年商とは?売上高との違いや決算書での確認方法を解説

更新日:2025年01月27日

年商

年商とは、企業が1年間で稼いだ収益の総額を表す数値です。類似する言葉に売上高や純利益、年収があるため、それぞれの意味の違いを理解して正しく使用することが重要です。本記事では、年商とはどのような意味か、さらに売上高との違いや決算書での確認方法などを解説します。

目次

年商とは「1年間で得た収益の総額」のこと

「年商」とは、企業が1年間で獲得した収益の総額を指します。つまり、商品やサービスを販売して獲得した合計額のことです。

たとえば、ある会社が1年間に1億円の商品を販売したとします。この場合、会社の年商は1億円です。

ただし、ここで注意しておきたいのは、年商は売上原価販売費及び一般管理費など企業活動で必要な経費を差し引く前の金額であるという点です。

年商は、「年商1億円」や「年商10億円」といったように、企業の規模を測る指標としてよく用いられます。

年商と売上高の違いとは

年商と似た言葉に「売上高」があります。どちらも企業の収益を表す言葉ですが、違いがあります。売上高とは、企業が商品やサービスの販売、提供で獲得した総額のことで、年商との違いは期間です。

年商が必ず1年間の収益の総額であるのに対し、売上高は1か月や四半期、半年など、目的によって対象期間が設けられています。

売上高は、一般的に企業の経営計画や営業目標に使用される指標です。たとえば、四半期ごとの売上高を比較することで、前期と比較した売上目標の達成度合いを測れます。

年商と純利益や年収との違い

ここまで年商と売上高の違いについて説明しました。同じく混同しやすい用語に純利益と年収があります。

年商は、売上高と同様に事業活動で必要な経費は控除されていません。一方、純利益は費用を控除した数値です。また、年商は企業の収益を表す数値で、年収は個人の収入を表す数値です。

企業の状況を知るためにはそれぞれの意味を正しく理解して、適切に使用する必要があります。続いて、年商と純利益や年収との違いについて解説しましょう。

年商と純利益の違い

年商と純利益は、どちらも企業の業績を測る上で重要な指標ですが、その意味合いは大きく異なります。

年商は、企業が1年間で獲得した収益の総額を指します。一方で、純利益とは、企業の売上高からさまざまな費用を控除した後の利益のことです。

具体的には、売上高から売上原価を差し引いたのが売上総利益(粗利)、粗利から販売費及び一般管理費を控除したものが営業利益です。さらに営業外費用を控除したものが経常利益、そして特別損失と法人税等を控除したものが純利益(当期純利益)となります。

年商が1年間の売上額総額を指すのに対し、純利益は実際に得られた利益、つまり手元に残る利益を意味します。

このように、年商と純利益はまったく異なる指標であるため、企業の業績を正しく評価するためには、両方をあわせて見る必要があるでしょう。

年商と年収の違い

年商は企業の売上を表すのに対し、年収は個人が1年間で得た収入のことを指します。

会社員の場合、年収には給与やボーナス、各種手当などが含まれます。自営業者の場合は、事業で得た収入から経費を差し引いた金額が年収です。

たとえば、ある会社員の年収が500万円だったとします。この500万円には、毎月の給与に加えて、夏と冬のボーナス、通勤手当や住宅手当などの各種手当が含まれています。

年商はあくまで企業全体の売上を表す指標であり、個人の年収とは区別して考える必要があるでしょう。

企業の規模を示す指標としては、年商を用いるのが適切です。一方、個人の収入を示す場合には年収が用いられます。

年商を決算書で確認する方法

企業の年商を知りたいときには、決算書を確認する方法があります。

決算書とは、一会計期間における会社の経営成績や、期末における財政状態を確認するために作成する書類のことです。決算書には、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」など、さまざまな書類が含まれています。

そのなかの損益計算書で、年商の確認が可能です。損益計算書は、一定期間における企業の経営成績を示したもので、売上高や費用、利益などが記載されています。

ただし、項目は「年商」ではなく「売上高」となっている点に注意が必要です。損益計算書における売上高は、1年間の売上高を表しており、つまり年商と同じ意味になります。

決算書は、企業の公式サイトで閲覧できることがあります。また、上場企業の場合は、有価証券報告書でも年商の確認が可能です。有価証券報告書は、企業が投資家向けに作成する情報開示資料で、決算書の内容に加えて、事業内容や将来の見通しなどが記載されています。

年商に関する2つの注意点

年商は企業が稼いだ収益を表すわかりやすい指標です。しかし、年商を利用して企業の規模を測ったり、他の企業や異なる業態と比較したりする際には、いくつかの点に留意する必要があります。なぜなら年商には、次のような注意点があるためです。

  • 年商は事業規模の目安のひとつ
  • 年商の規模は業種により異なる

ここからは、年商に関する2つの注意点を解説します。

1.年商は事業規模の目安のひとつ

年商は、企業の規模を感覚的に掴むには便利な数字です。「年商1億円」と聞けば、ある程度の規模感を持つ企業をイメージできるでしょう。

しかし、前述したように、年商は費用を引く前の総収益額のことです。年商が大きくとも、必ずしも利益を上げているとは限りません。

たとえば、年商10億円の企業と年商5億円の企業があったとします。一見、年商10億円の企業のほうが規模は大きく、成功しているように見えますが、純利益を比較すると年商5億円の企業のほうが多い場合があります。

このように、年商だけではどれだけ利益を得ている企業なのかは判断できません。年商はあくまでも事業規模の目安のひとつだと捉えておくことが重要です。

企業の真の収益性を測るには、純利益や売上高利益率といった指標もあわせて確認する必要があります。これらの指標を総合的に判断することで、企業の経営状態をより正確に把握できるでしょう。

2.年商の規模は業種により異なる

業種によって、売上規模や利益率は大きく異なります。そのため、異なる業種の企業を年商だけで比較することは適切ではありません。

一般的に、利益率の高い業種では、年商が低くても十分な利益を確保できます。たとえば、不動産業やコンサルティング業などは、1件あたりの取引の利益率が高いため、年商が少なくても収益を確保できるでしょう。

一方で、小売業や飲食業など利益率の低い業種は、1件あたりの利益が少ない傾向があります。そのため、利益を確保するには大きな年商が要求され、多くの商品を販売したり、顧客を獲得したりする必要があるでしょう。

このように、年商は業種やビジネスモデルによって大きく異なるため、単純に比較することはできません。企業の業績を評価する際は、業種やビジネスモデルといった要素も考慮に入れる必要があります。

事業における年商の活用法

続いて、事業における年商の活用法を紹介します。

活用法のひとつは、採用説明会や取引先に自社の規模を示す指標として利用することです。年商はわかりやすい指標であるため、企業規模を伝える数値として多くの方が理解しやすいでしょう。

また、経営分析において自社を他社と比較するときや、取引先の企業規模を調べるときにも年商は利用できます。それぞれの活用方法を具体的に見てみましょう。

事業規模を示す指標として活用する

年商は、企業の事業規模を対外的に示す指標として活用できます。

たとえば、採用説明会などで、自社の事業規模をアピールするために年商を使えます。「年商10億円」や「年商100億円」といったように、具体的な数字で示すことで、学生や求職者に対して、自社の規模感をわかりやすく伝えられるでしょう。

また、取引先と交渉する際にも、年商は重要な指標です。年商が大きいほど企業の信用力が高まり、融資を受けやすくなったり、有利な条件で取引を進めやすくなったりする可能性があります。

経営分析に活用する

年商は、企業の経営分析にも活用できます。たとえば、年商を前年と比較することで、売上増加率を算出できます。売上増加率は、企業の成長性を測る指標のひとつであり、前年比で売上がどれだけ増加したのかを示す数値です。

また、業界平均と比較することで、自社の売上規模を客観的に評価できます。業界平均と比べて自社の年商が低い場合は、競合との競争力を強化するための施策を検討する必要があるかもしれません。

さらに、年商を顧客ごとに分けて分析すれば、特定の顧客への依存度を把握できます。取引先の集中には、生産や流通段階でのコストダウンが図れるというメリットがあるものの、取引先を失ったときのダメージが大きいというデメリットもあるでしょう。

年商を顧客ごとに分け分析すれば、取引先の集中によるリスクの度合いを測り、適切な対策を講じられます。

このように、年商を分析することで、企業の経営状況を多角的に把握し、経営戦略に役立てられるでしょう。

年商まとめ

年商とは、企業が1年間で得たすべての収益のことです。売上原価や販売費などを差し引く前の金額であるため、企業の規模を測る指標としては有効ですが、収益性を示すものではありません。

年商は決算書の損益計算書で確認できます。ただし、項目名は「売上高」となっている点に注意が必要です。また、年商はあくまでも事業規模の目安のひとつであり、業種によって規模は大きく異なります。

年商を正しく理解し、他の指標とあわせて総合的に判断することで、企業の経営状態をより正確に把握できるでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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