広告宣伝費とはどんな勘定科目?販売促進費との違いや仕訳例を解説

更新日:2024年11月13日

広告宣伝費とは

広告宣伝費とは、商品・サービスの販売を促すために広告を掲載したり、宣伝したりする際にかかる費用のことです。また、広告宣伝に関する費用を計上するにあたって用いる勘定科目のことを指す場合もあります。広告宣伝費は販売促進費や交際費などと混同しやすいため、使う際には注意が必要です。本記事では、広告宣伝費の概要や仕訳例について詳しく解説します。

目次

広告宣伝費とは

広告宣伝費(広告費)とは、主に自社の商品やサービスを販売するにあたって不特定多数の人に向けて広告を掲載したり、宣伝したりする際にかかる費用のことです。

また、「広告宣伝費」は広告宣伝にかかる経費を計上する際に用いられる勘定科目のひとつでもあります。勘定科目とは、会社がどのような取引をしたのかをわかりやすく帳簿にまとめるために使う見出しのことです。

なお、従来の広告費の支出先は以下のメディア(オールドメディア)が中心でした。

  • 新聞
  • 雑誌
  • ラジオ
  • テレビ

しかし、近年はSNSやWebメディアをはじめとするニューメディアも、広告費の支出先として重要な位置を占めるようになりつつあります。

広告宣伝費に該当する経費

広告宣伝費に該当する経費として、主に以下が挙げられます。

  • 不特定多数を対象とする広告掲載費用
  • 会社広報に使う費用
  • セールスプロモーションにかける費用

それぞれ確認していきましょう。

不特定多数を対象とする広告掲載費用

広告を掲載する際にかかる費用は、原則として広告宣伝費に該当します。「広告」とは、不特定多数の人に向けて商品やサービスなどを知らせることです。

オールドメディアへの広告掲載にかかった費用は、広告宣伝費にあたります。具体例は、テレビ局と取引のある広告会社とCM出稿にかかわる契約を締結し、300万円を支払うケースです。

同様に、ニューメディアへの広告掲載も広告宣伝費に該当します。具体例は、検索をした際に表示される広告(リスティング広告)に50万円支出するケース、動画配信サービス内で短時間の動画広告を掲載するために30万円支払うケースなどです。

そのほか、屋上広告や独立広告塔といった屋外広告物や、駅広告・電車広告・タクシー広告といった交通広告などに掲載する場合の費用も、広告宣伝費にあたります。

会社広報に使う費用

会社の広報に使う費用も、広告宣伝費にあたります。一般的に、広報とは情報の発信を通じて消費者や取引先・メディア・株主などとコミュニケーションをとることです。

たとえば、会社の事業内容を記載したパンフレット制作にあたって50万円を支出した場合には、広告宣伝費として計上します。また、自社のことを知ってもらうためにWebサイトを制作したり、公式SNSアカウントを運営したりする際にかかる費用も、広告宣伝費の対象です。

さらに、求人広告を制作する際や情報誌に掲載する際にかかる費用も広告宣伝費として計上します。そのほか、会社の決算について公に告知する決算公告を作成する際にかかる費用も、基本的に広告宣伝費の対象です。

セールスプロモーションにかける費用

セールスプロモーションにかける費用も、広告宣伝費に該当します。セールスプロモーションとは、キャンペーン実施や試作品の提供などを通して消費者の購買心理を刺激する活動のことです。

たとえば、消費者に見てもらうための商品カタログを制作するにあたって10万円支出した場合は、広告宣伝費として計上します。また、得意先に提供するために50万円かけて試作品・サンプルを制作した場合も、広告宣伝費の対象です。

そのほかにも、国税庁では広告宣伝費の具体例として以下のような費用を挙げています。

  • 製造業者・卸売業者が抽選で一般消費者に金品を交付したり、旅行・観劇などに招待したりする際にかかる費用
  • 製造業者・卸売業者が商品に金品引換券を付けて、一般消費者に金品を交付する際にかかる費用
  • 製造業者・販売業者が事前に特定の商品を購入した一般消費者を旅行や観劇などに招待することを広告宣伝したうえで、実際に購入した人を招待するための費用
  • 小売業者が商品購入者に対して景品を交付するための費用
  • 工場見学者に製品の試飲や試食をさせるための費用
  • 製造業者や卸売業者が、自社製品に関するモニターやアンケートを一般消費者に依頼し、謝礼として金品を交付する際の費用

広告宣伝費に該当するか見分ける方法については、後ほど詳しく解説します。

参考)国税庁「No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分」

広告宣伝費に該当しない経費

基本的に、以下の経費は広告宣伝費に該当しません。

  • 取引先に渡す贈答品にかかる費用
  • 寄付金や協賛金
  • 商標登録にかかる費用

それぞれ解説します。

取引先に渡す贈答品にかかる費用

取引先に渡す贈答品にかかる費用は、広告宣伝費に該当しません。なぜなら、交際費の対象であるためです。

宣伝目的で旅行・観劇に招待する場合であっても、相手が一般消費者ではなく得意先であれば交際費として計上します。また、多数の相手を対象にする場合であっても、特定の業者が一部の事業者を対象にする場合は、広告宣伝費として計上できないため注意が必要です。

なお、交際費の概要については後ほど詳しく解説します。

寄付金や協賛金

寄付金(寄附金)や協賛金を支出する場合も、基本的に広告宣伝費としては計上できません。寄付金とは、国や地方公共団体などに業務の遂行に直接関係しない範囲で金品などを贈与する際に支出する金額、協賛金は特定の事業の趣旨に賛同して支援することを目的に支出する金額を指します。

商品やサービスの購入を促すなど、自社にとって何かを得ることを目的としていない点が、広告宣伝費になじまない主な理由です。ただし、宣伝効果を見込んで広告宣伝の趣旨で協賛金を支出する場合は、広告宣伝費に該当することがあります。

なお、法人が寄付金(寄附金)を支出する場合、原則として一定額を超える部分の額は損金に算入できません。損金に算入できる限度額を求める方法は、寄付金の種類や寄付先などによっても異なります。

参考)国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」

商標登録にかかる費用

商標登録にかかる費用も、広告宣伝費には該当しません。

商標登録とは、自社の取り扱う商品やサービスを他社と区別することを目的に使用する「商標」を、独占的に使用するために特許庁へ出願して登録することです。商標登録(商標権の取得)には、登録出願料や設定登録料がかかります。登録後も、商標権を維持するためには更新登録料を支払わなければなりません。

商標登録に関する費用を広告宣伝費として計上できないのは、登録した商標が無形固定資産で減価償却資産に該当するためです。商標登録した場合は、毎期商標登録にかかった費用を減価償却していかなければなりません。

参考)政府広報オンライン「知っておかなきゃ、商標のこと!商標を分かりやすく解説!」

広告宣伝費に該当するか見分ける方法

広告宣伝費に該当するか見分けるには、「不特定多数に向けているか」や「宣伝目的であるか」を確認することがポイントです。たとえば、自社の商品を販売するために雑誌などのメディアに掲載するのであれば、不特定多数向けで宣伝目的であることが明らかなため、広告宣伝費と判断できるでしょう。

また、一般消費者を対象にしていることもポイントです。以下のケースでは、多数に向けて宣伝する目的であっても、広告宣伝費には該当しません。

  • 医薬品製造や販売を営む業者が医師・病院を対象にするケース
  • 化粧品製造や販売を営む業者が美容業者・理容業者を対象にするケース
  • 建築材料の製造や販売を営む業者が建築業者(例:大工や左官)を対象にするケース
  • 農業用資材の製造や販売を営む業者が農家を対象にするケース
  • 機械・工具の製造や販売を営む業者が鉄工業者を対象にするケース

業種や広告先次第で、広告宣伝費にあたらない点に注意しましょう。

広告宣伝費の仕訳例

ここから、自社ホームページを作成した場合・新聞広告に掲載した場合・不特定多数向けのプレゼントを購入した場合・看板を設置した場合に分けて、広告宣伝費の仕訳の例を紹介します。

自社ホームページを作成した場合

自社製品の紹介をするためにホームページを作成し、普通預金から出金してホームページ制作会社に15万円支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
広告宣伝費 150,000円 普通預金 150,000円 ホームページ制作費(株式会社A社)

ホームページ制作費を広告宣伝費として計上するためには、1年以内に更新していることが求められます。また、更新にかかった費用も広告宣伝費の対象です。

なお、ホームページが単なる紹介サイトではなく、ソフトウェアとしての機能も有する高機能のサイトである場合、無形固定資産として計上しなければなりません。無形固定資産に該当する場合は、減価償却も必要です。

新聞広告に掲載した場合

新聞広告に掲載するにあたって、普通預金から50万円を広告会社に支払う場合の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 備考
広告宣伝費 500,000円 普通預金 500,000円 新聞広告掲載費(株式会社B社)

なお、新聞に協賛広告を掲載する場合もあります。協賛広告とは、会社がイベントに賛同して協賛金を出資したことにより、広告に掲載されることです。協賛広告の場合、広告宣伝費に該当しない可能性があるため注意しましょう。

不特定多数向けのプレゼントを購入した場合

自社の商品を購入した不特定多数の一般消費者に対し、対象商品のブランド名が印字されたボールペン(単価150円)を配布する場合の仕訳も考えてみましょう。ボールペンを400本用意し、普通預金から業者に6万円振り込むケースにおける仕訳例は、以下のとおりです。

借方 貸方 備考
広告宣伝費 60,000円 普通預金 60,000円 〇〇キャンペーン用ボールペン400本購入(株式会社C社)

なお、宣伝目的でプレゼントを用意する場合でも、特定の業種で一部の事業者に対するものは広告宣伝費の対象外のため注意しましょう。

看板を設置した場合

会社近くに看板を1か月間設置するため、普通預金から5万円出金して業者に振り込んだ場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
広告宣伝費 50,000円 普通預金 50,000円 ◯月1日〜◯月31日看板設置料(株式会社D社)

なお、金額次第で看板を設置する際にかかった費用を固定資産として計上しなければならないことがあります。また、設置期間によって(長期)前払費用としての処理が必要なケースもあるため、注意しましょう。

広告宣伝費と混同しやすい勘定科目

広告宣伝費と混同しやすい勘定科目は、主に以下のとおりです。

  • 販売促進費
  • 交際費
  • 外注費

上記の勘定科目と、広告宣伝費の違いについて解説します。

販売促進費との違い

広告宣伝費と販売促進費の主な違いとして、対象とする相手が挙げられます。

販売促進費とは、商品やサービスの販売を促すために支出した費用に対して用いる勘定科目です。どちらも販売促進に関連する勘定科目ですが、広告宣伝費は不特定多数向けに支出する費用に使われるのに対し、販売促進費は主に商品を購入した顧客や購入可能性のある顧客向けの費用である点が異なります。

また、広告媒体(メディア)を使う機会が少ない点も、販売促進費が広告宣伝費と異なる点です。それに対し、広告宣伝費ではテレビ・新聞やインターネットなど、メディア関連への支出が多く占めます。

なお、広告宣伝費と販売促進費の区分が曖昧な場面も少なくありません。従業員が困惑しないよう、社内規定などにルールを定めておくとよいでしょう。

交際費との違い

広告宣伝費と交際費の違いは、「不特定多数向けの宣伝的効果を意図した費用であるか」がポイントです。

(接待)交際費とは、取引先や事業の関係者などとのコミュニケーションの一環で、接待したり贈答品を渡したりする際にかかる費用に用いる勘定科目を指します。そのため、交際費は不特定多数向けの費用に用いる勘定科目ではありません。一方、宣伝効果を目的として贈答品を渡す場合でも、不特定多数向けであれば広告宣伝費に該当します。

なお、交際費に該当する場合、原則として全額が損金不算入です。ただし、資本金や出資金の額によっては、一定の条件を満たす部分に限り損金として算入できます。

参考)国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

外注費との違い

広告宣伝費と外注費との主な違いとして、「制作に直接関わっているか」が挙げられます。

外注費とは、会社の業務の一部を外部の事業者に発注した際に発生する費用に用いる勘定科目のことです。たとえば、広告掲載の原稿をすべて自社以外の広告会社に任せる場合にかかる費用は、外注費に該当します。それに対し、原稿に記載する文章の概要を自社で考えたり、デザインを指定したりしたうえで広告会社に依頼する際にかかった費用については、広告宣伝費として計上することが一般的です。

広告宣伝関連の費用を計上する際に気をつけること

広告宣伝にかかる費用を計上する際は、以下の点に気をつけましょう。

  • 計上のタイミングを間違えない
  • 減価償却が必要な場合がある
  • 変動費・固定費を意識する
  • 前払費用に該当する場合がある
  • 消費税の課税対象になる

各注意点について、詳しく解説します。

計上のタイミングを間違えない

広告宣伝関連の費用を計上する際は、タイミングを間違えないようにしましょう。

経費を計上するのは、注文した商品が納入されたときやサービスを受けたときのように、取引が発生した時点です。契約した段階や金額を支払ったタイミングではありません。

そのため、広告宣伝費を計上するタイミングは、広告掲載の契約を締結したときや広告先に振込をしたときではなく、広告宣伝を実施したときです。

減価償却が必要な場合がある

広告宣伝にかかった費用について、減価償却しなければならないことがある点にも注意しましょう。減価償却とは、設備投資などで発生した費用を一定期間に分けて処理することです。

広告宣伝費として計上できる場合、減価償却する必要はありません。しかし、商標登録にかかる費用は広告宣伝費ではなく無形固定資産として計上しなければならないため、原則として耐用年数10年での減価償却が必要です。

また、看板を設置する際の費用が10万円を超える場合も、固定資産として計上して減価償却しなければなりません。

変動費・固定費を意識する

広告宣伝費を計上する際は、変動費と固定費のことも意識しましょう。

変動費は売上の変化によって増減する費用であるのに対し、固定費は売上に左右されず毎回一定額が発生する費用です。自社の見込利益を算出するためには、変動費と固定費を正しく把握しなければなりません。

広告宣伝費は、原則として固定費です。ただし、キャンペーンなどセールスプロモーションに関する費用のように、一部が変動費にあたるケースもあります。

前払費用に該当する場合がある

広告宣伝関連の費用を支出した場合に、広告宣伝費ではなく(長期)前払費用に該当することがある点にも注意しましょう。

前払費用とは、サービスを継続的に受ける契約を締結するにあたって、事前に一括で支払う費用のことです。そのうち、費用が1年以内のものを短期前払費用、1年を超えるものを長期前払費用と呼びます。

広告宣伝のために支払った金額のうち、期内に広告する額については広告宣伝費として計上できるのに対し、翌期にまたがる額については前払費用の対象です。

消費税の課税対象になる

広告宣伝費は、基本的に消費税の課税対象となる点も理解しておきましょう。

取引には、消費税の課税対象のものと課税対象外のものがあります。課税対象外の取引の場合は、消費税の計算にあたって仕入税額控除を適用できません。

国内で適格請求書発行事業者と広告宣伝に関する取引をする場合、課税仕入れに該当するため原則として仕入税額控除を適用できます。一方、海外で広告宣伝に関する費用を支出した場合は、広告宣伝費として計上しても課税対象外のため、仕入税額控除ができません。

参考)国税庁「No.6355 課税売上げと課税仕入れ」

広告宣伝費まとめ

広告宣伝費(広告費)とは、主に自社の商品やサービスを販売するにあたって不特定多数の人に向けて広告を掲載したり、宣伝したりする際にかかる費用に用いる勘定科目です。具体例として、テレビ広告を出稿するケースや、一般消費者を抽選で旅行に招待するケースなどが挙げられます。

不特定多数向けに支出する点が、販売促進費や交際費などの勘定科目と異なる点です。また、契約したタイミングではなく広告宣伝を実施したタイミングで計上する点にも注意しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

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