足により他社に応援を依頼した場合などは、外注費に該当しません。

    例)外注費5,000,000円で工事の一部を下請け業者に依頼した。

    借方 金額 貸方 金額
    外注費 5,000,000 工事未払金 5,000,000
  • 完成工事原価の4要素④経費の仕訳

    上記の材料費、労務費、外注費に含まれない原価は、全て経費に該当します。例えば、工事にかかった光熱費、保険料、警備にかかった費用などです。

    例)工事で発生した水道光熱費等5,000,000円を現金で支払った

    借方 金額 貸方 金額
    水道光熱費 5,000,000 現金預金 5,000,000

建設業会計の引当金

建設業会計には「引当金」という勘定科目があり、「完成工事補償引当金」「工事損失引当金」「環境対策引当金」の3種類に分けられます。

完成工事補償引当金とは、完成引渡しをした工事に瑕疵があった場合に発生する費用を計上する引当金です。引渡したものに対して責任を負うために計上します。

工事損失引当金とは、受注した工事に赤字が発生する可能性がある場合に計上する引当金です。金額を合理的に見積もることができ、かつ発生の可能性が高い場合にのみ計上できます。

環境対策引当金とは、環境対策に関する支出に備える引当金です。ポリ塩化ビフェニルの処分やアスベストの撤去などの費用をあらかじめ見積って計上します。

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