寄付金とは~法人が寄付したら節税できる?~

2020.07.15

寄付金

法人が寄付金を支出した場合、その寄付金は経費(損金)になるのでしょうか?寄付金には一定の制限が設けられているため、法人として寄付を検討する場合には寄付と税金の関係についてよく知っておく必要があります。今回は法人の寄付金について解説します。

寄付金と交際費の判別は?

株式会社などの法人の場合、交際費は原則として会社の経費(損金)になりません。そのため、交際費と寄付金の判別を間違うと税金の計算も間違うこととなります。ここでは、寄付金と交際費の判別について説明します。

寄付金とは

寄付金は金銭や資産の見返りを求めずに相手に贈与することです。一般的に寄付金、拠出金、見舞金などとよばれるものは寄付金になります。しかし、これら支出の名称にかかわらず、取引先への支出で実質的に交際費等、広告宣伝費、福利厚生費などにあたる場合は寄付金から除かれます。そのため、それぞれの実態をよく検討して判別する必要があります。

交際費等とは

交際費等は、取引先や事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などへの支出をいいます。香典やお祝いなどで金銭を取引先に贈った場合は、金銭の贈与であっても寄付金にならず、接待交際費になります。また、協賛金でも自社の名前が広告などに記載され、広告効果がある場合は広告宣伝費になるなど、同じ金銭の贈与でも内容によっては寄付金にならないので注意が必要です。

寄付金は損金として認められるか?

法人税法上、寄付金を無制限に認めると経費を意図的に増やすことができてしまうため、損金算入が可能な上限額を決めています。そして、すべての寄付が同じ条件というのではなく、寄付先や寄付の内容により損金に算入できる限度額が異なっています。

寄付金には4種類ある

寄付先は以下の4種類に分けられます。どのような種類があるのか順番にみていきましょう。

国や地方公共団体に対する寄付金

国や都道府県、市区町村に対する金銭などの寄付です。また震災などの義援金のうち、国または地方公共団体に対して直接寄付したものも該当します。

指定寄付金

指定寄付金とは通常の寄付金よりも公益性が高いと財務大臣が指定した寄付金のことです。例えば、赤い羽根募金や、日本赤十字社への寄付です。

特定公益増進法人等への寄付金

特定公益増進法人等に対する寄付金とは、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与すると認められた一定の公益法人等に対する寄付金です。例えば、日本赤十字社の事業費、通常経費に対する寄付や、認定NPO法人に対する特定非営利活動に関する寄付などが該当します。

一般の寄付金

上記以外の寄付金はすべて一般の寄付金に該当します。例えば町内会や政治団体、宗教法人などへの寄付です。

寄付金の損金算入限度額の計算方法

寄付金の種類によって全額が経費として計上できるか一定金額のみ経費になるか異なります。順番に説明します。

国や地方公共団体に対する寄付金と指定寄付金

国や地方公共団体に対する寄付金と指定寄付金については、全額が経費となり損金算入できます。

特定公益増進法人等への寄付金

特定公益増進法人等に対する寄付金には、一定の損金算入限度額が設けられています。そのため法人税の税額を計算するためには以下の損金算入限度額の計算が必要となります。

【特別損金算入限度額の計算方法】

(資本金等の額✕当期の月数/12✕3.75/1,000+所得の金額✕6.25/100)✕1/2

ただし、所得の金額は支出した寄付金の額を損金に算入しないで計算します。また、特別損金算入限度額を超える金額は、一般の寄付金の額に含めます。

一般の寄付金

一般の寄付金には一定の損金算入限度額が設けられ、損金算入限度額は以下の計算式で求められます。

(資本金等の額✕当期の月数/12✕2.5/1,000+所得の金額✕2.5/100)✕1/4

こちらも、所得の金額は支出した寄付金の額を損金に算入しないで計算します。

法人の寄付金に関する注意点

法人の寄付金についての注意事項は、主に2つ考えられます。

経済的な利益の供与

寄付をした認識がなくても税務上寄付と認定されるケースがあります。例えば、資産を時価よりも低い価格で譲った場合であれば、時価と譲った価格の差額が寄付金となります。また、会社が無利息で金銭を貸付けた場合は、利息部分が寄付金となります。関係会社に対する債権放棄も要件を満たさない限り寄付金とされるので注意が必要です。

未払の場合は損金に算入できない

寄付金が損金になるためには実際の支出が必要となります。寄付金は現実にその支払いが行われた事業年度において計上すべきものであり、未払計上は税法上認められていません。そして、寄付金を手形で支払った場合の寄付した日は、手形を振り出した日ではなく、手形の決済時など支払日として定められた日になるので注意が必要です。また、金銭以外の資産を寄付した場合は、その支出が行われた日を確認できる書類も整備しておきましょう。

寄付金のまとめ

寄付金は支払いの内容によっては違う科目の経費になったり、支払額全てが経費にならない場合があります。どういった支払いであれば寄付金になるのか、また寄付金の損金算入限度額がいくらかを把握することは難しいことも多くあります。少しでも迷うことがあれば、専門家に相談することをおすすめします。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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