ROAとは?計算式や目安、ROEとの違いを詳しく解説

更新日:2024年11月06日

ROAとは

ROA(Return On Asset)とは、総資産に対し利益が占める割合を示す財務指標です。この記事では、ROAの計算式や数値の目安、ROAを見る際の注意点を解説します。また、よく似た指標であるROEについても併せて紹介します。財務諸表を活用した企業評価をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

ROA(総資産利益率)とは

ROA(Return On Asset:総資産利益率)とは、企業の資産がどれだけの利益を生み出しているかを測る指標です。ROAを知ると、企業の経営効率の判断ができるようになります。

ここではまず、ROAの計算方法をはじめとする基本事項を確認しましょう。

ROAの計算式

ROAの計算式は、以下のとおりです。

ROA(%)= 利益 ÷ 総資産 × 100

ROAの計算に用いる「総資産」とは、企業が保有している資産(総資本)の合計です。具体的には現金や預貯金、売掛金、受取手形、有価証券、機械設備等が挙げられます。

一例として、以下の2社のROAを比較しましょう。

項目 A社 B社
総資産 1,000万円 100万円
利益 50万円 9万円
ROA 5%
(50万円÷1,000万円×100)
9%
(9万円÷100万円×100)

A社は総資産が多くB社よりも大きい利益を上げていますが、ROAは5%にとどまります。一方、B社は総資産や獲得した利益が少なくA社と比較して会社の規模は小さいものの、ROAは9%に上っており効率良く利益を出していることがわかります。

このようにROAは会社の規模に関わらず、資産をいかに活用して利益を生み出したかを測れる指標といえるでしょう。

ROAで使用される3つの利益

ROAの計算で使用される主な利益には、以下の3つの種類があります。

  • 当期純利益
  • 営業利益
  • 経常利益

どの利益を使用してROAを算出するかによって、計算結果が変わります。そのためROAを企業の経営状況の判断に利用するには、適切な利益を選んで計算することが重要です。ここでは、それぞれの利益の概要と求め方を見ていきましょう。

1.当期純利益

当期純利益とは、一会計期間における企業の最終的な利益です。当期純利益の計算式は、以下のとおりです。

当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等(法人税+住民税+事業税など)+(または-)法人税等調整額

当期純利益は一般的に、株主の取り分とされます。そのため、株式投資で投資先を決める判断材料としてROAを活用する場合は、当期純利益を使用します。

2.営業利益

営業利益とは、本業の営業活動から得た利益です。例えば小売業であれば、仕入れた商品を販売して得られた利益が営業利益に該当します。飲食店で提供している商品を売り、獲得した利益も営業利益です。

一方、取引先の株式からの配当金や不用品の売却による利益は、本業から得た利益ではないため営業利益には含まれません。営業利益の計算式は、以下のとおりです。

営業利益 = 売上総利益(売上高-売上原価)- 販売費及び一般管理費

販売費には広告宣伝費や販売促進費、通信費等があたります。一般管理費はオフィスの賃貸料や人件費、水道光熱費、消耗品費租税公課などです。

ROAの計算で営業利益を活用すると、会社が保有する資産を活用し本業の営業活動からどのくらい効率的に利益を上げられているかがわかります。

3.経常利益

経常利益とは、事業全体から経常的に得た利益です。本業から得た利益に受取利息や受取配当金、不動産業以外の事業を営む企業の家賃収入といった営業外利益を合わせて算出します。

経常利益の計算式は、以下のとおりです。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

経常利益をROAに活用することで、資産に対して通常稼働時にどのくらいの利益を上げられているかを確認できます。

ROAからわかること

ROAを活用すれば、企業に対して以下の2点を判断できます。

  • 企業の資産を有効活用できているか
  • 企業の成長に有効な投資ができているか

ROAが高い企業は、資産を有効活用して効率良く利益を上げていることがわかるでしょう。一方ROAが低い企業は、たとえ資産が大きくても利益の生み出しに活用できていないといえます。

またROAからは、企業の成長に必要な有効な投資ができているかも読み取れます。企業の成長を目指し人材や設備に投資をしたときは、一時的にROAが下がる可能性があるでしょう。その後にROAが高くなれば、投資が成功し増益を実現できたと考えられます。

ROAを見る際は、単年ではなく複数年分を確認することも重要です。

ROAの目安

ここでは、ROAの目安を解説します。ROAの目安は業界によっても異なるため、その点も併せて確認しましょう。

一般的な目安は5%

ROAが良好とされる一般的な目安は、5%です。ROAが5%より低ければ営業効率が悪く、高ければ営業効率が良いと考えられるでしょう。

ただしROAは、業界によっても大きく変わります。ROAを見る際は、業界の水準を確認し同業他社のROAとの比較をすることが重要です。業界別のROAの数値は、次項で確認しましょう。

ROAは業界によって異なる

業界別のROAの目安は、以下のとおりです。ROAを活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

業界 ROA(%)
全体 2.9
鉱業、採石業、砂利採取業 -7.3
製造業 3.4
飲料・たばこ・飼料製造業 4.1
繊維工業 0.5
木材・木製品製造業(家具を除く) 3.0
パルプ・紙・紙加工品製造業 2.3
印刷・同関連業 2.2
化学工業 4.3
石油製品・石炭製品製造業 3.5
電子部品・デバイス・電子回路製造業 3.9
電気・ガス業 0.8
情報通信業 6.1
ソフトウェア業 7.7
情報処理・提供サービス業 5.8
出版業 4.7
卸売業 3.4
小売業 2.5
クレジットカード業、割賦金融業 0.8

参考)経済産業省 2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-

ROAを見る際の注意点

次に、ROAを見る際の注意点を2つ解説します。ROAを見るにあたっては、単に数値の大小を見るだけではなく、その結果になった要因まで確認することが重要です。

ここでは、ROAの数値に影響を与える先行投資と、本業以外の利益の増減について詳しく解説します。

先行投資で借入が増えると悪化する

ROAを見る際の注意点の1つめは、先行投資の有無です。事業拡大などによる先行投資で借入が増えると、指標が悪化するケースがあります。なぜなら、借入が増えると分母となる総資産(総資本)が増えるため、仮に前年度と同じだけ利益を上げていたとしてもROAは減少するからです。

先行投資により悪化したROAは、将来的に事業が成長し利益に反映されたときに、数値が改善する可能性が十分あります。ROAが急激に下がったときは、建物や機械装置といった資産の増加がないか、多額の設備投資がないかを財務諸表等で確認しましょう。

本業以外で悪化するケースがある

ROAを見る際の注意点の2つめは、本業以外の利益の増減です。企業が保有している株や外貨等の価値が変動すると、ROAにも影響します。例えば、投資する銘柄の株価が上昇し含み益が発生したときは、総資産が増加します。ROAの計算において分母となる総資産の増加は、数値の減少につながるのです。

本業以外の要因がROAに影響しているかは、貸借対照表における資本項目の「その他の包括利益」を確認しましょう。その他の包括利益が大幅に増減しているときは、その増減額を除外してROAを求めることで、より実態に近い経営効率を把握できます。

ROAの数値を高くする方法

ROAを改善するには、以下の3つの方法があります。

  • 売上高利益率(収益性)を上げる
  • 資産回転率(効率性)を上げる
  • 総資産を減らす

ROAが改善されれば経営効率が上がるだけでなく、株式投資における投資先としての魅力の上昇も期待されます。ROAの悪化を解消したいと考えているのであれば、ぜひ取り入れられそうなものから実践してみてください。

売上高利益率(収益性)を上げる

ROAを改善するには、売上高利益率(収益性)の向上が効果的です。売上高利益率とは売上高に対する利益の割合で、企業の収益性を測る指標として使用されます。売上高利益率の計算式は、以下のとおりです。

売上高利益率(%)= 利益(※)÷ 売上高 × 100

※粗利・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益。営業利益を用いて計算すると、売上高営業利益率と呼ばれる。

売上高利益率が上がるときは利益が増えていると考えられ、ROAの改善が期待されます。売上高利益率を上げる具体策の一例は、以下のとおりです。

具体策 概要
取扱商品の見直し 売上数の多い商品を中心に販売し、売れない商品の販売を止める
商品価格の再設定 商品の付加価値を高めて、価格に反映させる
広告費の見直し 費用の安い宣伝媒体を利用して、広告宣伝費を下げる
売上原価の見直し 仕入れ原価を下げるまたは、販売数を増やして売上原価を下げる

これらの施策を行うことで、経営が効率化されROAが上昇する可能性があります。自社に必要と感じる施策がある場合は、ぜひ積極的に実践してみましょう。

資産回転率(効率性)を上げる

資産回転率(効率性)の向上も、ROAの改善に効果があります。資産回転率とは、総資産が効率良く利益に活用されたかを判断する指標です。総資産回転率とも呼ばれます。資産回転率の計算式は、以下のとおりです。

資産回転率(回転)= 売上高 ÷ 総資産

例えば、売上高が20万円で総資産が5万円の企業の資産回転率は、4回転(20万円÷5万円)と計算できます。

資産回転率が上がるケースは、売上高が増えたまたは総資産が減ったときです。売上高の上昇や総資産の減少は、ROAを改善させる要因の1つです。そのため資産回転率の上昇は、ROAの数値改善にもつながるでしょう。

資産回転率を上げる具体策の一例には、以下が挙げられます。

  • 長い間利用していない保養所や手付かずの土地を処分する
  • 回収困難と思われる債権や不良債権を整理し、貸倒損失として処理する

資産回転率の上昇を目指すには、まずは自社が保有する資産や債権を確認し、適正に処理することが重要です。

総資産を減らす

総資産の減少は、ROAの改善に直結します。なぜなら総資産が減ると、ROAの計算式における分母が小さくなるためです。削減を検討できる総資産の一例としては、以下が挙げられます。

不要な在庫や使用していない固定資産があるときは、売却などによる処分を考えても良いでしょう。そのほか、借入金の返済によっても総資産(総資本)は減少します。

ROE(自己資本利益率)とは?

ROAとよく似た指標に、ROEがあります。ROE(Return On Equity:自己資本利益率)とは、自己資本を利用しどれだけ効率的に利益を上げているかを測る指標です。

企業の財務状況をより詳しく知るには、ROAと併せてROEも確認することが重要です。ここではROEの計算式および基本事項、ROAとの関係を解説します。

ROEの計算式

ROEは、以下の式で計算します。

ROE(%)= 純利益 ÷ 自己資本(純資産)× 100

例えば自己資本が1,000万円で、当期純利益が200万円の企業のROEは20%(200万円÷1,000万円×100)です。

自己資本とは、総資本のうち返済の必要がない資金です。具体的には、株主から出資を受けたお金や、経営者自身が出したお金が該当します。

つまりROEは、株主から集めた資金をどれだけ効率良く使用し利益を生み出したかを測れる指標です。そのため株式投資における判断材料として、多くの投資家に活用されています。

ROEの一般的な目安は10%

ROEは一般的に、8~10%を超えると優良企業とされます。経済産業省が発表したデータによると、2018年における日本企業のROEの平均は9.4%です。以前と比べ少しずつ上昇してはいるものの、アメリカの18.4%や欧州の11.9%と比較すると、低い水準といえるでしょう。

なお、ROEもROAと同様に、業種によって数値が異なります。一般的に卸売業や情報通信業などでは数値が高くなる一方で、飲食サービス業は数値が低くなる傾向があります。ROEを確認する際は、同業他社と比較検討することも重要です。

参考)経済産業省 事務局説明資料

ROEが高くてもROAが低い場合は注意

先述のとおり、ROEはROAと組み合わせて見ることがポイントです。仮にROEが高い企業だったとしても、ROAが低いときは負債が嵩んでいる可能性があるため注意しなければなりません。

ROEが高くなるのは高い純利益を得ているまたは、自己資本が少ない場合です。大きな純利益を得ている企業であれば、ROE・ROAともに高くなる可能性が高いでしょう。

一方、自己資本が少ないことでROEが高い企業は、ROAが低くなるケースがあります。なぜなら、自己資本が低く多額の借入をしている場合は、ROAの計算における分母となる総資本が大きくなるからです。

借入が大きいと、財務の健全性を失い安定的な経営ができなくなる可能性があります。ROEが高くROAが低い企業を見る際は、借入額もチェックすることが肝心です。

ROEの数値を高くする方法

最後に、ROEの数値を改善する方法を2つ解説します。ROEを改善したい、ROEが急に上昇した理由を知りたいと考える方は、ぜひ参考にしてください。

資産回転率を上げる

ROAと同様に、資産回転率を上げるとROEも上昇します。先述のとおり資産回転率とは、総資産を活用してどれほどの売上高を生み出したかを測る指標です。

総資産は、自己資本と他人資本(返済の必要がある資本。負債とも呼ぶ。)を合わせた額です。そのため自己資本が減ったまたは、売上高が上昇したときに資産回転率は上がります。これは、自己資本率と純利益を基に計算するROEが上昇するケースと重なることから、資産回転率が上がるとROEの改善も見込まれるでしょう。

財務レバレッジを上げる

財務レバレッジを上げることも、ROEの改善に有効です。財務レバレッジとは、負債を利用して利益を向上させることです。総資本における負債の割合を高め自己資本の割合を減らすことで、ROEの改善につなげます。

ただし、財務レバレッジを高め過ぎると負債の割合が大きくなるため、財務の健全性が損なわれます。財務レバレッジを上げる際は、負債と自己資本のバランスの見極めが重要です。

ROAまとめ

ROAとは、企業の資産がどれだけの利益を生み出しているかを測る指標です。目安は5%程度といわれますが、業界によって良好とされる数値が異なります。そのためROAを見る際は、同業他社と比較することが肝心です。

ROAとよく似た指標に、ROEがあります。ROEとは、自己資本に対しどれだけ効率的に利益を上げたかを測るものです。目安は10%程度とされていますが、ROAと同様に業界によって数値に差があることは覚えておきましょう。

ROAとROEはそれぞれ、違う角度から経営状態を確認できます。例えば、ROEが高くてもROAが低いときは、財務の健全性が失われている可能性があります。両方の指標を活用することで、より企業の実態に沿った財務状況の把握を目指しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
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