割賦とは何か~メリット、デメリット、リースやレンタルとの違い~

更新日:2022年04月08日

割賦

割賦(または割賦販売)とは、通常5年以内の契約期間のなかで、物品の購入代金を分割払いで支払い、契約満了後にその資産を受け取れる契約です。今回は、割賦の長所と短所、レンタルやリースとの違いなどについて解説します。

割賦(割賦販売)のメリット

割賦(割賦販売)の長所には、下記の2つが挙げられます。

初期費用を抑えられる

割賦(割賦販売)の長所は、リース契約と同じく初期費用が抑えられる点です。高額な設備機器やシステムを分割で支払いできるため、まとまった資金が用意できない場合にも適しています。

借主に所有権が移転する

割賦(割賦販売)では、購入代金の支払が終わると、その資産の所有権は借り手となる企業に移転します。長期の利用を前提としている設備機器やシステムを、自社の資産として所有したい場合に適しています。

割賦(割賦販売)のデメリット

割賦の短所について詳しく解説します。

中途解約できない

割賦は、中途解約はできません。なぜなら、割賦販売は、契約満了と同時に所有権が移転する契約のためです。中途解約できないことを頭に入れて、慎重に割賦販売の利用を検討しなければなりません。

一括支払いよりも割高

割賦の場合、設備機器の購入代金に加えて、割賦会社に支払う月々の手数料が上乗せされます。一括払いよりも、支払金額が割高になるといったデメリットがあります。

維持費が必要

割賦では契約満了と同時に所有権が借り手に渡りますが、契約中は割賦会社の保留状態となります。そのため、契約中の維持費は借り手が負担しなければなりません。なお、このような契約形態を「所有権留保」と呼びます。

割賦とリース契約の違い

割賦(割賦販売)は、一見するとリース契約と似ていますが違いがあります。割賦とリースの違いは、下記の表の通りです。

▼割賦とリースの違い

リース 割賦販売
契約期間 1年〜10年程度 通常5年以内
中途解約 できない できない
所有権 リース会社 契約者
保守・修繕業務 原則ユーザー ユーザー
頭金 不要 原則必要
契約終了後の扱い 再リースまたは返却 ユーザーの資産

リース契約とは

リース契約とは、利用者が一定額のリース料金を毎月支払うことで、リース会社が所有する設備機器やシステムを利用できる契約形態です。リース契約の対象は多岐に渡り、一例としてはIT機器・ITシステム・事務用品・自動車・大型機械などが挙げられます。

業務に必要な設備機器やシステムなどを自己資金で購入する場合、導入時の初期費用が高額になることも少なくありません。資金に余裕がなければ、借り入れが必要になるケースもあります。また、購入したものを買い替えるハードルも高くなってしまいます。

リース契約であれば、初期費用の負担を抑えられるほか、契約期間が終了すれば導入設備を入れ替えることも可能です。

3種類のリース契約

リース契約は、大きく3種類に分けられます。

  • ファイナンス・リース(所有権の移転あり)
  • ファイナンス・リース(所有権の移転なし)
  • オペレーティング・リース

ここからは、それぞれの契約形態について詳しく解説します。

①ファイナンス・リース(所有権の移転あり)

ファイナンスリースとは、リース会社が企業に代わって設備機器やシステムなどを購入して、企業に貸与する取引です。対象物の購入費用はリース会社が立て替えて、企業はリース料を毎月分割して支払います。

このファイナンスリースの場合、対象物の購入にかかった資金の全額を、リース料金としてリース会社に支払うこと(フルペイアウト)が条件となっています。

また、リース期間中の対象物の所有権はリース会社にありますが、「所有権移転ファイナンス・リース取引」であれば、リース期間終了後に所有権が企業(借り手)に移転します。ただし、全額の支払いが終わるまでは、基本的に中途解約はできません。

②ファイナンス・リース(所有権の移転なし)

リース期間終了後に所有権が移転するファイナンス・リースに対して、リース期間が終了し、全額の支払を終えたあとでも、所有権がリース会社に残る契約もあります。この契約を「所有権移転外ファイナンス・リース取引」といいます。

リース期間終了後も対象物を利用し続けたい場合には、継続してリース料を支払うか、契約対象物を受け取るために買い取り費用を支払わなければなりません。

なお、日本におけるファイナンス・リースのほとんどは、所有権が移転しない「所有権移転外ファイナンス・リース取引」となっています。

③オペレーティング・リース

オペレーティング・リースは、基本的な仕組みとしてはファイナンス・リース契約と同じです。しかし、リース料金の決定方法や支払総額が異なります。

オペレーティング・リースのリース料は、設備機器やシステムの購入代金からリース期間満了時点の「残存価値」を差し引いた金額で決定されます。そのため、ファイナンス・リース契約よりも毎月のリース料金を抑えられます。購入金額のすべてを支払う必要がないため、リース料の支払総額も少なくなることが一般的です。

リース期間終了後は、借りていた設備機器やシステムをリース会社に返却する必要があります。リース期間中・リース期間満了後のどちらであっても、対象物の所有権は企業(借り手)に移転しません。

リースのメリット

リースの主な長所には、以下の3つが挙げられます。

初期費用を抑えられる

設備機器やITシステムといった資産は、費用が高いものも多く、自社で購入するとなれば初期費用が高額になることも少なくありません。リース契約であれば、設備の購入費用をリース会社が立て替えてくれるため、初期費用の負担を大幅に抑えられます。

常に最新の設備を使える

OA機器やIT機器は、次々と最新の製品が発売されています。当時の最新設備を購入したとしても、時間の経過とともに古くなってしまい、買い替えが必要になることがあります。しかし、高額な資金で購入した設備を買い替えることは、企業にとっても大きな負担となるでしょう。

リース契約を利用して設備機器を調達すれば、設備を再度購入する必要がなく、新しい設備に切り替えられます。

リース料を経費として計上できる

設備機器を一括購入すると、長期間にわたって減価償却が必要になります。設備機器の耐用年数に応じて経費を計上するため、コスト管理がしにくくなったり、減価償却の処理に手間がかかったりすることがあります。

リース契約で購入すれば、毎月のリース料をそのまま経費として計上できます。毎月のリース料は一定のため、ランニングコストを把握しやすいというメリットがあります。

リースのデメリット

リース契約にはさまざまな長所がありますが、下記のような短所があることも頭に入れておかなければなりません。

中途解約できない

リース契約には、一定の契約期間が定められています。フルペイアウトの条件がない「オペレーティング・リース」についても、契約期間や中途解約時の違約金について定められていることが一般的です。

そのため、一度リース契約を結ぶと中途解約ができなくなるほか、やむを得ず解約が必要になった場合には、残りのリース料や違約金の支払義務が発生するため注意が必要です。

維持費が必要

リース契約すると、リースした設備機器の保守・修繕義務が課せられます。そのため、メンテナンス費用などは借り手となる企業が負担しなければなりません。毎月のリース料金に加え、メンテナンス費用などの維持費がかかることも把握しておくことが重要です。

一括支払いよりも割高

リース契約をすると、毎月リース料金を支払わなければなりません。このリース料は、その資産の購入費用だけではなく、リース会社への手数料や保険料、金利、固定資産税などが含まれます。そのため、一括払いで自己購入するよりも、リース料金が割高になります。

借主に所有権がない

リース契約は、あくまでもリース会社が購入した資産を“借りる”契約です。そのため、基本的にリース契約中は借り手には所有権がありません。また、リース期間を満了した後も継続して利用する場合、「所有権移転外ファイナンス・リース」「オペレーティング・リース」については再リース料が発生します。

リースとレンタルの違い

リース契約と混同されがちな契約形態に「レンタル」があります。どちらも「資産を借りる」といった点では同じですが、契約期間や解約などについての条件が異なります。

▼リースとレンタルの違い

リース レンタル
対象物の選定 必要な設備機器を選べる レンタル会社の在庫から選定する
契約期間 中期(1年〜10年程度) 短期(1日以上〜数日程度)
中途解約 原則不可 可 ※
所有権 リース会社 レンタル会社
保守・修繕業務 原則ユーザー レンタル会社
料金体系 物品価格×リース料率 一定の料金設定
契約終了後の扱い リース会社に返却するか、再リース契約を締結して延長 返却

※違約金が発生する場合もあります。

レンタルのメリット

リース契約とレンタルにはさまざまな違いがあります。リースと比較したレンタルの長所には、以下が挙げられます。

短期間のみ借りられる

リース契約の場合、1〜10年程度の中期の契約になるため、長期にわたって利用したい場合に適しています。

これに対してレンタルは、1日〜数日程度の短期間で借りられます。例えば、「気になるシステムをお試しで使用してみたい」「イベントに必要な機材を借りたい」という場合には、リースよりもレンタルがおすすめです。

中途解約できる

リースは原則として中途解約できず、中途解約する場合には、残りのリース料金や違約金の支払が発生します。

レンタルの場合は、中途解約できるケースがあります。ただし、契約によっては違約金が発生する、またはレンタル料の何割かを支払わなければならないことがあります。

事務手続きが不要

リース契約の場合、設備機器を利用するまでに申し込みやリース契約の締結といった複数のプロセスが発生します。そのため、利用するまでの期間が長くなりやすく、事務手続きにも手間がかかります。

レンタルの場合、レンタル会社の在庫から借りたい物品を選択して、料金の支払いが完了すれば、比較的スピーディに利用できることが一般的です。利用までに時間がかからないほか、複雑な事務手続きも必要ありません。

維持費が不要

リース契約では、借り手となる企業が設備機器の保守・修繕を行うため、運用負荷やメンテナンス費がかかります。

一方レンタルの場合、保守・修繕業務はレンタル会社が実施します。そのため、保守運用の労力がかからないほか、レンタル料以外の維持費を削減できます。

レンタルの短所

レンタルには、下記のような短所もあります。

長期利用は料金が割高になる可能性がある

レンタルは短期から利用できますが、契約内容によっては長期で借りられるケースもあります。ただし、レンタル料金はリース料金と比べて割高になっていることも多く、長期の利用はコストが増えてしまう可能性があります。長期の利用を目的とする場合には、リース契約を選ぶほうがよいでしょう。

選択肢が限られる

レンタルでは、レンタル会社が保有している在庫のなかから借りたい設備機器を選択します。企業が借りたい設備機器を指定して代理購入してもらえるリース契約とは異なり、選択肢が少ないというデメリットがあります。

借主に所有権がない

設備機器をレンタルする場合、物品の所有権はレンタル会社にあります。また、契約満了後はレンタル会社に返却しなければならず、契約満了後に所有権を得ることもできません。

基本的に中古品を借りる

レンタル会社が提供している物品は複数の人に貸し出しているため、基本的に中古品です。新品を利用できるリースに比べると、状態が良くなかったり、汚れが目立っていたりすることがあります。

割賦(割賦販売)まとめ

今回は、割賦(割賦販売)、リース契約、レンタルそれぞれの長所と短所、違いについて解説しました。それぞれの特徴を理解したうえで、最適な方法を選択するようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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