試算表とは?種類や作成メリット、見方をわかりやすく解説

更新日:2024年02月08日

試算表とは

試算表とは経理業務に不可欠な表であり、決算の際には仕訳帳から総勘定元帳への転記が適切に行われているかを検証するために使用されます。試算表を作成することで、仕訳や転記のエラーを特定できるだけでなく、企業の利益や財務状況の把握も可能です。

本記事では、3種類ある試算表の特徴や作成するメリットと作成時期、見方やチェックポイントについて解説します。

目次

試算表とは?

試算表は、会計年度の途中で一定期間にわたる取引の記録を集計した表です。日々の取引は「仕訳帳」に記帳され、取引を勘定科目ごとに整理した「総勘定元帳」に転記されます。試算表は、総勘定元帳から数値を集計して作成します。

参考)総勘定元帳とは

参考)勘定科目とは

決算期には年間の取引を集計し、残高を確認する作業が必要です。仕訳や転記にミスがあると決算に影響を及ぼし、場合によっては大きな損失を招く可能性があります。そのような事態を防ぐために、決算作業の開始前に試算表を作成しておけば、仕訳や転記が正確に行われているかを詳細に検証していくことが可能です。

試算表の作成は、決算書とは異なり義務ではありません。しかし、作成することでチェック機能だけでなく経営状況を把握できるというメリットも得られます。

試算表は会計期間の途中で定期的に作成するのが一般的です。試算表を月末や期末などの定めたタイミングで作成し、エラーの有無を確認するために使用します。取引の多い少ないに関係なく借方と貸方は必ず一致するため、ミスを検出できます。

種類別:試算表の特徴

試算表は財務状況を把握するための重要なツールでもあり、利用目的に応じて次の3つのタイプが用いられています。

  • 合計試算表
  • 残高試算表
  • 合計残高試算表

試算表の中央には「資産」「負債」「純資産(資本)」「収益・費用」の順に勘定科目を並べ、左の借方欄と右の貸方欄に勘定科目ごとの合計あるいは残高、または双方を記入します。3つのタイプの試算表はいずれも借方と貸方の合計が一致する点が共通であり、記帳におけるチェック機能を果たし、経営判断に資する集計表です。

合計試算表:決算日や月末日に作成

決算日や月末日に作成する総勘定元帳の借方と貸方の勘定科目それぞれを合計し、転記した表が合計試算表です。合計試算表の最下部の借方と貸方の合計が同じになることで、集計や転記にエラーがなかったことが確認できます。

合計試算表の利点は、会社が取引の合計額を把握できることです。ただし、合計試算表では勘定科目ごとの借方と貸方の合計で資金の流れは把握できますが、残高はすぐには把握できないという欠点があります。

残高試算表:各勘定科目の残高をひと目で把握

残高試算表は、勘定科目の借方の残高と貸方の残高をそれぞれ集計した表です。会社の財務状態や経営状態をすぐに把握できる利点がありますが、転記でのミスがある場合それを見つけるのは難しいという欠点もあります。

残高試算表は財務諸表(損益計算書や貸借対照表など)を作成する際に、そのまま転記できるといった利便性を有しています。

合計残高試算表:取引合計と残高の両方を把握

合計試算表を中心寄りに、残高試算表を外側に配置した表が合計残高試算表であり、取引の合計金額と各勘定科目の残高を同時に確認できる特徴があります。

合計残高試算表は、会社の損益状態を理解するのに役立ちます。表の最下部の借方と貸方の合計または残高が一致することで、転記や計算ミスのチェックが可能です。ただし、2つの表をひとつにまとめるため、作成に手間がかかってしまう欠点があります。

試算表を作成する3つのメリット

試算表を作成するメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  1. 経営状態を把握できる
  2. 融資を受ける際の参考資料になる
  3. 経理上のミスを早期発見できる

試算表の定期的な作成は、業績予測と経営改善に役立ち、金融機関からの融資の説得力を増すための重要な参考資料となります。また試算表は経理上のミスを早期に発見し、エラーを防ぐ有効なツールです。

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

1.経営状態を把握できる

試算表を定期的に作成することにより、会計年度中の資金の流れや売上を詳細に確認できます。業績の把握により業績予測が可能となるため、早期の経営改善が可能です。

試算表の継続的な作成は業績の把握を容易にし、前年度や前月との比較により業績の推移を確認できます。年度末には、試算表を参照することによって利益率を予測し、決算をスムーズに進められます。

2.融資を受ける際の参考資料になる

試算表を提出することで融資の説得力が増し、融資の手続きがスムーズに進む可能性があります。金融機関からの融資を受ける際、試算表の提出を求められる可能性が高いです。

決算書と比較して、短期間ごとに作成される試算表は、会社の現状をより正確に反映した資料として評価されています。融資の際に金融機関から試算表を求められた場合に、すぐに提出できるよう試算表をしっかりと作成し、適切に保管しておくことが重要です。

3.経理上のミスを早期発見できる

試算表の借方と貸方の数値は、必ず同一です。試算表を作成した際に数値が一致しないのであれば、仕訳の誤りや計算間違い、転記ミスがあることを示しています。

決算書を作成する過程でエラーが見つかると、取引の詳細を再確認しなければならず、場合によっては1年間の帳簿をすべてチェックするなど時間と労力を費やしてしまう可能性が高いです。

定期的に試算表を作成しているのであれば、前回の確認時まで戻ればよいため帳簿のエラーを早期に発見できます。試算表を頻繁に作成し、内容を確認することで、経理のエラーを防ぐことが重要です。

試算表の作成時期

試算表の作成時期に決まりはなく、各企業や個人が自由に決められます。各企業や個人が決算を行う際には、基本的に12か月分のデータを集計した決算書が作成されます。試算表の場合は、より短い期間での途中経過を確認するために作成され、毎月や3か月、6か月などが一般的です。

試算表作成の主要な目的は総勘定元帳のエラーを見つけることだけでなく、毎月の財務の流れを確認することにもあります。そのため、可能な限り短い期間で試算表を作成することが大切です。毎月の試算表を作成することで、前月や前々月と比較して、売上や利益などの月次推移の確認が可能です。

試算表は、月次や四半期、半期ごとに作成する企業もあります。個人事業主においても、可能であれば月次での試算表作成がベターです。月次試算表を作成しておけば、融資などで必要になった際にスムーズな提出が可能です。

試算表の見方とチェックポイント

試算表は記帳ミスを防ぐための重要なツールです。借方と貸方の合計が一致しない場合は、エラーが存在していることを示しているため、エラーを特定し修正する必要があります。

また、試算表は日々や月々の資金の流れ、売上の変動を把握し、業績が予想どおりに推移しているかを確認するツールでもあります。大きな額の勘定科目における変動や負債などは経営に影響を及ぼしかねないため、不断のチェックが欠かせません。売掛金についても、資金ショートの原因にならないよう回収を進めていくことが重要です。

貸借の合計金額

会社でも個人事業であっても取引の金額や数量が大きくなると、記帳におけるミスが生じる可能性が高まります。試算表は、これらのミスを防ぐための重要なツールです。仕訳が正しく行われ、総勘定元帳にエラーがなければ、試算表の借方と貸方の合計は必ず一致するはずです。

もし数値が一致しないのであれば、仕訳の金額入力ミスや勘定科目の選択ミス、仕訳帳から総勘定元帳への転記ミスなど、エラーが存在していることを示しています。エラーが存在している場合、仕訳帳と総勘定元帳を検討し、エラーを特定して修正する必要があります。

各勘定科目の状況

試算表は、貸借対照表や損益計算書を作成するためのものであり、日々や月々の資金の流れや売上の変動を確認できるツールでもあります。会社の利益は、売上や仕入れ、費用の数値を確認することで利益が予想どおりに推移しているかを確認できます。

大きな額の勘定科目は、経営に大きな影響を及ぼすため注意が必要です。資産と負債のバランスにおいて、負債が多い場合は注意が必要です。売掛金は未収入の代金であり、必ず回収しなければなりません。資金不足になると非常にリスキーな状態になるため、試算表を確認し、資金不足を防ぐようにしましょう。

試算表と「貸借対照表」「損益計算書」との違い

試算表や貸借対照表、損益計算書は、企業の経営状況を理解するために作成される文書であり、それぞれ作成のタイミングや記述内容が異なります。

試算表は、帳簿に記録されたすべての勘定科目を集計したものです。それに対して貸借対照表と損益計算書は、外部報告のための決算書であり、試算表の勘定科目を決算書用の勘定科目にまとめて集計します。貸借対照表は資産・負債・純資産の勘定科目を、損益計算書は収益と費用の勘定科目を記載します。

貸借対照表

試算表は、特定の期間に行われたすべての取引を集約し、勘定科目ごとに集計したものです。作成のタイミングについての規則はありません。半期、四半期、1か月単位など、決算書類よりも短い期間で作成されることが一般的です。

一方、貸借対照表は、資産と負債、純資産の勘定科目だけをまとめた決算書類で、決算時に作成されるのが普通です。貸借対照表は、企業の特定の時点での財務状況を示す一覧表であり、バランスシートとも呼ばれます。貸借対照表により、現在の資産状況、買掛金や売掛金の残高、未払金の残高などの確認が可能です。

貸借対照表は企業の財務状況を示す財務諸表であり、「資産」「負債」「純資産」の3要素から成り立っています。資産は、流動性の高いものから低いものの順に記載されています。負債は、返済期限の近いものから遠いものの順での記載です。純資産は、企業の自己資本で、資本金と利益剰余金で構成されます。

参考)貸借対照表とは

損益計算書

損益計算書は、1年間の企業の収益と費用を明らかにし、利益または損失の額を表示するためのものです。損益計算書は貸借対照表と同時に作成される財務諸表の一部です。

損益計算書は収益、費用、利益の勘定科目を集約した決算書類で、通常は決算時に作成されます。企業の収益と費用について表示されているため、事業年度における企業の収益性や成長性、経営成績の把握が可能です。

損益計算書における利益は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの区分に分けられます。

  • 売上総利益:売上高から売上原価を引いたもの(粗利)。
  • 営業利益:売上総利益から販売費と一般管理費を引いたもの。企業の本業の成果を表す。
  • 経常利益:営業利益に営業外収益と営業外費用を加減したもの。通常の活動の成果。
  • 税引前当期純利益:経常利益に特別損益を加減したもの。

最終的に、税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税を引いて「当期純利益」が算出されます。

参考)損益計算書とは

参考)売上総利益とは

参考)営業利益とは

参考)経常利益とは

参考)当期純利益とは

試算表まとめ

試算表には合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類があり、それぞれに長所や短所があります。これらを適切に利用することで、経理上のミスを減らすことが可能です。

試算表を定期的に作成することで早期にエラーを発見でき、同時に経営状態もスムーズに把握できます。経理業務を行う際には、それぞれの試算表の特徴を理解して使い分けていくことが重要です。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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