固定費と変動費の違いとは?

2020.11.19

固定費と変動費の違い

今回は、財務分析の収益性の指標である「損益分岐点」を理解する上で重要な、「固定費」と「変動費」を紹介します。管理会計を実践する上で、費用を分類するときに固定費と変動費とに分ける方法があります。変動費は売上の増減とともに変動する費用で、固定費は変動しない費用です。

固定費と変動費の3つのポイント

  • 固定費(不変費)とは、売上の増減にかかわらず発生する一定額の費用のことで、人件費や減価償却費などが該当する場合が多い
  • 変動費(可変費)とは、売上の増減によって変動する費用のことで、一般的には原材料費や仕入原価などが該当する
  • 費用を変動費と固定費に分類することを「固変分解」という

固定費は必ず発生する費用のこと

固定費(不変費)とは、売上の増減にかかわらず発生する一定額の費用のことです。固定費に該当する具体的な費用には、人件費、地代家賃、水道光熱費、接待交際費、リース料、広告宣伝費、減価償却費などがあります。会社が事業を営むにあたっては、製造・販売などの操業をしていなくても、必ず支払いが発生する費用があります。たとえば、事務所の家賃は毎月必ず発生しますし、設備を使っていなくても減価償却費は発生します。人件費も同様で、従業員を雇っている以上は必ず支払わなければならない費用です。このように、原則として”固定”の金額が発生する費用は固定費とされます。

変動費は売上の増減で変動する費用のこと

変動費(可変費)とは、売上の増減によって変動する費用のことです。一般的に変動費に該当する費用は、原材料費、仕入原価、販売手数料、消耗品費などです。固定費が売上に関係なく一定額発生するのに対し、変動費は売上に比例して増減します。たとえば、1,000個の製品を製造する場合、1,000個分の原材料を調達する必要があり、その分の原価が発生します。このように、原則として金額が”変動”する費用は変動費とされます。変動費は、製造・商品の販売などの企業活動に付随して発生するコストであることから、「活動原価(アクティビティコスト)」とも言われます。

固変分解(原価分解)の方法

費用を固定費と変動費に分類することを、固変分解といいます。費用の中でも、原価を固定費と変動費に分けることを、特に原価分解と呼ぶこともあります。一般的に用いられる方法は、運用が簡単な「勘定科目法(個別費目法)」。厳密さを求めるなら「回帰分析法(最小二乗法)」などがあります。

勘定科目法

勘定科目ごとに固定費と変動費に振り分ける簡単な方法です。便利ではありますが、厳密な固変分解には適していません。固変分解をするにあたり、固定費と変動費の区分に絶対的な基準はないからです。固定費としての性質か、変動費としての性質か、どちらの比重が重いかを見て会社が個別に判断することになります。

回帰分析法

勘定科目法の他に用いられる固変分解の方法に「回帰分析法(最小二乗法)」があります。縦軸に総費用、横軸に売上をとった散布図に、毎月の売上と総費用の点を描きます(12ヶ月分)。その1年分の12個の点を近似曲線で結ぶと、変動費率と固定費を計算でき、y=ax+bという、数学の授業で習った懐かしい公式で表現されます(aが変動費率、bが固定費)。手計算では手間がかかりますが、Excelを使うと簡単です。まずは勘定科目法に挑戦して、実態と合わなければ回帰分析法など他の方法を試してみましょう。

人件費は固定費とは限らない

人件費は一般的には固定費に分類されますが、たとえば、繁忙期だけに採用する派遣社員やアルバイトの給料、また残業手当などは変動費と捉えることもできます。このように、費用のなかには固定費としての側面と変動費としての側面の両方を持っている費用も多いため、勘定科目法での固変分解には限界があることが分かります。

コスト削減は固定費から?

経営上、コスト削減を検討するにあたり、固定費と変動費ではどちらを先に減らすべきでしょうか。優先すべきは固定費の節減です。前述のとおり、固定費は売上の増減に連動しません。固定費を増やしても減らしても、すぐに売上には影響が出ないのです。一方の変動費は、売上と連動します。変動費を削減して売上高も下がってしまっては、コスト削減の効果が薄れてしまいます。まずは、無駄な固定費を減らすのが、コスト削減の王道です。ちなみに固定費削減を優先するのは、家計の節約でも同じ話です。

売上に貢献しない変動費も削減すべき

コスト削減は、まず固定費から。それは間違いありませんが、変動費の中にも固定費的な正確をもつ費用が存在します。そういった費用に該当する変動費であれば、削減しても売上高には影響があまり出ないため安心です。固定費的な性質とは、つまり「売上に影響がない」ということ。一般的には変動費にあたる費目でも、費用対効果が悪く売上増に貢献していないのであれば削減対象です。たとえば、広告宣伝費は変動費ですが、効果のない同じ広告を出稿し続けているのであれば、そのコストは固定費のようなもの。その変動費が売上に貢献しているのかを調べてみましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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