EPS(1株当たり利益)とは?計算式や注意点について詳しく解説
更新日:2023年11月16日
EPS(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析する際に用いる指標を指します。対象企業の利益や発行済株式数が、値が変動する主な要因です。
本記事では、EPSを計算する方法や注意すべきことを詳しく解説します。
目次
EPS(1株当たり利益)とは
EPS(Earnings Per Share)とは、日本語で「1株当たり利益」を意味する指標です。一会計期間における会社の成果を示す指標のため、主に、企業の収益力を判断する際に使われています。
また、PER(株価収益率)の計算にも使われており、気になる会社の株価が割高か、割安かを判断する上でも重要な指標です。
EPS(1株当たり利益)の計算
EPS(1株当たり利益)の計算式は、以下のとおりです。
EPS(円) = 当期純利益 ÷ 発行済株式総数
EPS(1株当たり利益)は、会社が1年間に上げた利益を発行済株式総数で割って求めます。ただし、ここで言う利益は必ずしも当期純利益とは限らず、翌期以降の予測値を使って求めることもあります。
たとえば、2万株発行している会社が年間で1000万円の純利益を上げた場合、EPSは500円(1000万円÷2万株)となります。
EPSから何が分かる?
EPSは、会社の規模にかかわらず1株当たりの当期利益の大きさを表しており、値が大きいほど良いとされることが一般的です。当期の1株当たり利益を前期以前のものと比較することで、会社の収益性や成長度をおおむね把握できます。
また、他社と1株当たり利益を比較することで、会社規模の影響を除外した収益性の分析も可能です。そのため、株式投資で銘柄の比較を行う際にも用いられます。
EPS(1株当たり利益)が増減する要因
EPSは、純利益や発行済株式数によって増減します。ここから、EPSが増加する要因と減少する要因について、確認していきましょう。
EPS(1株当たり利益)が増加するとき
発行済株式数が変わらないまま会社の利益が増加した場合、EPSも増加します。なぜなら、EPSの計算式において、分母がそのままで分子だけが大きくなるからです。
利益が変動しなくても、発行済株式数が減少すれば分母が小さくなる(分子はそのまま)ため、EPSは増加します。発行済株式数が減少する主なケースは、自社株買い(会社が自社の株式を買い戻すこと)です。
EPS(1株当たり利益)が減少するとき
発行済株式数が変わらないまま会社の利益が減少した場合や、利益がそのままで発行済株式数が増加した場合は、EPSが減少します。発行済株式数が増加するのは、対象の会社が第三者割当増資した場合や株式分割した場合です。
第三者割当増資は特定の第三者に新株を引き受ける権利を付与して増資すること、株式分割は発行済の株式を分割することを指します。
EPSを見るときの注意点
EPSを見る際の注意点は、以下のとおりです。
- 利益が上がれば高くなるわけではない
- EPS成長率も確認する
それぞれ解説します。
利益が上がれば高くなるわけではない
利益が上がればEPSが必ず高くなるとは限りません。なぜなら、EPSは利益だけでなく、発行済株式総数の増減によっても変動するからです。仮に利益が上がっても、発行済株式総数が増えていれば、EPSが減少(もしくは現状維持)することがあるでしょう。
同様の理由で、利益が下がっても発行済株式総数が減少すればEPSが増加することがあります。あくまで参考の指標ととらえ、数値だけ見て一喜一憂しないようにしましょう。
EPS成長率も確認する
EPS成長率もセットで確認するようにしましょう。EPS成長率は、EPSが前年と比べてどれくらい(何%)成長したかを示す指標です。0%を上回っていれば、一般的に会社が成長傾向、下回っていれば後退局面にあると判断できます。
EPS成長率の計算式は、以下のとおりです。
EPS成長率(%)=(当期EPS - 前期EPS) ÷ 前期EPS × 100
たとえば、当期EPSが121で前期EPSが110の場合、EPS成長率は10%です((121 - 110) ÷ 110 × 100)。
他社のEPS(1株当たり利益)を調べる方法
自社と比較するために他社のEPSを調べる際は、「有価証券報告書」を確認しましょう。有価証券報告書とは、会社の概況や事業・設備の状況などを盛り込んだ書類です。
一般的に、有価証券報告書の「第1【企業の概況】1【主要な経営指標等の推移】」や、「第5【経理の状況】」にEPSに関するデータが記載されています。ただし、調べる会社が非上場会社の場合、有価証券報告書を確認することは難しいです。
EPS(1株当たり利益)と関係の深い指標
EPSと関係の深い指標として、以下が挙げられます。
- PER(株価収益率)や株価
- 配当性向
- ROE(自己資本利益率)
それぞれの概要や、EPSとの関係について紹介します。
PER(株価収益率)や株価
PER(株価収益率)とは、株価がEPSの何倍の価値かを示す指標です。以下の計算式で求められます。
PER(倍) = 株価 ÷ EPS
また、上記の式を展開した、株価を求めるための式が以下のとおりです。
株価(円) = EPS × PER
株価を求める計算式から、PERに変動がない限り、EPSが上がれば株価も上がり、EPSが下がれば株価も下がることが分かります。
配当性向
配当性向とは、会社が利益のうちどれだけを配当金に回したかを示した指標です。一般的に、配当性向が高いほど株主への利益還元を重視している会社といえるでしょう。
配当性向の計算式は、以下のとおりです。
配当性向(%) = 1株当たり配当額 ÷ EPS × 100
計算式から分かるように、配当性向はEPSを使って求められます。
ROE(自己資本利益率)
ROE(自己資本利益率)とは、企業の自己資本に対する当期純利益の割合を示した指標です。ROEを確認すれば、投資家が投下した資本を使って会社がどれだけの利益を出したかが分かります。
一般的に、ROEが高いほど経営効率が高いです。ROEは、EPSと BPSを使って以下のように計算できます。
ROE(%) = EPS ÷ BPS × 100
なお、BPSとは、主に会社の安定性を判断する際に使われる「1株当たり純資産」のことです。
EPSまとめ
EPS(1株当たり利益)とは、一会計期間における会社の成果を示す指標で、主に企業の収益力を判断する際に用いられます。EPSは、利益が増加した際に上がり、利益が下がった場合に下がる可能性が高いです。
ただし、発行済株式もEPSの変動要因になる点に注意しましょう。また、EPSだけでなくEPS成長率もチェックすることがポイントです。
EPSは上場会社の有価証券報告書を読めば分かります。さっそく同業種の企業のEPSを確認してみましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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