自己資本比率とは?計算式と目安をわかりやすく解説

更新日:2024年02月29日

自己資本比率とは

自己資本比率は、会社の貸借対照表の総資本のうち、どの程度が自己資本(純資産)でまかなわれているかを表した指標です。調達した資金のうち、返済義務のない資金の割合ともいえるでしょう。

本記事では、自己資本比率とは何かを説明した上で、計算式と目安をわかりやすく解説します。

目次

自己資本比率とは

自己資本比率とは、会社の中長期的な安全性を分析する指標のひとつです。ここから、自己資本比率の概要や、計算方法などを解説します。

自己資本比率の概要

自己資本比率とは、企業の財務体質の健全性を図る尺度のひとつです。総資本のうち、新株予約権を除く純資産の占める割合(%)を指します。

2018 年度の非製造業は、純資産の対前年度増加率が総資本の増加率を下回る一方で、製造業は純資産の対前年度増加率が総資本の増加率を上回ったため、全産業で見た自己資本比率は前年度比で上昇しました。

参考:財務省「自己資本比率」

自己資本比率の計算方法

一般的に、自己資本比率の計算式は、以下のとおりです。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本(自己資本 + 他人資本) × 100(%)

ただし、自己資本から新株予約権を差し引いて求めることもあります。

自己資本とは、事業で得た利益や株主から調達した資金などのことです。自己資本は基本的に返済する必要がありません。

また、総資本は自己資本に他人資本を加えたものを指します。他人資本とは、銀行からの借入金や社債のように、株主以外から調達した資金です。

貸借対照表における自己資本比率の見方

自己資本比率を計算する際に使う自己資本・他人資本・総資本は、貸借対照表で確認できます。貸借対照表とは、財務3表のひとつの帳票です。

自己資本は、貸借対照表の右下にある「純資産の部」を指します。また、他人資本とは、貸借対照表の右上にある「負債の部」のことです。

つまり、貸借対照表の純資産の部と負債の部を足せば、総資本を算出できます。また、貸借対照表の左にある「資産の部」と総資本が一致する点もポイントです。

参考)純資産とは

参考)負債とは

参考)資産とは

自己資本比率で分かる企業の安定性

自己資本比率を確認すれば、その企業の安定性がわかります。自己資本比率が高い企業と、低い企業の特徴を確認していきましょう。

自己資本比率が高い企業

自己資本比率が高い企業は、総資本のうち返済しなければならない負債(他人資本)によってまかなわれている部分が少ないため、一般的に健全性(安全性)が高いといえるでしょう。

自己資本比率が高ければ、借入金に対する依存度が低いため、返済に右往左往せず安定した経営ができます。ただし、いくら自己資本比率が高くても、手元資金がなければ倒産しかねないため、注意が必要です。

参考)黒字倒産とは

自己資本比率が低い企業

自己資本比率が低い企業は、総資本のうち返済しなければならない負債によってまかなわれている部分が多いため、一般的に健全性が低いといえるでしょう。

金融機関からの借入(他人資本)に依存しているため、返済期日が到来した際に資金繰りを圧迫します。予期せぬ支出が発生した場合に、支払いが困難になる可能性も高いです。

参考)資金繰りとは

自己資本比率が高すぎる企業とは?

自己資本は高ければ高いほど健全性・安全性が高いことを意味しますが、高すぎる企業にも注意が必要です。たとえば、自己資本比率が100%の企業は、他人資本がまったくない無借金経営であることを意味します。

無借金経営の(自己資本比率が高すぎる)企業は、毎月返済に追われない、利息を払う必要がない点などが強みです。ただし、金融機関との付き合いがないため、急な資金需要が出ても借入で対応しにくいでしょう。

自己資本比率を重視しすぎず、バランスよく考えることが大切です。

参考)借入金とは

自己資本比率の目安

自己資本比率は、20~30%が目安で、50%を超えていると理想的とされることが一般的です。ただし、業種によっても目安や平均値が異なる点に注意しましょう。

2020年度における主な業種ごとの自己資本比率平均をまとめました。

業種 自己資本比率(%)
製造業 50.5
鉄鋼業 40.0
非鉄金属製造業 38.1
電気・ガス業 25.1
情報通信業 50.5
卸売業 40.2
小売業 43.2
飲食サービス業 36.7
生活関連サービス業、娯楽業 36.5

なお、全業種合計の平均値は、41.5%でした。

参考:経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績- 付表6」

自己資本比率を上げる方法

自己資本比率を上げる具体的な方法は、以下のとおりです。

  • 自己資本を増やす
  • 総資本を減らす

それぞれ解説します。

自己資本を増やす

計算式における分子にあたる自己資本を増やせば、自己資本比率を上げられるでしょう。たとえば、経営者自ら資金を出して会社に出資すれば、自己資本を増やせます。

また、利益剰余金を出すことでも自己資本増加につながるでしょう。利益剰余金とは、会社の利益を積み立てたお金のことです。経営する事業において利益を得られれば、利益剰余金の増加・自己資本の増加につながります。

総資本を減らす

計算式における分母にあたる総資本を減らすことで、自己資本比率を上げる方法もあります。総資本を減らすには、借入金を返済することや、遊休資産・投資有価証券などを処分することがポイントです。

また、棚卸資産を見直すことも、総資本の減少につながります。長期間利用していない材料や商品を処分すれば、総資本も減少するでしょう。

参考)棚卸資産とは

自己資本比率まとめ

自己資本比率とは、総資本のうち新株予約権を除く純資産の占める割合を示した、企業の財務体質の健全性を図る尺度です。自己資本比率を確認すれば、企業の安全性や健全性がわかります。

自己資本比率が低い企業は、金融機関からの借入に依存しているため、返済期日が到来した際に資金繰りを圧迫しかねません。数値が極端に低い場合は、自己資本を増やす、総資本を減らすなどによって自己資本比率の改善を計りましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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