固定資産とは?流動資産との違いや種類、税金の取扱いを解説

更新日:2025年03月13日

固定資産

固定資産とは、会計上で区分される資産の1つです。この記事では、固定資産の3つの種類と税金の取扱い、固定資産税に設けられた特例、納付時の注意点を解説します。固定資産税の納税に不安がある方や、スムーズな確定申告を目指す方はぜひ参考にしてください。

目次

固定資産とは?概要を確認

固定資産とは簡単にいうと、販売を目的とせず長期保有する資産のことです。

固定資産を持っていると、確定申告と納税が必要なケースがあります。そのため、個人事業主や会社を経営しているのであれば、固定資産について詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。

ここではまず、固定資産の定義と流動資産との違いを解説します。固定資産について理解を深めるための前知識として、ぜひ押さえておきましょう。

固定資産の定義

固定資産は、会計上区分される3つの資産のうちの1つです。3つの資産には、固定資産のほかに流動資産と繰延資産があります。

固定資産は、以下の特徴を持つといわれます。

  • 流通や販売を目的とせず、企業が長きにわたり持ち続ける資産
  • 現金化や費用化に1年を超えた期間を要する資産

固定資産に該当する資産の一例は、土地や建物、機械設備、ソフトウェアです。ただし、不動産会社が販売のために保有する土地は、固定資産には該当しないことは覚えておきましょう。

固定資産と流動資産の違い

前項で述べた通り、資産には3つの種類があります。そのうち、流動資産と固定資産の違いは、現金化のしやすさです。流動資産かを判断する基準には、以下の2点があげられます。

  • 1年基準(ワン・イヤー・ルール)
  • 正常営業循環基準

1年基準とは、1年以内に現金化できる資産であるかという判断基準のことです。入金期限が決まっている貸付金未収金、定期預金などは、流動資産とされます。

なお、1年はあくまで目安であり、現金化まで1年以上を要する商品やサービスでも、流動資産とされるケースもあることは押さえておきましょう。自分での判断が難しいと感じる場合は、税務署窓口や税理士といった専門家に相談すると安心です。

正常営業循環基準とは、営業活動で生じた資産であるかという判断基準のことです。資産の一例には、普通預金や受取手形、売掛金、製品などがあげられます。営業活動で生じた資産は、たとえ1年以内に現金化できなくても、流動資産に区分されます。

固定資産の3つの種類

固定資産は、さらに以下の3つにわけられます。

  • 有形固定資産
  • 無形固定資産
  • 投資その他の資産

保有する資産がどの種類に分類されるかによって、税金の取扱いや納税の有無が変わります。固定資産を保有しているのであれば、どの種類に該当するかは必ず押さえておきたいところです。

ここでは、それぞれの概要を解説します。

1.有形固定資産

有形固定資産とは、形があり、目に見える固定資産のことです。たとえば、土地や建物、向上の機械、車などが該当します。

有形固定資産は、さらに以下の2つにわけられます。

  • 減価償却資産:時間の経過とともに価値が減少(経年劣化)する資産
  • 非減価償却資産:経年劣化しない資産

減価償却資産とは、経年劣化が発生する資産のことです。一例には、車や工場の機械、建物、船舶、パソコンなどの工具、器具があげられます。減価償却資産を持っている場合は、減価償却を実施し、経費に計上する必要があります。

非減価償却資産とは、経年劣化が発生しない資産のことです。具体的には、土地や骨董品などが該当します。非減価償却資産は、取得原価で経費計上しましょう。

2.無形固定資産

無形固定資産とは、形がない固定資産のことです。無形固定資産も、減価償却資産と非減価償却資産にわけられます。それぞれに該当する資産の具体例を、以下で確認しましょう。

減価償却資産 非減価償却資産
  • ソフトウェア
  • 特許権
  • 商標権
  • のれん(営業権)
  • 借地権
  • 電話加入権

無形固定資産も、原則として減価償却を実施します。ただし、借地権や地上権、地役権、電話加入権など、一部の資産は減価償却は不要です。

3.投資その他の資産

投資その他の資産とは、有形固定資産にも無形固定資産にも当てはまらない資産のことです。一例を以下に紹介します。

  • 投資有価証券
  • 長期預金
  • 長期前払費用
  • 長期貸付金
  • 関連会社や子会社への株式
  • 関係会社への出資金
  • 投資不動産

投資その他の資産は、固定資産のうち1年を超えて現金化される資産や、投資を目的とした資産が該当します。

有形固定資産は税金が課せられる

固定資産のうち、有形固定資産は課税対象となります。固定資産の所有者は資産に課せられた税金を、固定資産が所在する市区町村に納めなければなりません。

税額は、その資産価値に応じて算定されます。計算方法を、以下で確認しましょう。

【固定資産税の計算式】
固定資産税額 = 固定資産の評価額(課税標準額) × 標準税率(1.4%)
※税率は市区町村により異なるケースがある

固定資産税に課せられる税金には、固定資産税と償却資産税の2種類があります。ここでは、それぞれを詳しく解説します。

土地・建物は固定資産税の対象

固定資産のうち、土地や建物に課せられるのは固定資産税です。課される資産の一例には、以下があげられます。

  • 土地:田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野など
  • 建物:住宅、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫など

固定資産税を納めるのは、原則として1月1日の時点で登記簿や土地補充課税台帳または、家屋補充課税台帳に所有者として登録されている方です。納税対象者には、毎年4~6月に市区町村から納税通知書が送付されます。

納税通知書を受け取ったら、1年分を一括もしくは4回にわけて、以下のいずれかの方法で納めましょう。

  • 市町村や金融機関の窓口
  • 口座振替
  • コンビニエンスストア
  • スマートフォン決済アプリ
  • クレジットカード
  • ペイジー
  • eLTAX(電子納税)

なお、市区町村によって対応していない納税方法もあるため、事前に確認するとスムーズです。

減価償却資産は償却資産税の対象

固定資産のうち、減価償却資産は償却資産税の対象です。課税される資産の一例を以下で確認しましょう。

  • 会社等が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)
  • 飛行機や船、車両
  • 運搬具(鉄道やトロッコなど)
  • 備品(パソコンや工具など)

減価償却資産税は、原則として1月1日の時点で償却資産課税台帳に所有者として登録されている方が納税者となります。

所有者は、その詳細を1月31日(休日の場合は翌営業日)までに、資産の所在地の市区町村役場に申告しなければなりません。償却資産が複数の自治体にある場合は、それぞれの自治体に申告が必要です。

納税者は、申告内容を基に毎年6月頃に納税者に送付される納税通知書を使用して、税金を納めましょう。納税方法は、固定資産税と同様です。

減価償却資産は償却資産の取得価格を基礎として、取得後に経過した年数に応じた価値の減少を考慮して評価額を計算します。ただし、一定の条件を満たした場合は、一括償却資産または少額減価償却資産としての計上も可能です。

ここでは、減価償却および一括償却資産と少額減価償却資産について、さらに詳しく見ていきましょう。

減価償却とは

減価償却とは、資産の取得金額を取得時に全額必要経費とせず、その資産の耐用年数の全期間にわたり分割して計上することです。耐用年数は、国税庁が公開している期間を使用します。

耐用年数の一例は、以下のとおりです。

資産の種類 耐用年数(年)
小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの) 4
ダンプ式貨物自動車 4
報道通信用の自動車 5
その他の自動車 6
自転車 2
主として金属製の事務机、事務いす、キャビネット 15
接客業用の応接セット 5
パソコン(サーバー用を除く) 4
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 5
冷房用・暖房用機器 6
金庫(手提げ金庫以外) 20
看板・ネオンサイン・気球 3

上記は一例であり、耐用年数は資産によって細かく決まっています。耐用年数がわからない場合は、税務署窓口や税理士など専門家に事前に確認しましょう。

一括償却資産と少額減価償却資産

減価償却資産のうち、以下の条件を満たすものは一括償却資産または少額減価償却資産とされます。

  • 一括償却資産:取得価額が20万円未満の減価償却資産
  • 少額減価償却資産:取得価額が30万円未満の減価償却資産

一括償却資産は、取得費用を3年にわたって均等償却できます。減価償却と比較して計算が簡単なだけでなく、3年間で取得価額をすべて経費にできる点も魅力です。

少額減価償却資産は、費用を一括で経費にできます。減価償却の計算をする必要がないため、確定申告の手間や負担を軽減できます。なお、少額減価償却資産の上限は、毎年300万円です。

参考)総務省 固定資産税
参考)国税庁 No.2100 減価償却のあらまし
参考)国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表

固定資産税の特例を3つ紹介

固定資産税には、税額が軽減されるさまざまな特例があります。ここでは、代表的なものを3つ紹介します。

税負担を少しでも軽減したいと考える方は、ぜひ参考にしましょう。

1.中小企業等経営強化法による支援

中小企業等経営強化法による支援の概要は、以下のとおりです。

項目 概要
優遇措置
  • 固定資産税の課税標準を3年間に限り2分の1に軽減
  • 賃上げ表明を行った場合は5年間または4年間に限り3分の1に軽減
対象となる方 中小事業者等のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた方
対象となる資産

年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画に記載された投資目的を達成するために必要な以下の設備(新品に限る)

  • 機械装置(160万円以上)
  • 測定工具および検査工具(30万円以上)
  • 器具備品(30万円以上)
  • 建物附属設備(60万円以上)

先端設備等導入計画を申請するには、認定経営革新等支援機関への事前確認が必要です。事前確認終了後は、先端設備等の導入先の市町村へ先端設備等導入計画を申請しなければなりません。制度の利用を希望する方は、計画的に準備を進めましょう。

なお、市区町村や購入時期によって、制度の詳細が変わる可能性があります。適用を受ける際は、市区町村窓口で事前に確認すると安心です。

参考)中小企業庁 固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)

2.新築住宅の減額特例

新築住宅の減額特例の概要は、以下のとおりです。

住宅の種類 一般住宅 長期優良住宅
戸建て 3年間2分の1 5年間2分の1
マンションなど 5年間2分の1 7年間2分の1

なお、新築住宅の減額特例制度の対象となるのは、2026年3月31日までに新築された、床面積が50平米(借地は40平米)以上280平米以下の住宅に限ります。

参考)国土交通省 認定長期優良住宅に関する特例措置

3.住宅用地特例

住宅用地特例では、税金を算出する基となる固定資産税の課税標準額が減額されることで、税額を圧縮する制度です。制度の概要を、以下で確認しましょう。

区分 減額される課税標準額
小規模住宅用地(住宅用地のうち200平方メートル以下の部分) 住宅用地の価格の6分の1
一般住宅用地(住宅用地の200平方メートルを超える部分) 住宅用地の価格の3分の1

住宅用地特例は、あくまでも人が居住する建物を対象とする優遇措置です。そのため、構造上住宅と認められない、取り壊しが予定されている、人の居住が見込めないなどの場合は、特例の対象にはなりません。

参考)国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置

固定資産税を納付する際の注意点

最後に、固定資産税を納付する際の注意点を2つ解説します。注意点を事前に押さえ、ミスやトラブルのないスムーズな納税を目指しましょう。

特例を受けるには申告が必要

注意点の1つ目は、固定資産税の特例を受けるには申告が必要な点です。特例措置は、自動的に適用されることはありません。制度の対象になるのであれば、期限内に必ず申告をしましょう。

なお、申告の期間や申告先、申告方法は制度によって異なります。申告手順を確認したい場合は、制度を管轄する機関にあらかじめ確認してください。

納付が遅れると延滞金が課される

注意点の2つ目は、固定資産税の納付が遅れると延滞金が課される点です。延滞金は、納期限の翌日から納める日までの日数に応じ、法律で定められた割合で計算します。

延滞金割合は、最大で14.6%です。そのため、固定資産税額や滞納した期間によっては、延滞額が嵩むケースもあります。延滞金を課されないためには、期間内に納税手続きを進めることが肝心です。

固定資産まとめ

固定資産税とは、流通や販売を目的とせず企業が長きにわたり持ち続ける資産のことです。

固定資産のうち有形固定資産を保有している場合は、納税が必要です。土地および建物は固定資産税、減価償却資産は減価償却税を期間内に納めましょう。納税が遅れた場合、延滞税を課される可能性がある点には、注意が必要です。

なお、固定資産税にはさまざまな特例措置が設けられています。税額を少しでも抑えたい方は、ぜひ特例措置を活用してください。

特例措置の適用を受けるには、事前の申告が必要です。申告方法や申告期間などは制度によって異なるため、事前に確認し計画的に準備を進めることが肝心です。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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