連結決算は中小企業にも必要?メリットとデメリットを解説

2023.08.09

連結決算

連結決算には対外的信用を得やすいメリットを期待できる一方で、手間がかかるデメリットもあります。中小企業に連結財務諸表の作成は義務付けられていないため、概要を理解した上で導入可否を判断することが大切です。

本記事で、連結決算のメリットやデメリットを詳しく解説します。

目次

連結決算とは?

連結決算とは、企業グループ全体で実施する決算のことです。

1976年に「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」公布、1977年に連結財務諸表の監査開始などが進められてきましたが、日本では連結決算の情報開示はほとんど実施されませんでした。

2000年3月期にディスクロージャー制度が大幅に見直されて以降、連結決算中心の開示に切り替わっています。ここから、連結決算の対象や、必要とされる理由を確認していきましょう。

連結決算の対象は?

原則として、親会社・子会社・関連会社すべてが連結決算の対象です。親会社とは、他の会社を支配している会社のことを指します。

子会社とは、親会社が50%超の議決権を保有している会社のことです(会社法第2条第3号)。また、関連会社は親会社が議決権の20%以上を保有し、経営方針の決定に重要な影響を与えられる会社を指します(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第8条第5項、第6項第1号)。

ただし、要件を満たせば保有する議決権が50%以下(40%以上)でも子会社、20%以下でも関連会社になることがあるため、注意しましょう。

連結決算が必要な理由

連結決算が必要な理由は、企業グループ全体の数値を把握するためです。連結決算を通じて、投資家は企業全体の経営状況がわかります。

会社法第444条によると、大会社で有価証券報告書の提出が必要な会社は、連結計算書類を作成(連結決算)しなければなりません。有価証券報告書の提出が必要な会社は、上場会社・店頭登録会社・有価証券届出書提出会社などです。

また、大会社とは以下のいずれかに該当する会社を指します。

  • 貸借対照表で資本金として計上した額が5億円以上
  • 貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上

参考:e-Gov「会社法」
参考:e-Gov「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」

連結決算のメリット

中小企業には連結決算の義務はないですが、任意で実施することはできます。連結決算することのメリットは、以下のとおりです。

  • 対外的信用を得やすい
  • グループ全体の経営情報を把握できる

各メリットを解説します。

対外的信用を得やすい

連結決算によりグループ企業間での不正防止や不正の早期発見につながるため、対外的信用を得やすい点がメリットです。連結決算でグループ全体の財務の透明性強化を図ることで、金融機関による融資審査によい影響を与える可能性があります。

融資の承認を得られれば、必要な時期に資金調達できるため、スピーディーに事業展開を進められるでしょう。

グループ全体の経営情報を把握できる

連結決算を実施すれば、グループ全体の経営情報を把握できる点もメリットです。経営陣は、グループ全体の数値を把握することで総合的な視野で戦略を練られます。

債権者や投資家にとっても、連結決算を確認してより企業のことを知れる点がメリットです。債権者や投資家は、連結決算で作成する連結財務諸表でグループ間取引で相殺した項目などを確認します。

連結決算のデメリット

中小企業が連結決算を選択することで、デメリットも生じる点に注意しましょう。主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 手間がかかる
  • 監査を受けなければならない

各デメリットを解説します。

手間がかかる

連結決算は、手間がかかる点がデメリットです。連結決算にあたって、親会社は子会社や関連会社から資料を集めなければなりません。

また、エクセルなどの表計算ソフトで作成する場合、会計担当者が時間や労力を割かなければならないでしょう。現場の状況や業務フローを確認した上で、連結決算の導入を進めることが必要です。

なお、連結会計に対応したシステムもありますが、導入には一般的にコストがかかるでしょう。

監査を受けなければならない

連結決算を実施する際、監査役や会計監査人の監査を受けなければならない(会社法第444条第4項)点もデメリットです。監査役とは、正しい経営が進められているかチェックする会社内部の人、会計監査人とは会計監査を実施する公認会計士もしくは監査法人を指します。

本来、中小企業は会計監査を義務付けられていません。しかし、任意で連結決算することで会計監査が義務付けられる点に注意しましょう。

連結決算(連結会計)のやり方

連結決算(連結会計)のやり方を理解できるように、流れや内容を解説します。

連結決算を進めるための流れ

連結決算は、主に以下の流れですすめていきます。

  1. 各会社(親会社・子会社・関連会社)で個別に財務諸表を作成する
  2. 親会社が子会社、関連会社の情報を収集する
  3. 個別財務諸表を合算する
  4. 連結修正仕訳を実施する
  5. 連結財務諸表を作成する

1のタイミングで、会計方針を揃えることが大切です。異なる場合、後ほど整合性が取れなくなります。

4の連結修正仕訳とは、親会社の子会社株式とそれに対応する子会社の株主資本を相殺したり、グループ内取引を相殺したりすることです。連結修正仕訳により、企業グループ全体の実態をとらえられるようになります。

なお、連結決算には手間や時間を要するため、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。

連結財務諸表に盛り込まれる内容

連結財務諸表には、主に以下の内容が盛り込まれています。

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書
  • 連結キャッシュフロー計算書
  • 連結株主資本等変動計算書

それぞれの概要を簡単に解説します。

連結貸借対照表

連結貸借対照表とは、決算日時点のグループ内各社の「貸借対照表」をまとめて、親子間における資本金・投資金などの取引を除いたものを指します。貸借対照表とは、左側に運用部門の「資産の部」、右側に調達部門の「負債の部」と「純資産の部」を記載した決算時点の財務状況を示す書類です。

連結貸借対照表を読めば、企業グループ全体の財務状況(資産・負債・純資産の状況)がわかります。

連結損益計算書

連結損益計算書とは、グループ内各社の「損益計算書」をまとめて、親子間の仕入・売上分を除いたものを指します。損益計算書とは、売上高や利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)、費用などを記載した1年間の営業成績を示す書類です。

連結損益計算書を読めば、一定期間の企業グループ全体の経営成績(収益・費用・利益)がわかります。

連結キャッシュフロー計算書

連結キャッシュフロー計算書とは、グループ内企業の「キャッシュフロー計算書」をまとめて企業内取引を相殺したもの(原則法)や、連結貸借対照表や連結損益計算書から作成した「キャッシュフロー計算書」を指します。

キャッシュフロー計算書とは、3つの区分(営業活動によるキャッシュフロー・投資活動によるキャッシュフロー・財務活動によるキャッシュフロー)で、現金の流れを示した書類です。連結キャッシュフロー計算書を読めば、企業グループ全体の現預金の流れや増減要因を把握できます。

連結株主資本等変動計算書

連結株主資本等変動計算書とは、連結貸借対照表の純資産の変動額のうち、主に親会社の株主に属する株主資本の変動事由を報告するためのものを指します。連結株主資本等変動計算書に記載されているのは、前期末残高(当期首残高)・当期変動額・変動事由・当期末残高などです。

連結株主資本等変動計算書を読めば、株主資本がどのような原因でどれだけ増減したかがわかります。

連結決算メリット・デメリットのまとめ

連結決算とは、企業グループ全体で実施する決算のことです。中小企業に義務はありませんが、連結決算を実施することで対外的信用を得やすい、グループ全体の経営情報を把握できるなどのメリットを期待できます。

一方、手間がかかる点や監査を受けなければならない点が中小企業が連結決算を実施するデメリットです。メリットとデメリットを比較した上で、自社で連結決算を実施するか決断しましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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