検収照合とは?経理業務を効率化する方法3選
更新日:2024年06月10日

検収照合とは、数量や単価などの細かい取引内容を突合させる作業を指します。作業をエクセルで進める場合、多くの時間がかかり大変なため、別の方法を検討することも大切です。
本記事では、検収照合とは何か説明してから、エクセル以外で経理業務を効率化する方法3選を紹介します。
目次
検収照合とは?
検収照合とは、購入者と販売者の間で、数量や単価などの細かい取引内容を突合させる作業のことです。「検収」自体は、基本的に商品を受け取る(購入する)側の企業が実施します。
検収照合作業の流れは、以下のとおりです。
- 購入者が発注した商品を受け取る
- 購入者側が商品の種類や数量、品質などに間違いがないかを確認する(検収)
- 検収作業を終えたら、購入者が検収書を販売者に送る
- 販売者が自社で管理している「売上明細」や「出荷明細」と、送られてきた「検収書(検収通知)」を比べてチェックする
- チェックで問題がなければ、販売者が売掛金に計上する
検収照合作業を担当するのは、基本的に経理に関する部署です。取引量(ロット数)が多い会社ほど、経理担当者にかかる負担も重くなります。
なお、検収と同じような場面で使われる言葉が納品です。納品とは、受注を受けた側が商品を発注者に納めることを指します。検収照合と納品は似たようなタイミングで実施されるため、混同しないようにしましょう。
検収・検収照合で気をつけるべき点
検収や検収照合にあたって、気をつけるべき点は以下のとおりです。
- 検収書を発行するのがマナー
- 検収後のクレームは原則できない
- 支払いは60日以内に行う
検収は検収照合との関連も深いため、購入者だけでなく販売者側も注意点を理解しておきましょう。
検収書を発行するのがマナー
検収書とは、購入者が受け取った商品の種類や数量、内容などに不備がない点や、傷がない点などを契約書に基づき確認したことを証明する書類を指します。検収書の作成や交付に法的義務はありませんが、検収書を発行することがビジネス上のマナーです。
取引先との信頼関係の構築や、円滑な取引のためにも、購入者(発注者)は検収書を発行するようにしましょう。検収書の発行が難しければ、検収の通知でも構いません。
検収照合の際に使うため、検収書の発行や検収の通知は販売者にとっても重要です。販売者が送った製品に不備があり、検収書が発行されていない可能性もあります。検収の通知がない場合、販売者は購入者に状況の把握や確認の連絡を入れるようにしましょう。
検収後のクレームは原則できない
購入者は、検収が完了して取引先に検収書を送ると、あとから納品物についてクレームを伝えることは、原則できない点に気をつけましょう。なぜなら、検収の完了を通知したことで、契約に従った要求どおりの製品が納品されたことを示したことになるためです。
後に返品や交換を申し込むことが原則として困難なため、検収書を送る前に正しい手順に則って確認するようにしましょう。入念な検品を実施する余裕がなければ、人員配置を見直すことも大切です。
なお、検収書を送った後でも、契約内容や不具合の内容によって販売者が修繕や賠償の義務を負うことはあります。
支払いは60日以内に行う
販売者が下請け事業者であれば、購入者は納品から60日以内に代金を支払わなければならない点(60日ルール)に注意しましょう。一般的に、販売者から請求書が発行されるのは検品通知後のため、検品が遅れると請求書が来る前に支払期限が到来する可能性があります。
「60日ルール」とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の第4条第1項第2号で定められている決まりです。親事業者は、物品を受領した日(役務が提供された日)から起算して60日以内に定められた期日までに、下請代金を全額払わないと下請法に違反します。
親事業者・下請事業者に該当するかを判断するのは、両者の資本金です。物品の製造・修理委託の場合、以下が親事業者と下請事業者の関係に該当します。
- 親事業者の資本金3億円超で、下請事業者の資本金3億円以下(個人含む)
- 親事業者の資本金1千万円超3億円以下で、下請事業者の資本金1千万円以下(個人含む)
また、情報成果物の作成や役務提供委託の場合、親事業者と下請事業者に該当するのは以下の条件を満たした場合です。
- 親事業者の資本金5千万円超で、下請事業者の資本金5千万円以下(個人含む)
- 親事業者の資本金1千万円超5千万円以下で、下請事業者の資本金1千万円以下(個人含む)
販売側も、自社の資金繰りに影響するため、60日ルールを理解しておきましょう。
エクセルでの照合作業が大変な理由
エクセルで検収照合はできますが、作業が大変です。エクセルでの照合作業が大変な理由として、以下の点が挙げられます。
- データの照合に多くの手間がかかる
- 業務の効率化が難しい
それぞれ解説します。
データの照合に多くの手間がかかる
データの照合に多くの手間がかかる点が、エクセルだけでの検収照合が大変な理由です。
検収照合では、購入者から受け取った検収書と自社の売上明細・出荷明細をひとつずつ照合していかなければなりません。とくに、製造業や卸売業を営む会社は取引数が多くなる傾向にあるため、担当者に大きな負担がかかるでしょう。
検収照合に誤りがあると、売上計上にも大きな影響が生じます。取引量が多いからといって、大雑把に確認することはできません。
急いで対応してエクセルに入力漏れなどが発生すると、数字に差異が生じます。エクセル上で一度数字のミスが発生すると、データを修正したり、どこで間違ったかを探したりするのに多くの時間を取られるでしょう。
なお、エクセルに限らず購入者から検収書が来ない場合、出荷していないのに検収書が来た場合など、確認の連絡で時間を取られることがあります。
業務の効率化が難しい
エクセルだけでの検収照合では、業務の効率化が難しい点も大変な理由です。
エクセルで関数やマクロ(必要に応じて複数の操作をまとめて呼び出す機能)を利用すれば、目視で照合する場合に比べて業務の効率化は図れます。しかし、関数やマクロを作成したり、利用したりするには、担当者に一定のスキルが求められるでしょう。難しいからといって業務が属人化してしまうと、担当者が休暇を取得した際や退職した際に検収照合ができません。
また、取引先(購入者)によって受領したデータの項目や記載形式が異なる点も効率化が難しい理由です。取引先によって使用している関数設定やレイアウトが異なると、まとめて対応することが難しいでしょう。
検収照合を効率化する方法
検収照合を効率化する具体的な方法は、以下のとおりです。
- 経理の人材強化
- 検収照合の外注
- 検収照合の自動化
それぞれの方法について、詳しく解説します。
経理の人材強化
そもそも経理人材がいなければ、検収照合をうまく進められないため、経理の人材強化が作業を効率化する方法のひとつです。経理の人材強化方法の具体例として、中途採用で人員を増やすことが挙げられます。
しかし、労働人口が減少している、基礎的なパソコンスキルや簿記の知識などが求められるなどの理由から、すぐに経理人員を確保することはできるとは限りません。経理の人材強化を考えている場合は、早めに人材採用の準備を進めた方がよいでしょう。
ここから、経理の人材強化で検収照合の効率化を図るメリットとデメリットを説明します。
メリット
経理の人材を強化して検収照合を効率化するメリットは、関連業務のスピードアップにつながる点です。経理の人材強化により、今までより多くの従業員で検収照合に取り組めます。
経理能力の高い従業員がいれば、より早く作業を進められるでしょう。中途採用以外に、社員研修を実施する・ジョブローテーションを進める・社員に経理関係の資格取得を推奨する、などの方法で経理人材を強化することでも、スピードアップにつながる可能性があります。
デメリット
経理の人材強化で検収照合を効率化するデメリットは、人件費がかかる点です。経理に携わる社員を増やす場合も、研修を実施する場合もコストが増えるでしょう。
また、経理の人材を強化しても、会社全体でその人に頼りっきりになると業務の属人化が進む点がデメリットです。属人化とは、業務や役割が特定の人だけのものとなり、他の人が理解できなくなることを指します。
属人化が進むと、担当者がトラブルを抱え込みやすい、担当者不在時に対応できないなどの支障が出るでしょう。
検収照合の外注
検収照合を外注にまわすことも、検収照合を効率化する方法のひとつです。
検収照合に限らず、記帳業務・給与計算・決算書作成など、さまざまな経理業務を外注にまわすことがあります(経理アウトソーシング)。ほかにも外注に出す経理業務がある場合は、検収照合にも対応している業者への依頼を検討するとよいでしょう。
ここから、検収照合を外注にまわすメリットとデメリットを説明します。
メリット
検収照合を外注に出すと、経理の人材強化をせずに作業効率を上げられる点がメリットです。ジョブローテーションで、今まで検収照合の作業にあたっていた人員を別の部署に配属させ、生産性を向上させることもできます。
また、自社で中途採用活動などをせずに、高いスキルを持った人材に作業を依頼できる点もメリットです。検収照合に慣れた外注先に依頼すれば、効率よく対応してもらえるでしょう。
デメリット
検収照合を外注に出すデメリットは、セキュリティリスクが生じる点です。
検収照合の作業を外注するには、取引先名や取引内容などのデータを外部の会社と共有しなければなりません。万が一外注先に渡した情報が漏洩したら、自社が損害を被るだけでなく、取引先にも迷惑をかけるでしょう。外注先の情報管理の取り扱いやセキュリティ対策などを確認した上で、依頼することが重要です。
また、検収照合を外注に出すと、自社にノウハウが蓄積されなくなる点もデメリットとして挙げられます。外注に出して長期間を経過してから自社に戻そうとしても、検収照合の作業内容について理解している人材がいない状況になるおそれがあるでしょう。
検収照合の自動化
検収照合の自動化も、検収照合作業の効率化を図る方法のひとつです。自動化の具体的な方法として、AIやRPAの活用が挙げられます。
RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略です。ロボットを使って業務を自動化するツールやシステムのことを指します。RPAは自律的に判断する能力は持たず、人間が決めたルールに従う点がAIとの違いです。
ここから、検収照合の自動化を進めるメリットとデメリットを説明します。
メリット
検収照合の自動化により、大量の検収照合を素早く処理できる点がメリットです。とくに、取引件数が多い会社ほど、自動化による時間の短縮効果が大きいでしょう。
また、自動化で従業員の負担を軽減できる点もメリットです。検収照合に人がかける時間を減らした分、売上や利益に直結する業務に人材を配置できます。
そのほか、検収照合業務の属人化を防げる点も、自動化によるメリットです。
デメリット
最初のうちは、導入するツールやシステムに従業員が慣れる必要がある点がデメリットです。自動化で属人化を防げますが、人によって自動化に関連する作業を苦手に感じる人もいるでしょう。
また、RPAを活用した自動化の場合、イレギュラーなことが発生した場合に、対応が難しい点もデメリットです。RPAと比べるとAIはさまざまなことに柔軟に対応できますが、まだ不十分なところもあります。
検収照合を自動化しても、まだ一部で人の作業が必要である点に注意しましょう。
検収照合まとめ
検収照合とは、購入者と販売者の間で、数量や単価などの細かい取引内容を突合させる作業のことです。購入者が検収作業を実施した後に販売者に送る検収書(検収通知)や、売上明細・出荷明細などを使って突合させます。
エクセルだけで検収照合を実施しようとすると、作業に時間を取られるため大変です。そこで、経理の人材強化・検収照合の外注・検収照合の自動化などの方法で業務効率化を図る方法があります。
ただし、それぞれにメリットやデメリットが存在する点を理解しておかなければなりません。たとえば、経理の人材強化で業務スピードは上がりますが、人件費が増える可能性があります。
自社の状況を踏まえて、どのように検収照合作業を進めるのがよいか考えてみましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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