経理の外注とは?アウトソーシングのメリット・デメリットや費用相場を紹介

更新日:2023年08月29日

経理の外注

経理の外注とは、社内で実施していた経理業務を外部に委託することを指します。経理業務が属人化している企業は、外注も視野に入れた方がよいでしょう。

本記事では、経理の外注(アウトソーシング)とは何かについて説明してから、メリットやデメリットを解説します。

目次

経理の外注とは?

経理の外注とは、今まで社内で実施していた経理業務を外部に委託することです。経理の外注を経理アウトソーシング・経理BPO(ビジネス プロセス アウトソーシング)・経理の業務委託などと表現することもあります。

アウトソーシングとは、自社の業務を社外の専門業者に委託するという意味です。本記事では、経理アウトソーシングについて詳しく解説します。

経理アウトソーシングを検討すべき企業

導入により大きなメリットを期待できる、経理アウトソーシングを検討すべき企業は、以下のとおりです。

  • これから従業員が増える企業
  • 経理担当者がいない企業
  • 経理業務が属人化している企業

上記の企業の特徴や、なぜ経理アウトソーシングを検討すべきかの理由を解説します。

これから従業員が増える企業

これから従業員が増える企業は、経理アウトソーシングを検討した方がよいでしょう。なぜなら、従業員が増える会社は経費精算業務も増える傾向にあるためです。

とくに、今まで数人〜数十人の従業員で展開してきた会社で大量に従業員が雇用されると、経理担当者への負担が急に重くなります。経理アウトソーシングを導入して業務効率化を図れば、経理担当者にのしかかる負担を軽減できるでしょう。

経理担当者がいない企業

経理担当者や経理の専門知識を有する人材がいない企業も、経理アウトソーシングを検討すべきです。会社で使用している会計ソフトが古いバージョンの場合、法律や経理業務の基本を把握している人がいなければ、適切に対応できないおそれがあります。

また、スタートアップやベンチャー企業の経営者が、自分ひとりで経理業務をこなしている場合も、経理アウトソーシングを導入した方がよいです。創業したばかりの会社の業務は多岐にわたります。多忙な中で経理業務に追われていると、事業推進に関する業務に集中できないでしょう。

経理アウトソーシングを導入して業務効率化を図ることで、経営者はほかのやるべきことに注力できます。

経理業務が属人化している企業

経理業務が属人化している企業も、経理アウトソーシングの導入がひとつの選択肢に含まれます。

経理業務の属人化とは、経理業務が特定の人のものになり、その担当者しかわからない状態になることです。経理アウトソーシングを実施すれば、経理業務が属人化することで浮上するリスクを軽減できるでしょう。

経理アウトソーシングで属人化のリスクを軽減できる具体例は、のちほど詳しく説明します。

経理アウトソーシングができる主な業務

経理アウトソーシングができる主な業務は、以下のとおりです。

  • 記帳業務
  • 支払管理業務
  • 請求管理業務
  • 給与計算業務
  • 年末調整業務
  • 決算申告業務

各業務の内容と、経理アウトソーシングとの関係を解説します。

記帳業務

記帳業務とは、事業を営む中で発生するさまざまな取引内容をまとめ、帳簿に記入(記帳)する業務です。納税金額や所得金額を算出する基準になる決算書を作成するためにも、記帳業務が欠かせません。

記帳業務には細かい処理が求められるため、担当者にかかる負担も多いでしょう。記帳業務を経理アウトソーシングで依頼すれば、取引内容に関する書類を提出することで帳簿の作成を代行してもらえます。

支払管理業務

支払管理業務とは、商品やサービスを購入するにあたって、仕入先から請求を受けてから支払いや消込まで一連のお金のやり取りを管理する業務です。

取引先と良好な関係を維持し、取引をスムーズに進めるためには、支払管理を徹底しなければなりません。とくに、多忙で支払件数が増えているときは、支払漏れがないように注意が必要です。

支払管理業務を経理アウトソーシングにまわせば、発注書や納品書との突合、請求書の遅延や漏れのチェックなどを任せられます。

請求管理業務

請求管理業務とは、商品やサービスを提供するにあたって、販売先への請求や入金確認といったお金のやり取りを管理する業務です。

資金繰りを大きく左右するため、請求管理業務は正確に遂行しなければなりません。取引数が増えると、その分担当者にかかる請求管理業務の負担が重くなるでしょう。

請求管理業務を経理アウトソーシングで対応すれば、請求書の作成と送付、未収売掛金の管理などを任せられます。

給与計算業務

給与計算業務とは、従業員の給与を計算して支払う業務のことです。

従業員の労働の対価を計算することになるため、慎重にこなすことが求められます。計算にあたって、労働関係法令や税金(所得税や住民税)に関する基礎知識が必要です。

給与計算業務を経理アウトソーシングで委託すれば、総支払額や社会保険料・税金の控除計算などを任せられます。

年末調整業務

年末調整とは、企業が従業員の給与などから天引きした所得税と本来支払うべき所得税額を一致させる精算手続きのことです。年末調整業務では、担当者は従業員からの申告に基づき、年末調整の計算や法定調書の提出・作成を進めなければなりません。

年末調整業務は、一般的に11〜1月にかけて実施します。経理アウトソーシングを導入して、計算や各書類の提出を任せれば、年末の多忙な時期の業務負担を軽減できるでしょう。

決算申告業務

決算申告業務とは、一定期間における会社の収入や支出などを計算し、利益を確定させて決算書にまとめることです。

決算申告業務には、正確な数字の把握や計算が必要なため、手間がかかります。財務・経理に関する知識も必要でしょう。

経理アウトソーシングで、税理士に月次決算処理や仕訳、財務諸表の作成を任せられます。専門家が作成した帳票の方が、金融機関からの信頼も高まるでしょう。

経理アウトソーシングのメリット

経理アウトソーシングを実施するメリットは、以下のとおりです。

  • 人件費削減につながる
  • 経理業務の質が向上する
  • 経理業務の属人化を防げる

各メリットについて、解説します。

人件費削減につながる

人件費削減につながる点が、経理アウトソーシングのメリットです。

経理業務は、年末や決算時期など特定の時期に集中する傾向にあります。そこで、繁閑差に応じて必要なときだけ経理アウトソーシングを活用すれば、経理業務のために通年で従業員を雇うよりも人件費を抑えられるでしょう。

また、経理アウトソーシングの導入により、採用・育成・引き継ぎなどにかかる分のコスト削減にもつながります。

経理業務の質が向上する

経理アウトソーシングの導入に伴い、経理業務の質が向上する点もメリットです。一般的に、経理アウトソーシングを活用すれば経理の専門家に業務を依頼できます。

経理や関連法令に関する基礎知識を持つ人材に依頼することで、経理業務がスムーズに捗るでしょう。また、経理業務のミスからトラブルに発展するリスクも、知識が浅い従業員に依頼する場合に比べて軽減できます。

経理業務の属人化を防げる

経理業務の属人化を防げる点も、経理アウトソーシングのメリットです。

ひとりや少数が経理業務を担い、属人化しているとさまざまなリスクが生じます。特定の人に依存しているため他の従業員が内容を把握できず、不正やミスを見逃すおそれがあることがリスクの具体例です。

また、経理業務が属人化していると、経理担当者の休暇中は基本的に経理業務ができません。万が一経理担当者が退職した場合は、後任をすぐに見つけない限り経理業務が滞ってしまうでしょう。

経理アウトソーシングを導入すれば、担当者ひとりに頼ることがなくなるため属人化を防ぎ、それに伴うリスクも軽減できます。

経理アウトソーシングのデメリット

経理アウトソーシングを実施するデメリットは、以下のとおりです。

  • 経理業務のノウハウが自社に蓄積されない
  • 機密情報が漏洩するリスクがある
  • 柔軟な対応が難しいことがある

各デメリットを解説します。

経理業務のノウハウが自社に蓄積されない

経理業務のノウハウが、自社に蓄積されない点が経理アウトソーシングのデメリットです。

経理に関する業務を長い間アウトソーシングに頼っていると、いつの間にか社内に経理を理解する人材がいなくなる可能性があります。人材がいないと、自社で経理業務を遂行することに切り替えようとした際に、誰も対応できません。また、一から経理業務を従業員が身につけようとしても、多くの時間と手間がかかります。

今後対応方針を変更する可能性も踏まえ、経理アウトソーシングを利用する場合でも、随時どのような経理作業をしているのか概要を把握し、ノウハウを蓄積しましょう。

機密情報が漏洩するリスクがある

経理アウトソーシングの導入に伴い、機密情報漏洩のリスクが発生する点がデメリットです。

本来、社内限で保管された機密情報や個人情報を外部と共有するため、セキュリティに関するリスクが高まります。個人情報の具体例は、従業員の給料情報などです。

あらかじめ業者側の情報管理体制を確認した上で、外部アウトソーシングを検討しましょう。

柔軟な対応が難しいことがある

経理アウトソーシングは、柔軟な対応が難しい点もデメリットです。

経理アウトソーシングでは、一般的に契約書に基づいて定められた業務を業者に委託します。そのため、急遽時間外に依頼したい作業が発生した場合は、対応してもらうことが難しいでしょう。

また、社内にいる従業員と異なり、距離的制約があるため、気軽に質問することが難しいです。

経理アウトソーシングをする際の費用相場

依頼する業務量や業務内容によって、経理アウトソーシングをする際の費用相場は異なります。ここで、記帳業務・給与計算業務・決算申告業務の費用相場を確認していきましょう。

記帳業務

記帳業務に関する費用は、仕訳の数ごとに決められることが一般的です。仕訳とは、取引内容を借方(かりかた)と貸方(かしかた)に区分して金額や勘定科目を帳簿に記載することを指します。

業者によっても異なりますが、1仕訳あたり50円~100円がひとつの相場です。小規模事業者であれば、月数千円で依頼できることもあります。

給与計算業務

給与計算業務に関する費用は、従業員数ごとに決められることが一般的です。

業者によって異なりますが、従業員1人あたり千円から2千円がひとつの相場として挙げられます。そのため、従業員数が10人程度の会社であれば、2万円前後で依頼できるでしょう。

なお、年末調整や労務の手続きも依頼する場合は、基本的に別料金が発生します。

決算申告業務

決算申告業務に関する相場は、1回あたり5万~20万円程度です。公認会計士などの専門家に依頼する場合はより高く、1回あたり15万〜25万円程度かかる可能性があります。また、依頼するのが決算書の作成のみか、申告業務も伴うものなのかによっても費用が異なる点に注意が必要です。

経費がかさむことを防ぐため、あらかじめどの業務をアウトソーシングすべきか考えた上で、業者に依頼するようにしましょう。

経理アウトソーシング先の選び方

経理アウトソーシング先の選び方は、主に以下のとおりです。

  • 対応業務の範囲を比較する
  • 専門性の高さを比較する
  • セキュリティレベルを比較する
  • 対応スピードを比較する

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

対応業務の範囲を比較する

経理アウトソーシング先を選ぶにあたって、対応業務の範囲を比較することがポイントです。

業者によって、対応できる範囲が異なります。記帳業務をはじめとする単純作業に特化している業者もいれば、経理に関する提案業務まで担うコンサルティング機能を備えた業者もいるでしょう。

依頼する業務内容をあらかじめ明確にし、自社の導入目的に沿った委託先を選ぶことが大切です。

専門性の高さを比較する

専門性の高さを比較することも、経理アウトソーシング先の選び方です。質の高い経理業務をこなしてもらうために、できるだけ高度な専門性を持つ業者に依頼しましょう。

業者が高い専門性を持っているかは、公認会計士・税理士などの資格を持った人が担当しているか、今までに豊富な経理業務を遂行しているかなどの観点で確認できます。

セキュリティレベルを比較する

経理アウトソーシング先のセキュリティレベルを比較することも、選び方のひとつです。個人情報や機密情報を渡す機会があるため、業者選びは慎重に進めましょう。

業者の情報管理に関するポリシーが、セキュリティレベルを比較する際に役立ちます。また、プライバシーマークやISO/IEC 27001など、情報保護に関する認証の取得状況もチェックするようにしましょう。

対応スピードを比較する

対応スピードを比較することも、経理アウトソーシング先を選ぶ際のポイントです。

税務調査が入るなどの理由で、急に経理業務が発生することがあります。経理アウトソーシングに頼っている場合、業者と連絡がつかなければ緊急時でも経理業務に対応できません。

緊急時に対応は可能か、質問に対する回答は早いか、などに気をつけながら経理アウトソーシング先を選択しましょう。

経理の外注まとめ

経理の外注とは、今まで社内で実施していた経理業務を外部に委託することです。経理の外注を経理アウトソーシングと表現することもあります。

経理アウトソーシングは、人件費削減につながる点や、経理の属人化を防げる点がメリットです。ただし、情報漏洩のリスクがある点や、柔軟な対応が難しい場合がある点に注意しなければなりません。

経理アウトソーシングを利用する際は、デメリットの面を意識しながら委託先を選ぶようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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