会計とは何か~企業での業務内容、財務、経理、簿記との違いを解説〜

更新日:2024年03月17日

会計とは

会計とは、企業の財政状態や経営成績を正しく判断するために、お金の流れを記録し管理する業務です。企業の経営における会計には企業会計原則があり、その原則を守らなければ、気づかないうちに法令違反につながってしまうこともあるため、注意が必要です。この記事では、企業会計に関わる業務の種類や会計における役割、会計に関する制度や法律などについて、詳しく解説します。

目次

会計の業務の種類

会計は、大きく分けると「管理会計」「財務会計」の2種類に分けられます。管理会計は、さまざまな部門の責任者が担う会計です。財務会計は、企業の経理や財務を担当している人が担う会計です。それぞれの業務について紹介します。

管理会計の主要業務

管理会計は、企業の業績を測定したり評価したりするために必要な業務です。管理会計の業務があることで、企業の経営状況を把握できたり経営に関する目標が明確になり、堅実的な経営につながります。どのような役割があるのか、管理会計の業務を解説します。

参考)管理会計とは

参考)制度会計とは

予算の管理

予算の管理は、年度ごとや中期的もしくは長期的といったスパンで実施され、企業の予算を管理する目的はもちろんのこと、経営に活かす目的で行われる業務です。企業における部門ごとの成果を管理するために、全体で目標を設定し、それぞれの部門へ分配したり、実際の成績と比較したりします。定められた期間ごとに予算と成績を比較して、結果として計画通りの予算ではなかった場合に、原因の分析や分析を踏まえた予算立案をすることも重要です。

原価管理

企業が経営を継続するためには、原価の管理が大切です。企業が提供する商品やサービスにかかっている費用を把握し、それぞれの商品やサービスにふさわしい価格や利益率に設定することで、利益の拡大につながります。原価を管理するためには、まずはおおよその基準となる原価(標準原価)を算定して、商品やサービスが完成した際に、実際にかかった費用(実際原価)を比較します。標準原価と実際原価の差額から、どの部分で費用が抑えられるかを検討できます。

日々の入出金管理

日々の入出金を管理しておくと、企業の現金がどのように流れているのかを把握できます。現金の流れを把握できれば、資金が多かったり少なかったりという状況の調整が可能です。資金の過不足を調整できると、企業の経営を正常に保つことにもつながります。企業の入出金を正しく管理して把握することで、その時点でどのような財務状況なのかを把握できるほか、資金需要を予測できます。

経営分析

経営者のような企業のトップに立つ人が企業を経営する上で、意思決定をするために最も必要なことは、企業が置かれている状況を把握することです。そのためには「財務諸表分析」「調査報告」「特殊調査」、この3つの分析が大切です。それぞれどのような分析なのかを解説します。

財務諸表分析 決算書に記載がある賃借対照表や損益計算書などをもとに、企業の経営状況や財務状況を分析します。
調査報告 調査会社に依頼して、提出されたレポートに基づいて企業の経営実態を分析します。
特殊調査 買収調査や資本参加などについて、財務と法務の観点で、監査法人や弁護士事務所などに調査を依頼して、その結果を分析します。

経営分析はこのようにさまざまな情報を分析することが大切で、多くの情報に関して統合的な管理をして企業の経営状況を可視化します。

財務会計の主要な役割

投資家や債権者、税務署などのような企業外部における利害関係者に対し、企業がどのような財務状況なのかを報告することが、財務会計の役割です。報告する財務状況は、主に財務諸表のような会計情報です。財務会計の作成にあたっては、法律によって厳しく規定されています。財務会計に関わる法律は、会社法や税法、証券取引法などさまざまです。財務会計の役割は「情報提供」と「利害調整」の2種類です。それぞれの役割について解説します。

情報提供

情報提供には、投資家のような利害関係者に対する役割があります。投資家が投資をする際に判断材料となるような、企業の財務状況に関する情報を提供することで、株式発行などの資金調達につながります。また、銀行から融資を受ける際には、財務諸表から返済能力を判断されるため、企業の経営成績を正しく明示する財務会計の作成が求められます。

利害調整

利害調整は、財務諸表利用者や利害関係者の間で利害に関する対立が起きた場合、その利害を調整する役割です。ここにおける財務諸表利用者は、企業そのものや企業に関係する人を指しています。予測される利害は対象者の立場によって異なり、対象者は株主と経営者、もしくは株主と債権者です。ここでは、主に株主と債権者が対象者です。株主と債権者を対象とした財務諸表の提供により、株主が期待できる配当や、債権者の返済可否を確認できます。

会計と混同されやすい業務

会計業務は、「経理」「財務」「簿記」と混同されてしまうことがあります。簡単に説明すると、会計業務とは、企業の資金管理を担う業務です。会計・経理・財務・簿記は、どれも同じだと認識している人も多くいますが、実際は業務内容が異なります。それぞれの業務について、会計とどのような違いがあるのか詳細を説明します。

会計と経理との相違点

企業に出入りするお金の管理全般が、まとめて会計と呼ばれます。会計に含まれる業務のうち、特定の業務を指して経理と呼びます。経理の業務内容は、お金の流れの記録・管理などです。具体的には、伝票を起票したり帳簿に記入したりなどのことです。そのほか、キャッシュフロー計算書や損益計算書などのような書類作成、税金に関係するさまざまな申告も経理の業務です。

会計と財務との相違点

財務業務における主な仕事は、財務諸表のようなデータを参考に会社の資金計画を立て、資金を調達することです。データの記録や管理などが主な業務である経理とは異なり、財務業務は会計業務や経理業務でまとめられたデータに基づいて、その次の段階の業務を遂行します。金融機関と交渉するような業務も含まれ、多くの知識が必要ということだけでなく、計画・実行に関する力も必要な業務です。

会計と簿記との相違点

簿記の業務は、経理と同じように、会計に含まれる業務の一つです。簿記の業務における役割は、取引が行われた際に仕訳を行い、会計帳簿に記録として残すことです。このことから、簿記には、正しく会計業務を遂行できるように、準備をする段階の役割があると考えられています。

日本の会計制度と法律

会計におけるルールは、国の慣行や法令などに則って定められています。日本では、「公正なる会計慣行」が規範とされています。この慣行は「企業会計原則」が中心となり、経済や社会が変化することに伴って設定された会計基準と、企業会計基準委員会によって設定された会計基準が合わさったものです。日本における会計制度が、どのような法律と関係しているのかを、それぞれの法律ごとに解説します。

参考)総務省行政管理局「独立行政法人会計基準の現状について

金融商品取引法

金融商品取引法は、投資家の保護と利便性の向上を目的として規定された法令です。投資家が投資をする際の判断に必要である、企業の経営成績や財政状態について、開示する方法が規定されています。これは昭和23年に制定された「証券取引法」の内容がもとになった法律で、この法律では、会社法で必要な計算書類とは別に、作成しなければならない書類が定められています。「有価証券報告書」もしくは「有価証券届出書」が必要で、作成した書類は内閣総理大臣に提出しなければなりません。この法律に関する整備は、大きく分けると下記の4つに分けられています。

  1. 投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制(いわゆる投資サービス法制)の構築
  2. 開示制度の拡充
  3. 取引所の自主規制機能の強化
  4. 公正取引等への厳正な対応

参考)金融庁「金融商品取引法について

会社法

会社法は、商法・商法特例法・有限会社法など複数の法律に分散していた内容を一本化した法律です。会社運営の健全化、利用者の保護を目的としている法律で、配当可能な利益を算出する方法が規定されています。対象とされているのはすべての企業で、経営する上での財産や損益に関する状況を、明確にすることが求められます。

法人税法

法人税法は、課税の公平を基本理念とする法律です。法人税法では、法人の課税所得における算出方法が規定されています。法人税とは、法人が企業活動をすることで得られる所得に対し、課税される税金です。法人が所得金額を計算する際は、収益の金額から費用・損失額を引いて計算します。収益の金額は、商品や製品などの販売によって入る売上金、土地や建物を売却して得た資金などです。費用・損失の金額は、売上原価や販売費などのような費用、災害によって引き起こされる損失などが含まれます。計算手続きの際は、会社法で必要な計算書類によって決定した決算に基づき、税法に特有の調整をして算出します。法人税における税率は、普通法人もしくは一般社団法人など、または、人格のない社団などについては23.2%です。

参考)財務省「法人課税に関する基本的な資料

参考)法人税等とは

企業会計原則について

企業会計原則とは、会計業務における守るべきルールとして定められている基準です。会社法第431条で定められている「一般に公正妥当と認められる企業会計」に含まれる制度の一つが企業会計原則です。

参考:会社法431条

企業会計原則を守らなかった場合

企業会計原則は、法令として定められているわけではないため、守らなかった場合でも何か罰則があるということはありません。あくまでも企業会計原則は「企業が守るべき企業会計の原則」であり、法的な拘束力は持ちません。注意点として、企業会計原則を含む会計基準は、金融商品取引法や会社法など、多くの法律と関わっているという点が挙げられます。そのため、直接は法令に関わっていなくても、いつの間にか間接的に法令違反となってしまう場合があることを覚えておきましょう。

会計まとめ

日本企業における会計業務は、細かく分けるとさまざまな役割を担っています。日本企業の会計業務には、さまざまな法律が関わっているため、多くの知識をつける必要があります。企業の経営には必ず会計業務が必要であるため、それぞれの業務における役割をしっかりと把握することが大切です。また、会計と似たような業務内容であることから混同されやすい業務もあり、それぞれの業務においても正しい知識を持つに越したことはないでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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