PER(株価収益率)の意味とは?計算式や目安を紹介

2023.07.13

株価収益率(PER)

PER(株価収益率)の数値は、対象企業の株価が1株あたり利益の何倍かを示しています。ただし、業種によっても目安が異なるため比較する際には注意が必要です。本記事では、PERの意味や計算式についてわかりやすく解説します。

目次

PER(株価収益率)とは何かわかりやすく解説

PERとは、企業を分析する際に使う指標のひとつです。ここから、PERの意味や判断基準について確認していきましょう。

PERの意味

PERはPrice Earnings Ratioを略した言葉で、株価収益率という意味です。具体的に、PERの数値は、対象企業の株価が1株あたり利益の何倍かを示しています。

PERが活用されるのは、投資判断や自社・競合他社の財務状況を分析するなどの場面です。また、企業の成長性を判断する際にも活用することがあります。

PERは株価が割高か割安かの判断材料

PER(株価収益率)は、会社の利益に対して、現在の株価が割高か割安かを表しています。PER(株価収益率)が低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高ということになります。

PER(株価収益率)が高いということは人気がある銘柄だと見ることができ、株価が割高な分、投資効率が低いと判断できます。

PERは高い方がよい?低い方がよい?

PERが高い方がよいか、低い方がよいかは、それぞれの立場や目的によって異なります。

たとえば、お得に株を購入したい場合はPERが低い銘柄に注目するとよいでしょう。ただし、PERが低くても今後の成長性が期待できなければ、投資に適さない可能性があります。

また、自社の財務状況を調べてPERが高い場合、それだけ投資家からの期待度が高いとも取れるため、必ずしも悪いとは言い切れません。

PERの目安

PERは、何倍以下が割安で、何倍以上が割高といった明確な基準はありません。たとえば、ある会社のPERが5倍だとしても、競合他社も5倍程度であれば、低いとも高いとも言えません。

適切なPERは、業界の水準や他の銘柄の価値と比較しながら判断する必要があります。明確な目安はありませんが、30~40倍であればその株式は適正だと言われています。これを超えると割高、下回ると割安です。

なお、日経平均株価のこれまでのPERを考慮して、15倍を目安とすることもあります。

PER(株価収益率)の求め方(計算式)

PER(株価収益率)の求め方(計算式)は、以下のとおりです。

PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)

PER(株価収益率)は、株価を1株あたり純利益で割って求めます。この計算で用いる「1株当たり利益(EPS)」は、実績値より予測値を用いるのが一般的です。

株価収益率は、その時点での株価がEPS(1株当たり利益)の何倍なのかを示しています。基本的には株価が上昇すると株価収益率も上昇し、株価が下降すると株価収益率も下降します。また、1株当たり利益が上がると株価収益率は下がり、1株当たり利益が下がれば株価収益率が上がります。

PERを計算してみよう

A社(株価800円、1株当たり利益:100円)とB社(株価400円、1株当たり利益:100円)の例で、PERを計算してみましょう。

800円÷100円でA社のPER(株価収益率)は8倍、400円÷100円でB社のPER(株価収益率)4倍です。そのため、一般的にPERが低いB社のほうが株価が割安だと考えられます。

PERの数値が高いときの原因

PERの数値が高い(大きい)場合、分母である「1株あたり利益」と比べて分子の「株価」が高いことが考えられます。投資家からの期待によって株価は上昇するため、今後の成長可能性がある企業が該当することが一般的です。

ただし、分母の「1株あたり利益」が低下することでPERが高くなることもあります。その場合は、なぜ利益が低下したのか確認することが大切です。

PERの数値が低いときの原因

PERの数値が低い(小さい)場合、分母の「1株あたり利益」が上昇している可能性があるでしょう。この場合、投資家は安い株価でより多くの利益を期待できます。

一方、分母である「1株あたり利益」と比べて分子の「株価」が低くPERが低くなっていることもあるでしょう。投資家の需要がなく売却され続けると株価は下がるため、対象企業の業績が不安定、リスクを抱えているなどの可能性もあります。

他社のPERはどこで確認できる?

他社のPERを確認するためには、以下の方法があります。

  • 証券会社のHPや投資情報サイトチェック
  • EDINETなどで有価証券報告書を確認

なお、上記は基本的に上場会社の数値を調べるための方法です。非上場会社の場合、決算情報を公開していない点、明確な株価が存在しない点などがからPERを把握することは難しいでしょう。

証券会社のHPや投資情報サイトチェック

証券会社のホームページには、各社の予想PERや実績PERが掲載されています。ネット証券などにアクセスし、調べてみましょう。

また、投資家向けに経済情報や市況などを提供する投資情報サイトも存在します。大手メディアなどが運営する投資情報サイトでも、予想PERを確認できるでしょう。

ただし、投資情報サイトは有料登録が必要なケースもあります。

EDINETなどで有価証券報告書を確認

EDINETやTDnetなどを利用して有価証券報告書を確認し、PERを知ることもできます。EDINETは金融庁による有価証券報告書などの開示書類に関する電子開示システムで、TDnetは東京証券取引所が提供する上場会社情報の開示システムです。

一般的に、有価証券報告書の「第1企業の概況」にある「主要な経営指標等の推移」の中にPERや株価収益率などと記載されています。

参考:Edinet「書類簡易検索」
参考:TDnet「適時開示情報閲覧サービス」

PERを活用する場面

主に以下の場面で、PERを活用します。

  • 企業価値評価に使う
  • 株式投資の判断基準にする

それぞれ確認していきましょう。

企業価値評価に使う

M&Aの企業価値評価で、PERが役立つことがあります。企業価値評価とは、対象企業に関する情報に基づき、株主や債権者にとっての価値を算定することです。

具体的に、企業評価手法のうちマーケットアプローチのマルチプル法(類似会社比較法)において、PERを使います。マルチプル法は、類似する企業の平均的な企業価値から対象企業の価値を判断する方法です。

株式投資の判断基準にする

株式投資の判断基準として、PERは有効です。

会社の余剰資金を運用する場合や、経営者や従業員が将来を見据えて資産運用をはじめる場合に、株式投資にお金をまわすことがあるでしょう。株式投資でどの銘柄を購入すべきか判断できない場合、PERをチェックして割高か割安か確認することがポイントです。

ただし、いくら割安でも将来株価が伸びるとは限らない点に注意しましょう。

PERを活用する際の注意点3つ

PERを活用する際に、以下の点に注意しなければなりません。

  1. 赤字だと使えない
  2. 同じ会社もしくは同業他社で比較する
  3. 特殊な事情でPERが上昇することがある

ここから、3つの注意点を詳しく解説します。

1. 赤字だと使えない

赤字の企業は、PERで分析できない点に注意しましょう。利益が赤字だと分母がマイナスになるため、割高・割安を適切に測定できない点が主な理由です。

企業によっては、一時的に利益が赤字になることがあります。その場合は、予想PERで比較するとよいでしょう。

予想PERとは、株価を予想利益で割って算出する指標です。ただし、予想PERを活用する際は、さまざまな事情から予想利益が大幅に変更になることがある点に注意しなければなりません。

2. 同じ会社もしくは同業他社で比較する

業種ごとに目安の数値が異なるため、主に同じ会社の推移や同業他社との比較でPERを用いるようにしましょう。たとえば、成長局面にある情報・通信業は全体的にPERが高い傾向にあります。

また、同じ会社の推移を確認する際は、直近だけで判断しないようにしましょう。次に述べるように、特殊な事情でPERが上昇(下落)するだけのケースがあるためです。

3. 特殊な事情でPERが上昇することがある

特殊な事情でPERが上昇することがあるため、安易に数値だけで判断しないことが大切です。たとえば、特別利益や特別損失が発生すると、本業の儲けに変動がなくてもPERが大きく変動しかねません。

所有する不動産を売却して利益を得れば、特別利益が発生します。また、特別損失が発生するケースは、帳簿価額を下回る金額で不動産を売却する場合や災害損失などです。

PER以外にも株式・株価に関する指標がある

PER以外にも、株式や株価に関する指標がいくつも存在します。今回は、そのうちPBRとEPSについて、確認していきましょう。

PBRとは

PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、株価純資産倍率を意味する言葉です。株価が1株当たり純資産(BPS)の何倍かを示しています。

PER(株価収益率)は会社の利益を基準に判断するのに対し、PBR(株価純資産倍率)は基本的に会社の純資産を基準に判断する指標です。

ここから、PBRの計算式や具体的な計算例を確認していきましょう。

PBRの計算式

PBRの計算式は、以下のとおりです。

PBR(倍)= 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)

PBRは数値が低ければ割安、高ければ割高と判断されます。従来、1倍を下回るか上回るかで割安・割高の判断がされてきました。ただし、近年1倍を下回る銘柄が増えているため、必ずしも1倍を目安に判断できない点に注意が必要です。

なお、1株あたり純資産は「純資産 ÷ 発行済み株式総数」で計算します。

PBRの計算例

株価が2千円、純資産が1億5千万円、発行済み株式総数10万株の会社で、PBRを計算してみましょう。

まず、1株あたり純資産は、1,500円(1億5千万円 ÷ 10万株)です。続いて、株価を1株あたり純資産で割ると、約1.33倍(2,000 ÷ 1,500)と算出できます。

今回計算した会社は、1倍を目安として判断した場合、割高といえるでしょう。

EPSとは

EPSとはEarnings Per Shareの略で、1株当たり純利益(当期利益や当期純利益)を意味する言葉です。EPSで、1株あたりの利益がどれくらいあるのかを把握できます。

PERは株価をEPSで割った指標のため、株価 = PER × EPS と展開することも可能です。

ここから、EPSの計算式や具体的な計算例を確認していきましょう。

EPSの計算式

EPSの計算式は、以下のとおりです。

EPS(円)= 当期純利益 ÷ 発行済み株式総数

一般的に、EPSの数値が高いほど対象企業の収益力が高く、低ければ収益力が低いです。また、「株価 = PER × EPS」の関係を活用し、将来の株価予測に役立てることもあります。

ただし、EPSはさまざまな要因で変動するため、複数の指標を使い総合的に判断することが大切です。

EPSの計算例

当期純利益が2千万円で、発行済み株式総数が10万株のEPSを計算してみましょう。

当期純利益を発行済み株式総数で割ればよいため、200円(2千万円 ÷ 10万株)と簡単に算出できます。また、仮に翌期増益で3千万円になった場合、発行済み株式総数に変動がなければ、EPSは300円(3千万円 ÷ 10万株)です。

EPSの数値が大きくなると、PERが下落しない限り株価も上昇します。そのため、一般的にこの会社の株価上昇を期待できるでしょう。

PERまとめ

PER(株価収益率)とは、企業を分析する際に用いる指標のひとつです。投資で特定銘柄のPERを同業他社の数値と比較し、割高か割安かを判断することがあります。

ただし、PERは主に自社の業績推移や同業他社との比較に使うものである点、赤字企業には使えない点などに注意が必要です。上場会社であれば、EDINETなどでPERを確認できるため、一度自社と競合他社を比較してみましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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