年末調整の仕訳方法とは?勘定科目や還付金の仕訳例も紹介
更新日:2026年01月08日

年末調整で従業員に対して還付金が発生したり、従業員から追加で徴収したりした際に、仕訳の処理も必要です。「預り金」の勘定科目を使って、正しく処理しましょう。本記事では、年末調整の仕訳方法や、年末調整後の源泉所得税の納付方法などについて解説します。
目次
年末調整の仕訳とは
そもそも、年末調整は所得税の過不足を精算する手続きのことです。また、年末調整の仕訳とは、年末調整で源泉所得税を多く徴収していた従業員に対して還付したり、少なく徴収していた従業員から不足分を徴収したりする際の仕訳作業を指します。
年末調整の仕訳作業でも、通常の取引と同様に勘定科目を使って貸方と借方に正しく割り当てて帳簿に記載しなければなりません。
年末調整時に還付金が発生する理由
年末調整の作業で従業員に対して還付金が生じることがある主な理由は、給与支払で源泉徴収する際に所得控除が十分に反映されていないためです。
所得控除とは、各納税者の個人的事情を考慮すること、最低生活費を保障することなどを目的に、税負担を調整するための制度を指します。納税者は、各種所得金額の合計から該当する所得控除の差し引きが可能です。
年末調整で今まで考慮していなかった所得控除を計算した結果、納付すべき所得税額が減少して還付金が発生することがあります。
年末調整の仕訳に使う「預り金」とは
年末調整で従業員に還付する際は、「預り金」で仕訳をします。預り金とは、役員・従業員や取引先が本来負担すべきお金を事業者が一時的に立て替えて支払う際に用いる勘定科目のことです。
預り金は、あくまで一時的に預かっているお金のため、負債として扱われる点に注意しなければなりません。また、従業員に還付する際は「借方」、従業員から追加で徴収する際は「貸方」に計上します。
「預り金」を扱う際のポイント
「預り金」を扱う際のポイントは、主に以下の通りです。
- 残高が正しく管理されているかこまめにチェックする
- マイナスになった場合は適切に処理する
それぞれ解説します。
残高が正しく管理されているかこまめにチェックする
「預り金」を扱う際は、正しく管理されているかこまめにチェックすることがポイントです。
預り金の残高は、役員や従業員などから預かっている金額のため、原則としてマイナスになることはありません。ただし、年末調整の還付金が多い場合などで、タイミング次第でマイナスになることはありえます。
一方で、単純な計算ミスや仕訳の誤りでマイナスが発生しているケースも考えられます。処理の途中で預り金がマイナスになった場合には、慌てずに計算内容や仕訳を確認し、なぜマイナスになっているのかを把握しておくことが大切です。
マイナスになった場合は適切に処理する
年末調整の還付金が多いなどの理由で「預り金」の残高がマイナスになった場合は、適切に処理しましょう。
例えば、マイナスになった分を一時的に「未収入金」や「立替金」の勘定科目に振り替えて処理する方法があります。また、源泉所得税などについては、制度上認められている範囲で翌期の納付額と相殺してマイナスの処理が可能です。
いずれにしても、マイナスが生じた理由や対象となる税を確認したうえで、適切な処理方法を選択しましょう。
年末調整時の仕訳例
年末調整時の仕訳例について、以下のケース別に説明します。
- 還付金が発生する場合
- 追加徴収が発生する場合
それぞれ押さえておきましょう。
還付金が発生する場合
1年を通じ従業員の給料や扶養の人数が増加した場合や、生命保険料控除の摘要を受けるなどの様々な理由により、天引きした源泉所得税の金額の方が年末調整で計算した所得税の年税額より多くなる場合には、従業員にその分を還付します。
例えば、8,000円を従業員から多く徴収しており、その金額を12月の給与振込み時に還付する場合の仕訳は以下の通りです。
12月の給与支払い時に還付する場合の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
| 給与 | 300,000円 | 預金 | 258,000円 | 12月給与 |
| 預り金 | 40,000円 | 12月社会保険料 | ||
| 預り金 | 7,000円 | 12月源泉所得税 | ||
| 預り金 | 2,000円 | 12月住民税 | ||
| 預り金 | 1,000円 | 12月雇用保険料 | ||
| 預り金 | 8,000円 | 年末調整還付金 | ||
実務では、12月の給与が確定した時点で年末調整をし、12月または1月の給与支給時に年末調整の還付をします。そのため、給料支給の仕訳に年末調整の還付を含めた会計処理をします。
追加徴収が発生する場合
年末調整で計算した所得税額が毎月の給料から天引きした源泉所得税の金額より多くなる場合は、従業員から不足額を徴収します。
例えば、源泉所得税が6,000円足りないことがわかり、12月の給与振込み時に不足分の徴収をする場合の仕訳は以下の通りです。
12月の給与支払い時に徴収する場合の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
| 給与 | 300,000円 | 預金 | 244,000円 | 12月給与 |
| 預り金 | 40,000円 | 12月社会保険料 | ||
| 預り金 | 7,000円 | 12月源泉所得税 | ||
| 預り金 | 2,000円 | 12月住民税 | ||
| 預り金 | 1,000円 | 12月雇用保険料 | ||
| 預り金 | 6,000円 | 年末調整不足額 | ||
還付の時と同様、12月または1月の給与支給時に年末調整の不足分を徴収します。
年末調整後の会計処理・仕訳例
ここから、年末調整の還付調整を含めた納付額がプラスの場合とマイナスの場合に分けて、年末調整後の会計処理・仕訳例を解説します。
年末調整の還付徴収を含めた納付額がプラスの場合
納付書とは「所得税徴収高計算書」のことで、企業が源泉所得税を納付する際に使用します。年末調整での過不足額を反映した納付額がプラスの場合、その内容を記載して納付します。
例えば、複数の従業員に年末調整をし、還付になる従業員と徴収になる従業員がいる場合は、12月の給与と賞与の源泉所得税の額に合算して納付税額を求め、還付と徴収をそれぞれの欄に記載して納付書を作成します。 例として、従業員が5人の下記の例で納付書を作成する場合は、以下の通りです。
- 12月の給与合計1,500,000円 (源泉所得税35,350円)
- 12月の賞与合計2,500,000円 (源泉所得税135,000円)
- 年末調整の還付60,000円
- 年末調整の徴収20,000円
国へ納付する時の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
| 預り金 | 130,350円 | 預金 | 130,350円 | 12月源泉所得税納付(年末調整を含む) |
年末調整の還付徴収を含めた納付金額がマイナスの場合
年末調整での過不足額を反映した納付額がマイナスになる場合、0円の納付書を作成して税務署に提出します。
例えば、従業員が5人の下記の例で納付書を作成する場合は、以下の通りです。
- 12月の給与合計1,500,000円(源泉所得税35,350円)
- 12月の賞与合計2,500,000円(源泉所得税が135,000円)
- 年末調整の還付200,000円
年末調整での過不足額と12月の給与と賞与の源泉所得税合計額の差額(この例であれば、200,000円と170,350円の差額の29,650円)を、納付書の左下に「年末調整還付未済額29,650円」と記載します。年末調整還付金未済額は繰り越し、翌月の源泉所得税の納付額から差し引いて納付します。
なお、年末調整の還付が12月の源泉所得税を上回る場合は源泉所得税の納付がないため、仕訳は必要ありません。
源泉徴収した所得税に利用できる特例とは
従業員の人数が少ない事業者は、源泉徴収した所得税に対して「納期の特例」を選択できる場合があります。「納期の特例」とは、源泉徴収した所得税・復興特別所得税について、年2回にまとめて納付できる制度のことです。
本来、源泉所得税は徴収日の翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の事業者に限り、特例で毎月から年に2回の納付に変更可能です。
なお、特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。
参考)国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
毎月の給与支払い時の仕訳例
ここから、給与支払い時に源泉所得税を徴収するケースと源泉所得税を納付するケースに分けて、仕訳例を紹介します。
毎月の給与支払い時の源泉所得税を徴収する仕訳
毎月の給料支払い時に天引きされる源泉所得税の金額は、給与の額と扶養人数によって決まります。
例えば、ある従業員の8月の給与30万円から、社会保険料4万円、源泉所得税7千円、住民税2千円、雇用保険1千円を差し引き、差額の25万円を給料として従業員の口座に振り込んだ場合の仕訳は、以下の通りです。
従業員への給与振込時の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
| 給与 | 300,000円 | 預金 | 250,000円 | 8月給与 |
| 40,000円 | 8月社会保険料 | |||
| 7,000円 | 8月源泉所得税 | |||
| 2,000円 | 8月住民税 | |||
| 1,000円 | 8月雇用保険料 | |||
毎月の給与支払い時に徴収した源泉所得税を納付する仕訳
預かった源泉所得税は原則翌月10日までに納付します。ただし、常時雇用する従業員やパートの人数が10人未満の小規模の事業者の場合は、年に2回(7月10日と1月20日)まとめて納付する「源泉所得税の納期の特例」を選択できます。
源泉所得税の納付仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
| 預り金 | 7,000円 | 預金 | 7,000円 | 8月源泉所得税納付 |
今回は勘定科目を預り金としていますが、企業や会計システムによっては「社会保険料預り金」「所得税預り金」「前払保険料」としているところもあります。
「預り金」と混同しやすい勘定科目
「預り金」と混同しやすい勘定科目は、主に以下の通りです。
- 租税公課
- 立替金
- 前受金
それぞれ解説します。
租税公課
「租税公課」とは、事業に関する税金や公的な費用を支払う際に用いる勘定科目です。国税や地方税を納付する際の「租税」と、行政サービスの手数料や証明書発行費用などを支払う際の「公課」に分類できます。
租税公課は、原則として費用にあたる点が特徴です。一方、源泉徴収で預かっているお金は費用ではないため、「租税公課」には該当しません。
立替金
「立替金」とは、本来他人が支払うお金を、事業者が一時的に立て替えたときに使用する勘定科目です。各社員で負担する予定の社員旅行費用を先に会社がまとめて支払う場合などに、使用することがあります。
誰の金銭で支払うかが、「預り金」と「立替金」の異なる点です。「預り金」は事業者が預かっているお金で支払うのに対し、「立替金」は自身の資産から支払います。
前受金
「前受金」とは、商品やサービスの提供に先立って代金の一部または全部を受け取った際に使用する勘定科目です。契約時に受け取る手付金や内金についても、通常は前受金として処理します。
代金を受け取ってもまだ商品を引き渡したりサービスを提供したりしていない場合、売上として計上できません。そのため、会計上は「前受金」を用いて負債として扱い、実際に商品やサービスを提供した段階で、売上へと振り替えます。
このように、将来の売上に結び付く点が、会社の収益とは無関係な資金を管理する「預り金」との違いです。
年末調整の仕訳まとめ
年末調整はタイトなスケジュールで進めなければならない場合が多く、大変な作業です。また、会計処理や仕訳を間違えると、源泉所得税の納付漏れなどに繋がる可能性があります。専門家に確認するなどして、正しく処理することを心掛けましょう。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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