確定申告とは?種類、対象者、やり方、税額の計算方法をわかりやすく解説

更新日:2024年02月21日

確定申告とは

確定申告とは、1年間に生じた所得や所得税額を計算して過不足を精算する手続きのことです。青色申告や白色申告といった種類があります。

条件を満たす場合、会社員でも確定申告しなければなりません。本記事では、確定申告とは何か説明した上で、やり方をわかりやすく紹介します。

目次

確定申告・確定申告書とは?

所得税の確定申告とは、1月1日から12月31日までに生じたすべての所得額と、それに対応する所得税額などを計算し、源泉徴収された税金や予定納税ですでに納めた税金などの過不足を精算する手続きです。確定申告のために作成する書類を、確定申告書と呼びます。

ここから、確定申告が必要な理由や、確定申告しない場合に生じる問題点について確認していきましょう。

確定申告が必要な理由

確定申告が必要な主な理由は、納税のためです。納税は、勤労・教育と並び、「国民の三大義務」と呼ばれています。

納税には、所得に応じた所得税を正しく計算することが必要です。日本では、納税者ひとりひとりが自ら確定申告する「申告納税制度」により、税額を確定させています。

なお、多くの給与所得者は給与から所得税などが天引きで源泉徴収されるため、原則として確定申告する必要はありません。

参考)国税庁「税の学習コーナー」

確定申告しない場合の問題点

確定申告が必要であるにもかかわらず怠ると、加算税や延滞税が課される可能性があります。

加算税とは、確定申告の期限を経過してから申告したり、所得金額の決定を受けたりする際に、課されるペナルティのことです。本来納付すべき税金とは別に、納付税額50万円までは15%、50万円を超える部分に20%をかけた金額が、加算税として課されます。

ただし、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告しているなど、一定の条件を満たす場合は無申告加算税が課されません。

延滞税とは、税金が期限内に納付されない場合に、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的に課される利息のようなものです。納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%、納期限の翌日から2か月を経過した日以後は年14.6%が原則として課せられます。

また、確定申告は自身の所得を示す作業でもあるため、怠ると所得がないとみなされるでしょう。その結果、銀行のローン審査や賃貸物件の入居審査などに悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、確定申告しないことで青色申告の特別控除を適用できない点も問題です。青色申告の概要については、後ほど詳しく解説します。

参考)国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
参考:国税庁「No.9205 延滞税について」

確定申告と年末調整の違いとは?

年末調整とは、役員や従業員に対する毎月の給与などから源泉徴収した所得税(および復興特別所得税)と、対象者が1年間に納付すべき所得税(および復興特別所得税)の差額を精算する作業のことです。確定申告と年末調整の主な違いとして、「誰が手続きをするか」が挙げられます。

確定申告は、納税者自身で所得や所得税額を申告して納付する作業です。それに対して、年末調整は対象者の給与などから税額を源泉徴収している勤務先が手続きします。

日本では、多くの給与所得者が年末調整の対象です。国税庁の発表によると、2021年に1年を通じて勤務した給与所得者5,270万人のうち、年末調整したのは4,894万人(92.9%)でした。

なお、各種控除を適用可能な場合、年末調整時に天引きされた税金の一部が還付される場合があります。ただし、控除の種類によって、確定申告での対応が必要です。

参考)国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」

確定申告の種類

確定申告には、青色申告と白色申告があります。それぞれの特徴や、申告のための条件について確認していきましょう。

青色申告特別控除できる「青色申告」

「青色申告」とは、一定水準の記帳をして、その内容に基づき正しい申告をする人に対して所得金額の計算で有利な取り扱いを認める制度のことです。

青色申告の「一定水準の記帳」とは、年末に貸借対照表と損益計算書を作成できるような正規の簿記によるものを原則として指します。ただし、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などの帳簿を備え付けた簡易な記帳でも対応可能です。

青色申告の主なメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 青色申告特別控除が受けられる
  • 青色事業専従者給与を経費として計上できる
  • 事業所得の純損失を繰越できる
  • 貸倒引当金を計上できる

青色申告特別控除とは、所得から55万円もしくは65万円の控除を受けることで税額を軽減できる仕組みです。青色申告特別控除で65万円の控除を受けるには、電子帳簿保存かe-Taxによる電子申告をしなければなりません。

e-Taxとは、国税に関する各種手続きについて、インターネットなどを利用して電子的に手続きできるシステムのことです。国税庁によると、2021年度の所得税申告のうち59.2%はe-Taxによるものでした。

なお、青色申告するにはあらかじめ「青色申告承認申請書」の提出が必要です。新たに青色申告を申請する場合、原則としてその年の3月15日までに所轄の税務署に提出しなければなりません。

参考)」青色申告とは
参考:国税庁「令和3年度における e-Tax の利用状況等について」

手続きが簡単な「白色申告」

「白色申告」とは、青色申告以外の方法で確定申告を行うことをいいます。白色申告にも、記帳制度や記録保存制度は定められています。

白色申告のメリットは、青色申告承認申請書の提出が不要で手続きが簡単な点です。また、青色申告と比べると帳簿作成も簡単なため、会計知識が浅くても対応できます。

一方、白色申告には特別控除がありません。税額を抑えたいのであれば、手間をかけても青色申告したほうがよいでしょう。

参考)白色申告とは

確定申告する人(対象者)とは?

確定申告する人(対象者)は、所得などによって判断することが一般的です。自分が当てはまるか判断する材料になるように、確定申告すべき人・確定申告が不要な人・確定申告をしたほうがよい人に分類して、具体的に解説します。

確定申告すべき人

給与所得があり、確定申告すべきケースは主に以下のとおりです。

  • 給与の収入金額が2,000万円を超える
  • 給与を1か所から受けており、全額が源泉徴収の対象で、給与・退職所得を除く所得金額の合計が20万円を超える
  • 給与を2か所以上から受けており、全額が源泉徴収の対象で、年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与・退職所得を除く所得金額の合計額が20万円を超える

上記の条件からわかるように、会社員であっても一定の所得を超えると確定申告しなければなりません。また、会社員で副業所得が20万円を超える場合も確定申告が必要です。

さらに、「給与所得がある」「公的年金などの雑所得のみ」「退職所得がある」以外で、以下を計算した結果残額がある人も確定申告しなければなりません。

  1. 各種所得合計額から所得控除を引き、課税所得金額を求める
  2. 課税所得金額に所得税率をかけて所得税額を求める
  3. 所得税額から配当控除を引く

つまり、会社勤め(給与所得を得ている)ではなく、事業所得で生計を立てている自営業やフリーランスは、原則として確定申告が必要です。

参考)国税庁「確定申告が必要な方」

確定申告が不要な人

確定申告が不要な人は、主に以下のとおりです。

  • 勤め先で年末調整を受けている給与所得者
  • 副業による収入が20万円以下の人
  • 課税所得が0円以下の自営業者やフリーランス

たとえば、事業で収入を得ている自営業者やフリーランスでも、経費や所得控除を適用した結果、課税所得金額が0になる(0を下回る)ケースはあるでしょう。

確定申告をしたほうがよい人

勤め先で年末調整を受けている給与所得者でも、確定申告したほうがよいことがあります。下記のように、年末調整で対応できない控除を適用したい人は、確定申告したほうがよいです。

  • 住宅ローンを利用する初年度で、住宅ローン控除を適用したい人
  • 雑損控除や医療費控除を適用したい人

対象者は、確定申告することで税金が還付されます。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築・取得・増改築などをした際に、条件を満たせば取得にかかる住宅ローンの年末残高の一部を所得税額から控除できる制度です。

住宅ローン控除は、住み始めた時期によって控除期間や控除される金額が異なるため注意しましょう。また、2年目以降は確定申告せずに年末調整でも住宅ローン控除を適用可能です。

なお、雑損控除や医療費控除などの所得控除の概要については、後ほど解説します。

参考)国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

住民税申告もある点に注意が必要

所得税の確定申告が不要でも、住民税申告が必要になることがあります。住民税を申告するには、申告書を所轄の役所に提出します。提出にあたって、所得の証明書類や控除書類、本人確認書類などを準備しなければなりません。

住民税申告とは、地方税である市町村民税や都道府県民税(あわせて住民税)を申告する手続きのことです。それに対して、所得税の確定申告では国税である所得税を申告します。

たとえば、神奈川県横浜市では、住民税の申告が必要な条件として、主に以下を挙げています。

  • 公的年金などの収入が400万円以下で、公的年金などにかかる所得金額(雑所得除く)が20万円以下
  • 1か所から給与の支払を受けており、給与所得以外の所得の合計額が20万円以下
  • 2か所以上から給与の支払を受けており、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円以下
  • 対象年度に所得がなかった
  • 日払いによる給与収入で源泉徴収票がない

なお、税務署から自治体に情報共有されるため、確定申告をしていれば基本的に住民税の申告は必要ありません。

参考)横浜市「市民税・県民税の申告について」

確定申告する上で理解すべきこと

確定申告で、所得税は課税所得に基づき計算します。課税所得は所得から所得控除などを引いた金額のことです。

ここから、所得や所得控除の種類について詳しく解説します。

確定申告すべき所得の種類

所得とは、収入から必要経費を引いて残った金額のことです。それに対して、収入は1年間に得たすべての金額を指します。

確定申告する所得は、以下の10種類です。

  1. 利子所得(預貯金や公社債の利子など)
  2. 配当所得(株主が法人から受け取る配当や、投資信託の収益分配金など)
  3. 不動産所得(事業所得や譲渡所得に該当しない不動産による所得)
  4. 事業所得(農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などから生ずる所得)
  5. 給与所得(勤め先から受け取る給料・賞与など)
  6. 退職所得(退職することで受け取る一時金など)
  7. 山林所得(山林を伐採して譲渡もしくは立木のまま譲渡して得る所得)
  8. 譲渡所得(土地・建物などの資産を譲渡して得る所得)
  9. 一時所得(懸賞の賞金・競馬の払戻金・生命保険の一時金など)
  10. 雑所得(公的年金・非営業用貸金の利子・原稿料など)

参考:国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」

所得控除の種類

所得控除とは、所得から一定金額を引ける制度を指します。所得控除は、以下の15種類です。

  1. 雑損控除(災害・盗難などで資産に損害を受けた場合)
  2. 医療費控除(医療費を支払った場合)
  3. 社会保険料控除(自分や生計を一にする配偶者などの社会保険料を支払った場合)
  4. 小規模企業共済等掛金控除(小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金を支払った場合)
  5. 生命保険料控除(生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合)
  6. 地震保険料控除(特定の損害保険契約などにかかる地震等損害部分の保険料・掛金を支払った場合)
  7. 寄附金控除(国や地方公共団体などに対して「特定寄附金」を支出した場合)
  8. 障害者控除(本人・同一生計配偶者・扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合)
  9. 寡婦控除(寡婦である場合)
  10. ひとり親控除(ひとり親である場合)
  11. 勤労学生控除(勤労学生である場合)
  12. 配偶者控除(所得税法上の控除対象配偶者がいる場合)
  13. 配偶者特別控除(配偶者の所得が原因で配偶者控除の適用が受けられなくても、一定の要件を満たす場合)
  14. 扶養控除(所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合)
  15. 基礎控除(所得次第で誰でも適用できる控除)

なお、日本に住所がない非居住者が適用できるのは、雑損控除・寄附金控除・基礎控除のみです。

参考)国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

確定申告のポイント

確定申告のポイントは、以下のとおりです。

  • 確定申告には期限がある
  • PCやスマートフォンでも確定申告できる

それぞれ解説します。

確定申告には期限がある

確定申告には期限があるため、期日を意識して早めに準備することがやり方のポイントです。確定申告の期限は、所得が生じた翌年2月16日から3月15日までの間です。

万が一期限を過ぎてしまった場合は、できるだけ早く申告するようにしましょう。なぜなら、申告が遅れて納付が過ぎた日の分だけ延滞税が課されるためです。

なお、確定申告だけでなく、所得税の納税期限も3月15日までと定められています。

PCやスマートフォンでも確定申告できる

確定申告書を書面で提出するだけでなく、PCやスマートフォンで申告する方法がある点もポイントです。また、書面で提出する場合も、所轄税務署に持参する方法と郵送する方法があります。

PCやスマートフォンを使って確定申告する方法が、e-Taxです。自宅からe-Taxを利用することのメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 手間がかからない(郵送や持参の必要なし)
  • 印刷代や郵便代がかからない
  • 原則として添付書類が不要
  • 確定申告期間であれば、メンテナンス時間を除き24時間いつでも利用できる
  • 書面で提出する場合と比べて、還付されるまでの期間が短い

PCやスマートフォンで確定申告する場合、時期が到来したときに国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にて書類を作成し、e-Taxで送信すれば、税務署への持参や郵送なしで対応できます。

スマホをICカードリーダライターの代わりとして使い、マイナンバー方式で所得税の確定申告を進める場合の流れは、以下のとおりです。

  1. 確定申告書等作成コーナーで、「作成開始」をクリックする
  2. 「マイナンバーカードをお持ちの方」の「スマートフォンを使用してe-Tax」を選択する
  3. 作成する申告書(「所得税」もしくは「決算書・収支内訳書(+所得税)」)を選択する
  4. 「マイナポータルと連携する」もしくは「連携しないで申告書等を作成する」を選択する
  5. 画面に表示されたQRコードをスマートフォンで読み取り、アプリをインストールする
  6. インストールしたアプリで、新たに画面に表示されたQRコードを読み取る
  7. マイナンバーカードのパスワード4ケタ(利用者証明用電子証明書)を入力し、「次へ」をタップする
  8. スマートフォンで「読み取り開始」をタップして、マイナンバーカードを読み取る
  9. 「閉じる」をタップしてPCの画面を確認する
  10. マイナンバーカードが読み取れていれば、申告書の作成を始める

なお、マイナンバーカードを所有していなくても「ID・パスワード方式」で対応できますが、あくまで暫定的な処置です。今後はマイナンバーカードが必須になる可能性があるため、注意しましょう。

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

確定申告のやり方

確定申告する流れは、以下のとおりです。

  1. 書類を準備する
  2. 確定申告書を作成する
  3. 確定申告書を税務署に提出する
  4. 税金を納付する(還付を受ける)

ステップごとに、確定申告の方法を詳しく解説します。

STEP1 書類を準備する

確定申告にあたって、まず書類を準備しましょう。確定申告で必要な書類は、主に以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書(青色申告者の場合)
  • 収支内訳書(白色申告者の場合)
  • 山林所得収支内訳書(山林所得者の場合)
  • マイナンバーカード

確定申告書の様式は、国税庁のホームページで取得可能です。確定申告時期になってから、最新年度の様式を取得しましょう。

マイナンバーカードは、e-Taxで読み取る際や、税務署に提出して本人確認される際などに必要です。マイナンバーカードを持っていない人が確定申告書を税務署に提出する場合は、マイナンバーを確認できる書類(通知カードや住民票の写しなど)と身元確認書類の添付もしくは提示を求められます。

そのほか、適用する所得控除によって書類が必要です。たとえば、雑損控除を受ける場合は、災害等に関連してやむを得ない支出をした金額についての領収書、医療費控除を受ける場合は医療費控除の明細書などを用意しなければなりません。

STEP2 確定申告書を作成する

確定申告書には、第一表・第二表などがあります。また、青色申告なら損益計算書や貸借対照表、白色申告なら収支内訳書の提出も必要です。

ここから、それぞれの作成方法を詳しく解説します。

確定申告書第一表の書き方

確定申告書第一表とは、収入・所得・控除などの額をまとめた書類です。確定申告する全員が第一表を提出します。

第一表に記載する主な内容は、以下のとおりです。

  • 個人に関する情報
  • 収入金額等
  • 所得金額等
  • 所得から差し引かれる金額
  • 税金の計算
  • その他
  • 還付される税金の受取場所

「個人に関する情報」には、氏名・納税地・職業などを記載します。また、「種類」には、自身が該当する項目にすべて◯をつけましょう(青色申告者なら「青色」)。

「収入金額等」では、それぞれ該当する箇所に1年間の収入額を記載します。収入金額を記載した種類は、次の所得金額の部分にも、経費を差し引いた額の記載が必要です。

「所得から差し引かれる金額」には、社会保険料控除や基礎控除など、該当する控除を記載します。「税金の計算」の「課税される所得金額」には、「所得金額等」の合計から「所得から差し引かれる金額」の合計を引いた金額の記載が必要です。

「その他」は、該当する部分がある場合のみ、記載してください。「還付される税金の受取場所」には、還付金を受け取る口座情報を記載します。

確定申告書第二表の書き方

確定申告書第二表とは、第一表の根拠となる数字を記載した書類です。確定申告する全員が第二表を提出します。

第二表に記載する主な内容は、以下のとおりです。

  • 住所・屋号・氏名
  • 所得の内訳
  • 総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項
  • 特例適用条文等
  • 保険料控除等に関する事項
  • 本人に関する事項
  • 雑損控除に関する事項
  • 寄附金控除に関する事項
  • 配偶者や親族に関する事項
  • 事業専従者に関する事項
  • 住民税・事業税に関する事項

「所得の内訳」には、第一表に記載した「所得金額等」を詳しく記載します。取引先ごとに、収入金額だけでなく源泉徴収税額も記載しなければなりません。

「保険料控除等に関する事項」には、各保険料控除の詳細を記載します。その中の、「うち年末調整等以外」には、源泉徴収票に載っていない部分の金額を記載しましょう。

「事業専従者に関する事項」は事業専従者がいる場合に記載します。事業専従者とは、支払った給与の一部を経費としてみなせる親族(生計を一にする)のことです。

確定申告書第三表・第四表を作成する場合とは

条件次第で、確定申告書第三表や第四表の作成が必要です。ここでは、第三表と第四表の概要のみ、簡単に紹介します。

確定申告書第三表は、申告分離課税を申告する場合に提出する書類です。

申告分離課税とは、不動産売却や株式譲渡などで生じた所得のように、他の所得と分離して税額を計算する方法を指します。給与所得のみの場合、総合課税のため第三表の作成は不要です。

確定申告書第四表は、損失申告で使います。損失申告とは、損失を申告することにより、翌年度以降へ損失を繰り越すことです。

損益計算書の書き方(青色申告書)

損益計算書とは、1年間を通じて事業で得られた利益や損失をまとめた書類です。一般的に、青色申告決算書の1から3ページ目が損益計算書に該当します。

損益計算書の1ページ目に記載される主な項目は、以下のとおりです。

  • 売上
  • 原価
  • 経費
  • 各種引当金・準備金
  • 青色申告特別控除

それぞれに該当する金額を記載しましょう。

また、損益計算書の2ページ目には以下の項目があります。

  • 月別売上金額および仕入金額
  • 給料賃金の内訳
  • 専従者給与の内訳
  • 貸倒引当金繰入額の計算
  • 青色申告特別控除の計算

「給料賃金の内訳」や「専従者給与の内訳」には、支払った相手の氏名の記載が必要です。また、「貸倒引当金繰入額の計算」には、回収が不可能と見込まれる売掛金や貸付金の見積額を記載します。

損益計算書の3ページ目に記載する項目は、以下のとおりです。

  • 減価償却費の計算
  • 利子割引料の内訳
  • 税理士・弁護士の報酬、料金の内訳
  • 地代や家賃の内訳
  • 特殊事情

「減価償却費の計算」では、耐用年数に応じて分割で経費計上するための減価償却費を計算します。「利子割引料」とは、金融機関からの借入で発生する支払利息や手形の割引料などのことです。

「地代や家賃の内訳」では、家事按分ができます。家事按分とは、プライベートと業務の両方で使用している支出に対し、業務で使用している割合を経費として計上することです。

貸借対照表の書き方(青色申告書)

貸借対照表とは、特定の時点における事業の財政状態を示した書類です。一般的に、青色申告書の4ページ目が貸借対照表にあたります。

貸借対照表で記載する項目は、以下のとおりです。

  • 資産の部
  • 負債・資本の部
  • 製造原価の計算

左側の「資産の部」は、事業の資産状況を示した項目です。現金・預金・売掛金などが記載されます。

右側の「負債・資本の部」は、借入金・買掛金などの負債や、元入金・事業主借などの資本が示された項目です。元入金とは、個人事業主が事業を始める際の元手になる勘定科目(会社でいう資本金)、事業主借は事業以外から入金があった際の勘定科目(事業以外で出金した際に使うのが事業主貸)を指します。

「資産の部」合計と「負債・資本の部」合計が、一致している点が貸借対照表のポイントです。書き終えたら、数字が一致するか確認しましょう。

収支内訳書の書き方(白色申告書)

収支内訳書とは、売上や経費などの数値を示した書類です。白色申告の場合、収支内訳書を作成するため、損益計算書や貸借対照表を用意する必要はありません。

一般的に、収支内訳書は2ページに及びます。収支内訳書の1ページ目で記載する項目は、主に以下のとおりです。

  • 住所・氏名など
  • 「営業等」又は「雑(業務)」
  • 収入金額
  • 売上原価
  • 経費
  • 専従者控除
  • 給料賃金の内訳
  • 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
  • 事業専従者の氏名等

「売上原価」には、飲食店や小売店などで仕入れる個人事業主が記載します。また、「経費」は旅費交通費や通信費などの金額を記載する項目です。

収支内訳書の2ページ目には、以下の項目があります。

  • 売上(収入)金額の明細
  • 仕入金額の明細
  • 減価償却費の計算
  • 地代家賃の内訳
  • 利子割引料の内訳
  • 本年中における特殊事情

「本年中における特殊事情」の欄は、税務署に伝えるべきことがある際に使用しましょう。

STEP3 確定申告書を税務署に提出する

確定申告書を作成したら、書類を提出しましょう。提出方法は、主に以下のとおりです。

  • e-Taxで申告する
  • 住所地の所轄税務署もしくは業務センターに送付する
  • 所轄税務署に直接持参する

確定申告書は、郵便物や信書便物で送付しなければなりません。送付する際に押される通信日付印が、確定申告した日としてみなされます。

さらに税務署に持ち込めるのは、祝日などを除く月曜日から金曜日の午前8時半から午後5時までです。時間外にしか税務署に行けない場合は、時間外収受箱への投函でも提出できます。

なお、住所地の所轄税務署がわからない場合は、国税庁のホームページから確認しましょう。

参考)国税庁「国税局・税務署を調べる」

STEP4 税金を納付する(還付を受ける)

確定申告後、申告した金額の税金を期限までに納付しなければなりません。所得税の納付方法は、以下のとおりです。

  • 窓口納付(納付書を使って金融機関または所轄税務署で納付)
  • ダイレクト納付(e-Tax利用者が、自身の預貯金口座から振替で納付)
  • インターネットバンキング(e-Tax利用者が、インターネットバンキングから納付)
  • クレジットカード納付(クレジットカードで納付*利用手数料あり)
  • スマホアプリ納付(スマートフォンのPay払いを通じて納付)
  • コンビニ納付(コンビニエンスストア窓口にて、QRコードやバーコードで納付)
  • 振替納税(振替依頼書を提出した上で、預貯金口座からの振替で納付)

確定申告書の提出後に、税務署から納付書や納税通知のお知らせなどが届くことはありません。自分から納付しなければならない点に、注意しましょう。

また、本来納付すべき金額よりも多く納税している場合、確定申告書に記載(入力)した口座に税金が還付されます。書面で提出した場合は申告から1か月〜1か月半、e-Taxを利用した場合は3週間程度が還付の目安です。

確定申告の税額の計算方法

確定申告では、金額を記載したり計算したりする場面があります。計算するにあたって、所得の種類を意識することがポイントです。

たとえば、会社員がネットショップ運営の副業をしている場合、基本的に給与所得と雑所得(場合によって事業所得)を計算します。今回は年間の給与収入が400万円、雑収入が100万円、雑収入を得るために経費50万円がかかったケース(繰越損失なし)で、計算方法を確認していきましょう。

所得を計算する

給与所得は、以下の式で計算します。

給与所得 = 1年間の給与合計金額 - 給与所得控除

給与所得控除額は、給与などの収入金額によって異なります。2023年4月1日現在、給与所得控除額は以下のとおりです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額 × 40% ー 100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

今回、給与収入が400万円で、給与所得控除額は124万円です(400万円 × 20% + 44万円)。そのため、給与所得は276万円(400万円 ー 124万円)と計算できます。

続いて、雑所得(業務にかかる)の計算方法は、以下のとおりです。

総収入金額 - 必要経費

今回、雑収入が100万円でそれにかかった経費が50万円のため、雑所得は50万円です(100万円 ー 50万円)。

なお、給与所得と雑所得を合わせることで、年間所得を326万円と計算できます(276万円 + 50万円)。

参考)国税庁「No.1410 給与所得控除」

課税所得を計算する

課税所得は、所得から所得控除を引くことで求められます。今回は、基礎控除のみ適用になると仮定しましょう。

基礎控除額は、以下のように合計所得金額によって異なります。

納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

今回の合計所得は326万円のため、基礎控除額は48万円になります。よって、課税所得は278万円です(326万円 ー 48万円)。

参考)国税庁「所得税のしくみ」

所得税額を計算する

所得税額は、課税所得に税率をかけてから一定の控除額を引くことで計算できます。2023年4月1日時点の、所得税率と控除額は以下のとおりです。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

税率は5%から45%の7段階に区分されており、所得が多くなるほど税率も高くなる点が特徴です。このように、所得が多くなるにつれて税率が段階的に高くなり、納税者がその支払能力に応じて公平に税を負担するしくみを「超過累進税率」と呼びます。

今回、課税所得の金額は278万円のため、税率10%で控除額が97,500円です。よって、所得税額は18万5百円と計算できます(278万円 × 10% ー 9.75万円)。

なお、2037年までは、所得税額の2.1%にあたる復興特別所得税も納付しなければなりません。今回のケースでは、約3,790円です(180,500円 × 2.1%)。

参考)国税庁「No.2260 所得税の税率」

確定申告をスムーズに進めるコツ

以下が確定申告をスムーズに進めるコツです。

  • 確定申告ソフト・会計ソフトを利用する
  • 経費計上する領収書を保存しておく
  • 帳簿をこまめにつける

会計ソフトを利用すれば、計算ミスを防ぎ初心者でも確定申告しやすいです。確定申告には、収入や経費の金額を確認するために資料を集めたり、さまざまな計算をしたりして手間がかかるため、効率よく進める工夫をしましょう。

確定申告がわからないときの相談先3選

確定申告のやり方や税金の計算方法などがわからない場合、主な相談先は以下のとおりです。

  1. 税理士
  2. 税務署窓口
  3. 自治体の相談窓口

相談先ごとの特徴や、相談できる内容などを解説します。

1. 税理士

税理士の業務として、「税務相談」「税務書類の作成」「税務代理」などがあります。税務代理とは、確定申告や青色申告の承認申請などを代理することです。

税理士に相談すれば、確定申告についての専門的なアドバイスを受けられるでしょう。また、税務書類の作成や確定申告の代理を依頼すれば、手間を省けます。ただし、税理士に依頼すると、10万円前後の費用がかかる点に注意が必要です。

2. 税務署窓口

確定申告時期になると、税務署の申告相談会場で確定申告について相談できます。無料の点が、税務署に相談するメリットです。

ただし、相談できるのは開庁時間に限定されている点、「入場整理券」が必要な点に注意しましょう。時期によっては混雑するため、早めに行動することが大切です。

なお、税務署によっては、閉庁日に確定申告の相談受付をしている場合もあります。

3. 自治体の相談窓口

自治体によって、地元の税理士会との共催で税金についての相談を受け付けていることがあります。ただし、利用できるのは該当する自治体の住民に限ることが一般的です。

また、住民税の確定申告については、税務署ではなく役所が主な相談窓口となります。所得税の確定申告対象外でも住民税申告が必要な場合は、早めに相談しましょう。

確定申告まとめ

確定申告とは、1年間に生じた所得や所得税額を計算して過不足を精算する手続きのことです。所得や条件によって、確定申告が必要な場合と不要な場合があります。

確定申告不要な場合でも、住宅ローン控除(初年度)を受ける場合などには、確定申告したほうがよいです。また、確定申告の対象外でも、住民税の申告が必要になることがあります。

毎年確定申告には期限があるため、制度を理解して早めに準備しておきましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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