督促状とは?書き方、テンプレート、例文や催促状との違いも解説
更新日:2023年12月11日

督促状を書くときには、一般的に発行日・支払の要求・法的手段の告知などを盛り込みます。また、発送する際は、普通郵便で送付することや封筒の一部に朱書きで対応することがポイントです。
本記事では、督促状の書き方とは何かを説明してから、テンプレート・例文も紹介します。
目次
督促状とは
そもそも督促は、相手に約束の履行や物事の実行などを促すことを指します。そのため、督促状とは、発送する相手に対して速やかな対応を促すための文書のことです。
一般的に、督促状は通常の督促状と支払督促の2種類に分けられます。通常の督促状は債権者が債務者に直接送付する書類であるのに対し、支払督促は裁判所から債務者に対して発送する書類です。そのほか、国や自治体が税金を完納していない人に対して法律に基づき発送する書類も督促状と呼びます。
ここから、督促状の目的や、似た場面で使われる催促状との違いについて確認していきましょう。
参考:裁判所「支払督促」
督促状の目的
督促状を発送する目的は、相手に支払い(債務履行)を求めることです。主に代金の未払いや借金を未返済の相手に対して、督促状を発送します。
支払督促の場合、時効を阻止できる点もポイントです。
本来、債権者が知ったときから5年もしくは債権行使できるときから10年経過すると、債権は時効で消滅してしまいます(民法第166条)。しかし、裁判所に支払督促の申し立てをすれば、6か月を経過するまで時効が完成しません(民法第147条)。
督促状と催促状の違い
督促状と類似した言葉として、催促状があります。催促状も、督促状と同じく未払いや未返済の相手に対して発送する書類です。
督促状と催促状の主な違いとして、発送のタイミングや法的措置について触れるかという点が挙げられます。違いを以下の表にまとめました。
催促状と督促状の違い | 催促状 | 督促状 |
送付するタイミング | 支払いが遅れた初期段階 | 発送した催促状に対して相手から反応がない場合 |
法的措置についての記載 | なし | あり |
送付方法 | メールや普通郵便 | 普通郵便 |
なお、督促状を送っても反応がない場合は「催告書」を送ります。混同しやすいため、催促状・督促状・催告書の順に送るものとイメージしておきましょう。催告書の概要については、後ほど詳しく解説します。
督促状の書き方
督促状(通常の督促状)は、以下の構成に従って書くことが一般的です。
- 宛先
- 表題
- 発行日・差出人
- 支払の要求
- 法的手段の告知
- 入金を確認した時期
督促状に記載する項目や書き方について、詳しく解説します。
宛先
宛先の書き方は、相手が企業なのか、それとも担当者なのかによって変更します。企業相手に送るのであれば、宛先は「株式会社〇〇 御中」などです。
担当者に送る場合は、会社名・部署・役職・担当者名を記載します。具体例は、「株式会社〇〇 総務部 部長 〇〇様」です。
個人顧客などに送る場合、個人名をフルネームで記載すると強いプレッシャーを与えかねません。サービス提供に伴う会費の入金が確認できないなどの事情の場合、フルネームを記載せず「〇〇会員様」とするとよいでしょう。
なお、宛先は文書の左上に記載します。
表題
表題には、「督促状」や「お支払いのお願い」「〇〇お支払いの件について」などと記載します。
「督促状」と記載すれば、相手に強いインパクトを与えられる点がメリットです。ただし、事務的で心理的なプレッシャーを与え、相手との関係が悪化する可能性もあります。
一方、「お支払いのお願い」などと記載すれば、相手に与えるプレッシャーを緩和できる点がメリットです。その代わり、「督促状」と比べて強制力が弱い印象を与えるため、相手の支払いがさらに遅れる可能性もあります。
表題を記載する場所は、一般的に文書の上部中央です。
発行日・差出人
文書の右上には、発行日や差出人を記載します。
発行日は、すでに支払い期日を過ぎていることを相手に明確に伝えるために必要です。発行日の記載は、督促状のようにフォーマルな文書では和暦を使うことが一般的ですが、通常西暦を使っているのであればあえて変える必要はありません。
差出人には、会社名・部署・役職・担当者名を記載します。また、正式な文書であることを相手に知らせるため、捺印や直属の上司の名前も記しておくとよいでしょう。
すでに連絡先を知らせている相手であっても、電話番号を文書内に記載しておいた方がその後のやり取りをスムーズに進められます。
支払の要求
何の支払いについてなのか相手が理解できるように、支払いの要求内容を詳しく記載します。記載する主な項目は、以下のとおりです。
- 請求書番号
- 支払いの内容
- 金額
- 支払期日(支払期限)
- 振込先
いずれも、記載に間違いがあるとトラブルにつながりかねないため、記載内容をしっかりと確認した上で先方に送るようにしましょう。また、支払要求の内容は以下のように箇条書きでまとめるとわかりやすいです。
- 請求書番号0001
- 令和〇〇年〇月〇日付けで請求申し上げた□□の代金
- 850,000円(消費税込み)
- お支払い期限令和〇〇年△月△日
なお、支払期日は、一般的に数日後から1週間後に指定します。相手の状況を確認するためにも、「いつまでにお支払いいただけるか、ご連絡をいただけますと幸いに存じます」などの文言を盛り込むとよいでしょう。
法的手段の告知
督促状を発送しても、相手の対応がない場合を想定し、法的措置を講じる可能性について言及します。法的手段を告知する文言の例は、以下のとおりです。
期日までにお支払いいただけない場合、誠に遺憾ではございますが、弊社といたしましても法的措置を取らざるを得ませんことをご承知おきください。
ただし、相手側との関係が悪化することを懸念する場合は、文言を盛り込まない方がよいでしょう。
また、法的措置の可能性に加えて、遅延損害金・延滞利息・請求手数料を加算することを伝えることもあります。遅延損害金や延滞利息は、支払いが遅れたことによるペナルティのことです。
なお、通常の督促状には、強制執行に関する法的な効力はありません。実際に法的手段を講じる際は、内容証明郵便で催告書を送付します。
入金を確認した時期
入金の有無を確認した時期も、文書内に盛り込むようにしましょう。なぜなら、督促状と行き違いにすでに入金されている場合、相手に不快感を与えかねないためです。
また、自社の資金繰りなどの理由ですぐに資金が必要な場合、相手に入金後連絡することを促す文章を盛り込むとよいでしょう。
さらに、支払予定日をあらかじめ相手に知らせてほしい場合に、返信欄を文書の下部に設けることもあります。返信欄に記載するのは、お支払予定日や相手の会社名・担当者名・印鑑欄です。
督促状のテンプレート(例文)
督促状を一から作成するには、手間がかかります。取引先の入金が遅れて慌てて督促状を作成する事態にならないように、あらかじめ社内や部内で督促状のテンプレートを用意しておくとよいでしょう。
督促状のテンプレート・例文を紹介します。
令和5年◯月◯日
□□株式会社
総務部担当 ◯◯ ◯◯
総務部長 △△ △△
電話番号03-〇〇〇〇-〇〇〇〇
株式会社 〇〇
総務部 部長
□□様
〇〇お支払いの件について
拝啓
貴社におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
平素より格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
さて、先般請求申し上げました「〇〇〇」の代金850,000円につきまして、本日時点で未だ入金の確認が取れておりません。
ご多忙のおり、大変恐縮ではございますが、当方帳簿整理の都合もございますため、以下内容についてご対応いいただくようお願い申し上げます。
- 請求書番号:0001
- お支払内容:令和〇〇年〇月〇日付けで請求申し上げた□□の代金
- お支払代金:850,000円(消費税込み)
- お支払い期限:令和〇〇年△月△日
- お振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通〇〇〇〇〇〇〇 株式会社〇〇〇〇(フリガナ記載)
△月△日までにお支払いただけない場合、誠に遺憾ではございますが、弊社といたしても法的手段を取らざるを得ませんことご理解ください。
なお、ご送金が本状と行き違いになっておりましたら、何卒ご容赦願います。
敬具
今回紹介したのはあくまで一例です。実際の文面は、会社の状況や相手先との関係性、取引内容などによって変わるため、注意しましょう。
督促状を送る際のポイント
督促状を送る際、以下の点がポイントです。
- 再度請求書を一緒に送る
- 普通郵便で送付する
- 封筒は朱書きで対応する
それぞれの内容を詳しく解説します。
再度請求書を一緒に送る
督促状を送る際に、再度請求書を発行するか、当初の請求書の写しを作成して一緒に送るようにしましょう。なぜなら、相手がどの支払いのことかすぐに理解できなければ、その分入金が遅れるためです。
ただし、相手先の会社の連携不足などで、誤って最初に発行した分と再発行した分で二重に振り込む可能性もあります。二重振込を防ぐために、「再発行」「写」などの文言を朱書きで請求書に記載することが大切です。
また、遅延損害金・延滞利息・請求手数料などを加算する場合は、別途請求書を発行しましょう。
普通郵便で送付する
督促状自体に法的効力はないため、普通郵便で送付します。内容証明郵便で送ると、相手にプレッシャーを与えてしまうからです。
なお、内容証明郵便とは、いついかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度を指します。普通郵便と異なり、内容証明郵便で送る場合は郵便ポストではなく、郵便局窓口に提出しなければなりません。
封筒は朱書きで対応する
督促状を送る際、封筒の一部に朱書きで対応するようにしましょう。目立たない状態で郵送すると、他の郵便物に紛れて相手に気づかれず、開封が遅れる可能性があるためです。
朱書きで対応する際は、表書きに「督促状」や「支払督促状」などと赤で記載します。会社で督促状を発送する機会が多い場合、専用の印鑑を作成しておくと便利です。
督促状を送っても反応がない場合は?
督促状を送っても反応がない場合は、催告書を発送します。催告書とは、何度催促しても支払い(返済)しようとしない相手に対して強く支払いを請求する書面のことです。
催告書は、督促状よりも深刻な場面で送ります。催告書を発送すると、消滅時効の完成が6か月先延ばしになる点がポイントです。
督促状と催告書の違いを、以下にまとめました。
督促状と催告書の違い | 督促状(通常の督促状) | 催告書 |
送付するタイミング | 発送した催促状に対して相手から反応がない場合 | 発送した督促状に対して相手から反応がない場合 |
発送による時効消滅の先延ばし | なし | あり |
送付方法 | 普通郵便 | 内容証明 |
催告書は法律的な文書としての意味合いが強いため、郵便局にて内容証明で発送しなければなりません。
自社に督促状が届いた場合はどうする?
会社の状況や手違いなどの理由で、自社に督促状が来るケースもあります。自社に督促状が届いた際の対応方法は、主に以下のとおりです。
- すばやく対応する
- 支払いが困難な場合は相手に相談する
それぞれ何をすべきか詳しく解説します。
すばやく対応する
取引先からの信頼を損なわないために、自社に督促状が届いたらすばやく対応することが大切です。督促状に記載されている支払期日に間に合うように、代金を入金しましょう。
ただし、架空請求の可能性もあるため、慌てて対応することは危険です。必ず督促状の内容と、請求書を照合して問題ないことを確認してから対応しましょう。
支払いが困難な場合は相手に相談する
万が一、支払いが困難で滞っていた場合は、まず相手に相談しましょう。理由や状況によって、相手に支払の条件を変更してもらえる可能性があります。
取引先に相談しても支払期日を延ばせない場合は、未回収の売掛金を回収することや、銀行から融資を受けることを検討しましょう。ただし、いずれの方法も短い期間では難しいです。
結果的に支払期日までに間に合わなければ、法的措置を取られかねません。そのような事態に陥らないためにも、日々資金繰りの管理を徹底しましょう。
督促状まとめ
督促状とは、支払や返済が遅れている相手に対して速やかな対応を促すための文書を指します。督促状の文面には、支払の要求・法的手段の告知・入金を確認した時期などを盛り込みます。
また、督促状を送る際は請求書を同封することや、普通郵便で送ることがポイントです。催促状・督促状・催告書の違いを理解した上で、支払いが滞っている相手に対応するようにしましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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