雑収入とは?雑所得・事業所得との違いや仕訳の例などをわかりやすく解説

更新日:2024年08月12日

雑収入

雑収入とは、本業とは関係がない取引から生じた収益です。事業所得の一部ですが雑所得や一時所得と混同されることが多く、場合によっては税額に影響することもあるため注意が必要です。この記事では雑収入の概要および確定申告が必要なケース、仕訳の具体例を解説します。内容を参考に、スムーズで不備のない確定申告を目指してください。

目次

雑収入とは

雑収入とは本業以外から得た収入のうち、重要性が低く価格が小さな収入のことです。雑所得と言葉が似ていることから混同されがちですが、定義や仕訳の方法が異なるため違いを押さえておくことが重要です。

ここではまず、雑収入の概要および雑所得との違いを解説します。併せて雑所得と一時所得の違いおよび、雑収入と事業所得の違いも確認しましょう。

雑収入と雑所得の違い

雑収入および雑所得の概要は、以下のとおりです。

雑収入 雑所得
概要 営業外収益のうちその他の収入に該当し、会計上の重要度が低く金額が小さいもの 個人の所得区分のうち利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも該当しないもの
収入例
  • 空箱・作業くずなどの売却代金
  • 仕入割引
  • リベート
  • 取引先や使用人に対して事業上貸し付けた貸付金の利子
  • 使用人の寄宿舎の使用料
  • 買掛金の免除益
  • 公的年金等
  • 非営業用貸金の利子
  • 副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)

雑収入は本業の収入ではないものの、本業に付随して発生する収入が該当します。一方、雑所得は他の所得に該当しない収入である点が、大きな違いといえるでしょう。

雑所得と一時所得の違い

一時所得の概要は、以下のとおりです。

詳細
概要 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、
労務や役務の対価や資産の譲渡による対価ではないもの
収入例
※業務に関して受けるものおよび、営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く
  • 懸賞や福引きの賞金品
  • 競馬や競輪の払戻金
  • 生命保険の一時金/損害保険の満期返戻金など法人から贈与された金品
  • 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金など

雑所得と一時所得の大きな違いは、営利目的の所得や業務に関わる所得が含まれるかであるといえます。

雑収入と事業所得の違い

事業所得の概要を、以下で確認しましょう。

詳細
概要 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生じる所得(ただし不動産の貸付や山林の譲渡による所得は、原則として不動産所得山林所得
収入例
  • 個人事業主の所得
  • タレントの所得
  • 騎手の所得
  • 税理士が個人で営む事業から得た所得

雑収入は、事業所得の一部です。具体的には、事業に関係する収入のうち本業の収入が「売上高」、本業に付随する収入が「雑収入」と分けられます。一例をあげると、製品の売却収入は「売上高」、製品製造にあたり発生した作業くずの売却収入は「雑収入」です。

雑所得はいくらから確定申告が必要になるか

雑所得を得たら、原則として期限内に確定申告と納税をしなければなりません。確定申告の期限は、所得を得た翌年の2月16日~3月15日です。納税が遅れると、延滞税や重加算税といったペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。

ただし雑所得の金額やその他の収入額によっては、確定申告が不要なケースもあります。ここでは、確定申告が不要になる2つのケースを解説します。

公的年金などによる所得のケース

公的年金などを受給されている方のうち、以下に該当する場合は確定申告が不要です。

  • 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
  • 公的年金等のすべてが源泉徴収の対象
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

公的年金などを受給されている方で、公的年金以外に20万円を超える所得がある場合は確定申告が必要です。給与収入やパート収入、個人年金保険の受取、配当金の受取や原稿料などがある方は、まずは所得金額を確認してください。

参考)公的年金等を受給されている方へ|国税庁

給与所得がある・副業で雑所得を得ているケース

原則として、「年末調整を受けた給与所得」以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要です。

一方、給与所得がなく雑所得や事業所得を得ている個人事業主やフリーランスは、雑所得を含めた所得額が基礎控除である48万円を超える場合に確定申告が必要です。そのため、個人事業主やフリーランスの多くは、確定申告が必要であることは覚えておきましょう。

個人事業主の所得は、事業所得がほとんどを占めるケースも少なくありません。もし雑所得があるときには、所得額が20万円以下であっても事業所得と併せて申告しましょう。確定申告が必要かどうかわからない、自分自身での判断が難しいと感じる方は税務署窓口や税理士など専門家に相談すると安心です。

参考)No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
参考)所得税のしくみ|国税庁

雑収入と雑所得の扱いを間違えるとどうなるのか

雑収入と雑所得を間違えて確定申告をしてしまうと、以下の3つの問題が発生する可能性があります。

  • 青色申告特別控除が不可能になる
  • 赤字が出た際にほかの所得との相殺ができず損をする
  • 所得税が上がるケースがある

申告間違いにより余分な税金を納めることがないよう、注意点をしっかりと確認したうえで確定申告に臨みましょう。

青色申告特別控除が不可能になる

雑収入を雑所得で申告してしまうと、青色申告ではなく白色申告になります。それにより、青色申告で利用できる、さまざまな特典を受けられなくなります。青色申告で受けられる主な優遇措置は、以下の5つです。

優遇措置 概要
青色申告特別控除 複式簿記にもとづいた青色申告決算書を添付すれば、55万円(電子帳簿保存または電子申告をする場合65万円)の控除を受けられる
青色事業専従者給与 青色申告者と生計が同じ配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上でその事業に専従している方に支払った給与を、必要経費に算入できる
貸倒引当金 年末の貸金帳簿価額合計額における5.5%まで、貸倒引当金を必要経費とできる
(金融業界は3.3%まで)
純損失の繰越し 事業所得などに赤字(損失)があり、その年の損益通算で使いきれなかったときは、翌年以降3年にわたり繰越しが可能
少額減価償却資産の特例 30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円を上限に即時償却(全額損金算入)が可能

純損失の繰越しは、節税が図れる制度です。たとえばある年の事業所得額が300万円の黒字、不動産所得が200万円の赤字の場合、損益通算により所得が100万円(300万円-200万円)に圧縮され、税額の削減を図れます。所得よりも赤字が多く損失を相殺しきれなかったときに、翌年以降3年にわたり損失を繰越せるのが、純損失の繰越しです。

青色申告をすれば、少額減価償却資産の特例も受けられます。減価償却資産の取得価額は原則として、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割で経費計上するべきとされます。減価償却するには、会計や税法上のルールに則った計算が必要です。少額減価償却資産の特例を利用すれば一括で経費計上できるため、申告書作成の手間を抑えられます。また、少額減価償却資産の特例を活用することで、思わぬ利益が発生した年の節税を図ることも可能です。

このように青色申告には節税につながる特典があるため、雑収入に該当する場合は必ず事業所得として申告しましょう。

参考)No.2070 青色申告制度|国税庁
参考)少額減価償却資産の特例 | 中小企業庁

赤字が出た際にほかの所得との相殺ができず損をする

先述のとおり事業所得は、損益通算が可能です。一方、雑所得はいずれの所得とも損益通算は不可です。そのため赤字が発生しても、損失として計上するしかありません。損失の額によっては、損益通算により大きな節税が実現できる可能性もあります。

税金を抑えできるだけ多くの所得を手元に残すためにも、雑収入は間違いなく事業所得で申告することが重要です。

所得税が上がるケースがある

雑収入を雑所得で申告すると、所得税が上がるケースがあります。青色申告をすれば、課税所得から55万円または65万円の特別控除を受けられます。たとえば、100万円の課税所得があるとしましょう。青色申告特別控除を利用しなければ、100万円すべてに税金が課されます。一方、青色申告特別控除を活用すれば課税所得を45万円(100万円-55万円)まで圧縮でき、税額を減らせます。

しかし先述のとおり、青色申告は雑所得ではできません。特別控除を活用し所得税額を抑えるためにも、雑収入は事業所得で申告しましょう。

雑収入の仕訳の具体例

最後に、雑収入の仕訳の具体例を解説します。雑収入の正確な確定申告と納税を目指すには、日ごろから正しい仕訳の実施を心掛けてください。仕訳について不明点があるときには、税務署窓口や税理士など専門家に相談すると安心です。

現金過不足

事業用資金をプライベートで使ったもしくは、経費をプライベートのお金で支払ったときなどは、現金の過不足が発生します。現金過不足の仕訳方法は、以下のとおりです。なお多くの場合、個人事業主の仕訳では雑収入ではなく事業主借もしくは事業主貸の勘定科目が使われます。

【ケース1】帳簿の現金残高よりも実際の事業用現金の残高が1万円少ない

借方 貸方
事業主貸 1万円 現金 1万円

【ケース2】帳簿の現金残高よりも実際の事業用現金の残高が1万円多い

借方 貸方
現金 1万円 事業主借 1万円

各種税金の還付金や還付加算金

法人税や消費税の還付を受けたときにも、雑収入で仕訳します。仮に5万円の消費税の還付金を受け取ったときの仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方
未収消費税等 5万円 事業主借 5万円

保険金

保険金や損害賠償金、積立保険の解約返戻金などを受け取ったときも、雑収入で仕訳します。一例として、病気の治療費のために保険金10万円を普通預金で受け取った際の仕訳を以下で確認しましょう。

借方 貸方
普通預金 10万円 事業主借 10万円

なお個人事業主の方で、保険金が一時所得もしくは雑所得になる場合には仕訳は不要です。

作業屑やスクラップの売却による収入

作業くずやスクラップは、恒常的に発生する収入ではなく金額も小さいため、雑収入で仕訳をします。作業くずを売却し現金2万円を受け取ったときの仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方
現金 2万円 事業主借 2万円

アフィリエイトによる利益

アフィリエイトで得た利益も、雑収入です。アフィリエイトで得た1万円の報酬を、普通預金で受け取った場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方
普通預金 1万円 事業主借 1万円

なお、アフィリエイト報酬が高額な場合や本業として行っている場合は、雑収ではなく営業収益として売上に計上します。

雑収入まとめ

雑収入とは、本業の収入ではないものの本業に付随して発生する収入です。雑収入は事業所得に含まれるため、青色申告が可能です。青色申告には特別控除や純損失の繰越しといった税制優遇が設けられているため、有効に活用しましょう。

雑収入を得たときには、仕訳が必要です。個人事業主の場合、事業主貸や事業主借の勘定科目で仕訳をします。日ごろから正しい仕訳を実施していれば、確定申告の時期に慌てずに手続きができます。仕訳方法がわからない、合っているか不安と感じる方は、税務署窓口や税理士など専門家に相談しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加