消費税の仕訳~税込経理と税抜経理のメリットとデメリット~

2020.10.21

消費税の仕訳

消費税の課税事業者は、消費税の金額を正しく計算・把握し、仕訳入力などの経理処理をする必要があります。そこで今回は、消費税の経理処理、仕訳の方法を具体例を交えて解説します。

消費税の仕訳~税抜経理と税込経理~

税込経理方式と税抜経理方式で、消費税の仕訳の具体例をみていきましょう。

税込経理方式の具体例

税込経理方式は、期中は消費税額を売上や仕入に含めて処理し、決算時に租税公課として処理します。

A社から商品を66,000円(うち消費税6,000円)で購入(掛買)をした

借方 貸方
仕入 66,000円 買掛金 66,000円

A社から仕入れた商品をB社へ110,000円(うち消費税10,000円)で販売(掛売)をした

借方 貸方
売掛金 110,000円 売上 110,000円

決算時の仕訳:預かった消費税(10,000円)-支払った消費税(6,000円)=4,000円

借方 貸方
租税公課 4,000円 未払消費税 4,000円

税込経理方式では、期末に確定した消費税額を「租税公課」として経費に計上し、消費税が還付となった場合はその金額を「雑収入」として収益に計上します。

税抜経理方式の具体例

税抜経理方式では、期中において仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時等)の勘定科目を用いて、売上や仕入と消費税額を区分して計算します。

A社から商品を66,000円(うち消費税6,000円)で購入(掛買)をした

借方 貸方
仕入 60,000円 買掛金 60,000円
仮払消費税 6,000 - -

A社から仕入れた商品をB社へ110,000円(うち消費税10,000円)で販売(掛売)をした

借方 貸方
売掛金 110,000円 売上 100,000円
- - 仮受消費税 10,000円

決算時の仕訳

借方 貸方
仮受消費税 10,000円 仮払消費税 6,000円
- - 未払消費税 4,000円

税抜経理方式では「仮払消費税」と「仮受消費税」の期末残高を相殺し、差額を「未払消費税」とします。(仮払いの方が多い場合は「未収消費税」になります)

経理処理方法

消費税の会計処理をする場合、免税事業者は税込経理方式を採用しなくてはなりません。課税事業者は税込経理方式と税抜経理方式の2種類から選択でき、どちらの方式を採用するかは事業者の任意となります。

税込経理方式と税抜経理方式

税込経理方式とは、消費税額と地方消費税額を売上高や仕入高等に含めて経理する方法です。免税事業者の場合は、消費税の納税義務はないため税込経理方式を採用することとなります。税込経理方式は、取引の都度ごとに消費税の計算する必要がないというメリットがあります。一方、税抜経理方式とは、消費税額と地方消費税額を売上高や仕入高等に含めないで区分する経理方法です。

原則すべての取引は同一の経理方式を適用しますが、税抜経理方式で処理している場合、固定資産等(棚卸資産、固定資産・繰延資産)または、経費のどちらか一方は税込処理をする混合経理方式も認められています。税抜経理方式では、取引ごとに1円未満の端数処理をするため、取引回数が増えるたびに控除できる仕入れ税額が減る可能性があります。そのため、仕入れの消費税額は税込経理方式での経理処理により端数処理の回数を抑え、控除税額の減少を抑さえる効果があります。

税抜経理と税込経理の比較

それぞれの方式のメリットとデメリットを考えてみます。

税込経理方式のメリット

税込経理方式は、消費税込で仕訳するため処理が簡単です。ただし会計ソフトでは税抜処理も自動計算されるため、最近ではこのメリットは薄れているのが現状でしょう。また、設立初期から方式が統一されるのもメリットです。設立から2期目までは資本金が1,000万円未満の事業者は消費税の免税事業者となります。免税事業者である期間は税込経理方式しか採用できないため、税込経理方式を採用すれば方式を統一でき、前期との比較がしやすくなります。

そして、法人税の節税として機械など購入した際に「特別償却」や「特別税額控除」の特例がありますが、取得価格の計算は税込経理方式の場合は税込価格となります。取得価格が大きいほうが恩恵も大きいため、特別償却がある場合は税込経理方式の方がメリットがあります。

税込経理方式のデメリット

期中の損益が把握しづらいことが挙げられます。税込方式では期末に確定した消費税額を損益に反映させることで最終の利益が確定します。順調に売上げがあるように見えても期末になって消費税が確定し損益に反映してみたらそれほどでもなかったということが起こりえます。最終利益が決定するまで損益が正確にわからないのは大きなデメリットです。

また、法人税では取得した資産の金額に応じて減価償却の特例を設けています(例えば少額減価償却資産は10万円未満で購入した資産、一括償却資産は20万円未満で購入した資産など)。これらの特例を使う場合、例えば10万円未満のものなら購入時に消耗品費として費用処理できますが、税込価格で判定されることで条件をはみ出し、減価償却の特例が受けられない可能性が高くなります。

税抜経理方式のメリット

税抜経理方式では消費税額はすべて「仮受消費税」と「仮払消費税」の科目に集約されるため、期中から正確な数字を把握することが可能です。期末に消費税額によって利益が大きく変わることがないことが最大のメリットです。また法人税の減価償却の特例の判定でも有利です。資産購入金額は税抜経理方式の方が消費税分の取得価格が抑えられ、条件を満たす可能性が高くなります。

税抜経理方式のデメリット

仕訳の際に本体の価格と消費税を分ける手間が生じるため経理処理に手間がかかることがデメリットです。しかし最近は会計ソフトを利用し経理を行っている事業者が増えています。会計ソフトを使っている場合は自動で処理されるためデメリットと考えなくても良いでしょう。そして、法人税を節税できる特別償却などの特例を適用する場合は税抜で計上されるほうが不利となります。

消費税の仕訳まとめ

税抜経理方式は処理が煩雑であるというデメリットがありますが、期中に正しい損益が把握できるという大きなメリットがあります。現在税込経理方式で経理処理をしている会社は、税抜経理方式への変更を検討してみてはいかがでしょうか?

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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