収益の意味とは?利益・収入・売上との違いや計上のタイミングも解説

更新日:2025年05月20日

収益

収益とは、会社に入ってくるお金や会社が受け取るお金を指します。利益・収入・売上とは異なる概念のため注意しましょう。本記事では、収益の意味や計上するタイミングについて解説したうえで、収益向上策についてもいくつか紹介します。

目次

収益とは

収益とは、会社に入ってくるお金や会社が受け取るお金のことです。たとえば、小売店が商品を顧客に販売して得た売上金500万円や、銀行にお金を預けることで得た利息2万円などを収益として認識します。

複式簿記の仕訳では左側に「借方」、右側に「貸方」を記載し、それぞれの合計を一致させなければなりません。収益が減少した場合は「借方」に、収益が増加した場合は「貸方」にその金額を記載することがポイントです。

仕訳の際は、収益以外に資産負債純資産・費用も計上します。収益は会社が得た金額を指すのに対し、費用は会社が支払う金額のことです。そのため、収益とは反対に費用は増加した場合に「借方」、減少した場合に「貸方」に記載します。

収益を計上するタイミング

収益は、従来実現主義に基づき計上していました。実現主義とは、販売の実現のタイミングで売上高を計上することです。

しかし、2021年4月から大企業は、一部の取引を除き「収益認識に関する会計基準」で会計処理しなければなりません。「収益認識に関する会計基準」では、以下の5ステップに従って収益を認識することがポイントです。

  1. 顧客との契約を識別する
  2. 契約における履行義務を識別する
  3. 取引価格を算定する
  4. 契約における履行義務に取引価格を配分する
  5. 履行義務を充足したときや、充足するにつれて収益を認識する

なお、中小企業でも任意で「収益認識に関する会計基準」を適用できます。

収益と類似用語の違い

収益には、いくつか混同しやすい言葉があります。主な類似用語は、以下のとおりです。

  • 利益
  • 収入
  • 売上

ここから、収益とそれぞれの違いについて解説します。

利益との違い

会計上の収益と利益の主な違いとして、費用を考慮しているかどうかが挙げられます。

利益とは、事業を営むことで得られる儲けのことです。会計では、「収益」から「費用」を引くことで、「利益」を計算できます。

なお、会計以外の場面では、収益と利益を同じような意味で使うことが一般的です。たとえば、「収益性分析」には「収益」が使われていますが、実際に計算で扱うのは「利益」である点に注意しましょう。

収入との違い

収益と収入の主な違いは、実際に現金が入ってきているかどうかです。

一般的に、収入とは金銭などを自分のものとすることを指します。そのため、商品を販売して収入があったと判断できるのは、実際に現金を受け取ったり、口座に取引先から入金があったりしたときです。それに対して、収益は、商品の販売が実現したタイミングで認識します。

売上との違い

収益と売上の主な違いとして、対象の範囲が挙げられます。

売上(売上高)とは、事業を営み商品を販売したり、サービスを提供したりすることで得られる金額のことです。売上は、収益の一部に含まれます。

一方、会計で収益として計上するのは、売上に限りません。受取利息や受取配当金など、本業以外で得た金額についても、収益の対象です。

収益の種類

収益には、以下の種類があります。

  • 営業収益
  • 営業外収益
  • 特別利益

それぞれの概要について、確認していきましょう。

営業収益

営業収益とは、本業の事業活動で得た収益のことです。

たとえば、小売業を営む事業者が、本業である商品の販売により合計3,000万円の売上を出した場合、全額を営業収益として計上します。会社が所有する遊休不動産を経営者仲間に貸して、毎月50万円の賃料を受け取っていたとしても、本業でなければ営業収益とはみなされません。

なお、営業収益は基本的に売上高と同じ意味で使われる言葉です。ただし、業種や会計処理の方法によっては、売上高と営業収益を明確に区別して使用することもあります。

営業外収益

営業外収益とは、本業以外の事業活動を通じて、継続的・経常的に得られる収益のことです。

たとえば、小売業を営む事業者が、所有する不動産を別の会社に貸して毎月50万円の賃料を受け取っている場合は、営業外収益に該当します。また、一定期間会社のお金を銀行に預けることで得られる受取利息や、株式を所有することで得られる受取配当金なども、営業外収益の対象です。

特別利益

特別利益とは、通常の事業活動とは関係がないことで得られる臨時的な利益のことです。

たとえば、会社が所有する遊休不動産を売却して2,000万円を得た場合は、特別利益に該当します。また、株式や国債などの有価証券を売却して得られた金額も、特別利益の対象です。

なお、名称は「利益」ですが、一時的な「収益」に該当すると理解しておきましょう。

利益の種類

収益に関連して、利益の種類も確認しておきましょう。利益は以下の5種類に分類できます。

  1. 売上総利益(売上高 − 売上原価
  2. 営業利益(売上総利益 − 販売費及び一般管理費
  3. 経常利益(営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用)
  4. 税引前当期純利益(経常利益 + 特別利益 − 特別損失)
  5. 当期純利益(税引前当期純利益 − 法人税等

たとえば、以下のケースの場合は、売上総利益2,000万円・営業利益1,000万円・経常利益1,100万円・税引前当期純利益1,000万円・当期純利益700万円と計算できます。

  • 売上高9,000万円
  • 売上原価7,000万円
  • 販売費および一般管理費1,000万円
  • 営業外収益500万円
  • 営業外費用400万円
  • 特別利益100万円
  • 特別損失200万円
  • 税金など300万円

なお、紹介した5種類の利益は、いずれも損益計算書に表示する項目です。

収益向上や収益改善のためにできること

企業が成長を続け存続していくには、収益向上や収益改善が大切です。収益向上や収益改善を図るための方法として、以下が挙げられます。

  • 顧客のニーズにマッチした営業を心がける
  • 新規事業に参入する
  • コストの削減を図る

それぞれ確認していきましょう。

なお、ここからは、一般的な使い方と同様に「収益」のなかに「利益」の意味も含めて説明していきます。

顧客のニーズにマッチした営業を心がける

収益向上を図るために、顧客のニーズにマッチした営業を心がけましょう。

顧客のニーズをうまくとらえられれば、売上高のアップにつながります。営業に強い人材を獲得したり、スキルのある従業員から若手に営業のノウハウを伝えたりすることで提案力の強化を期待できるでしょう。

また、顧客のニーズを把握するために役立つのが、データの活用です。過去の売上データや関連情報などを分析することで、どのような顧客にアピールできているのか、何を求められているのかなどを把握して営業に役立てられます。

新規事業に参入する

状況次第では、新規事業への参入も収益向上や収益改善につながります。

本業が属する業界の市場全体が停滞している場合は、成長が期待できる分野への進出も検討しましょう。成長分野は今後、消費者のニーズが高まることが予想されるため、売上の増加を期待できます。

また、利益率の高い分野への進出が成功すれば、利益改善につながるでしょう。

コストの削減を図る

コストの削減を図ることも大切です。売上の伸びをこれ以上期待できない場合でも、コスト削減に成功すれば利益改善につながります。

販売費および一般管理費(販管費)とは、広告宣伝費交際費人件費役員報酬・給与賃金など)のように、本業活動にかかる費用のうち売上原価に含まれない額のことです。たとえば、会計システムを導入して給与賃金などを減らせれば、営業利益の改善につながります。

収益性分析に役立つ指標

収益性を分析することは、企業の経営状況を正しく把握するために役立ちます。主な指標は、以下のとおりです。

  • 売上高総利益率・売上高営業利益率
  • ROE(自己資本利益率)
  • ROA(総資本利益率)

ここから、それぞれの計算式や計算例を紹介します。

売上高総利益率・売上高営業利益率

本業で稼ぐ能力が高いのか分析する場合は売上高総利益率、効率的な営業活動ができているか分析する場合は売上高営業利益率を計算します。それぞれ、計算式は以下のとおりです。

売上高総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

売上高8,000万円・売上総利益2,000万円・営業利益1,000万円の場合、売上高総利益率(粗利率)は25%、売上高営業利益率は12.5%です。

ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)とは、株主から集めたお金でどれくらいの利益を出したのかを表す指標です。一般的に、ROEが高い場合はそれだけ集めたお金を効率よく活用していると判断できます。

ROEの計算式は、以下のとおりです。

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

自己資本が1億円で、当期純利益が1,000万円の場合、ROEは10%と計算できます。

ROA(総資本利益率)

ROA(総資本利益率)とは、会社の全資産を活用してどれだけ効率よく利益を出せたかを表す指標です。ROEが株主から集めた資金に注目するのに対し、ROAでは金融機関から借りたお金なども含まれます。

ROAで使われる「利益」は、経常利益や当期純利益などです。経常利益を用いる場合は、以下の式で計算します。

ROA(%)= 経常利益 ÷ 総資本 × 100

総資本が1億5,000万円で経常利益が750万円の場合、ROAは5%です。

収益まとめ

収益とは、売上や受取利息のように、会社に入ってくるお金のことです。複式簿記では、収益が減少した場合に「借方」、増加した場合に「貸方」へ記載します。

会計上は、収益と利益を区別しなければなりません。利益は、収益から費用を引いたものを指します。

企業が成長を続けるには、収益向上が大切です。自社の収益性を分析したうえで、マーケティングによる営業の工夫などを心がけて収益向上や収益の改善を図りましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

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