創立費と開業費の違いとは?償却方法や仕訳例について解説

更新日:2026年03月02日

創立費と開業費の違い

創立費や開業費は、事業を開始する前に発生する勘定科目です。設立後に迎える初めての確定申告では、「どこまでが創立費で、どこからが開業費なのか」と迷うことも少なくありません。両者は繰延資産として計上され、償却方法によっては税負担に影響する一方、処理を誤ると否認されるリスクもある勘定科目です。本記事では、創立費と開業費の違いや償却方法、仕訳例、注意点を整理し、確定申告前に押さえておきたいポイントを解説します。

目次

創立費と開業費の違い

創立費と開業費の違いは、費用が発生した時期と目的にあります。創立費は会社を設立するまでに必要な費用、開業費は会社設立後に事業を開始するための準備費用です。

両者を正しく区別することで会計処理の誤りを防ぎ、税務上も適切に対応できます。いずれも繰延資産として処理し、通常の経費とは異なる会計上の処理をしなければなりません。

なお、創立費は法人のみが対象であり、個人事業主の場合は要件に該当する支出を開業費として処理します。

創立費とは会社設立に必要な費用のこと

創立費とは、法人が成立するまでの間に、会社設立のために支出した費用のことであり、事業活動そのものに直接関係する費用ではありません。

創立費に該当する主な支出は、次のとおりです。

  • 定款の作成費用や認証手数料
  • 登録免許税
  • 司法書士や行政書士への報酬
  • 公証人手数料
  • 設立準備に伴う打ち合わせの交通費
  • 発起人に対する報酬

これらは、法人登記が完了するまでに発生した支出であり、通常の経費とは区別し繰延資産として計上します。

開業費とは開業のために必要な費用のこと

開業費とは、開業準備のために支出した費用のうち、一定の要件を満たす費用のことです。

法人の場合は、会社設立後から実際に営業を開始するまでの期間に支出した費用をいいます。個人事業主の場合は、実際に事業を開始する日(一般に開業届に記載する開業日)の前日までに支出した費用が挙げられます。

ただし、すべての支出が開業費に該当するわけではありません。開業費として計上できる代表的な支出には、次の費用があります。

  • 広告宣伝費
  • 市場調査費
  • 接待交際費
  • 名刺や印鑑の作成費
  • ホームページ作成費用

一方で、次のような支出は開業費には含まれません。

  • 法人の開業準備期間中の家賃・光熱費(原則)
  • 開業後に発生した通常の人件費
  • 取得価額10万円以上の備品(固定資産
  • 敷金・保証金・礼金(資産計上)

これらは性質に応じて、通常の費用や固定資産などの勘定科目として処理する必要があります。

創立費と開業費は繰延資産として計上する

創立費と開業費は、会計処理では繰延資産として5年以内の期間で規則的に償却しますが、税務上は任意償却が認められており、償却する時期を自由に選択できます。

法人の場合、開業費の対象となるのは広告宣伝費や市場調査費など、開業準備のために特別に支出した費用に限られ、水道光熱費や給与などの経常費用は含まれません。繰延資産は実質的な財産価値を持たないことから、過度な計上には注意が必要です。

また、会社設立前の費用(創立費)は、会社の口座がまだないため、代表者などの個人が一旦立て替える必要があります。設立後に精算をし、領収書などの証憑(エビデンス)を適切に保管しておくことが重要です。

創立費と開業費の償却方法

創立費と開業費の償却方法は、均等償却と任意償却の2つがあり、それぞれに特徴と注意点があります。

【均等償却】

費用を一定期間で均等に配分する方法です。

  • 創立費や開業費を5年間(60ヶ月)で均等に償却する
  • 100万円の支出であれば、毎年20万円ずつ費用化する
  • 毎期の償却額が一定となり、会計処理が分かりやすい
  • 計画的な費用管理がしやすい

【任意償却】

償却のタイミングを柔軟に調整できる方法です。

  • 償却期間や償却額を事業者が自由に決められる
  • 利益が多い年度に多めに償却し、税負担を抑えられる
  • 赤字や利益が少ない年度には償却を控えられる

ただし、任意償却には注意点もあります。

  • 各事業年度に費用を合理的に配分する方法ではない
  • 金融機関から適正な決算をしていないと評価される可能性がある

創立費や開業費の償却方法を選ぶ際は、目先の節税効果だけでなく、将来の資金調達や外部からの信用も考慮し、自身の経営方針に合った方法を選択することが重要です。

創立費の仕訳例

創立費の仕訳は、支払時と償却時で処理が異なるため、具体的な仕訳例を紹介します。

【費用の発生時】

例:会社設立時に登記費用30万円を現金で支払った

借方 貸方
創立費 300,000円 現金 300,000円

支払時には、創立費という繰延資産の勘定科目で計上します。

【決算時】

例:【任意償却の場合】決算時に創立費を償却(任意償却で10万円を償却)

借方 貸方
創立費償却 100,000円 創立費 100,000円

創立費償却は、繰延資産である創立費を減少させ損益計算書上で費用として計上されるため、当期の利益を減らす効果があります。

例:【均等償却の場合】決算時に創立費を償却(創立費30万円を5年で均等償却する初年度)

借方 貸方
創立費償却 60,000円 創立費 60,000円

均等償却を選択した場合は、毎年同額を償却します。

開業費の仕訳例

開業費についても、創立費と同様に支払時と償却時で仕訳が異なります。具体的な例を紹介します。

【費用の発生時】

例:開業準備のためにホームページ作成費20万円を普通預金から支払った

借方 貸方
開業費 200,000円 普通預金 200,000円

開業費も支払時には繰延資産として計上します。

例:開業前の広告宣伝費15万円を現金で支払った

借方 貸方
開業費 150,000円 現金 150,000円

このように、開業までに発生した開業費に該当する準備費用を開業費として処理します。

【決算時】

例:【任意償却の場合】決算時に開業費を償却(任意償却で10万円を償却)

借方 貸方
開業費償却 100,000円 開業費 100,000円

償却時には「開業費償却」という費用勘定を使用します。任意償却の場合、この金額は経営者が自由に決定できるため、当期の利益状況を見ながら償却額を調整できます。

例:【均等償却の場合】決算時に開業費を償却(開業費50万円を5年で均等償却する2年目)

借方 貸方
開業費償却 100,000円 開業費 100,000円

創立費と開業費を扱う際の注意点

創立費と開業費で注意すべき点は、対象外の費用を誤って計上しないことと、証拠書類を含めた管理を徹底することです。

これらを誤ると、税務調査で否認されるリスクがあるだけでなく、本来得られるはずの節税効果を十分に活かせなくなる可能性があります。ここでは、実務上、特に間違えやすいポイントを確認します。

創立費・開業費の対象を把握する

創立費・開業費は、すべての準備費用を自由に計上できるわけではありません。

取得価額が10万円以上のパソコンや厨房機器などは、繰延資産ではなく「固定資産」として扱い、耐用年数に応じた減価償却をします。また、販売用商品の仕入代金は「売上原価」に該当するため、開業費では処理できません。

さらに、次の支出も創立費・開業費の対象外です。

返還予定のある支出

事務所の敷金や保証金は、将来返還される可能性のある資産(差入保証金など)であり、繰延資産には該当しません。

礼金

敷金と同様に、礼金も創立費・開業費には含めません。

経常的に発生する費用

法人の場合、事務所の賃借料や水道光熱費、通信費、消耗品費、給与など開業後も継続的に発生する費用は、開業費ではなく発生した年度の通常の経費として処理します。

一方で、法人の創立費(設立登記完了までの費用)は税務上の範囲が比較的広く、会社設立に必要と合理的に説明できるものであれば、打合せ時のカフェ代(会議費)や交通費なども含めることが可能です。

正確な記帳と管理を心がける

創立費と開業費を適切に処理するには、正確な記帳と証拠書類の適切な管理が求められます。領収書やレシート、インボイスなどの証憑は、支出が事業に関連することを示す根拠です。

特に設立前・開業前の支出は、個人的な支出と混同されやすいため、支払目的や内容を明確に記録しておく必要があります。また、法人の場合は「設立登記日」を基準に費用を明確に区分することが重要です。

税務調査では、これらの区分や支出内容について合理的な説明を求められることがあります。明細書の作成や会計ソフトでの適切な分類管理をし、いつでも説明できる状態を整えておくことが重要です。

創立費・開業費まとめ

創立費と開業費は、会計処理では5年以内の期間で規則的に償却しますが、税務上は任意償却が認められており、償却する時期を自由に選択できます。

10万円以上の資産や商品の仕入れ、返還予定の敷金などを正しく区分けし、創立費や開業費の違いについて理解を深めたうえで、正確な記帳と証憑管理をすることが重要です。

開業後、事業が軌道に乗るまでの時期は多忙になりがちですが、早い段階で処理内容を確認し、有利な償却方法を検討しておくことをおすすめします。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。


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