管理会計とは何か?財務会計と比較しながらそのメリットを解説します

2022.03.08

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企業会計は大別して「管理会計」と「財務会計」に分けられます。管理会計と財務会計は、目的や管理の対象が異なります。今回は、管理会計とは何かや、財務会計との違い、管理会計を活用するメリットなどについて詳しく解説します。※2022年3月8日に更新

管理会計とは何か?

管理会計は、英語で「Management accounting」と呼ばれており、その名の通り企業をマネジメントする会計を指します。通常、企業をマネジメントしている人物は、社長や取締役など役員、管理者などの経営者です。つまり管理会計は、経営者が経営をマネジメント(管理)する際に必要となる情報を提供するために作成される会計です。管理会計で経営者に提供する情報は企業により異なります。

管理会計には法律などの制約はない

管理会計とは、前述の通り経営をマネジメントする上で必要な会計です。管理会計によるデータは、基本的に社内だけで使用します。そのため、管理会計を必ず作成しなければならないといった決まりはなく、データの収集方法やフォーマット、記載の方法などについての決まりはありません。また、期間についても定めはなく、会社ごとに期間を決めたり、必要に応じて作成できます。

管理会計の目的

管理会計を作成する義務はありません。では、なぜ管理会計を作成するのでしょうか。 それは、経営を管理するためです。経営者が製品や人事に関する施策を打つ際に、自社の経営状況を分析したり、意思決定をするために必要となる材料が管理会計です。管理会計のデータをもとに業務改善や課題解決による業績改善が可能なほか、意志決定のための情報整理が可能です。

管理会計での管理対象

管理会計の対象となる指標は、予算・原価・限界利益・損益分岐点・経営管理・資金繰り管理です。ここからは、それぞれの管理対象について詳しく解説します。

予算

予算とは計画上の金額のことで、予算を管理会計する場合には「予算管理」と呼びます。予算管理は、予算と実際にかかった金額である経費を比較して改善するための管理方法です。予算は年次予算や月次予算などがあり、多くの企業では常に予算を管理しています。予算管理はPDCAサイクルを活用することで、正確かつ有効にできます。 PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取った言葉で、PDCAを繰り返すことを「PDCA」サイクルと呼びます。

原価

原価管理とは、計画の原価と実際の原価を比較して改善するための管理方法です。原価管理でも、予算管理同様PDCAサイクルを活用できます。 PDCAサイクルを繰り返すことで、課題を見つけ的確な対応が可能です。また、原価管理には複数の種類がありますが、「標準原価」と「実際原価」が一般的です。標準原価と実際原価のについて詳しく解説します。

標準原価と実際原価について

標準原価とは、製造業における製造時に目標とすべき原価のことです。材料の標準使用量や標準価格、従業員の標準人件費などから算定します。標準原価は更に、理想標準原価・現実的標準原価・正常原価・基準標準原価の4つに分けられます。一方で実際原価とは、製造業における実際に生産で使用した部品や材料などの数量・取得した部品や材料などの単価・費やした作業時間といった、実際消費量を積算した原価計算です。ただし、実際原価で算定できる金額は正常な消費のみで、異常な原因で生じた消費は含まれません。

限界利益

限界利益とは、売上高から変動費を差し引くことで算出される利益です。限界利益の数値により、企業が儲かっているかを判断する指標になります。また、売上高のうち限界利益が占める割合を「限界利益率」と呼びます。なお、限界利益の「限界」とは「ぎりぎり、極限」という意味ではなく、「1単位追加で増えるごとに」という意味です。限界利益は「限界利益=売上高−変動費」で算出できます。算出した数値がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字です。

損益分岐点

損益分岐点とは、限界利益と固定費が同額である状態です。損益分岐点を求める計算式は下記の通りです。

損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

損益分岐点は赤字と黒字の境目にある点です。損益分岐点を明確にすることで、利益を出すために必要な売上高と、固定費および変動費の改善点を分析しやすくなります。

経営管理

経営管理とは、企業や予算や目標を達成するための計画を策定し、その計画を実施するための活動を評価および改善する管理方法です。具体的には、内部統制の強化や、組織再編、経営分析などを、組織単位または事業単位で管理します。 経営管理を実施すれば、企業が持つ力を最大限に発揮しながら、目標達成に向けた仕組みを作ることができます。また、目標と目標に対するプロモーションを明確にすることで、従業員とベクトルを合わせることができ、モチベーションの向上を図ることができます。

資金繰り管理

資金繰り管理とは、会社の収入と支出を管理して、収支の過不足を調整する管理方法です。キャッシュフローと資金繰り管理は混同されることもありますが、両者は意味合いが異なります。キャッシュフローとは、現金の流れを表す指標です。一見同じように見えますが、現金の流れを把握するための目的が異なるため、両者は異なる指標として区別されます。資金繰り管理は、すぐ先の未来における現金の流れを把握することを目的に管理します。一方でキャッシュフローは、過去の現金の流れを把握することが目的です。 つまり、資金繰り管理をすることで、現在の状況だけでなく、未来の計画を立てることも可能になります。資金繰り管理の対象となる資金は、現金・当座預金・普通預金・定期預金・売戻し条件付現先・公社債投資信託など、企業がすぐに支払い可能な資産を指します。ただし、上場株式は資金に含まれません。

管理会計の導入メリット

前述の通り、管理会計は企業の任意で作成します。そのため、管理会計はわざわざ作成しなくても良いと考える方もいるでしょう。そこで、管理会計を導入するメリットをご紹介します。

経営状態の可視化

管理会計を作成することで、経営状態に関する数値を整理できます。整理された情報を用いることで、経営状態を明らかになります。これにより、改善点を発見できるきっかけにもなります。

目標・業績管理が可能

予算や目標と、実績を比較すると、設定した予算や目標が適切かを管理できます。また、業績(結果)についても可視化することで、評価しやすくなります。

一律で公正な評価が可能

企業単位だけではなく、部署単位で目標を明確にできます。これにより、評価軸が部署ごとに明らかになり、目標の水準を合わせられ、異なる部署間でも公正な評価ができます。

経営に必要な思考力の習得が可能

管理会計では、さまざまな書類を作成できます。財務諸表の作成に携われば、財務諸表の見方や、それに基づいた未来予測や施策提言ができる力が身に付きます。

適切な施策の実行が可能

現在の状況を把握することで、課題や自社の強み・弱みといった内容が理解できます。管理会計を作成しない場合に比べ、より適切で効果的な施策が実行できるでしょう。

コスト削減を実現できる

予算と実績を管理できるため、管理会計から課題が見えてくることも少なくありません。新たに見つけた課題をクリアすることで、コスト削減にもつながります。

管理会計と財務会計の比較

では、管理会計と財務会計には、具体的にどのような点で異なるのでしょうか。ここからは、管理会計と財務会計の具体的な違いをご紹介します。

会計上の違い

管理会計と財務会計の大きな違いは会計上にあります。それぞれの違いは、下記の表の通りです。

管理会計 財務会計
利用者 経営者(社内) 投資家、銀行、税務署、債権者など(社外)
目的 経営管理のため 利害者に財政状況を報告するため
内容 必要な項目のみ 会計基準に準拠する
書式 必要な資料やレポートなど 財務諸表
集計単位 金額・kgなど必要な単位 金額
対象期間 1ヶ月・1年など必要な期間 1年・半年・四半期(会計期間に準じる)

実施時期について

管理会計と財務会計には、上の表に加えて実施時期にも違いがあります。
管理会計は、社内で任意に作成するため、いつ作成しても問題ありません。しかし、財務会計は決算の期限や税金の申告の期限が定められているため、作成期日があります。

財務会計とは何か?

社内で使用される管理会計に対し、企業外部の投資家や財務署といった利害関係者に対して必要な会計を財務会計といいます。ここからは、財務会計の定義・目的・機能について説明します。ちなみに、税金の申告を目的とする会計を「税務会計」と呼び、財務会計と税務会計をあわせて「制度会計」と呼びます。参考)制度会計とは何か?管理会計との違いを簡単に解説

財務会計の定義

財務会計とは、企業外部の利害関係者に対し、企業の財務状況を報告するための会計です。財務会計を作成する際には、財務諸表を作成する上でのルールである会計基準に沿って作成し、開示しなければなりません。

財務会計の目的

財務会計は、外部の利害関係者に自社の財政状態を報告するために作成します。財政状況とは、決算日時点での企業財産の状況です。財務状況を開示するためには、決算報告書(財務諸表)の作成が求められます。決算報告書には、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などが含まれます。

貸借対照表

貸借対照表とは、決算日時点での企業の財政状況を資産、負債、純資産によって示す書類です。資産とは将来の収入につながる物、負債とは将来の支出につながる物、純資産とは資本金のことです。貸借対照表では左側に資産、右側に負債と純資産が記載されています。管理会計の観点で貸借対照表分析する場合には、分析したい内容により指標が異なります。例えば、短期的な資金繰りを確認したい場合には流動資産と流動負債を比較します。流動資産が流動負債よりも多ければ、資金繰りは問題ないと判断できます。また、企業の支払い能力を確認したい場合には、流動比率や当座比率を確認します。

損益計算書

損益計算書とは、期首から決算日までのすべての収益と費用から利益を計算して経営成績を表した書類です。会社の経営状況を把握する決算書には複数の種類がありますが、損益計算書は一定期間における会社の収益を把握するために必要不可欠な書類です。 管理会計の観点で損益計算書を見る際は、「売上高総利益率(粗利率)」「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」に着目しましょう。売上高総利益率(粗利率)は「売上総利益 ÷ 売上高 × 100」で算出でき、割合が高ければ高いほど優良企業であると判断できます。ただし、売上高総利益率の目安は業種により異なり、製造業では22~24%程度、飲食店では55~70%程度です。売上高営業利益率は「営業利益 ÷ 売上高×100」で算出できる、売上高に占める営業利益の割合のことです。売上高営業利益率が高ければ、収益力が高い企業と判断できます。業種により異なるものの、基本的には10%を超えていれば優良企業と判断して良いでしょう。売上高経常利益率は「経常利益 ÷ 売上高 × 100」で算出でき、数値が高いほど優良企業とされています。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書とは、期首から決算日までの1年間における資金の出入を計算した書類です。キャッシュフローには営業活動、投資活動、財務活動の3種があります。企業が好調な場合には、営業活動はプラス、投資活動と財務活動がマイナスになっています。また、企業活動が窮地に陥っている場合には、投資活動がプラス、営業活動と財務活動がマイナスになっています。このように、3種の資金の出入から企業活動の状況が判断できます。

財務会計の機能

財務会計には、情報提供機能と利害調整機能の2つの機能があります。ここからは、それぞれの機能について解説します。

情報提供機能

情報提供機能とは、外部の利害関係者に対し、投資の意思決定のために有効な情報を提供する機能です。情報提供機能における外部の利害関係者とは、株式投資家や銀行などを指します。例えば、銀行へ融資を依頼したい場合に、銀行は財務諸表から企業の財産や返済能力、収益力などを判断します。

利害調整機能

利害調整機能とは、財務諸表利用者の利害を調整する機能です。利害調整機能における財務諸表利用者とは、株主・銀行・債権者を指します。

管理会計のまとめ

企業をマネジメントするために、社内で必要となる会計である管理会計。管理会計は必ず作成しなければならない資料ではありません。しかし、管理会計を作成することで、経営状況を可視化させて性格に把握できる、改善点から適切な目標を設定できる、部署や従業員を公正に評価できるなどのメリットがあります。しかし、管理会計の作成には労力がかかります。そこで、労力を減らすために管理会計システムの導入がおすすめです。

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