予実管理とは?目的や分析のコツ、やり方をわかりやすく解説

更新日:2024年06月05日

予実管理とは

予実管理とは、事前に設定された予算計画と実際に達成された成果を比較検証し、生じたギャップの要因を明らかにして、継続的な改善策を講じるための手法です。また予実管理は、経営の管理業務において現状を正確に理解し、設定された経営目標へと効果的に進むための指針ともなります。

本記事では、予実管理の経営管理上の位置付けや効率的な進め方や分析のコツ、注意点などについて解説します。

目次

予実管理とは

「予実管理」とは、予算と実績を比較・分析し、経営目標を達成するための施策を立案・実行する管理手法です。予実管理を通して「事前に設定した予算や売上目標」と「現段階での売上や経費、進捗度合い」を対比させることにより、差異分析が可能です。

目標値との差異を把握し、問題点を明確化することで、目標達成に向けた具体的な対策の立案を効率的に進められます。

予実管理は「予算管理」と混同しやすい概念のため、それぞれの違いや「経営管理」における位置付けについて解説します。

予実管理を実施する目的

予実管理の目的は、社内の各部門やプロジェクトの「目標・予算」と「実績」間のギャップを分析し、改善策を見出すことにあります。

予算を策定したものの、目標に向かっている途上でのチェックがなければ、計画どおりに進行しているかどうかを正確に把握することは困難です。予実管理を用いた進捗状況の定量的な分析と可視化により、目標達成に向けての道すじが明確になります。

たとえば、特定の部門が予算を超過したり赤字を出したりした場合には、詳細を分析することで「コスト増加によるもの」か「売上減少によるもの」かといった原因究明が可能です。

このように、予実管理を用いて問題点を洗い出すことにより、目標達成のための軌道修正もスムーズに実行できます。

予実管理と予算管理の違い

予算管理は、年次の予算計画を策定し、企業の財務状況を管理するプロセスです。「予実管理」と「予算管理」は、企業の財務管理における重要な要素としてしばしば同じ意味で用いられますが、厳密には異なります。

予算管理は、経営資源の効果的な活用による経営効率の向上が目的です。予算を通して定められた経営目標や方針を数値で示し、その予算数値をもとに業務を推進する管理手法です。予算の策定は、未来の収益や支出を予測し、その予測にもとづいて資源の配分や投資計画を決定します。

一方の予実管理は、目標の達成状況をリアルタイムで把握し、なぜ差異が発生しているかを明確化したうえで、その対策を練るのが目的です。つまり、予算と実際の業績との間のギャップを明確化し、その原因を分析することを主眼としています。予算と実績の比較検討を通じて、経営の進捗状況や問題点を明らかにし、必要に応じた対策立案を可能にします。

予実管理と経営管理の関係性

経営管理は、以下4つの機能を果たします。予実管理はそのうちの「モニタリング機能」に該当します。

経営管理の主な機能 内容
プランニング 目標設定・事業計画の策定と推進
コントロール 進捗の管理
モニタリング 課題の分析・アクションプランの立案
コーディネート 各事業間の利害調整

経営管理では、企業の目指すゴールを達成するために「人材」「物資」「資金」「情報」などのリソースを適切に調整・管理・評価・総括します。経営管理で求められる「目標の達成」「企業の発展」「効率的で円滑な組織運営」などを実現するためには、予実管理によるモニタリング業務は欠かせません。

予実管理の効率的な進め方4ステップ

予実管理は、事業における重要な要素です。しかし、その進め方について難しく感じることがあるかもしれません。そこで、ここでは予実管理を効率的に進めるための4つのステップを紹介します。

  1. 予算目標を設定する
  2. 予算を設定する
  3. 月ごとに予算と実績をチェックする
  4. 課題を分析する

こうしたステップを通じて、予実管理の精度を高めていくことが重要です。

ステップ1.予算目標を設定する

まず、予算目標の設定に必要な情報収集からはじめましょう。過去の実績や繁忙期と閑散期の傾向、社員の状況などの正確な情報を収集します。

次に、企業の成長を目指しつつも現実的に達成可能な目標を設定します。その際、達成が不可能な目標を設定するのではなく、もう少し努力すれば達成可能な範囲で目標を設定することが重要です。

そして、全体の大きな目標が決まった後、部門やプロジェクトごとに目標を落とし込みます。自社や業界全体の実績や成長率、トレンドなどを考慮し現実的な内容で設定しましょう。

ステップ2.予算を設定する

各部門やプロジェクトは、設定された予算目標が実行可能な数値の範囲内であるかどうかをチェックし、過去のデータなどをもとに予算の目標値を設定します。たとえば、売上目標を設定する際には「人件費」「減価償却費」「固定費」などのコストも考慮に入れて営業利益から逆算して目標の粗利益(売上総利益)を割り出し、想定される粗利益率から売上目標を割り出していくのが理想的です。

次に、各部門やプロジェクトの予算を取りまとめ、内容を調整して最終的な予算を決定します。予算が確定した後は、各チームと個人が具体的な行動計画を立て、予算目標を達成するための施策を講じ、あわせて「何をいつまでに達成するか」を示すスケジュールも策定します。

ステップ3.月ごとに予算と実績をチェックする

予実管理においては、少なくとも月次決算が理想的です。チェックを数多く実施することにより、予算と実績の差異を早期に発見できるため、予実管理の精度向上が望めます。また、短期間で生じた問題点や成功事例を早い段階で次の成果向上に活用できます。

得られた予実管理データは、可能な限り多くの従業員と共有することが重要です。データの共有により、設定した予算に対する進捗状況や、今後の努力目標が明確になります。実績は部門別・商品別・月別など、多角的に検証できるデータを用意できれば、検討作業がはかどります。

ステップ4.課題を分析する

予算と実績を比較して、目指す利益と現実の利益にギャップがある場合、原因の分析によって軌道修正をはかります。分析する際には、売上高だけではなく、販売費や一般管理費(販管費)を加味した営業利益に焦点を当てることが重要です。

必要な情報がそろっているのであれば、「経費の過剰」「リソースの不適切な配分」「営業目標の誤り」など、具体的な問題点を可視化します。可視化されたそれらの問題に対して、今後どのような対応をすれば確実な実施につながるかについての検討を進めましょう。

より具体的には、定量的なデータにもとづいて「売れ行きが鈍い商品やサービス」があれば要因を探り、改善につなげます。また「売れ行きが良い商品やサービス」については、さらに売上を伸ばすための工夫をします。

予実管理でよくみられる失敗例

予実管理は、適切な運用ができていないと、せっかくの努力が無駄になってしまうことも少なくありません。ここでは、予実管理でよくみられる3つの失敗例について解説します。

  • 予算と実績の差異ばかりにとらわれてしまう
  • 予算設定が低すぎる
  • 管理業務にこだわりすぎる

これらに注意し「目的」と「手段」を履き違えないようにすることが重要です。

予算と実績の差異ばかりにとらわれてしまう

予実管理に際し、細かな数字の差異ばかりに着目してしまうと、本来の目的からずれてしまうおそれがあります。予実管理の主な目的は、現在の状況を把握したうえで経営の改善策を策定し、改善策の実行を促すことです。予算と実績の比較や差異の分析は、目的を達成するための手段に過ぎません。したがって、手段としての分析に集中するあまり、それが目的とならないよう注意が必要です。

予算設定が低すぎる

予実管理の過程で、失敗への懸念から達成しやすいレベルに予算設定してしまう傾向がみられます。社員の士気を向上させるために、あえて低い予算を設定するアプローチは、時には効果的であるものの、それだけでは組織の成長は見込めません。

企業が成長フェーズにある場合、目標は合理的で説明可能な範囲で高く設定することが求められます。もう少し努力すれば達成可能な数値が最適な予算といえます。

管理業務にこだわりすぎる

予算目標を達成することは重要です。ただし、目標達成にあまりに固執しすぎるのは適切とはいえません。目標を無理に追い求めると、従業員のモチベーションが低下し、売上を不正に膨らませるような行為につながる可能性があります。予実管理は組織の成長を支える一つの手段であり、効率的に運用しなければ他の業務に影響をおよぼし、本末転倒となりかねません。

たとえば予算と実績が一致しないケースでは、はじめから予算が現実と合致していなかった可能性も考えられます。また、取引状況の急な変化や競合企業の出現など、予算の基準が大きく変動した場合には、予算の見直しを柔軟に検討することも時には必要です。

予実管理における分析のコツと成功のポイント

予算策定後の予実管理による運用において、効率的に進めるための重要なポイントは以下の3つです。

  • KPIは部門ごとに設定する
  • 短期的かつ定期的な分析を心がける
  • 予算管理に役立つツールを活用する

適切な分析方法を身につけることで、予実管理は単なる数字の羅列から、経営戦略の立案、業務効率化、そして利益拡大へとつながる強力なツールへと進化します。ここでは、それぞれについて解説します。

KPIは部門ごとに設定する

予実管理を円滑に進めるには、各部門に対して明確なKPIを設けることが大切です。KPIとは、企業や組織が目標を達成するための各プロセスにおける「具体的な行動指針」を指します。

例として、以下のような施策がKPIに該当します。

  • 営業部門:受注数や訪問数の目標設定
  • 製造部門:生産量や品質目標を達成するための作業内容と目標値の設定

予算だけでなく、経営目標を達成するための具体的な行動に関するKPIを設けることで、予実管理のより具体的な実施が可能です。

短期的かつ定期的な分析を心がける

予実管理は月次で実施することが一般的です。ただし可能な限り週単位など頻度を高めた現状分析が望まれます。また「月次の締切直後に実施する」など、あらかじめチェックのタイミングを決めておくことも重要です。

定期的な予実管理の実施により、予算と実績の差が大きく開く前に対策を打てます。さらに、定期的な予実管理は、年度決算時の業務負担を軽減する効果もあります。

予算管理に役立つツールを活用する

予実管理の実施方法は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算アプリを活用した手動管理や、専用ツールを用いた自動化管理が一般的です。とくに営業部門では、CRM(顧客管理)やSFA(営業支援)ツールの利用が適しています。

以下は、Excelを使用した予実管理の例です。

  1. フォーマットを作成し、そのシートを必要月数分コピーする
  2. 同様に累計用のシートとして、同じフォーマットをコピーし、そのシート上で串刺し計算をする
  3. 前期の実績(見込み)を「(C)前年同月実績欄」に入力する
  4. 前期の実績を参考に当期の予算を作成し「(B)当月予算欄」に入力する
  5. 当月の実績を「(A)当月実績欄」に入力する
  6. 差額欄と予算比欄を参照し、進捗状況をチェックする

予実管理まとめ

予実管理は、経営改善と迅速な意思決定を支える重要な手段です。目標達成に向けた戦略を立案するために、定期的で詳細なデータ収集が必要です。

予実管理の分析では、数値の集計だけでなく、実績と予算の乖離に着目し、その原因を追求していかなければなりません。そして、分析結果にもとづいた対策を検討し、実行を重ねることで予算の精度が高まります。

予実管理の運用においては、予算と実績の比較を通じて業績の進行状況をリアルタイムで把握し、経営目標の達成状況や修正の必要性を評価し、改善案を策定して実行することが大切です。

しかし過度な目標への固執は、従業員のモチベーションの低下や売上の減少をまねくリスクがあります。そのため、予実管理を効果的に活用しつつ、企業の成長とのバランスを考慮しながら経営の舵取りを進めていくようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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