簡易課税制度とは~適用条件、メリットとデメリットについて~

更新日:2020年06月26日

簡易課税制度

消費税の納付税額を計算する際に使う「簡易課税制度」をご存知でしょうか?中小事業者の事務負担の軽減を目的とした制度ですが、必ずしも得ばかりとは限りません。今回は、簡易課税制度のメリット・デメリットについて解説します。

簡易課税制度とは?

簡易課税とは、消費税の納税額を計算する際の計算方法のひとつです。課税売上額が5,000万円以下の中小事業者の事務負担の軽減を図るために設けられたもので、簡易化した計算方法で仕入税額の控除を認める制度です。

簡易課税の仕組み

消費税の基本的な考え方は、「売上に係る預かった消費税額」から「仕入に係る支払った消費税額」を差し引いた額が納税するべき金額です。これを原則課税といいます。原則課税の場合、仕入税額控除の金額は、実際の仕入などで支払った消費税により実額計算します。この場合、どのような支払いに消費税がかかるのかを区分しておくことが必要です。確認や集計をして消費税申告書に反映させるなど、手間がかかります。

原則課税での計算方法(簡略化したイメージ)

納付税額=(売上に係る預かった消費税額)―(仕入に係る支払った消費税額)

一方、簡易課税制度では、「売上に係る預かった消費税額」に一定の割合を乗じることで、仕入税額控除を計算します。この一定の割合のことを、「みなし仕入率」といいます。簡易課税で計算することで、支払いの消費税の細かい計算や集計をする必要がなくなり、事務負担が軽減されます。

簡易課税での計算方法(簡略化したイメージ)

納付税額=(売上に係る預かった消費税額)-(売上に係る預かった消費税額)×(みなし仕入率)

みなし仕入率は、業種ごとに決まっています。従って、複数の業種を取り扱う事業者は、課税売上を業種ごとに分ける必要があります。業種ごとに分けない場合は、取り扱う業種のうち一番低いみなし仕入率を用いて計算します。

簡易課税の適用条件

簡易課税制度は中小事業者の事務負担の軽減を目的とした制度のため、適用を受けるには2つの要件があります。

基準期間の課税売上高が5,000万以下であること

個人事業主であれば前々年、法人であれば前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の場合のみ、簡易課税制度の選択をできます。課税売上高とは、消費税が課税される取引の売上高です。

管轄税務署に届出書を事前に提出していること

簡易課税制度の適用を受けたい事業者は、納税地を所轄する税務署長に、「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用を受ける課税期間の開始の日の前日までに提出しなければなりません。もし事業の初年度であれば、初年度の会計期間中に届出書を提出することで要件を満たせます。ただし、簡易課税制度を適用すると、2年間は課税制度を変更できないため、大きな設備投資や支出を計画している場合は注意が必要です。

簡易課税適用のメリット

簡易課税のメリットは、事務負担の軽減と節税になる可能性があることの2点です。

事務負担の軽減につながる

簡易課税の適用を受けることで得られる一番のメリットは、事務負担の大幅な軽減です。仕入れにかかる管理や都度の計算が必要がないため手間やコストを節約でき、仕入控除額の計算も簡単になるため納付税額の計算も楽になります。また、一年の売上を予測して支払わなければならない納税額の大まかな金額を把握できるため、資金計画を立てやすくなる可能性があります。

節税になる可能性がある

多くの場合、原則課税で計算する消費税の申告額より、簡易課税で計算する消費税の申告額が少なくなり、節税の効果があります。原則課税では、消費税の控除できる金額は「支出にかかる消費税」ですが、簡易課税の場合は、「収入にかかる消費税×みなし仕入率」であるため、下記のケースの場合であれは、簡易課税を選択することで節税となります。

節税となるケース

【原則課税】支出にかかる消費税 <【簡易課税】収入にかかる消費税×みなし仕入率

ただし、原則課税では、支出にかかる消費税のうちすべてを控除できない場合があるので、その要素も加味する必要があります。

簡易課税制度適用のデメリット

簡易課税制度のデメリットとしては、以下の2点が考えられます。

事務負担増加の可能性がある

もし複数の事業を運営している場合、課税売上を区分していなければ、その中で一番低いみなし仕入率を使い仕入控除額を計算しなければなりません。これが不利益になるのであれば、収入にかかる消費税を業種ごとに区分しなければならず、取り扱う業種が多い場合に、かえって事務負担が増加する可能性があります。

税負担の増加の可能性がある

簡易課税制度を適用することで税負担が増える可能性もあります。例えば、支出や設備投資の多い期間では支払った消費税は増額しますが、簡易課税制度の控除額の計算は収入にかかる消費税を用いて計算するため、支出や設備投資の増加は控除額に加味されません。

税負担が増加するケース

【原則課税】支出にかかる消費税 >【簡易課税】収入にかかる消費税×みなし仕入率

原則課税のほうが控除額が大きくなるため、消費税の納税額が少なくなるケースも考えられます。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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