合同会社とは?株式会社との違いや設立メリット・デメリットを解説
更新日:2025年07月15日

合同会社とは、出資者自ら所有者として経営に携わる持分会社の一種です。設立のメリットには、設立費用を抑えられる点や「社員」の責任が限定される点が挙げられます。一方で、上場が認められていないため、大規模な資金調達には不向きな点がデメリットです。本記事では、こうした特徴に加え、合同会社を設立する手順についても詳しく解説します。
目次
合同会社とは
合同会社とは、出資者自らが所有者として経営に携わる「持分会社」の一種です。2006年5月に施行された新会社法により、合同会社が新たに設立できるようになりました。
他にも、日本で設立可能な会社形態は、合同会社を含めて、株式会社・合資会社・合名会社の4種類です。そのうち、株式会社以外の3つをまとめて「持分会社」と呼びます。
合同会社とほかの持分会社の主な違いは、社員が負う責任範囲が「有限責任」か「無限責任」かです。例えば「有限責任」の場合、会社が倒産した際に、社員は出資額を限度として責任を負うのに対し、「無限責任」の場合では債権者に対して負債額のすべての責任を負う必要があります。
合同会社の社員が負う責任範囲は、「有限責任」です。一方、合資会社は有限責任社員と無限責任社員、合名会社は無限責任社員のみで構成されています。
合同会社における役職
合同会社の主な役職は、以下のとおりです。
- 社員
- 代表社員
- 業務執行社員
社員とは、会社の持分を保有する「出資者」のことを指します。合同会社では、新たに社員として加わるためには、既存の社員全員の同意が必要であり、定款の変更も求められます。また、やむを得ない事由がある場合に社員はいつでも退社することが可能です。
代表社員は、会社を代表する立場の社員であり、業務執行社員は経営を担う社員を指します。社員は、代表社員でもあり業務執行社員でもあることが原則です。ただし、意思決定をスムーズに進めるために、代表社員や業務執行社員を定款で個別に定めることもできます。
なお、代表社員を決める場合は、業務執行社員のなかから選ばなければなりません。
合同会社と株式会社の主な違い
合同会社と株式会社の主な違いは、以下のとおりです。
- 定款認証の有無
- 決算公告の義務
- 所有と経営の分離
それぞれについて解説します。
定款認証の有無
合同会社と株式会社の主な違いの一つは、定款認証の有無です。定款とは、会社を設立するにあたって作成する基本的なルールを定めた書類のことです。
合同会社も株式会社も、設立する際は定款を作成しなければなりません。ただし、株式会社は定款の「認証」が必要であるのに対し、合同会社は不要である点が異なります。
認証とは、公証人が正式な手続きに基づき定款が作成されたことを証明することです。株式会社を設立する際は、所定の費用を支払い、本店所在地を管轄する公証役場で認証を受けます。
決算公告の義務
決算公告の義務があるかどうかも、合同会社と株式会社の大きな違いの一つとして挙げられます。
決算公告とは、官報や自社サイトなどを通じて、自社の決算内容(貸借対照表や損益計算書の要旨など)を公に知らせることです。株主や債権者に自社の状況を伝えて取引の安全性を保つことを主な目的としています。
株式会社と異なり、合同会社には決算公告の義務がありません。この点は、合同会社が小規模事業者にも選ばれやすい理由の一つとなっています。
所有と経営の分離
所有と経営の分離も、合同会社と株式会社で異なる場合があります。
「所有と経営の分離」とは、会社を所有する人(出資者)と実際に経営を担う人が異なる状態のことです。所有と経営の分離には、所有する人が経営する人を監視しやすいなどのメリットがある一方で、所有する人と経営する人の間で対立が生じる可能性があるなどのデメリットもあります。
合同会社では、出資者である「社員」が業務執行の権限を持つため、所有と経営の分離は基本的に実施されていません。一方、株式会社は会社を所有する人(株主)と経営者を分けて、所有と経営の分離を図ることが原則です。
ただし、日本の多くの中小企業のように、経営者自信が株式の過半数を所有し、株式会社でも所有と経営の分離が進んでいないケースはあります。中小企業庁の「中小企業白書」によると、2017年度において中小企業のうち約72%がオーナー経営企業に該当しています。
参考)中小企業庁「2018年版 中小企業白書 第1部第4章第2節 企業の統治構造の整備状況」
合同会社を設立するメリット
ほかの会社形態と比較したうえで、合同会社を設立するメリットは主に以下のとおりです。
- 設立時のコストを抑えられる
- 自由度の高い経営ができる
- 「社員」の責任が限定される
- 役員の任期更新の手間やコストを省ける
それぞれ解説します。
設立時のコストを抑えられる
株式会社と比べて、設立時のコストを抑えられる点が合同会社を設立することのメリットです。
株式会社を設立する場合は、定款の認証が必要となり、公証人への手数料として、資本金額に応じて3万円・4万円・5万円のいずれかの費用がかかります(要件を満たす場合は、1万5千円に軽減されるケースも)。一方、合同会社を設立する際には定款認証が不要なため、その分のコストがかかりません。
さらに、会社設立時の登録免許税が株式会社と比べて合同会社の方が安くなる場合もあります。いずれも登録免許税の税率は資本金額の0.7%ですが、合同会社は額が6万円に満たないときに1件につき6万円で済むのに対し、株式会社は15万円に満たないときに1件につき15万円かかります。
なお、合名会社・合資会社は1件につき6万円で統一されているため、合同会社の設立コストの方が高くなる可能性が高いです。
参考)日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
参考)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
自由度の高い経営ができる
合同会社は、株式会社と比べて自由度の高い経営をしやすい点も、大きなメリットです。
株式会社の場合では、代表取締役であっても株主総会の決議で承認を得なければ重要な経営判断を下せません。株主総会の決議事項として、資本金の減少・事業譲渡契約の承認・計算書類の承認などが挙げられます。
一方、合同会社には株主総会のような機関が存在しないため、出資者である「社員」だけで意思決定が可能です。そのためスピーディーで柔軟な経営判断が実現しやすくなります。
「社員」の責任が限定される
合同会社では、合名会社や合資会社と異なり、「社員」の責任が限定される点もメリットとして挙げられます。合名会社はすべて無限責任社員で構成され、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方を必要とするのに対し、合同会社は有限責任社員のみで構成されている点が特徴です。
合名会社や合資会社が倒産した際にすべての債権を払いきれない場合は、無限責任社員が個人の財産で弁済しなければなりません。一方、合同会社の社員はすべて有限責任社員のため、自身が負う責任は、出資した金額のみに限定されます。
役員の任期更新の手間やコストを省ける
合同会社では、株式会社と比べて役員の任期更新にかかる手間やコストを省ける点もメリットです。
株式会社では、会社法で取締役の任期が2年(非公開会社の場合は定款で最長10年まで可)と定められています。任期が満了したら、再任や新任の手続きが必要です。
たとえ再任の場合でも、新任の取締役になる場合と同様に、役員変更の登記が必要です。役員変更の登記には、資本金額に応じて1件あたり1万円もしくは3万円かかります。
それに対して、合同会社は役員の任期を定める必要がない分、役員を選ぶ手間や登記手続きにかかる費用を省けるでしょう。
参考)法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」
合同会社を設立するデメリット
合同会社を設立するデメリットは、主に以下のとおりです。
- 株式会社と比べると信用度が低くなる場合がある
- 多額の資金調達には向いていない
- 「社員」が対立すると意思決定が困難になる
ここから、各デメリットについて解説します。
株式会社と比べると信用度が低くなる場合がある
株式会社と比べて信用度がやや低くなる場合がある点が、合同会社を設立することのデメリットとして挙げられます。
その理由の一つに「合同会社」という言葉が日本ではまだあまり浸透していないことが、株式会社と比べて信用度が低いとされる理由です。ただし、近年は外資系企業が合同会社として会社を設立するケースもあり、合同会社が知られる機会は増えています。
また、合同会社には決算公告の義務がないため、債権者や投資家にとっては合同会社の財務内容や業績が不明瞭です。内容が知られていない分、すぐに信頼を得ることが難しいでしょう。
なお、あくまで決算公告が義務ではないだけのため、合同会社でも信頼を得るためにあえて決算公告を行い信頼性を高めることは可能です。
多額の資金調達には向いていない
株式会社と比べると、多額の資金調達には向いていない点も合同会社を設立するデメリットです。
株式会社の場合、証券取引所が定める基準を満たせば上場が可能であり、証券会社を通じて株式をより多くの人に購入してもらえる機会が広がります。上場によって得た資金は返済の必要がないため、大規模な事業展開がしやすくなります。
一方、合同会社は上場制度の対象外のため、株式会社のように不特定多数の投資家からお金を集めることは難しいでしょう。
「社員」が対立すると意思決定が困難になる
「社員」同士が対立すると経営上の意思決定が困難になることも、合同会社を設立するデメリットです。
合同会社は所有と経営が分離しておらず、株主総会のような仕組みもありません。その分、決議などを必要としないためスムーズに経営を進められる点はメリットです。しかし、業務執行権を持つ社員同士が対立した場合は、経営判断を下せません。例えば、社員Aと社員Bで成り立つ合同会社で、AとBの意見が食い違うと業務執行が困難です。
なお、このような状況を防ぐ方法として、業務執行権を持つ社員を決めておくなどの方法があります。
合同会社を設立する流れ
合同会社を設立するまでの流れは、一般的に以下のとおりです。
- 会社の基本事項を決める
- 定款を作成する
- 出資金を払い込む
- 設立登記を申請する
- 銀行口座などを作成する
ここからは、各手順で行う内容について詳しく解説します。
1. 会社の基本事項を決める
合同会社を設立するにあたって、まず会社の基本事項を決めておきましょう。決めておかなければならない項目は、主に以下のとおりです。
- 社名
- 事業内容
- 本店所在地
- 資本金
- 決算期
なお、社名は必ず名称の前か後ろに「合同会社」を使用します。また、関連する事業を営んでいないにもかかわらず、社名に「学校」「銀行」「保険」などを使うことは禁じられています。
2. 定款を作成する
合同会社に関する基本事項を決めたら、定款を作成します。定款に必ず記載する項目は、以下のとおりです。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名または会社の名称・住所
- すべての社員を有限責任社員とする旨の内容
- 社員の出資目的・価額または評価の標準
上記の項目が「絶対的記載事項」です。そのほかにも、定款に規定がない限り効力を生じない項目(「相対的記載事項」)や「絶対的記載事項」「相対的記載事項」以外で会社法に反しない項目(「任意的記載事項」)があります。
3. 出資金を払い込む
定款を作成したら、社員になる予定の人が出資金を払い込みます。出資金は、設立の登記をするまでに金銭もしくは金銭以外の財産で全額分払わなければなりません。
出資金は、出資者の個人口座に振り込む必要があります。その後、払込があったことを証明する「払込証明書」と、振り込まれた口座の預金通帳における該当ページの写しなどを一緒にまとめます。
4. 設立登記を申請する
出資金を払い込んだら、管轄する法務局に設立登記を申請します。申請には、登記申請書・定款・払込証明書などが必要です。
申請書には、申請人の商号や代表者の氏名・住所、登記事由、申請年月日などを記載します。法務省の様式を使えば、必要事項をスムーズに記載できるでしょう。
なお、申請にあたっては登録免許税額分の収入印紙が必要です。
5. 銀行口座などを作成する
設立登記が完了したら、合同会社の銀行口座を作成します。法人の口座開設には、登記事項全部証明書が必要なため、登記前には作成できません。
また、本店所在地を管轄する税務署に「法人設立届出書」の提出が必要です。従業員を雇用する場合は社会保険に関する手続き、業種によって必要な場合は許認可の取得に関する手続きなども忘れずに進めましょう。
合同会社まとめ
合同会社とは、出資者が会社の所有者として経営する持分会社を指します。定款の認証や決算公告の義務を負わない点が、株式会社との違いです。
合同会社を設立することの主なメリットは、設立コストを抑えられる点や経営の自由度を高められる点です。ただし、上場できない分、多額の資金を調達しにくい点に注意しなければなりません。
それぞれの特徴を理解したうえで、どの形態で会社を設立するか検討しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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