現金出納帳とは何か~作成メリットと記載項目ついて解説します~

2022.03.31

現金出納帳

現金出納帳とは、日々の現金の出入りを管理する帳簿です。現金出納帳は実際の現金残高と帳簿上の残高が合っているか確認するために使用します。そのため、ただ取引があった金額のみを記入するだけではなく、現金の出入りがあった内容とその後の現金残高を記入しなければなりません。今回は、現金出納帳を作成するメリットと必要性・注意点などを詳しく解説します。

現金出納帳を作成するメリットと必要性

現金出納帳はなぜ作成しなければならないのでしょうか。ここからは現金出納帳の必要性を、作成するメリットと共にご紹介します。

現金の残高を確認できる

現金出納帳の大きなメリットは、現金の残高を確認しやすい点です。現金出納帳には、前述の通り現金の残高も記載します。記録とともに現金の残高が確認できるため、「思っていたより現金が少ない」という事態を防げます。

お金の流れを確認できる

現金出納帳は、現金の出入りの内容も記録するため、現金の流れを確認できます。現金による支払いや入金をしっかりと記録しておかないと、いつ誰にどれだけ支払ったか、どういう理由でどれだけの入金があったのかが把握できません。このような事態を避けるためにも現金出納帳に記録する必要があります。また、お金の流れを把握できれば、どこに無駄なコストがかかってしまっているか明らかになるため、経営状況の改善にも効果が期待できます。

不正防止につながる

現金出納帳は、不正防止のためにも作成が必要です。なぜなら、現金出納帳に記録しておくことで、現金出納帳に記載している金額と、実際にある金額の差異に気づきやすくなり、社内の横領にいち早く気付けるためです。現金出納帳と実際の残高を毎日決まった時間に確認するようにすれば、誤差を速やかに発見でき、誤差が生じた原因を追跡する体制を整えられます。これは、社内の横領防止につながります。

青色申告の際、作成が必要になる

青色確定申告をする際には、現金出納帳の作成が必要です。なぜなら、青色確定申告で控除を受けるためには、現金出納帳を含めた他の主要簿の作成が義務化されているためです。万が一、現金出納帳を始めとする義務化された主要簿を作成せずに青色確定申告をした場合には、55万円の控除が受けられなくなるだけではなく、税金を追加で納めなければならない可能性が生じます。青色確定申告による控除を受けたい場合には、必ず現金出納帳を作成しましょう。

現金出納帳と他の出納帳との違い

出納帳には複数の種類があり、中には現金出納帳と似た出納帳もあります。特に現金出納帳と間違えやすい帳簿が、小口現金出納帳と預金出納帳です。ここからは、現金出納帳と小口現金出納帳・預金出納帳の違いを、それぞれ詳しく解説します。

小口現金出納帳と現金出納帳の違い

現金出納帳と小口現金出納帳は名前も似ていますが、内容も似ているためよく混同されます。しかし、小口現金出納帳は、消耗品の購入や出張費用・交通費などの精算時に使う小口現金を管理する帳簿です。小口現金出納帳は、複数の部署に分かれて小口現金がある場合に限り作成します。なぜなら、複数の部署の小口現金を管理部門のみで管理すると効率が悪く、管理も煩雑になるためです。各部署が小口現金出納帳を持つことで、効率良くかつ正確に管理できます。このように、日々の現金の出入りを記録する現金出納帳に対し、小口現金を管理する帳簿が小口現金出納帳です。

預金出納帳と現金出納帳の違い

預金出納帳とは、その名の通り預金を管理する出納帳です。管理するお金が「現金」か「預金」かという点に大きな違いがあります。ただし、どちらも内容は似ており、預金出納帳は銀行口座の出入りを内容とともに記録して管理します。

現金出納帳に記載すべきこと

現金出納帳とは何かについて確認しました。先ほどご紹介した通り、現金出納帳には現金の出入りを内容とともに記録します。ここからは、現金出納帳に記録すべき項目を具体的にご紹介します。

お金の流れを確認できる|日付

まずは、お金の流れを確認するために日付を記載します。日付欄には、現金の入金または出金があった日付を記入しましょう。もし、同じ日に別の入金や出金があった場合には、別々の欄に記載してください。なお、お金の流れを確認しやすくするために、日付順に記載する必要があります。

現金の内容がひと目で分かる|勘定科目

現金の内容が一目で分かるように、勘定科目を用いて内容の記入を統一化します。現金出納帳で良く使われる勘定科目と、勘定科目の振り分けは下記の表の通りです。

勘定科目 概要
売上高 商品の販売やサービスの提供時に受け取る代金
雑収入 本業(商品やサービスの売上)以外に関連して受け取ったお金
仕入 販売目的で仕入れた商品や原材料の代金
福利厚生費 企業が従業員のために提供する給与以外(社員旅行や従業員の慶弔見舞金など)
消耗品費 業務に必要な備品や消耗品のうち、使用可能期間が1年未満のものや取得金額が10万円未満のものに関する費用
車両費 営業活動に使用している車両に関する費用
雑費 少額の支出など勘定科目を個別に設定する必要のない支出

お金の詳細を確認できる|摘要

「摘要」欄には、現金が収入または支出した理由を具体的に記載します。例えば、ボールペンを購入した場合には、科目欄に「消耗品費」、摘要欄に「ボールペン購入」と記載します。また、お金の出入り口についても記載が必要です。お金の出入り口については、「○○銀行へ入金」や「□□銀行より出金」と記載してください。摘要欄を見れば、一目でお金の詳細が確認できます。

現金の残高を確認できる|差引残高

「差引残高」とは、支出と収入を差し引いた金額です。差引残高には複数の算出方法がありますが、日次で差引残高を求める場合には下記の計算式で算出します。差引残高=前日の差引残高+当日の収入金額-当日の支出金額また、月次や年次で算出する場合の計算式は下記の通りです。差引残高(月)=前月の繰越金+月の収入合計-月の支出合計差引残高(年度)=前年の繰越金+年度の収入合計-年度の支出合計上の計算式からも分かる通り、月次や年次の差引残高を算出する場合には、あらかじめ繰越金、月または年度の収入合計と支出合計を算出しておかなければなりません。

現金出納帳の書き方

現金出納帳に記載する項目を確認しました。ここからは、例を挙げて具体的に現金出納帳の作成手順をご紹介します。まず、現金出納帳の作成例は下記の通りです。

日付 勘定科目 摘要 入金額 出金額 残高
4/1 前月繰越 100,000 100,000
5 売掛金 〇〇社より回収 50,000 100,000
8 消耗品費 事務用備品(PC)購入 60,000 90,000
10 水道光熱費 □□電気への電気代 5,000 85,000
20 旅費交通費 役員Aへ飛行機代支給 20,000 65,000
27 普通預金 預金より現金補充 50,000 115,000
合計 200,000 85,000
次月繰越 115,000
200,000 200,000

まず、日付欄には入金または出金があった日を記載します。5日以降の日付は、「4/1」の時点で4月の現金出納帳であるとわかるため、「4月」は省略して構いません。勘定科目の欄には、現金の相手勘定科目を記載します。例えば、4月5日の売掛金50,000円を現金で回収した場合の仕分けは下記の通りです。

借方 貸方
現金 50,000 売掛金 50,000

このことから、4月5日の現金の相手勘定科目は売掛金と判断できます。

次に、摘要欄に取引の内容を記載します。特にルールはないため、見返した時に内容が理解できるように記載しましょう。次に、入金があった場合には「入金額」欄に、出金があった場合には「出金額」欄にそれぞれ金額を記載します。この際、必ず消費税込みで記載してください。

次に、残高欄に取引直前の残高に入出金を加減算した金額を記載します。例えば、4月5日を見ると、売掛金50,000円を回収しているため、回収前の残高100,000円に50,000円を加算して150,000円と記載します。

期末を迎えたら、そのページの現金出納帳の記録を締めます。なお、例では月ごとに現金出納帳を締めており、月末を迎えた時点で摘要欄に「合計」と記載しています。さらに、その月の入金額の合計と出金額の合計をそれぞれの欄に記載します。そして、摘要欄の「合計」の下に「次月繰越」と記載し、締める直前の残高を出金額の欄に記載します。上の例では、締める直前の残高は115,000円のため、「次月繰越」の出金額の欄に115,000円と記載しました。

最後に、「合計」と「次月繰越」の合計を、入金額と出金額それぞれの欄に記載します。上の例では、入金額はそのまま200,000円、出金額は「85,000+115,000」で200,000円となります。この際、入金額と出金額に差異が生じた場合には、現金出納帳のどこかに計算ミスがあるため、原因を解明しなければなりません。

このように、現金出納帳では現金の出入りを毎回記録し、期末に合計額を算出して次期に繰り越します。

現金出納帳に決まった様式はない

帳簿によっては、記載手順や形式に明確なルールが設けられていますが、現金出納帳には決まった様式はありません。そのため、必要な項目をしっかり記載し、ルールを守っていれば会計ソフトやエクセルなどで自由に作成できます。最近では多くの企業がPCで記録していますが、手書きで作成しても問題ありません。ただし、証拠能力を確実にするために、手書きの際は消せないボールペンを使用してください。

現金出納帳を作成するうえで注意すべきこと

前述の通り、現金出納帳には決まった様式はありませんが、正確に記録するための注意点があります。最後に、現金出納帳の作成時に注意すべき点を3点ご紹介します。

勘定科目を間違えない

現金出納帳に使用する勘定科目はさまざまな種類があり、勘定科目を間違えないように注意しましょう。勘定科目を間違えてしまうと、経費の計算に影響を及ぼします。そのため、特に必要経費に関する勘定科目のミスにご注意ください。

項目は日付順に記載する

現金出納帳は、日付順に記載しなければなりません。会計ソフトであれば、過去の領収書なども簡単に並べ替えられます。しかし、手書きで記入する場合には並べ替えられません。このような場合には、日付は領収書を見つけた日を記載し、摘要に領収書の日付を記入してください。

残高がマイナスにならないようにする

現金出納帳を正しく管理していれば、残高がマイナスになることはありません。しかし、まれに残高がマイナスになる場合があります。このような場合には、まず原因を追求してください。原因が明確にならなかった場合には、「現金過不足」という勘定科目を使って処理し、原因が明確になった時点で取り消します。ただし、現金出納帳の残高がマイナスにならないように、正確に管理しましょう。

現金出納帳まとめ

現金出納帳とは何か、作成方法、作成時の注意点などをご紹介しました。さまざまな帳簿のうち、現金の入出金を管理する現金出納帳。現金出納帳を作成すれば、お金の流れを確認でき、青色申告で控除を受けられる、横領予防など、さまざまなメリットがあります。現金出納帳の作成方法をマスターし、現金を常に把握できるようにしましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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