一時所得とは?税金の計算方法や確定申告もわかりやすく解説
更新日:2024年05月09日
一時所得とは、営利目的の継続的行為から生じた所得以外の所得を指します。具体例は、懸賞や福引きの賞金品、競馬・競輪の払戻金などです。
金額次第で、一時所得について確定申告しなければなりません。本記事では、一時所得とはどのような所得かを説明した上で、金額や税金の計算方法を解説します。
目次
一時所得とは
一時所得とは、10種類ある所得(*)のうちのひとつです。臨時収入(固定収入とは別に得た収入)などが、一時所得に該当する可能性があります。
ここから、一時所得に該当する細かな条件や具体例、雑所得との違いを確認していきましょう。
*利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得
一時所得に該当する条件
一時所得に該当する条件は、以下のとおりです。
- 営利目的の継続的行為から生じた所得以外
- 労務や役務の対価としての性質を有しない
- 資産の譲渡による対価としての性質を有しない
たとえば、自宅を売却した場合、「資産の譲渡による対価としての性質」があるため、一時所得には該当しません(譲渡所得に該当)。また、副業で臨時収入を得た場合も、「労務や役務の対価としての性質」があり、一時所得の対象外です(給与所得・事業所得・雑所得などに該当)。
参考)資産とは
一時所得の具体例
一時所得の主な例は以下のとおりです。
- 賞金品(懸賞や福引き)
- 払戻金(競馬や競輪)
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
- 法人から贈与された金品
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者が受け取る報労金
- 資産の移転費用に充てるため受けた交付金のうち、交付目的とされた支出に充てられなかったもの
なお、いずれも業務に関して受け取るもの、営利を目的とする継続的行為から生じたものなどは、一時所得に該当しません。
一時所得と雑所得の違い
雑所得とは、公的年金や非営業用貸金の利子のように、9種類の所得のいずれにも該当しない所得のことです。雑所得は営利目的の継続行為による所得や、労働・役務の対価も含む点が一時所得との主な違いとして挙げられます。
たとえば、生命保険の一時金は一時所得ですが、保険金を年金形式で受け取る場合は「継続」になるため、雑所得の対象です。また、副業の原稿料や講演料は労働の対価といえるため、一時所得ではなく雑所得に該当します。
そのほか、雑所得では特別控除(税金を計算する際に、収入から一定額引くこと)を使えない点も、一時所得との違いです。
一時所得の計算方法とは
ここから、一時所得の計算式や計算例について、詳しく解説します。
一時所得の計算式
一時所得の計算式は、以下のとおりです。
一時所得の金額 = 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額
「収入を得るために支出した金額」とは、一時所得に関する収入を得るために支払った金額のことです。たとえば、保険の一時金を受け取る場合は、毎月支払った保険料が該当します。ただし、収入を生じた行為をするため、もしくは収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額でなければ、認められません。
なお、特別控除額の限度額は50万円です。
一時所得の計算例
被保険者である親が亡くなり、生命保険金1,500万円を受け取った際の一時所得を計算してみましょう。保険料は被保険者の子(自分)が年額100万円負担しており、保険に加入してから10年後に被保険者が亡くなったと仮定します。
まず、総収入金額は保険の一時金である1,500万円です。また、10年間毎年100万円を納付していたため、収入を得るために支出した金額は1,000万円と計算できます(100万円 × 10年)。
よって、今回のケースにおける一時所得は450万円です(1,500万円 − 1,000万円 − 50万円)。
一時所得は損益通算できる?
損益通算とは、総所得金額などを計算する際に、ある所得金額の計算上生じた損失をほかの所得金額から控除することです。赤字が発生した分だけほかの所得の黒字を減らせる制度ですが、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得と異なり、一時所得は損益通算ができません。
ただし、一時所得において内部通算はできます。内部通算とは、同一の所得計算で発生した赤字と黒字を通算することです。
たとえば、すでに保険料を300万円納付している保険を解約し、解約返戻金が200万円であった場合、100万円の赤字が発生します。そのため、別の保険で一時金を受け取るなどして一時所得が発生していれば、内部通算でそこから100万円分を控除可能です。
一時所得にかかる税金とは
一時所得がある場合、その所得金額の2分の1相当の金額をほかの所得(給与所得・事業所得・雑所得など)と合計し、総所得金額を求めた上で税額を計算します。税額を計算するまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 総所得金額を計算する
- 総所得金額から所得控除額を引く(課税総所得金額の算出)
- 課税総所得金額に所定の所得税率をかけて所得税額を求める
- 所得税額から税額控除額を引く
- 4の額を税金として納付する
ここから、一時所得にかかる税金を計算する際に必要な所得税率の目安や、税金の計算例を紹介します。
所得税率の目安
日本の所得税率には、超過累進税率が採用されています。超過累進税率とは、所得が多くなるにつれて税率が段階的に高くなる仕組みのことです。
そのため、所得税率は分離課税に対するものなどを除くと以下のように、5%から45%に区分されています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円〜 | 45% | 4,796,000円 |
なお、2037年分の確定申告までは、所得税に加えて復興特別所得税(原則基準所得税額の2.1%)の申告・納付も必要です。また、所得税・復興特別所得税とは別に、住民税もかかります。
一時所得にかかる税金の計算例
一時所得にかかる税金は、ほかの所得の額によっても異なります。
たとえば、課税総所得金額が650万円(うち一時所得150万円)であれば税率は20%です。そのため、一時所得課税される所得税はおよそ30万円と計算できます(150万円 × 20%)。
ただし、全体の計算では税率をかけて42万7,500円が引かれるため、実際は一時所得にかかる税金は30万円より少ないでしょう。
一時所得で確定申告が必要なケース・不要なケース
そもそも、給与の収入金額が2,000万円を超える などに該当する方は、確定申告しなければなりません。ここでは、今まで確定申告が不要の方が、一時所得が発生した際に確定申告が必要になるか、不要のままかについて説明します。
まず、一時所得の合計額が年間50万円以下 であれば、確定申告の必要はありません。なぜなら、所得金額の計算で特別控除額50万円を引けるためです。
また、宝くじやスポーツの結果を予想するスポーツ振興くじ(toto・BIG・WINNERなど)も、確定申告の必要がありません。それぞれ、当せん金付証票法とスポーツ振興投票の実施等に関する法律で、当選金が非課税であることが明記されています。
さらに、懸賞金付預貯金の懸賞金などや、一時払養老保険・一時払損害保険など(一定の要件を満たすもの)も、確定申告できません。なぜなら、源泉分離課税が適用されるためです。
ここまで紹介したケースに該当しない一時所得は、基本的に確定申告しなければなりません。また、一時所得の合計額が年間50万円以下で確定申告不要な場合でも、住民税の申告は必要です。
参考)確定申告とは
一時所得で確定申告する方法
ここから、必要書類やポイント、提出方法・期限といった、一時所得の確定申告について簡単に紹介します。
一時所得で確定申告する際の必要書類
一時所得で確定申告する際に使う主な書類は、以下のとおりです。
- 確定申告書
- マイナンバーカード(もしくはマイナンバーを確認できる書類)
- 控除額がわかる書類(各種控除を適用する場合)
- 保険証券・保険料の支払い記録・受取証明書(保険の一時金を受け取った場合)
そのほか、懸賞や競馬・競輪で一時所得が発生した場合も、受け取りを証明する書類が必要です。
一時所得で確定申告する際のポイント
一時所得が発生している場合、確定申告書第二表の「所得の内訳」や、「一時所得に関する事項」(収入金額・支出金額・差引金額)に該当する事柄や金額を記載しましょう。続いて、第一表の「収入金額等」の「一時」や、「所得金額等」の「総合譲渡・一時」などに記載が必要です。
「収入金額等」の「一時」には、第二表の「一時所得に関する事項」にある差引金額から特別控除を引いた数字を記載します。
一時所得で確定申告する際の提出方法
確定申告書の提出方法は、以下のとおりです。
- e-Taxで申告する
- 郵便などで所轄の税務署や業務センターに送付する
- 所轄の税務署の受付に直接持ち込む
e-Taxを使えば、画面の案内に従うだけで自動で税金を計算できます。また、税務署までの距離的な制約がなくなる上に、システム稼働時間内であればいつでも手続きできるため便利です。
一時所得で確定申告する際の提出期限
1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までに確定申告しなければなりません。税金の納付期限も同じタイミングです。
確定申告を怠ると、別途加算税が課されます。また、税金納付が遅れた場合も、延滞税が発生する点に注意が必要です。
普段確定申告していない方も、一時所得がある場合は申告を失念しないように早めに準備しておきましょう。
一時所得まとめ
営利目的の継続的行為から生じていない場合、一時所得とみなされることがあります。税金を計算する際は、一時所得額を2分の1してからほかの所得と合計する点がポイントです。
状況によって、一時所得で確定申告しなければならないことがあります。毎年の確定申告をしていない方も、保険金の受け取りや競馬・競輪の払戻金などが発生した場合は、注意しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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