一般社団法人とは?設立の流れや財団法人との違いも解説
更新日:2025年01月03日

一般社団法人とは、登記のみで設立できる非営利法人のひとつを指します。手間や費用がかからない点や、事業内容に制限がない点などが主な設立メリットです。本記事では、一般社団法人とは何かを説明したうえで、設立のメリット・デメリットや設立の流れについて解説します。
目次
一般社団法人とは
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立される非営利法人のことです。法人とは法律に基づき法律上の人格(法人格)が与えられた団体のことを指します。
かつては「社団法人」が存在していましたが、2008年12月に実施された公益法人制度改革に伴いなくなりました。従来の「社団法人」は、現在では「一般社団法人」「公益社団法人」のいずれかのことです。
ここから、非営利法人の意味を説明したうえで、一般社団法人と公益社団法人の違いについて解説します。
非営利法人の意味
非営利法人とは、営利を目的としない法人のことです。ただし、非営利だからといって、利益を追求できないわけではありません。
非営利とは、活動を通じて得た利益を株式会社のように構成員(例:株主)に分配しないことを指します。また、非営利法人が雇用した職員に対する給与や役員報酬の支給自体は問題ありません。
主な非営利法人の種類は、以下のとおりです。
- 一般社団法人・公益社団法人
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 一般財団法人・公益財団法人
- 社会福祉法人
- 学校法人
なお、社団法人(一般社団法人・公益社団法人)とNPO法人の違いや、財団法人(一般財団法人・公益財団法人)との違いについては、後ほど詳しく解説します。
一般社団法人と公益社団法人の違い
一般社団法人(略:一社)と公益社団法人(略:公社)の主な違いは、設立にかかる手間です。公益社団法人のほうが一般社団法人よりも設立するまでに手間がかかります。
公益社団法人を設立するためには、まず一般社団法人を設立しておかなければなりません。その後、行政庁に申請して民間有識者からなる第三者委員会審査を経て公益認定されれば、公益社団法人を名乗れます。
公益社団法人を設立するまでには手間がかかる分、税金面での優遇がある点がメリットです。公益社団法人の収益事業から生じた所得は課税対象ですが、公益目的事業から生じた所得については課税対象になりません。
なお、公益目的事業は学術・技芸・慈善など23種類の事業に限定されています。
一般社団法人と特定非営利活動法人(NPO法人)の違い
一般社団法人と特定非営利活動法人(NPO法人)の主な違いとして、事業内容の範囲や設立の流れ、設立期間などが挙げられます。
NPO法人とは「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づき法人格を取得した団体のことです。一般社団法人も特定非営利活動法人も、営利活動を目的としない点は共通しています。
一般社団法人は基本的に事業内容に制限がありません。一方、NPO法人はNPO法で定められた20項目のいずれかに該当し、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的にした活動に限定されています。
また、一般的に一般社団法人は数週間程度で設立できるのに対し、NPO法人の設立には数か月かかる点も違いです。さらに、一般社団法人は2人以上で設立できるのに対し、NPO法人では10人以上が求められます。
社団法人と財団法人の違い
社団法人と財団法人の主な違いとして、「何の集まりか」という点が挙げられます。
社団法人は主に「人」の集まりであるのに対し、財団法人は「財団」の集まりに重点を置いた法人です。そのため、一般財団法人を設立する際は、300万円以上の財産を拠出することが求められます。
なお、「社団法人」と同様に、現在「財団法人」という組織は存在しません。従来の「財団法人」は、「一般財団法人」か「公益財団法人」のどちらかに該当します。公益財団法人を設立する場合も、まず一般財団法人を設立したうえで、公益認定申請をして認定を受けることが必要です。
一般社団法人を活用している業界・団体の例
さまざまな業界において、一般社団法人を設立することがあります。具体例は、以下のとおりです。
- 金融業(生命保険協会、全国銀行協会など)
- 自動車業(日本自動車工業会など)
- 小売業(日本小売業協会、全国スーパーマーケット協会など)
- 製造業(日本産業機械工業会など)
- マスコミ業(日本新聞協会など)
なお、東京商工リサーチの調査によると、2023年だけでも6,055社の一般社団法人が設立されたとのことです。
参考)株式会社東京商工リサーチ「2023年の「新設法人」 過去最多の15万3,405社、宿泊業は1.4倍」
一般社団法人を設立するメリット
一般社団法人を設立することのメリットは、主に以下のとおりです。
- 手間や費用を抑えられる
- 事業内容に制限がない
- 法人として活動できる
各メリットを解説します。
手間や費用を抑えられる
ほかの法人を設立するケースと比べて、一般社団法人を設立するケースでは一般的に手間や費用を抑えられる点がメリットです。
たとえば、NPO法人や公益社団法人などを設立する際は、行政庁による認定を受けなければなりません。それに対し、一般社団法人は基本的に登記申請のみで設立可能です。
また、株式会社を設立する際には、申請件数1件につき最低でも登録免許税が15万円かかります。一方、一般社団法人を設立するにあたってかかる登録免許税は、申請件数1件につき6万円です。
さらに、一般財団法人と異なり、設立にあたって財産を拠出する必要もありません。
事業内容に制限がない
基本的に事業内容に制限がない点も、一般社団法人を設立するメリットです。
たとえば、NPO法人は保健・医療・福祉の増進を図る活動や社会教育の推進を図る活動など、法律で掲げられている20の特定非営利活動を営む場合に設立できます。また、公益社団法人の認定を受けられるのは、学術・技芸・慈善など23種類の事業を営む場合のみです。
その点、一般社団法人は原則として事業に制限がないため、幅広い業種においてスムーズに事業を開始できるでしょう。
法人として活動できる
法人として活動できる点も、一般社団法人を設立するメリットです。
一般社団法人を設立して法人格を与えられると、個人名義ではなく法人名義で不動産登記や銀行の口座開設、各種契約締結などができるため、個人が負う責任を軽減できます。また、法人と個人の資産・負債の区分が明確になるでしょう。
なお、設立登記が不要な「任意団体」は法人格のない人の集まりとみなされるため、団体名での契約をしたり、資産を所有したりできません。
一般社団法人を設立するデメリット
一般社団法人を設立する主なデメリットは、以下のとおりです。
- 剰余金の分配ができない
- 登記や税務申告の手続きは必要
- 上場できない
各デメリットについて、解説します。
剰余金の分配ができない
一般社団法人を設立すると、剰余金を分配できない点がデメリットです。
一般社団法人は非営利法人の一種であるため、活動を通して利益がでた場合でも、構成員(社員)に分配できません。定款に剰余金・残余財産の分配を受ける権利を与える旨を定めていたとしても、無効とされます。
剰余金の分配を検討しているのであれば、株式会社や合同会社といった営利法人を設立しましょう。
登記や税務申告の手続きは必要
一般社団法人はほかの法人と比べると設立にかかる手間は抑えられますが、登記申請などある程度の手続きはしなければならない点がデメリットです。
また、設立後は税務申告を求められる場合があります。さらに毎年、貸借対照表などを決算公告し、任期ごとに理事・監事の登記手続きを済ませなければなりません。
そのため、現在任意団体として活動している場合は、必要性を検討したうえで一般社団法人を設立すべきか判断するとよいでしょう。
上場できない
一般社団法人は上場が不可能である点も、デメリットとして挙げられます。
上場とは、法人が発行する株式を証券取引所で売買できるようにすることです。上場することにより、資金調達が容易になったり、知名度・信頼度の向上につながったりします。
上場できる法人は、すでに株式を発行している「株式会社」のみです。将来上場を目指している場合は、一般社団法人ではなく株式会社の設立を検討したほうがよいでしょう。
一般社団法人設立にあたって理解すべき用語
一般社団法人設立を検討している場合は、以下の用語を理解しておくことが大切です。
- 社員
- 社員総会
- 定款
- 理事
それぞれ解説します。
社員
一般社団法人における社員とは、構成員を指します。会社で働いている人を意味する「社員」と混同しないようにしましょう。また、一般社団法人における構成員が社員と呼ばれるのに対し、株式会社における構成員は株主です。
一般社団法人の社員の主な特徴として、以下の点が挙げられます。
- 社員総会の議決権を有する
- 社員総会で議決権を行使する
- 社員総会で議案を提出する
なお、一般社団法人設立にあたっては、社員が2名以上いなければなりません。
社員総会
社員総会とは、一般社団法人における重要事項などを決める意思決定機関のことです。事業年度終了後一定の時期に招集される「定時社員総会」と理事会で決定した際などに招集される「臨時社員総会」があります。
なお、株式会社における意思決定機関は株主総会です。ただし、株主総会は保有する株式1株につき原則として1議決権与えられるのに対し、社員総会は社員1人に対して1議決権である点が異なります。
定款
定款とは、事業目的や組織、活動に関するルールなど、設立する法人に関する基本事項を定めたものです。一般社団法人に限らず、株式会社や合同会社などさまざまな法人が作成しなければなりません。
定款には、法人の名称や事業目的、主たる事務所の所在地といった必ず記載しなければならない項目(絶対的記載事項)があります。絶対的記載事項が漏れている定款は、無効とみなされます。
理事
一般社団法人における理事とは、株式会社の取締役のように法人の業務を執行する人のことです。理事は、社員総会の普通決議で決められます。
理事のなかで法人を代表して業務を執行する人が代表理事です。代表理事の選出方法は、理事会設置の有無によって異なります。
理事会を設置していない場合の主な選出方法は、定款や社員総会の決議などです。一方、理事会が設置されている一般社団法人の場合、理事会のなかで代表理事が決められます。
なお、理事会とは全理事で構成される合議機関のことです。
一般社団法人の設立方法
一般社団法人を設立する際の流れは、主に以下のとおりです。
- 設立者が定款を作成して公証人の認証を受ける
- 理事を選任する
- 設立手続きの調査をする
- 設立登記を申請する
各手順ですべきことについて、確認していきましょう。
1. 設立者が定款を作成して公証人の認証を受ける
設立を決めたら、まず法人設立後最初の社員となる人たち(設立時社員)が定款を作成します。必ず記載すべき項目は、以下のとおりです。
- 目的
- 名称
- 主要拠点の所在地
- 設立時社員の氏名または名称・住所
- 社員の資格を得ること・失うことに関する規定
- 公告方法
- 事業年度
続いて、定款の認証を受けなければなりません。定款の認証とは、正当な手続きのもとで定款が作成されたことを公証人が証明することです。
主要拠点の場所を管轄する、法務局または地方法務局に所属する公証人から認証を受けられます。必要な書類は定款・発起人の印鑑証明書・身分証明書などです。
2. 理事を選任する
定款の認証を受けたら、設立時社員が集まり、設立時理事を選任します。ただし、手間を省くために、あらかじめ定款で理事を定めておくことが一般的です。
また、設立時監事・監査人を設置する場合もこのタイミングで選任します。設立時理事を決める場合と同様に、あらかじめ定款で定めることにより手続きを省略可能です。
理事会や会計監査人を設置する場合は、必ず監事を設置しなければなりません。また、貸借対照表上、200億円以上の負債がある一般社団法人については、会計監査人の設置が必須です。
3. 設立手続きの調査をする
選任された設立時理事が、設立手続きの調査を進めます。
設立手続きの調査とは、設立手続きが法令や定款に違反していないか確認することです。違反があると判明した場合は、設立時理事から設立時社員に対して報告をしなければなりません。
なお、設立時監事を設置している場合は、設立時監事も一緒に設立手続きの調査を進めます。
4. 設立登記を申請する
調査実施後、設立時理事か設立時代表理事が、主要拠点の場所を管轄する法務局もしくは地方法務局に設立登記の申請をします。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第301条によると、以下のいずれか遅い日から2週間以内に登記申請しなければなりません。
- 設立手続きの調査が終了した日
- 設立時社員が定めた日
申請時には、定款・設立登記申請書・印鑑証明書などの書類が必要です。書類には、法人名・所在地・公告方法・目的・登録免許税額などを記載します。
参考)e-Gov 法令検索「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第三百一条」
一般社団法人の設立にかかる費用
一般社団法人の設立にあたって、かかる費用の主な内訳は以下のとおりです。
- 定款認証手数料
- 登録免許税
定款認証手数料は、公証人に定款認証を受ける際にかかります。手数料は一律5万円です。
また、設立登記の申請をする際に、登録免許税がかかります。一般社団法人の設立にかかる登録免許税は、一律6万円です。
そのため、最低でも11万円はかかるものと理解しておきましょう。さらに、手続きにあたって印鑑証明書を取得したり、司法書士に依頼したりする場合には別途費用がかかります。
一般社団法人設立後に必要なこと
一般社団法人を設立してからも、手続きを進めなければならない項目がいくつかあります。
まず、役員報酬を支払う場合や、常時勤務する従業員を雇う場合には社会保険に加入しなければなりません。主要拠点となる事務所を管轄する年金事務所で手続きを進めます。
また、従業員を雇う場合には労働保険の手続きも必要です。事務所を管轄するハローワークや労働基準監督署で手続きを進めましょう。
さらに、税金に関連するため、法人設立届出書を提出しなければなりません。提出先は、税務署・都道府県税事務所・市役所(町村役場)です。
社団法人まとめ
社団法人とは、一般社団法人や公益社団法人のことです。公益社団法人は税制面でのメリットがある分、設立までに手間がかかります。
一般社団法人を設立するメリットは、手続きにかかる手間を公益社団法人やNPO法人などに比べて抑えられる点、事業内容に制限がない点などです。ただし、剰余金の分配や上場ができない点に注意しましょう。その点、株式会社であれば、剰余金を分配できるうえ、将来上場できる可能性もあります。
目的を踏まえたうえで、どの法人を設立すべきか判断しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
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当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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