個人事業主とは?フリーランスとの違いと開業届の書き方

更新日:2025年04月07日

個人事業主とは

個人事業主とは、法人を設立せずに自ら事業を営む働き方です。会社員やフリーランスとの違いを理解し、開業届の提出や税務手続きの流れを把握することが重要です。本記事では、個人事業主の特徴や他の働き方との違いをはじめ、開業届の作成・提出方法、メリット・デメリットなどについて解説します。これから開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

個人事業主とは?他の働き方との違い

個人事業主とは、法人を設立せずに、個人の名義で事業を運営する人のことを指します。税務署に「開業届」を出すことで事業を始められ、手続きはシンプルです。例えば、「〇〇商店」などの名前で営む事業者は、法人化していなければ個人事業主とされます。

個人事業主は、飲食業や小売業、教育業、士業などさまざまな分野で活動しています。ここでは、個人事業主と混同しがちな「フリーランス」「会社員」「法人」との違いについて見ていきましょう。

個人事業主と「フリーランス」の違い

個人事業主とフリーランスは、どちらも組織に属さず仕事をする点で混同されがちですが、異なる概念です。

フリーランスとは、案件ごとに業務をする「働き方」を指します。厚生労働省は、フリーランスを「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義づけています。

一方、個人事業主は、税務署に開業届を提出した人です。つまり、「税法上の区分」を意味します。

働き方に着目した呼称がフリーランス、税法上の区分に着目した呼称が個人事業主です。

参考)厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」

個人事業主と「会社員」の違い

個人事業主と会社員は、働き方や社会保障の面で大きく異なります。

会社員は企業に雇用され、勤務形態に応じた給料を受け取ります。業務は会社の方針や指示に従って行い、社会保険や雇用保険などの保障を受けられる点が特徴です。

一方、個人事業主は会社や組織に属さず、自ら仕事を得ることで収入を得ます。事業収入から経費を差し引いた分がそのまま収入となりますが、国民健康保険や国民年金の支払い、確定申告などの手続きを自身でしなければなりません。一方で、働く時間や仕事の選択など、働き方の自由度は高いといえます。

個人事業主と「法人」の違い

個人事業主と法人は、どちらも事業を営む点では共通していますが、設立手続きや税制面で大きな違いがあります。

個人事業主は、税務署に開業届を提出するだけで事業を開始でき、登記や設立費用は不要です。手続きが簡単なため、比較的容易に事業を始められます。

一方、法人は会社法に基づく定款の作成や設立登記が必要であり、株式会社の場合は最低でも20万円程度の設立費用がかかります(合同会社は比較的安価)。法人は社会的信用が高く、契約の相手方として認められる反面、社会的責任も負わなければなりません。

税制面では、個人事業主は所得税と住民税が課税され、所得が増えるほど税負担も重くなります。法人は法人税と法人住民税が課税対象であり、税負担軽減策を受けられるものの、法人住民税の均等割により最低でも数万円の負担が発生します。利益が少ない場合は、税負担が重くなる可能性もあるでしょう。

個人事業主になるには?開業届提出の流れ

開業日は本人が「事業を始めた」と判断した日とされ、明確なルールはありません。個人事業主になるためには、事業開始から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。提出が遅れても罰則はありませんが、早めに提出するようにしましょう。

開業届を提出しない場合には、青色申告の承認が受けられない、屋号入りの銀行口座が開設できないなどのデメリットが生じます。

それでは、開業届の作成から提出までの流れを見ていきましょう。

1.開業届を作成する

開業届は、税務署での入手または国税庁のサイトからダウンロードできます。手書きで作成する場合は、提出用と控えの2枚を作成しましょう。記載項目には「所在地」「屋号」「事業の概要」などがあり、マイナンバーも必要です。

e-Taxを利用すれば、パソコンで入力して提出もできます。ただし、e-Taxを利用するには、事前に利用者識別番号を取得する必要があります。

開業届の提出準備を整えた後は、もれなく記載を進めていきましょう。

国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続 個人事業の開業・廃業等届出書」を引用して加工

参考)国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

2.税務署に提出する

「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出方法は、窓口への持参、郵送、e-Taxによるオンライン提出から選べます。届出書に税務署の印が押された控え(e-Taxで提出した場合は、受付通知)によって、事業をしている事実について証明できるため、控えを受け取るようにしましょう。

郵送の場合、返信用封筒と切手を同封し、必要な書類を送付します。e-Taxは、メンテナンス時間を除き24時間利用可能です。税務署の開庁時間は平日8:30〜17:00ですが、閉庁日でも時間外収受箱への投かんが可能です。

青色申告を希望する場合は、「青色申告承認申請書」を開業届と同時に提出しましょう。青色申告は税制面で優遇されますが、正規の簿記が必要です。青色申告の申請書は、事業開始から2ヶ月以内に提出しなければなりません。

参考)国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」

個人事業主になるメリット

個人事業主になる主なメリットは、以下のとおりです。

  • 手間や費用をかけずに開業できる
  • 最大65万円の青色申告特別控除が適用される
  • 働き方の自由度が高く定年がない
  • 「屋号」により事業の信用度が向上する
  • 経費計上による節税効果が期待できる

以下で、それぞれについて解説します。

手間や費用をかけずに開業できる

個人事業主として開業するメリットの一つは、手間や費用を最小限に抑えられる点です。法人設立と異なり、登記や定款作成が不要であり、出資金も必要ありません。税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで、事業を開始できます。

法人設立には、定款作成や登記手続き、設立費用がかかります。個人事業主はこれらの手続きや費用が一切不要です。開業届の提出も簡便で、時間や労力をかけずに事業をスタートできます。

このように、個人事業主は初期コストや手間を抑えながら、迅速に事業を始められるため、起業のハードルが低い選択肢といえます。

最大65万円の青色申告特別控除が適用される

個人事業主が青色申告を選択すると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。この控除は、所得から直接差し引けるため、所得税の負担が軽減されます。

控除額は記帳方法によって決まり、単式簿記では10万円、複式簿記による「損益計算書」と「貸借対照表」を提出した場合は、原則として65万円の控除適用です。ただし、65万円の控除を受けるためには、e-Taxによる申告または電子帳簿保存が必要です。これらの条件を満たさない場合の控除額は、55万円となります。

さらに、青色申告では最長3年間の赤字繰り越しが可能です。事業開始直後に赤字が出た場合でも、翌年以降の黒字と相殺できるため、税金の負担を抑えられます。これは、事業が軌道に乗るまでの資金繰りを支える重要な制度といえるでしょう。

働き方の自由度が高く定年がない

個人事業主は、働く時間や場所を自由に決められる点が大きなメリットです。出勤時間に縛られず、天候や体調に応じて柔軟にスケジュールを調整できます。会社員のような固定された勤務形態ではなく、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。

また、スキルや経験を活かすことで、収入の増加も期待できます。知識や能力に応じて報酬の交渉ができるため、短い労働時間で高収入を得ることも可能です。

さらに、定年がないため、年齢を理由に仕事を辞める必要がありません。体力や意欲が続く限り、自分のペースで働き続けられます。事業を続けながら、将来の生活設計について考える時間を確保できるのも個人事業主ならではのメリットといえるでしょう。

「屋号」により事業の信用度が向上する

個人事業主として開業する際、屋号を設定することは、事業の信用度を高める要素の一つとなり得ます。

屋号は会社の社名に相当し、事業用の銀行口座の開設も可能なため、個人資金と事業資金を分けて管理しやすくなります。経理の透明性が高まり、資金管理の効率化につながる点もメリットです。

また、税務署に提出した屋号を持つことで正式な事業者として認識されるため、補助金や助成金の申請時や融資を受ける際に信用を得やすくなります。

さらに、取引先や金融機関に対して、事業の本気度や継続性を示す効果も期待できます。屋号なしでの開業も可能ですが、事業の信用度を高め、円滑な取引を進めるためには、屋号の活用が有効です。

経費計上による節税効果が期待できる

個人事業主は、事業に関連する支出を経費として計上することで課税所得を減らし、税負担を軽減できます。事業用の備品購入や通信費、交通費など、事業活動に直接関係する支出が経費として認められるため、節税効果が期待できます。

例えば、事業収入が700万円で、経費が300万円の場合、課税対象となる所得は400万円です。経費を適切に計上することで、所得税だけでなく住民税や法定業種における個人事業税の負担も抑えられます。

さらに、自宅を事務所として使用する場合、家賃や光熱費の一部を家事按分により経費として計上可能です。会社員と異なり、事業に関連する支出を経費として計上できる点が個人事業主の大きなメリットといえるでしょう。

個人事業主になるデメリット

個人事業主になる主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 収入が不安定なリスクが伴う
  • 確定申告をする必要がある
  • 法人に比べ社会的信用度が低い

以下で、それぞれについて解説します。

収入が不安定なリスクが伴う

個人事業主は、会社員と異なり、毎月一定の収入が保証されません。仕事の受注状況や市場変動の影響を受けやすく、収入が不安定になるリスクがあります。特に開業直後は顧客基盤が未確立で、収入が安定するまで時間がかかる場合も多いです。

季節変動や景気の影響も受けやすく、繁忙期と閑散期で収入に大きな差が生じることもあります。このような収入の変動は、資金繰りの難しさにつながる可能性があることもデメリットといえるでしょう。

さらに、個人事業主は社会保険料を全額自己負担しなければならず、会社員と比べて負担が大きくなります。収入が不安定な状況でも、固定費として保険料を支払わなければならない点にも考慮が必要です。

確定申告をする必要がある

個人事業主は会社員と異なり、自ら確定申告をする必要があります。会社員の場合、所得税は給与から源泉徴収され、年末調整で過不足が精算されます。一方、個人事業主は自分で所得を計算し、税務署へ申告しなければなりません。

確定申告では、所得税や住民税に加え、業種や条件によっては個人事業税や消費税も納付が必要です。これらの税額を適切に把握し、計画的に管理することが重要です。

さらに、個人事業主は確定申告時に一括で納税するため、資金繰りを誤ると大きな負担が生じるリスクもあります。納税時に慌てないよう、事前に資金を確保しておくことが求められます。

法人に比べ社会的信用度が低い

個人事業主は、法人に比べ社会的信用を得にくい傾向があります。金融機関の融資審査では、収入の不安定さが理由で審査が厳しくなりやすく、クレジットカードの作成やローンの利用でも会社員より条件が厳しくなりがちです。

また、取引先の中には法人との契約を優先し、個人事業主との取引を避ける企業も少なくありません。さらに、個人事業主は法人のような登記義務がないため、事業の継続性や安定性が不透明と見なされやすく、人材採用の面でも不利になる可能性があります。

こうした信用面での課題は、資金調達や取引先の確保に影響を及ぼすため、個人事業主は信頼を得るための工夫が必要です。

個人事業主向けの補助金や融資制度

個人事業主の経営を支援するため、国や地方自治体はさまざまな補助金や融資制度を設けています。事業の成長段階や目的に応じて、適切な支援制度を選択し活用することで、経営基盤の強化や事業の発展につなげましょう。

ここでは、代表的な支援制度を紹介します。

IT補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の労働生産性向上を目的とした制度です。

業務効率化やDX推進(デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に変革する取り組み)のために、ソフトウェアやクラウドサービスの導入費用を補助します。

補助対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受け、公式のWebサイトに登録されたものです。

申請には、IT導入支援事業者との連携が必要です。支援事業者は補助事業の手続きをサポートし、導入の円滑化を図ります。申請枠には、通常枠やインボイス枠、セキュリティ対策推進枠などがあり、目的に応じた選択が可能です。

申請を進めるには、導入するシステムや解決したい課題を明確にすることが重要です。詳細な手続きや必要な情報は、IT導入補助金の公式Webサイトで確認できます。

参考)IT導入補助金2025「IT導入補助金制度概要」

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や特定非営利活動法人の生産性向上と事業発展を支援する制度です。販路開拓などに必要な経費の一部が補助されます。

申請には、経営計画を策定し、商工会や商工会議所の支援を受けなければなりません。通常枠に加え、条件を満たす場合は補助上限が引き上げられる特別枠も設けられています。インボイス特例を活用すれば、追加の補助を受けることも可能です。

対象経費には、機械装置等の費用、広報費、ウェブサイト関連費などが含まれます。ただし、汎用性が高いものや目的外使用が想定されるものは補助の対象外です。

補助金の募集は例年行われていますが、2025年2月現在、2025年以降のスケジュールは未定となっています。最新情報は事務局のWebサイトで確認してください。

参考)商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者が革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善に取り組むための設備投資を支援する制度です。働き方改革やインボイス制度の導入など、制度変更に対応するための取り組みが補助対象となります。

申請には、電子申請システムを利用する必要があります。そのため、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。GビズIDは、法人や個人事業主向けの共通認証システムで、一つのIDで複数の行政サービスにアクセスできます。

補助金の募集は例年実施されています(19次の場合は、申請締切日は2025年4月25日)。最新情報は公式Webサイトで確認してください。

参考)ものづくり補助金総合サイト

創業融資(日本政策金融公庫)

日本政策金融公庫は、創業期の事業者向けに融資制度を提供しています。新たに事業を始めた人や、事業開始後税務申告を2期終えていない人が対象となり、審査により無担保・無保証人で融資を受けられます。さらに、金利が低く設定され、長期返済が可能なため、資金繰りの負担軽減が可能です。

融資対象には設備資金や運転資金が含まれ、創業に必要な資金を幅広く調達できます。また、女性や若者、シニア層など特定の条件に該当する人向けの支援にも対応しています。

日本政策金融公庫は、融資だけでなく、経営相談や情報提供といった総合的なサポートも提供しているため、創業を検討している事業者にとっては重要な資金調達の選択肢といえるでしょう。

参考)日本政策金融公庫「創業融資のご案内」

会社員が副業で個人事業主になる際の注意点

会社員が副業として個人事業を始める際は、まず就業規則を確認し、副業の可否や報告義務、競業避止義務に抵触しないかを確認することが重要です。

また、副業による所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要となります。さらに、所得額によっては社会保険の扶養から外れ、保険料負担が増加する可能性もあるため、事前に影響について把握しておきましょう。

本業との両立には、適切な時間管理と健康管理が欠かせません。また、十分な休息と規則正しい生活を心がけ、体調管理にも留意しましょう。

個人事業主まとめ

個人事業主として働くことは、自由度の高さや節税のメリットがあるものの、収入の不安定さや確定申告の義務といったデメリットも伴います。さらに、法人と比べて社会的信用度が低く、資金調達が難しいといった課題もあるでしょう。

こうした課題を克服するために、IT補助金や創業融資などの支援制度を活用するのも有効な方法です。また、副業として個人事業を始める際は、就業規則上の副業の可否を確認する必要があります。

こうしたメリットとデメリットを理解しつつ、自分に適したスタイルで個人事業主としての第一歩を進めていきましょう。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

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