販売促進費とは?具体例や広告宣伝費・交際費との違いも解説

更新日:2025年02月23日

販売促進費

販売促進費とは、自社の商品・サービスの売上を伸ばすことを目的に、支出する相手に対して直接的に関わる際に計上できる勘定科目を指します。具体例は、キャンペーン実施にかける費用やノベルティグッズの制作・配布費用などです。本記事では、販売促進費の概要や混同しやすい勘定科目との違いなどについて解説します。

目次

販売促進費(販促費)とは

販売促進費とは、自社の商品やサービスの販売を促すために支出した費用に対して用いる勘定科目のことです。財務三表のひとつである、損益計算書においては、「販売費及び一般管理費」のなかの項目に該当します。

販売促進費として計上すべきか悩んだ際に判断できるように、ここから販売促進費に当てはまる条件や具体例を確認していきましょう。

販売促進費に当てはまる条件

販売促進費に該当するための主な条件は、以下のとおりです。

  • 費用を支出することにより、対象商品(サービス)の売上向上を期待できる
  • 取引先や不特定多数の消費者に対して直接的に支出する
  • 経費の計上が認められている費用である

つまり、対象商品・サービスの売上向上を目的としていることや、支出する相手に対して直接的に関わることなどが販売促進費として計上するためのポイントです。

販売促進費の具体例

販売促進費の具体例は、以下のとおりです。

  • キャンペーンの費用
  • 展示会などに出品する際の費用
  • 販売手数料(支払手数料のひとつ)
  • 割引券・クーポンの制作や配布にかかる費用
  • 商品サンプルの制作や配布にかかる費用
  • 無料で配布するノベルティグッズの制作や配布にかかる費用

一方、ポスターの作成費やテレビCMに出稿する際の費用、得意先との会食にかかる費用などは、販売促進費としては計上しません。

販売促進費と広告宣伝費の違い

販売促進費と広告宣伝費の違いは、不特定多数を対象としているかどうかです。

広告宣伝費とは、不特定多数の相手に会社名や自社の商品・サービス名を知ってもらうためにかける費用を計上する際に、用いる勘定科目を指します。具体例は、新聞・雑誌・ラジオ・テレビに広告を掲載する際にかかる費用や、キャンペーン用のWebページの制作費、自社のSNS公式アカウント運用にかかる費用などです。

一般的に、販売促進費は一定の取引先と関わる際にかかる費用に対して使います。それに対し、広告宣伝費はテレビやWebといったメディアなどを活用し、不特定多数に向けて宣伝する際にかかる費用に使われます。

なお、販売促進費と広告宣伝費の違いについて厳密な定義はないため、会社によっては同一科目で処理することもあるでしょう。分けて使う場合には、会社で明確な基準を作っておくことが大切です。

販売促進費と交際費の違い

販売促進費と(接待)交際費の主な違いは、宣伝を目的としているかどうかです。

交際費とは、取引先や仕入れ先のように、ビジネスに関係のある相手に対して接待や贈答などをする際にかかる費用に用いる勘定科目を指します。具体例は、ビジネスに関係する相手との会食費用、取引先に贈るお中元・お歳暮にかかる費用などです。

販売促進費は、自社の商品やサービスのことを知ってもらい、販売促進につなげることを目的として支出する費用に対して用います。一方、交際費は特定の関係者に対して広告宣伝目的以外で支出する際に用いる点が特徴です。

また、法人の交際費は原則として全額が損金不算入とされている点も、販売促進費と異なります。ただし、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人など、特定の条件を満たす場合のみ、一定の金額までは損金算入可能です。

参考)国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

販売促進費と外注費の違い

販売促進費と外注費の主な違いは、「販売促進」を目的としているかどうかです。

外注費とは、本来自社で担う業務の一部を外部の事業者に発注する際にかかる費用に使う勘定科目を指します。具体例は、自社のホームページ制作・運営を依頼する際にかかる費用や、自社のカスタマーセンター部門の業務を依頼する際にかかる費用などです。

販売促進費は、取引先に配布するノベルティグッズの制作費のように販売促進を目的にした支出に対して使うのに対し、外注費は自社で直接実施することが難しい業務を外部に任せる際にかかる費用に使われます。

販売促進費を計上する際に気をつけること

販売促進費を計上する際に、気をつけるべき点は主に以下のとおりです。

  • 消費税の課税・非課税を考慮する
  • 正しい勘定科目を計上する

それぞれ解説します。

消費税の課税・非課税を考慮する

販売促進費を計上する際は、消費税の課税・非課税を考慮しましょう。

国内で事業者が事業として対価を得る取引は、原則として消費税の課税対象です。ただし、消費に負担を求める税の性格上、課税対象としてなじまないものなどについては、消費税を課税しない取引(非課税取引)とされる場合もあります。

サンプルの購入代金や展示会にかかる費用など、基本的には販売促進費は課税取引の対象です。ただし、自社で制作したサンプルを配るケースのように、非課税取引に分類されることもあります。なぜなら、材料を仕入れている際に消費税がかかっているためです。

参考)国税庁「No.6201 非課税となる取引」

正しい勘定科目を計上する

正しい勘定科目を計上するように注意しましょう。

販売促進費は、交際費と混同しやすい勘定科目です。たとえば、本来交際費で計上すべき項目を販売促進費として計上していると、税務調査などで税務署から指摘される可能性があります。

また、交際費以外でも、広告宣伝費や外注費などとの線引きが曖昧であれば、税務署から問題視されることがあるでしょう。担当者が共通認識を持つように、社内マニュアルで明記しておくことがポイントです。

販売促進費の仕訳例

販売促進費に関して仕訳する例として、以下のケースが挙げられます。

  • 普通預金から販売促進費を支払うケース
  • 現金で販売促進費を支払うケース
  • 現預金で販売促進費や広告宣伝費を支払うケース
  • 販売促進費で制作したチラシを配布しきれないケース

それぞれ具体的な数字を使って仕訳例を確認していきましょう。

普通預金から販売促進費を支払うケース

自社の普通預金から、取引先に配布する商品サンプルを制作する際にかかった費用、80万円を業者(株式会社A社)に振り込む際の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
販売促進費 800,000円 普通預金 800,000円 商品サンプル制作費(株式会社A社)

普通預金から出金しているため「普通預金」の80万円を貸方に計上し、「販売促進費」の80万円を借方に計上しています。

現金で販売促進費を支払うケース

自社のことをより多くの会社に知ってもらうため、業者(株式会社B社)にノベルティグッズの制作を依頼し、代金の60万円を現金で支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
販売促進費 600,000円 現金 600,000円 ノベルティグッズ制作費(株式会社B社)

今回は現金で支払うため、貸方に計上するのは「現金」の60万円です。一方、借方には「販売促進費」の60万円を計上します。

現預金で販売促進費や広告宣伝費を支払うケース

普通預金から販売促進費を支払うケース、現金で販売促進費を支払うケースは、支出の勘定科目がひとつで比較的わかりやすいです。一方、支出に複数の項目が含まれている場合は、少し仕訳が複雑になります。

商品サンプルの配布を実施することを知らせるため、不特定多数の人にチラシを配るケースを考えてみましょう。商品サンプルの制作費が90万円、チラシの制作費は30万円で、現金10万円と普通預金110万円で支払う場合に、以下のように仕訳をします(サンプル制作・チラシ制作どちらも株式会社C社へ依頼)。

借方 貸方 備考
販売促進費 900,000円 現金 100,000円 商品サンプル制作費、チラシ制作費(株式会社C社)
広告宣伝費 300,000円 普通預金 1,100,000円

上記のように、商品サンプルの制作は販売促進費、不特定多数の人に配るチラシの制作費は広告宣伝費とすることが一般的です。そのため、借方で「販売促進費」90万円、「広告宣伝費」30万円を別々に計上しています。

販売促進費で制作 したチラシを配布しきれないケース

販売促進費を計上してパンフレットを制作しても、配布しきれるとは限りません。商品案内パンフレットを制作するも、5万円分が残ったため来期の配布用に取っておく場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 備考
貯蔵品 50,000円 販売促進費 50,000円 来期配布予定パンフレット

残った分は、「貯蔵品」(5万円)として借方に計上しています。

販売促進費にかける金額を決める流れ

事業者は以下のような流れで、販売促進費にかける金額を決めることが一般的です。

  1. 売上を試算する
  2. 販売にかかる経費を考える

具体的な数字を交えつつ、各手順ですることについて解説します。

1. 売上を試算する

期中の販売促進費にかける金額を決めるにあたって、まずどれくらいの売上を期待できるのか試算しましょう。

売上を試算する方法は、さまざまです。時間をかけずに試算したい場合は、以下のシンプルな式を使います。

期待できる売上 = (前年の売上もしくは過去数年の売上平均) × 成長率

また、期待できる売上のうち、販売促進費の対象商品やサービスの売上を把握しましょう。今回は、販売促進費に関する商品で250万円の売上(2,000円 × 1,250個を想定)を出す前提で考えます。

2. 販売にかかる経費を考える

対象商品・サービスの販売にかかる経費や原価を考えましょう。

今回は、商品1個(2,000円)を販売するにつき1,600円の経費や原価が発生すると仮定します。この場合、対象商品を1,250個販売した場合に発生する利益は50万円です。

今回のケースでは販売促進費に年間50万円以上のお金をかけると、対象商品による販売で赤字になります。そのため、販売促進費を50万円以内に抑える、ほかの経費を抑えて利益率を向上させる、効果的な販売促進をして多くの人に知ってもらい1,250個を超える売上を狙う、などを検討しなければなりません。

販売促進費を抑える方法

損益計算書上で「販売費および一般管理費」のなかに含まれるため、販売促進費がかさむと営業利益の減少につながります。そこで、会社の販売促進費を抑えなければならない場面では、以下の方法を検討しましょう。

  • 目的を明確にする
  • 業務効率化を図る

それぞれ解説します。

目的を明確にする

販売促進費をかける目的を明確にすることが大切です。

単に「今までも実施してきたキャンペーンだから」というだけの理由で毎年続けていると、効果がない無駄な費用を計上することになりかねません。一方、新商品の認知度を向上させるなどの明確な目的を定めれば、「商品サンプルの制作や配布だけで本当に関心を持ってもらえるのか?」「広告宣伝費をかけてテレビCMを出稿し、まずはより多くの人に知ってもらうべきでは?」などの議論を重ね、有効に経費を使えます。

関連して、ターゲットをはっきりさせることも重要です。たとえば、学生向けなのか高齢者向けなのかによっても、制作すべきグッズやキャンペーン内容、クーポンの配布先などは変わるでしょう。

販売促進に十分な効果が見込まれるものに絞ることで、販売促進費を今までよりも抑えられます。

業務効率化を図る

業務効率化を図ることも、販売促進費の削減につながるでしょう。

キャンペーンを実施したり、サンプルを制作したりするまでにかかる作業の無駄を省けば、費用を削減できる可能性があります。今までの工程に無駄がないか、一度確認するとよいでしょう。

また、近年は、各企業でDX・デジタル化による販売促進手法も用いられています。たとえば、今まで紙で制作していたチラシ・ポスターを電子で作成することにより、用紙代や印刷代などのコストを削減できるでしょう。紙媒体からデジタルに切り替えることで、今までアピールできていなかった層に知ってもらいやすくなります。

販売促進費・広告宣伝費に活用できる補助金

販売促進や広告宣伝にお金をかけて利益を圧迫している場合は、補助金の活用も検討しましょう。販売促進費・広告宣伝費に活用できる補助金のひとつとして、「小規模事業者持続化補助金」が挙げられます。

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が自社の経営を見直し、自ら持続的な経営に向けた経営計画を作成したうえで実施する、販路開拓などの取り組みを支援するための制度です。条件を満たし、審査に通過した事業者は、販路開拓に必要な経費の一部の支給を受けられます。

補助対象となる経費の具体例は、広報費や展示会出展費などです。そのため、制度を活用すればチラシ作成や配布、展示会出展などにかかる販売促進費や広告宣伝費について、一部の補助を受けられる可能性があります。

なお、2025年1月21日現在、小規模事業者持続化補助金について第14回以降の公募情報は公開されていません。毎年実施内容が変わる場合があるため、利用する際は全国商工会連合会のホームページで最新の情報を確認してください。

参考)全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金(一般型)とは」

販売促進費まとめ

販売促進費とは、自社の商品やサービスの販売を促すために支出した費用を計上する際に使う勘定科目のことです。自社の商品やサービスを知ってもらうことを目的としている点が、交際費と異なります。

販売促進費を計上する際は、消費税の課税・非課税を考慮することがポイントです。また、予算を立てる際には、対象商品・サービスの売上を試算したうえで、かかる経費を考慮して金額を決めます。

経費削減・利益改善のために販売促進費を例年よりも減らすことを考えている場合は、デジタルを活用して業務効率化を図ることなどを検討しましょう。活用できる補助金がないか確認することも大切です。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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