PBR(株価純資産倍率)の意味とは?目安もわかりやすく解説

2023.09.20

PBR(株価純資産倍率)

PBR(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析する指標のひとつです。会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表しています。

本記事では、PBRの意味や目安についてわかりやすく解説します。

目次

PBRの3つのポイント

  • PBRとは、企業の成長性分析の指標の一つであり、会社の資産に対して株価が適当な水準であるのかを表すものである。
  • PBRは以下の算式によって求める。

    PBR(倍) = 株価 ÷ BPS(1株あたり純資産)

  • PBRが1倍であれば、その段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表している。

PBRの計算方法

PBR(株価純資産倍率、Price Book-Value Ratio)は、株価を1株あたりの純資産額で割って求めます。たとえば、株価が1000円で、BPS(1株あたり純資産)が800円の会社なら、PBRは1.25倍(1000円 ÷ 800円)となります。

PBR(倍) = 株価 ÷ BPS(1株あたり純資産)

PBRを調べる方法

計算式からわかるように、PBRを調べるにはその会社の株価や1株あたり純資産が必要です。株価は、日本取引所グループや各証券会社のサイトなどで確認できます。

また、1株あたり純資産を確認できる資料は、有価証券報告書や決算短信です。有価証券報告書や決算短信は、対象会社のホームページや、EDINETなどで確認できます。

ただし、有価証券報告書の提出義務があるのは、上場会社や一部の条件を満たす非上場会社に限られています。そもそも、非上場会社の株価は客観的に評価すること自体が困難です。基本的に、非上場のPBRは調べにくいことを理解しておきましょう。

参考:日本取引所グループ「株価検索」
参考:金融庁 EDINET「書類簡易検索」

PBRからわかること

PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。

PBRの目安は1倍以上

一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
※理論上の話であり、会社が解散した場合に本当に還元されるかどうかは別の話です。

PBRが1倍割れの場合

PBR(株価純資産倍率)が1倍を割るということは株価がBPSを下回るということであり、理論上はあり得ないことですが、実際にはPBRが1倍割れしている会社はたくさんあります。PBRが1倍を下回る場合は、仮に投資段階で会社が解散した場合、投資額以上のお金が戻ってくる計算になります。

PBRとPERの違い

株価が適正価格であるかどうかを判断するために、PBR(株価純資産倍率)とともに重視される指標として「PER (株価収益率)」という指標があります。PBRは会社の「資産」を基準に株価が適正価格かどうかを判断するものですが、PERは会社の「利益」を基準に判断します。

PBRを重視する投資家は会社の資産を重視しており、PERを重視する投資家は会社の収益性に期待しているとも言えるでしょう。

PERの逆数 × PBRはROEになる

「PBR = ROE × PER」の関係が成り立つため、PBRにPERの逆数をかける(PERで割る)ことでROEを計算できます。具体的な計算式は、以下のとおりです。

ROE(%) = PBR ÷ PER × 100

ROE(自己資本利益率)とは、株主が出資した資金を元手に会社がどれだけの利益を出したか示す指標です。ROEが高ければ資本をうまく活用して、効率よく稼いでいることを意味します。

たとえば、PBRが1.25倍でPERが15倍の場合、ROEは約8.3%です。一般的に、ROEが10%を超えていれば投資価値のある優良企業に該当します。

PBR・PERと株価を確認する際の注意点

PBRやPERと株価を確認する際の注意点は、以下のとおりです。

  • 同じ業界の企業を比較する
  • 短期的な株価変動に対応できない
  • あくまで帳簿上の数値と理解しておく
  • PBRは創業期だと高い
  • 銀行のPBRは低くなりやすい

各注意点を解説します。

同じ業界の企業を比較する

PBRを比較する場合、同じ業界の企業の数値を確認するようにしましょう。なぜなら、PBRは業界によって平均値が大きく異なるためです。

たとえば、2023年3月期(プライム市場)では、情報・通信業のPBRが2.2倍であるのに対し、銀行業は0.3倍しかありません。また、PERも、医薬品は21.8倍であるのに対し、非鉄金属業は7.1倍と大きく異なります。

そのため、条件が近い同じ業界同士でPBRやPERを比べることで、より正確に会社の実態を把握できるでしょう。

参考:日本取引所グループ「その他統計資料 規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧 2023年3月」

短期的な株価変動に対応できない

PBRやPERは、短期的な株価変動に対応できない点にも注意しましょう。

有価証券報告書は、年に1度提出する書類です。また、決算短信でも1年に4回しか公表されません。

それに対して、株価は日々変動する指標です。とくに短期的に大きく変動した場合に、数か月前の1株あたり純資産や1株あたり純利益を使っても、会社を適切に分析できないでしょう。

あくまで帳簿上の数値と理解しておく

PBRやPERは、あくまで帳簿上の数値である点も理解しておきましょう。

仮にPBRが1倍未満であれば、その会社が解散しても投資額以上の金額が戻ってくることを意味します。しかし、帳簿どおりの価格で売却できるとは限りません。PBRが1倍未満であるにもかかわらず、投資した金額を下回る額しか戻らないこともあるでしょう。

PERも、計算する期に特別利益や特別損失が発生したことで当期純利益が変動し、大きく数値が左右されることがあります。特殊な事情があった期の数値を利用すると、その会社のPERを適切に分析できないでしょう。

PBRは創業期だと高い

創業期の会社はPBRが高くなりやすい点にも注意が必要です。PBRは会社の成長フェーズによっても、差が生じます。

創業期の会社の多くは借入れが多くなるため、負債比率が高くなり、純資産比率が低くなりやすいです。そのため、PBRも高くなる傾向にあります。

銀行のPBRは低くなりやすい

銀行のPBRは低くなりやすい点にも注意しましょう。すでに紹介したとおり、2023年3月期(プライム市場)における銀行業のPBRは0.3倍でした。

PBRとはまとめ

PBRとは、株価を1株あたりの純資産額で割って計算する数値です。PBRを確認すれば、その企業の資産に対して株価が高いのか安いのかを判断できます。

ただし、業界によって状況が異なるため、PBRを比較する際は同業種の企業のデータを使うことが大切です。また、あくまで帳簿上の数値である点も理解しておかなければなりません。

注意点を理解した上で、自社や投資対象の企業のPBRを分析してみましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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