ROEとは?計算方法や目安、高め方、ROAとの違いを解説

更新日:2025年01月03日

ROEとは

ROEとは、企業がお金を稼ぐ効率性を示す指標です。この記事ではROEの概要や計算式、よく似た指標であるROAとの違いを解説します。ROEの活用方法を知れば、企業の収益性を確認できるようになります。指標を使った企業分析にチャレンジしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

ROE(自己資本利益率)とは?基本事項を確認

ROE(Return On Equity:自己資本利益率)とは、企業が保有する自己資本(純資産)を元手に、どれだけの利益を挙げたかを示す指標です。ROEを知れば、企業の財務分析に役立てられます。

ここではまずROEの基本である計算式と、ROEからわかることを見ていきましょう。

ROEの計算式

ROEの計算式は、以下のとおりです。

ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

当期純利益とは、会社が事業年度の営業活動で株主全体にもたらした利益です。税引前当期純利益から、法人税や住民税および事業税、法人税等調整額を差し引いて求めます。

自己資本とは、企業が調達した資金(総資本)のうち返済義務がない資金です。一例としては、株主などから調達した資本金や利益剰余金が挙げられます。

例えば、自己資本が5,000万円で当期純利益が500万円の会社のROEは、10%(500万円÷5,000万円×100)と計算できます。

ROEでわかること

ROEは、企業がどれだけ効率良く利益を生み出したかがわかる指標です。一般的にROEが高いほど経営効率が良く、低いほど経営効率が悪いとされます。

一例を以下で確認しましょう。

A社 B社
自己資本 5,000万円 4億円
当期純利益 600万円 4,000万円
ROE 12%
(600万円÷5,000万円×100)
10%
(4億円÷40億円×100)

A社とB社を比較すると、B社のほうが10倍近い資本金を保有していますが、一方で企業の収益性はB社よりもA社のほうが大きいことがわかります。

このように、会社の大きさや資本力に関わらず収益力や経営効率を測れるのが、ROEの特徴といえます。

ROEの一般的な目安は10%

ROEを有効に活用するには、目安も知っておく必要があるでしょう。ROEの目安は、一般的に8~10%といわれます。また、10%を超えると優良企業と考えられます。

経済産業省が発表した事務局設営資料によると、2019年の日本企業のROEの平均は9.4%です。なお、アメリカ企業の平均ROEは18.4%、欧州企業は11.9%と日本よりも高い水準となっています。日本企業のROEも以前より上昇してはいるものの、先進国と比較するとまだまだ低い水準といえるでしょう。

なお、ROEは業種によっても差があります。一例を挙げると、少ない自己資本で利益を生み出せるIT業はROEが高く、多額の資金を必要とする金融業はROEが低くなる傾向にあります。そのため、ROEを見る際は同業他社の数値と比較することが肝心です。

参考)経済産業省 事務局説明資料

ROA(総資産利益率)とは?

ROEと混同されがちな指標に、ROA(Return On Assets:総資産利益率)があります。ROAとは、総資産に対してどのくらいの利益を生み出せているかを示す指標です。一般的にROAが高い企業ほど、資産を有効に使って利益を創出しているとされます。

ROEとROAを併せてチェックすれば、より細かい企業分析が可能になります。ここでは、ROAの計算式や目安、ROEとの違いを詳しく見ていきましょう。

ROAの計算式

ROAの計算式は、以下のとおりです。

ROA(%)=利益÷総資産×100

総資産とは、会社のすべての資産を合算したものです。総資産の値は、自己資本と負債を合わせた総資本と一致します。一例を、以下で確認しましょう。

A社 B社
総資産 1億円 1,000万円
利益 1,000万円 200万円
ROA 10%
(1,000万円÷1億円×100)
20%
(200万円÷1,000万円×100)

A社とB社を比較すると、A社はB社の5倍の利益を生み出しています。一方で、B社のROAはA社の2倍です。つまり、B社はA社よりも利益額は少ないものの、資産を上手に活用した効率が良い経営ができていると考えられるでしょう。

ROAで使う3つの利益

ROAの計算に会社の利益を用いることは、先述のとおりです。一口に利益といっても、会社にはさまざまな利益があります。計算にどの利益を使うかによって、分析できることが変わるため、ROAをより効果的に使うには目的に合ったものを選ぶことが肝心です。

ROAで使用される代表的な利益は、以下の3つです。

  1. 当期純利益
  2. 営業利益
  3. 経常利益

ここでは、3つの利益の概要と算出方法を解説します。

1.当期純利益

当期純利益とは、一会計期間における企業の最終的な利益です。当期純利益の求め方は、次のとおりです。

当期純利益=税引前当期純利益-法人税等(法人税+住民税+事業税など)+(または-)法人税等調整額

当期純利益は、株主の取り分となる利益です。そのため、当期純利益を用いたROAは、株式投資において投資先を評価するときに多く使用されます。

2.営業利益

営業利益とは、本業の営業活動から創出された利益です。営業利益を使いROAを求めれば、資産を活用しどれだけ本業で利益を生み出したかがわかります。算出方法は、次のとおりです。

営業利益=売上総利益(売上高-売上原価)-販売費及び一般管理費

営業利益は、魅力的なビジネスモデルや経営者の経営能力、従業員の事業遂行能力があって初めて成果が現れます。そのため、営業利益が高い会社は企業としての価値が高いと判断できます。

本業の収益性や、企業の将来性を測りたいときは営業利益を基にROAを計算しましょう。

3.経常利益

経常利益とは、事業全体から経常的に得た利益です。経常利益を基にROAを求めると、総資産を事業活動全体にどれだけ活かせているかがわかります。経常利益は、次の式で計算します。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益-営業外費用

営業外収益とは、企業が本業以外から経常的に得ている収益です。営業外収益の一例には、以下が挙げられます。

  • 受取利息
  • 受取配当金
  • 有価証券評価益
  • 不動産賃貸料
  • 雑収入

営業外収益は、あくまでも通常の事業活動から継続的に得られる利益です。そのため、有価証券の売却益といった一過性の利益は、営業外利益には該当しません。

ROAの一般的な目安は5%

ROAの一般的な目安は5%程度とされ、これを超えると優良企業といわれます。ただし、ROAもROEと同様に業界によって平均水準が異なるため、一概にはいえません。

経済産業省が発表した2021年企業活動基本調査確報によると、業界別のROAの目安は、以下のとおりです。

業界 ROA(%)
全体 2.9
鉱業、採石業、砂利採取業 -7.3
製造業 3.4
飲料・たばこ・飼料製造業 4.1
繊維工業 0.5
木材・木製品製造業(家具を除く) 3.0
パルプ・紙・紙加工品製造業 2.3
印刷・同関連業 2.2
化学工業 4.3
石油製品・石炭製品製造業 3.5
電子部品・デバイス・電子回路製造業 3.9
電気・ガス業 0.8
情報通信業 6.1
ソフトウェア業 7.7
情報処理・提供サービス業 5.8
出版業 4.7
卸売業 3.4
小売業 2.5
クレジットカード業、割賦金融業 0.8

電気・ガス業といった工場や機械など多額の設備投資が必要な業種は、借入金も含めた総資産が大きくなるため、ROAは低くなる傾向があります。一方、情報通信業やソフトウェア業、情報処理・提供サービス業など、少ない設備で利益を生み出せる業種は、数値が高くなります。

参考)経済産業省 2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-

ROEとの違い

ROEとROAの違いは、分母に何を置くかです。どちらも収益性を表す指標ですが、ROEは自己資本、ROAは自己資本に負債も合わせた総資産を分母として計算します。

投資家から集めた資本金や余剰金などを基に算出されるROEは、投資家へのリターンを測る際に有効です。一方、自己資本だけでなく金融機関からの借入金なども含めた総資産を基に計算するROAは、経営の健全性を知りたいときの参考になります。

投資の判断材料として指標を見るときには、ROEとROAの両方をチェックすることで、より深い経営分析ができるでしょう。

ROEを見る際の注意点

ROEを見るときに念頭に置いておきたいのは、自己資本には負債(他人資本)が含まれない点です。負債には、以下が該当します。

これらの負債には、返済義務があります。万が一期日に返済ができないと、たとえ黒字の会社でも倒産するかもしれません。そのため、企業の経営状態を確認するときには、負債も見る必要があるのです。

負債を考慮した指標を活用したいのであれば、先述のROAが便利です。ROEとROAを併せて見るときのポイントを、以下で確認しましょう。

ROEが高くROAが低い 大きな負債を抱えている可能性がある
ROAが高くROEが低い 財務レバレッジを活用できていない可能性がある

ROEが高くROAが低い場合は、大きな負債を抱えている恐れがあります。負債額によっては、資金ショートや倒産が発生する可能性があることは覚えておきましょう。

また、ROAが高くROEが低い会社は、財務レバレッジを活用できておらず、積極的な経営が期待できないかもしれません。財務レバレッジについては、次項で詳しく解説します。

ROEを高める3つの方法

先述のとおり、日本企業のROEの平均は10%程度です。自社の数値がそれよりも低い場合は、高める施策をとりたいと考える方もいるでしょう。ここでは、ROEの向上が見込める以下の3つの方法を解説します。

  1. 収益性を上げる
  2. 総資産回転率を高める
  3. 財務レバレッジを向上させる

これらの方法を実現すれば、当期純利益の増加または自己資本の減少によりROEの向上を目指せます。ここでは、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

1.収益性を上げる

収益性が上がれば、当期純利益の増加も期待できます。収益性を上げる施策の一例には、以下の方法があります。

収益性を上げる方法 具体的な施策
売り上げを伸ばす
  • 新規顧客獲得に向けたプロモーションの実施
  • 客単価アップを目指す価格の見直し
  • マーケティングによる顧客ニーズの
コストを削減する
  • リースやレンタル品の見直し
  • ペーパーレス化による消耗品費などの削減
  • 給与体系の見直し
  • テレワークやリモートワークの導入

収益性を上げるための施策は、すぐに効果が出るものから継続が必要なものまでさまざまです。自社の現状と照らし合わせ、取り組みやすいものから実施しましょう。

2.総資産回転率を高める

総資産回転率を高めることも、ROEの向上につながります。総資産回転率とは、総資産を活用してどれほどの売上高を生み出したかを測る指標です。

総資産回転率は、以下の式で計算します。

総資産回転率(回転)= 売上高 ÷ 総資産

総資産回転率を高めるには、売上高の増加または総資産(自己資本+負債)の減少が必要です。これは、ROEが高まる条件と合致します。そのため、総資産回転率が高まれば、おのずとROEの上昇も見込まれます。

3.財務レバレッジを向上させる

財務レバレッジの向上も、ROEを上昇させる方法の1つです。財務レバレッジとは、総資産に対する他人資本の割合です。

金融機関の借入といった負債を増やし、総資産に占める自己資本の割合を減らす施策をとれば、自然とROEは上昇します。

中には、負債を増やすことに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、借り入れた資金で設備を調達し事業拡大や新規事業参入を実現できれば、今まで以上の利益を生み出せる可能性も十分あるでしょう。

とはいえ、負債を増やし過ぎると財務は不安定になります。財務レバレッジの向上を目指すのであれば、自己資本と負債のバランスを見ながら進めることが重要です。

ROEまとめ

ROEとは、自己資本を元手にどれだけの利益をあげたかを示す指標です。株主からの資本金を基に計算するため、投資家へのリターンが読み取れるとされます。

ROEとよく似た指標に、ROAがあります。企業の収益性を測る点はどちらも同じですが、ROAは総資産を基に算出するため、経営の健全性を知りたいときに便利です。

ROEの一般的な目安は、10%程度です。一方、ROAの目安は5%とされます。どちらも、業界によって平均値に差があるため、同業他社の指標と比較して見ることが重要です。

ROEが高い企業は経営効率が良い優良企業とされますが、同時にROAが低い場合は大きな負債を抱えており、財務状況が不安定なケースもあります。ROEとROAの両方を活用し、経営や財務状態の多角的な分析を目指しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

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