保証金の仕訳~不動産を借りる時に支払う敷金などの会計処理~

更新日:2023年02月07日

保証金の仕訳

企業が事務所や店舗などの不動産を借りる際に家賃や仲介手数料とは別に保証金を支払うことがありますが、この保証金の会計処理はどうすればよいでしょうか?今回は、不動産を借りる際に支払う保証金の会計処理について解説します。

保証金の仕訳

保証金の会計処理方法は、解約時に保証金が返還されるか否かによって異なります。将来返還される契約であれば経費とはせず資産計上します。反対に将来返還されない契約であれば経費で処理しますが、繰延資産となるため支出した時に全額を経費にできません。保証金の仕訳をする際は契約書を確認し、保証金が返還されるかどうかを確認しましょう。

契約時等の仕訳

会計処理は、保証金の返還の有無、返還されない場合の金額によって異なります。

保証金が返還される場合

保証金が将来返還される場合は、契約時に支払った保証金を資産計上し、契約完了時に相殺する流れとなります。例えば、100万円を保証金として支出した場合の仕訳は以下の通りです。借方の保証金は、敷金という勘定科目を使う場合もあります(以下同じ)。

借方 貸方
保証金 1,000,000円 普通預金 1,000,000円

退去の際に原状回復費用を差し引いた金額を返還する契約の場合でも、契約時点ではいくらになるかがわからないため、全額を資産として処理します。

保証金が返還されない場合

賃貸契約を結ぶ時点で、解約精算時に保証金から無条件に一定の費用が差し引かれ、返還されないことが決まっている場合があります。その場合、返還されない金額が20万円未満なら費用として計上し、20万円以上なら繰延資産として計上します。繰延資産は契約が5年以上の場合は5年で均等償却し、5年未満の場合は契約期間で償却します。例えば、返還されない金額が20万円未満(仕訳例では15万円)の場合の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
保証金 850,000円 普通預金 1,000,000円
支払手数料 150,000円

返還されない部分は支払手数料として費用計上します。

保証金が返還されない場合で、金額が20万円以上の場合

返還されない金額が20万以上(仕訳例では25万円)の場合の仕訳は以下の通りです。返還されない部分は長期前払費用として資産処理し、契約期間によって均等償却します。

借方 貸方
保証金 750,000円 普通預金 1,000,000円
長期前払費用 250,000円

賃貸契約の期間が5年以上の場合は5年で均等償却をし、契約期間が5年未満の場合は契約期間に基づいて償却します。

契約期間が5年以上の場合、250,000円÷5年=50,000円を毎年償却します。

借方 貸方
支払手数料 50,000円 長期前払費用 50,000円

契約期間が5年未満の場合は、契約期間に基づいて償却します。例えば、契約期間が2年であれば250,000円÷2年=125,000円を毎年償却します。

借方 貸方
支払手数料 125,000円 長期前払費用 125,000円

解約時の仕訳

保証金の解約時の会計処理は、保証金の返還されない金額が契約時に決まっていた場合と、決まっていなかった場合に分かれます。

返還される金額が決まっていなかった場合

退去の際に原状回復費用が発生し、その分を引かれた金額が戻ってきた場合は、原状回復費用を修繕費(仕訳例では5万円)として計上します。

借方 貸方
現金 950,000円 保証金 1,000,000円
修繕費 50,000円

返還されない金額が決まっていた場合

契約時に返還されない保証金の金額がすでに決まっていた場合は、返還された保証金のみを計上します。返還されない金額は、すでに支払手数料や長期前払費用で処理しているためです。

借方 貸方
現金 950,000円 保証金 950,000円

保証金に消費税は掛かる?

保証金に消費税がかかるかどうかは、保証金が戻ってくるのかどうかで決まります。保証金を支払った際に保証金が返還されると決まっている場合は不課税取引となり、消費税はかかりません。不課税取引とは課税されない取引のことで、対価を得てやることに当たらない寄付や単なる贈与、出資に対する配当などがこれに当たります。返還される保証金の場合は「貸主が預かっているだけ」と考えられるため、不課税取引となります。

逆に、保証金のうち返還されないことが決まっている部分や、解約時に修繕費として支払う原状回復費用は、課税取引となり消費税がかかります。また、契約時に保証金以外で支払う仲介手数料や礼金などにも消費税がかかります。

保証金とは何か

保証金とは、賃料の滞納リスクや入居テナントの過失による損傷の修繕費を担保するために、借主が貸主にあらかじめ支払うお金のことです。敷金や敷引きなどと呼ばれることもありますが、呼び名が異なるだけで同じ性格のものであるため、当記事では敷金や敷引きも含めて保証金として解説します。

保証金はもどってくるのか?

個別の特約条項により返還時期が設定されている場合、保証金は退去した後に原状回復をして精算が終わった時点から「遅滞なく」や「6ヵ月以内に」といった記載時期に合わせて返還されます。退去してすぐに返還されるわけではないので、資金繰りには注意しましょう。

また、保証金は必ずしも全額が戻ってくるわけではありません。事務所の場合は住居とは異なり、解約精算時に無条件に一定の費用が差し引かれることがあります。契約解消時にあわてないためにも、契約書の特約事項を必ず確認しましょう。

受入保証金と差入保証金

当記事では、呼び名を「保証金」に統一していますが、受入保証金、差入保証金と区別する場合もあります。受入保証金は、保証金を受け取る側での呼び方です。一方の差入保証金は、保証金を支払う側での呼び方です。当記事では、差入保証金の会計処理について解説します。

まとめ

事務所や店舗などの不動産を借りる際に支払う保証金は、返還されるかどうかで会計処理が異なります。事務所を借りる状況は頻繁におこるものではないため難しいと思われがちですが、賃貸契約書をしっかりと確認し正しい会計処理をしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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