国際財務報告基準・国際会計基準IFRSとは?日本基準との違いをわかりやすく解説

2024.01.19

IFRS

IFRSとは、世界共通を目指した会計基準のことを指します。日本基準との主な違いは、原則主義や注記の情報量です。

本記事では、IFRSを導入すべきかの判断材料になるように、メリットやデメリットを解説します。

目次

国際財務報告基準のIFRSとは

IFRS(呼び方:イファース、アイファース、アイエフアールエス)とは、International Financial Reporting Standardsを略した言葉で、「国際財務報告基準」を指します。具体的には、国際会計基準審議会が策定する会計基準のことです。

2005年より、EU域内の上場企業の連結財務諸表に対してIFRSが強制適用されるようになりました。また、2008年にG20が「単一で高品質な国際基準を策定すること」を目標に掲げたため、近年IFRSが世界で急速に普及しつつあります。

ここから、IFRSの特徴や日本国内での導入状況などを確認していきましょう。

参考:IFRSコンソーシアム「IFRSとは」

IFRSの主な特徴

IFRSは、世界で活用されることを目的に策定された基準(グローバル基準)である点が特徴です。そのほかにも、IFRSの主な特徴として以下の点が挙げられます。

  • 原則主義
  • 包括利益の導入
  • 注記の情報開示量の増加

原則主義とは、会計の考え方や原理のみを示し、細かい規定や数値を定めない会計主義です。それに対し、数値の判断基準や会計処理のルールなどを細かく定めた会計主義を細則主義と呼びます。

包括利益とは、貸借対照表の純資産の期首と期末の残高の差額です。当期純利益しか示さない従来の損益計算書と異なり、包括利益からは含み損益も把握できます。

注記とは、財務諸表の内容を補足する情報のことです。IFRSは定性的な情報(数値化できない要素)を要求するため、注記に含まれる内容が増えます。

日本国内におけるIFRS導入の動向

2009年に、金融庁が日本でのIFRS適用に向けたロードマップ案を公表しました。2013年には、企業会計審議会が「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」で任意適用要件の緩和を示しています。

その後、2014年に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2014」には、「IFRSの任意適用企業の拡大促進に努めるものとする」との記載が盛り込まれました。

2023年3月末現在、IFRS適用済の会社数は253社、IFRS適用を決定した会社数10社です。同時期の上場会社総数は3,874社のため、まだIFRSが全体に普及しているわけではありません。

しかし、IFRSの存在感の高まっているため、今後さらに導入する企業が増えていく可能性はあるでしょう。

参考:日本取引所グループ「IFRS(国際財務報告基準)への対応」
参考:日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数」

日本基準との違い

IFRSと日本基準(企業会計原則を基にした日本独自の会計基準)には、さまざまな違いがあります。主な違いは以下のとおりです。

  • 会計主義
  • 財務諸表の表示方法
  • 注記の情報量

IFRSが原則主義であるのに対し、日本基準の会計主義は細則主義です。また、IFRSには特別損益がないのに対し、日本基準には特別損益があるなど、財務諸表の表示方法が異なります。さらに、IFRSの方が日本基準よりも注記に記載する内容が多い点も違いです。

なお、2021年4月より対象企業に新収益認識基準(収益認識に関する会計基準)が強制適用されるようになったため、日本基準の売上計上基準はIFRSに近づきました。

IFRS導入のメリット3つ

日本企業がIFRSを導入するメリットは、主に以下の3つです。

  1. 海外企業と比較しやすくなる
  2. 海外投資家に説明しやすくなる
  3. 実態に即した業績を反映できる

各メリットを解説します。

1. 海外企業と比較しやすくなる

IFRSを導入することで、海外企業と比較しやすいくなる点がメリットです。IFRSはすでに130か国以上で採用されているため、海外の競合他社と自社を比べられます。

また、海外にIFRSを採用する子会社を抱えている場合、自社もIFRSを取り入れることで会計指標を統一させられる点がメリットです。企業グループ全体での経営管理をしやすくなるでしょう。

2. 海外投資家に説明しやすくなる

IFRSを導入すれば、海外投資家に説明しやすくなる点もメリットです。日本基準のままの場合、日本基準とIFRSの違いを含めて海外投資家に説明しなければなりません。

また、グローバル展開を検討している企業の場合、IFRSを導入すれば現地で日本で使用しているのと同じ内容の財務諸表でも資金調達できます。海外企業とのM&Aの選択肢も出てくるでしょう。

3. 実態に即した業績を反映できる

IFRSでは、将来キャッシュフローに基づき将来価値を把握するため、より実態に即した業績を反映できます。

また、IFRSは企業買収時に発生する買収された企業の時価評価純資産と実際の買収価額の差額(のれん)が、非償却である点もポイントです。毎年一定額の「のれん」の償却が必要な日本基準に対し、基本的に非償却のIFRSは費用計上しないため、利益を大きく見せられます。

ただし、IFRSには「特別損益」がないため、リストラ費用などが営業費用に含まれて営業利益を左右する点に注意が必要です。

IFRS導入のデメリット3つ

日本企業がIFRSを導入するデメリットは、以下の3つです。

  1. 費用がかかる
  2. 手間がかかる
  3. 専門家でなければ難しい

デメリットの内容をそれぞれ解説します。

1. 費用がかかる

日本基準からIFRSに移行するにあたって、コストがかかる点がデメリットです。IFRSをきっかけに、システムの全面改修を実施する場合、コストも大きくなるでしょう。

システム面以外にも、外部の専門家に払う支払手数料や、追加の監査報酬などがあります。

2015年に金融庁が発表した「IFRS適用レポート」によると、アンケートに回答した企業(48社)のうち17社が、IFRSへの移行に直接要した総コストを「1億円以上5億円未満」と回答しています。また、規模の大きい企業の方がコストが大きくなる傾向は強いです。

売上高1千億円未満の企業(11社)の回答は、「5千万円未満(8社)」「5千万円以上1億円未満(1社)」「1億円以上5億円未満(2社)」でした。それに対し売上高1兆円以上の企業(14社)は、移行に要したコストを「1億円以上5億円未満(2社)」「5億円以上10億円未満(6社)」「10億円以上(6社)」と回答しています。

参考:金融庁「IFRS適用レポート」

2. 手間がかかる

IFRSを導入する際、新たなやり方に慣れるまでに時間や手間がかかる点がデメリットです。とくに、個別財務諸表は日本基準、連結財務諸表はIFRSで作成する場合は負担が重くなるでしょう。

金融庁の「IFRS適用レポート」によると回答企業(61社)のうち、プロジェクトの開始から終了までの期間(移行期間)が「1年未満」と回答したのはわずか4社でした。一方、19社は「5年以上6年未満」、2社が「6年以上」と回答しています。

ただし、売上高1千億円未満の中で4年以上と回答している企業はないため、費用と同様に規模が大きいほど期間も要するといえるでしょう。

参考:金融庁「IFRS適用レポート」

3. 専門家でなければ難しい

会計基準の複雑さなどから、専門家の力を借りなければ対応が難しい点もデメリットです。改正されることも多いため、随時注視していかなければなりません。

デメリットを考慮すると、外国人の投資家へアピールが必要、グローバル展開を検討中、システム導入のコストを調達できるなどの場合にIFRS導入向きといえるでしょう。

IFRS導入が与える影響

IFRSの導入は、自社のさまざまな分野に影響を及ぼす可能性があります。代表例は以下のとおりです。

  • 人材が必要になる
  • 売上や収益が変動する可能性がある
  • 業務プロセスが変わる

それぞれ解説します。

人材が必要になる

IFRS導入にあたって、必要な事務作業が増えるため人材が必要になります。とくに、改正されることが多い制度のため、柔軟な対応ができる人材を集めなければなりません。また、会計の知識も問われるでしょう。

近年、IFRS人材への需要が高まりつつあるため、導入を検討する際は早い段階から人材確保へ動き出さなければなりません。

売上や収益が変動する可能性がある

日本基準とは収益認識基準が異なるため、IFRS導入に伴い売上高・収益が変動する可能性があります。ただし、大会社や上場会社の場合は2021年より新収益認識基準が強制適用となるため、基本的に変動はないでしょう。

また、M&Aでのれんが発生する場合は、利益に影響が出る可能性があります。IFRS導入に伴いのれんを償却しなければ、利益が大きく表示されるでしょう。

業務プロセスが変わる

IFRSに対応するために、業務プロセスが変わります。日本基準で個別財務諸表を作成する場合とは別の流れで、IFRS向けの連結財務諸表を作成しなければなりません。

また、情報システムもIFRS用の固定資産減価償却などに対応できるように変えなければならないでしょう。経営陣や経理・財務担当者のみならず、システム担当者なども交えて共通認識を持つ必要があります。

IFRSを導入するには?

最後に、これからIFRSの導入を検討する方に向けて、流れやポイントを解説します。

IFRS導入の流れ

IFRS導入までの流れは、主に以下のとおりです。

  1. 準備(調査・分析)
  2. 導入
  3. 運用
  4. 改善

準備段階では、日本基準とIFRSの基準差を確認し、異なる項目を調査して分析します。実態を調査して課題や論点を整理したら、適用時期を決めて計画書を作成しましょう。

次に、計画書に基づき会計方針を決定し、文書化します。会計方針に盛り込みきれない細かな部分は、ガイダンスに盛り込むことが一般的です。

運用する前に、業務ルールの見直しや運用体制の構築を進めます。試行を重ねたら、実際に運用に進みます。

運用後も、問題点があれば随時改正などの対応が必要です。

IFRSを導入する際のポイント

IFRSを導入すると会計方針や業務プロセス、利益の表示などさまざまなことが変わるため、影響する範囲を理解した上で早めに準備することがポイントです。

順応できるように、所管の部署の従業員にも早めに通知しておかなければなりません。また、IFRSは原則主義のため、各自で認識の齟齬が生じないように社内の共通ルールを設けることも大切です。

さらに、導入には多大なコストがかかることから、経営陣や予算管理の部署とも連携を取らなければなりません。

国際財務報告基準IFRSのまとめ

IFRS(国際財務報告基準)とは、国際会計基準審議会が策定する会計基準のことです。細則主義ではなく原則主義である点や、注記の情報量が多い点などが日本基準と異なります。

IFRSを導入することで、海外企業と比較しやすくなり、海外投資家にも伝えやすくなる点がメリットです。その一方で、費用や手間がかかる点がデメリットとして指摘されています。

IFRSを導入すると人材が必要になる点や業務プロセスが変更になる点などにも注意が必要です。IFRSと日本基準の違いを理解した上で、自社に導入すべきか検討するとよいでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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