税務調査とは?対象となりやすい法人・個人の特徴について

更新日:2025年04月06日

税務調査とは

税務調査とは、申告内容の正確性を確認するため、税務署による調査のことです。調査対象は法人・個人を問わず、過去の指摘歴や売上の変動、業績の急激な悪化などが選定基準となります。本記事では、税務調査の種類や対象となりやすい企業の特徴、具体的な調査の流れについて解説します。

目次

税務調査とは?調査が入る時期

税務調査とは、国税庁の管轄下にある組織、たとえば税務署が、納税者が正しく税務申告しているかを確認するための調査のことです。毎年全法人の6%程度が受けるため、10年に1回くるかどうかといった確率となります。

税務調査は年間を通じて実施されますが、特に8月から11月中旬にかけて多く実施される傾向があります。その理由は以下の2つです。

まず、税務署の年度は7月から翌年6月までで、7月の人事異動により新体制が整うことから、8月中旬以降に本格的な調査が始まるためです。

次に、税務調査は、企業の決算時期に合わせて実施されることが多いですためです。決算月が2月から5月の場合、調査は7月から12月に実施されることが一般的です。一方、決算月が6月から1月の企業では、調査が1月から6月に多く実施されます。

特に日本では、3月決算を採用している企業が多数を占めるため、税務調査は9月から12月に集中しやすい傾向があります。税務調査を受ける可能性がある時期を理解し、日ごろから帳簿や書類を適切に管理しておくようにしましょう。

税務調査には2種類ある

税務調査には任意調査と強制調査があります。

任意調査

脱税の疑いなどがなければ基本的には任意調査となります。任意調査の場合は事前に調査に赴く旨の連絡(電話)が会社に入るため、急に調査に来られるといったことはありません。ただし、任意調査とはいっても質問検査権はあるため、質問に対する黙秘や虚偽の申告は罰則になる可能性があります。調査官に対しては丁寧に内容を説明して、情報に誤りがないようにしましょう。

強制調査

あなたは「マルサ」という言葉を聞いたことがありますか?ニュースで、建物からダンボールを次々と運び出している姿を見たことがあるかもしれません。マルサとは、国税局査察部のことです。強制調査は、このマルサが担当しています。強制調査の最大の特徴は「脱税の隠蔽工作が悪質であること」「脱税額が1億円を超えること」を満たしていると想定される場合に、裁判所の令状でもって調査がされることです。

税務調査の対象になりやすい法人・個人の特徴

税務調査の対象になりやすい法人・個人の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 税務調査で指摘を受けたことがある
  • 売上の増減が大きい
  • 業績が赤字に転じた
  • 売上に対し利益が少ない
  • 申告漏れ額が高額な業種
  • 売上高1,000万円をわずかに下回る個人事業主

ここでは、それぞれについて解説します。

税務調査で指摘を受けたことがある

過去に税務調査で指摘を受け、修正申告や更正処分を受けた経験がある法人・個人は、再び税務調査の対象となる可能性が高いです。

その理由は、税務署が過去に指摘した点が正しく処理されているかを確認するためです。以前に申告漏れなどを指摘された場合、その後の申告状況を注視されます。

意図的な脱税と判断されるような指摘を受けていた場合は、さらに注意が必要です。税務署から継続的に疑念を持たれ、調査を受ける可能性が高まると考えられます。

指摘を受けた箇所は適切に修正し、以後、適正な処理を継続するようにしましょう。

売上の増減が大きい

事業の財務状況に大きな変動がある企業や個人は、税務当局の精査対象となりやすい傾向にあります。

特に収入が前期から極端に落ち込んでいるケースでは、収益の隠蔽を疑われる可能性があります。反対に、急激な業績向上も、実態との食い違いが懸念され調べられる傾向にあるため注意が必要です。

具体的には、業績不振を続けていた企業が、明確な根拠もなく2倍の収益を記録した場合、不自然な数字として目をつけられることがあります。

また、収益は大幅に伸びているのに、支出がほぼ横ばいといった状況も要注意です。通常、事業拡大に伴って原材料費や労務費なども増加するため、この両者の関係性が不自然である場合に収益操作の疑いを持たれる可能性があります。

このような状況を避けるには、収支の変動が生じた際、その背景を適切に証明できる会計資料を準備しておくことが大切です。

業績が赤字に転じた

業績が赤字に転じると、税務調査の対象になりやすくなります。赤字決算になると、法人税などの税負担が軽減または免除されるため、不正が行われていないか疑われることがあります。

特に、前期まで黒字だった法人が赤字に転落する場合、納税額を減少させる目的での不正行為が疑われやすくなるでしょう。そのため、実際に赤字であることや不正の兆候がないかを確認するために、税務調査が実施されることも多いです。

売上に対し利益が少ない

売上に対し利益が少ない企業は、税務調査のリスクが高まります。納税額は利益をベースに算出されるため、売上の増加に利益が伴わない状況は要注意です。

事業主の収入に対して経費が不自然に多い、もしくは申告所得が極端に低い場合、税務署から疑いの目を向けられやすくなるでしょう。また、同業他社と比較して利益率が著しく低い場合は、利益の過少申告が疑われる可能性もあります。

さらに、事業主の生活水準と申告所得が釣り合わないケースでも、税務調査のターゲットになりやすいでしょう。税務署は、不自然な利益の低さを不正申告の兆候と捉える傾向が高いといえます。

申告漏れ額が高額な業種

国税庁の調査によると、申告漏れ金額が高額な業種は、税務調査の対象となるリスクが高い傾向にあります。これらの業種は、申告もれの所得金額が大きいため、税務署の重点的な調査を受けやすいです。

例えば、経営コンサルタントやホステス・ホスト、コンテンツ配信業などは現金取引が多く収入の把握が難しいため、申告もれが発生しやすいとされています。さらに、くず金卸売業やブリーダー、焼き鳥店なども申告もれの額が高額な業種として挙げられます。

税務署は、AIを活用した効率的な調査の実施により、申告漏れの摘発に力を入れているのが現状です。該当業種の事業者は、帳簿や書類を整備し、適正な申告を心がけるようにしましょう。

参考)国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」

売上高1,000万円をわずかに下回る個人事業主

売上高が1,000万円をわずかに下回る個人事業主は、税務調査の対象になりやすいです。課税事業者となる基準を意図的に下回るよう調整し、消費税の納税を免れようとしているのではないかと疑われるためです。

免税事業者か課税事業者かは、前々年の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断されます。1,000万円をわずかに下回る申告が続くと、意図的な売上調整を疑われ、税務署が確認に入る可能性が高まります。

そのため、売上が1,000万円に近い個人事業主は、日々の取引を正確に記録し、適切な申告を心がけましょう。

任意の税務調査の流れ

任意の税務調査の際は、事前に税務署から通知が届き、必要書類の準備が求められます。ここでは、税務調査の具体的な流れや注意点について詳しく解説します。

1.税務署から事前通知が届く

任意調査の場合、税務署から実施日の1〜3週間前に事前通知が届きます。通知の内容は、開始日や調査場所に調査目的、対象となる税目や対象期間、必要な帳簿書類などです。税務代理人がいる場合、代理人に連絡が入ることもあります。

日程に都合がつかない場合、正当な理由があれば変更できます。すぐに返答できない場合は、後日連絡することも可能です。ただし、事前通知が調査の遂行に支障を及ぼすと判断された場合には、抜き打ち調査が行われることもあります。

調査対象期間は事前通知で示されますが、調査内容によっては期間が延びる可能性もあります。事前通知を確認し、必要な準備を進めましょう。

2.当日に向けて書類を揃える

税務調査に備え、必要な書類を事前に揃えることが重要です。税務調査では、総勘定元帳請求書領収書、契約書などの提出や提示を求められることがあります。これらを速やかに提出できるよう準備しておきましょう。

書類の内容も再確認し、記載ミスや不備がないか確認します。不備が見つかった場合は、税務調査前に修正申告や期限後申告をしましょう。延滞税は発生しますが、税務調査後に指摘を受けるより負担を軽減できます。

税務調査の対象期間は通常3年ですが、5年や7年に延びる場合もあります。法定保存期間内の帳簿はすべて整理し、必要に応じて提出できる状態にしておきましょう。

3.税務調査を受ける

税務調査当日、税務調査官が調査対象の会社や店舗を訪れ、事業内容や経理状況についてのヒアリングが実施されます。会社の概要や事業の特徴について確認した後は、用意された会計資料をもとに詳細な調査の開始です。

調査では、決算書や帳簿のほか、領収書や請求書などの証憑類が確認されます。調査官が帳簿書類を一時的に預かる場合もあり、その際は預り証が発行されます。調査終了後、預けた書類は返還されるため、紛失を防ぐためにも預り証の内容を確認しておくことが重要です。

税務調査は通常、2~3名の調査官によって1~3日かけて行われます。調査中は会社の代表者や経理責任者が立ち会い、質問や要求に適切に対応しなければなりません。顧問税理士がいる場合は、専門的な内容については顧問税理士が対応するものの、取引状況など企業側が直接説明すべき場面もあります。

税務署の職員は質問調査権を持っており、正当な理由なく質問や書類の提示を拒むと罰則が科される可能性もあります。一方で、税務署の職員も過度な威圧行為は許されていません。調査に協力しつつ、適切に対応しましょう。

調査終了後、追加の質問や資料提出を求められることがあります。速やかに対応し、指摘事項への回答や交渉をしましょう。顧問税理士がいる場合、これらの対応は原則として顧問税理士が担当します。

4.結果通知が届く

税務調査の結果通知では、調査内容に応じて1週間から3ヶ月程度で書面が届きます(企業規模が大きいほど、通知までに時間を要する傾向があります)。

通知書には、申告内容に問題がなかった場合は「是認通知書」が、誤りが見つかった場合はその詳細が記載されます。誤りが確認された際は、税務署から具体的な説明を受け、修正申告や期限後申告を勧められるでしょう。

修正申告をする際は、不足税金、延滞税、過少申告加算税を納付する必要があります。悪質な不正と判断された場合は、さらに重加算税が課される可能性もあります。

税務署からの指摘に異論がある場合は、根拠を明確にした上で交渉することが重要です。ただし、最終的に納得できない場合でも、更正に対する不服申立ては現実的に困難とされています。慎重な判断が求められる局面であるため、専門家(税理士など)との綿密な相談が不可欠です。

税務調査に顧問税理士は立ち会ってくれる?

あなたに顧問税理士がいるなら、その税理士事務所に相談すれば、税務調査の時に立ち会ってくれることがあります。

では、顧問税理士がいれば安心かと言うと、そうとも言い切れません。なぜなら、どの税理士にも得手不得手があるからです。

また、税務調査で必要になるのは、会計や税務の知識だけではありません。コミニュケーション能力や交渉力も必要になります。なぜなら、税務調査に来る調査官も人間だからです。

彼らは公務員として仕事で来ています。調査官の話を聞きもせずに自社の正当性だけを主張してしまったら、重箱の隅を突くような理由で、処理について否認されてしまうかもしれません。心配なら、税務調査への対応を得意としている会計事務所と顧問契約を結びましょう。

税務調査で確認される項目

税務調査では、売上や仕入、経費の計上が適切かどうかが重点的に確認されます。主に以下の点がチェックされるため、事前に整合性を確認し、適切な書類を準備するようにしましょう。

【売上・仕入金額】
売上の計上もれや、過少申告がないかを調査されます。預金通帳と帳簿・決算書が一致しているかについてチェックされ、前年との増減が大きい場合はその理由を問われるでしょう。また、仕入金額についても過大計上の可能性がないかをチェックされ、売上と適切に対応しているかが確認されます。

【経費の計上】
交際費や、交通費などの妥当性が判断されます。領収書については、日付の記載がないものや頻繁に発行されているものが疑われやすく、特定の飲食店の利用が多い場合は、私的利用の可能性を指摘されることがあります。また、交通費は架空計上が疑われるため、出張記録などと整合性が取れているかの確認が必要です。

【期ズレの有無】
本来の事業年度とは異なる期間に売上や費用を計上していないかがチェックされます。事業年度の前後で発生した取引については、発生主義に基づき適切に処理されているかが重要となります。

【損金の振り分け】
損金として計上されている支出が、法人税法上適切かどうかを確認されます。例えば、過大な役員報酬や限度額を超えた交際費などは損金に算入できません。適正に区分されているかについて事前に確認しましょう。

【その他の書類】
決算書や帳簿のほか、棚卸資産の計上や修繕費の処理も調査対象になります。特に修繕費については、資本的支出(設備の使用価値を向上させるなど)に該当しないかが確認されるため、事前に根拠資料を整理しておくようにしましょう。

税務調査に備えて気をつけるべきこと

会社を設立してまもなく来ることもあれば、10年経っても来ないこともある調査。そんな調査だからこそ、日頃から備えておかなければいけません。当然ですが、脱税志向(過度な節税志向も)を持たないというのが最も大切なことです。税金を安くできれば会社としては資金繰りが楽になりますが、発覚すれば追徴課税で逆に余分な税金は支払うことになります(悪質な場合には刑事罰も)。不正のないきちんと会計業務、正しい税務申告をしましょう。

取引の証明になる資料を保存しておく

領収書など、証明となる書類や資料を残しておくことも大切です。調査では、少しでも曖昧な部分があれば質問されます。そのときにうまく受け答えできなければ、あらぬ疑いをかけられてしまいます。これを防ぐためにも、証明できる書類は残しておきましょう。もし、普段と異なる処理をしたのであれば、当時の状況が分かる資料も一緒に残しておくと安心です。

会計ソフトを利用して正しい税務申告を

人は、ミスをするものです。調査によって誤りを指摘されて修正申告することになることもあるかもしれません。それでも、常日頃から正しい納税を実践しなければなりません。そのためには正しい帳簿が必要です。正確かつ効率的に帳簿をつけるなら会計ソフトの導入がおすすめ。手書きとは違い、数値を入力するだけで自動的に計算してくれます。税務調査に備えての正確かつ手早い会計には、会計ソフトの導入が一番です。

税務調査まとめ

税務調査は、適正な納税を促すために実施される手続きです。調査対象となる可能性のある法人や個人の特徴を理解し、日ごろから適切な対策を講じることが大切です。

税務調査に備え、取引の証明となる資料を丁寧に保管し、会計ソフトなどを利用して正しい税務申告をしましょう。万が一、税務調査の対象となった場合は、税理士などの専門家に相談し、適切な対応を図りましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
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