労働分配率とは~計算式と適正な数値を見極める方法~
2022.12.09

労働分配率とは、財務分析の生産性の指標の1つで、付加価値に占める人件費の割合を示す経営指標です。企業の生産性分析のポイントは、企業が生み出した付加価値がどこに使われているのかを見ること。労働分配率を見れば、付加価値の何%が人件費に分配されたかを分析できます。
労働分配率の3つのポイント
- 労働分配率とは、企業の生産性分析に用いられる指標の一つであり、付加価値に占める人件費の割合を示すものである。
- 労働分配率は、以下の算式によって求められる。
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
- 労働分配率が低すぎる会社は、利益のわりに従業員の給与水準が低く、労働環境が良くない可能性があり、労働分配率が高い会社は、利益に対して人件費過多に陥っている可能性がある。
労働分配率の計算方法
労働分配率の求め方は以下のとおりです。分母に付加価値、分子に人件費がきます。
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100
人件費とは何か
人件費とは、人に関わる費用全般です。代表的なのが給料、賞与、役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金です。
付加価値とは何か
付加価値とは、労働手段を用いることで新たに付け加えられた価値のことです。労働分配率を計算する際には、減価償却費を含む「粗付加価値」を用います。
労働分配率は低ければ良い?
労働分配率が低い(付加価値に占める人件費の割合が低い)会社ほど効率よく利益を出しているという見方もできますが、労働分配率が低すぎるのも問題です。労働分配率が低すぎる会社は、利益のわりに従業員の給与水準が低く、労働環境が良くない可能性があります。
労働分配率が高すぎると利益の確保が難しい
一方、労働分配率が高い(付加価値に占める人件費の割合が高い)会社は、利益に対して人件費過多に陥っている可能性があります。従業員の給与水準は高いかもしれませんが、あまりに労働分配率が高くなると十分な利益を確保できなくなり、経営を維持していくのに必要な経費も賄えなくなってしまうリスクがあります。
適正な労働分配率を見極めるには?
たとえば、サービス業など労働集約型の業種は労働分配率が高い傾向にあります。逆に、インフラ系や機械化の進んだ製造業など資本集約型(設備集約型)の業種は労働分配率が低い傾向にあります。適正な労働分配率を見極めるためには、業界の平均値を把握し、同業他社と比較することが重要です。労働分配率の業界平均から乖離している場合、また過年度と比較して労働分配率に大きな増減が見られる場合などは、原因を確認して改善する必要があるでしょう。
労働分配率と労働生産性
労働分配率を分析する際に、よく比較に出てくるのが「労働生産性」です。労働生産性とは、従業員1人あたりの付加価値のことで、企業の稼ぐ力を表す指標として用いられます。付加価値生産性とも呼ばれます。
労働生産性の計算式
労働生産性を求める数式は、以下のとおりです。
付加価値を従業員数で割ることで、従業員1人が生み出している付加価値を金額で計算できます。付加価値の代わりに「売上総利益」で計算して、簡便的に算出する方法もあります。
労働生産性と労働分配率が給与を決める?
労働生産性が高い企業は、従業員1人が生み出す付加価値の金額が大きいため、その分だけ従業員に支払う給与・賞与などの人件費に使える金額も大きくなります。中小企業と大企業の賃金に差がある理由のひとつは、その労働生産性の大小の差が大きいことにあるとも言えます。なお、中小企業と大企業の労働生産性では、2倍ぐらいの差があります。ただし、いくら労働生産性が高くても、経営者が付加価値に対して人件費に使う金額が少ない(=労働分配率が低い)と、賃金は高くなりません。実際に、両者は以下のような関係になっています。
労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = 従業員1人あたり人件費
実際に計算例を紹介します。
人件費 | 付加価値 | 従業員数 | 労働分配率 | 労働生産性 | 1人あたり人件費 |
---|---|---|---|---|---|
30,000,000円 | 40,000,000円 | 10人 | 75% | 4,000,000円 | 3,000,000円 |
上の表を見ると分かるとおり、1人あたり人件費は以下の2つの方法で計算できます。
- 人件費 ÷ 従業員数 = 30,000,000 ÷ 10 = 3,000,000
- 労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = 75 × 4,000,000 ÷ 100 = 3,000,000
1人あたり人件費を計算するだけであれば、上の1つ目の計算方法で簡単に計算できます。ただし、どのように1人あたり人件費を増やすか、または下げるか(従業員としては歓迎できないとは思いますが)を考えるときに、要素を分解して考えるには2つ目の計算式で考えるのが有効だということです。
【記事の執筆と監修について】
この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓
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