印紙税とは?領収書や収入印紙との関係も紹介
2023.06.09

印紙税とは、印紙税法で定められた税金のことです。課税物件表に掲げられている20種類の文書を作成する場合、収入印紙を貼らなければならない可能性があります。本記事で印紙税についてわかりやすく解説しますので、印紙税の概要や収入印紙の正しい貼り方などを確認しておきましょう。
目次
印紙税とは
印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や受取書、領収書などに対して課税される税金のことです。印紙税に関する規定は、印紙税法で定められています。
契約書などに対して印紙税が課される理由は主に以下のとおりです。
- ビジネス文書を作成する背後に利益が発生していて、所得税と同様に税を課すことが相応しいと考えられるため
- 文書を作成することで当事者間の法律関係が安定していて、その当事者に税を課すことが相応しいと考えられるため
また、実務上以下の点を把握しておくことが大切です。
- 領収書や契約書に収入印紙を貼る
- 文書によって印紙税額が異なる
- 文書によっては税抜の金額で判断する
それぞれ確認していきましょう。
領収書や契約書に収入印紙を貼る
印紙税の納付方法は、領収書や契約書に収入印紙を貼ることが原則です。ただし、例外として要件を満たす場合に限り以下の方法で納付できることもあります。
- 機械が設置されている税務署で、税印押なつによる納付
- あらかじめ国に納付した金額を限度に、印紙税納付計器の使用による納付
- 書式表示の承認を受けて、金銭による納付
- 預貯金通帳等に係る一括納付
課税される文書を作成した段階で印紙税の納税の義務が成立します。そのため、対象の文書を作成するまでに収入印紙を貼らなければなりません。
ただし、「作成」は行使の態様によってさまざまです。たとえば、手形や株券のように相手に交付する目的がある文書の場合、交付時点が「作成」のタイミングとみなされます。
文書によって印紙税額が異なる
納付する印紙税額は、文書の種類や記載されている契約金額によって異なります。たとえば「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」を発行する場合の記載金額と印紙税額の関係は以下のとおりです(2022年4月1日時点)。
記載金額 | 税額 | |
5万円未満 | 非課税 | |
5万円以上 | 100万円以下 | 200円 |
100万円超 | 200万円以下 | 400円 |
200万円超 | 300万円以下 | 600円 |
300万円超 | 500万円以下 | 1,000円 |
500万円超 | 1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円超 | 2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超 | 3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超 | 5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超 | 1億円以下 | 20,000円 |
1億円超 | 2億円以下 | 40,000円 |
2億円超 | 3億円以下 | 60,000円 |
3億円超 | 5億円以下 | 100,000円 |
5億円超 | 10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 | |
受取金額の記載なし | 200円 |
つまり、100万円の売上で受取書を発行する場合は200円の収入印紙を貼るのに対し、101万円の場合は400円の収入印紙を貼らなければなりません。
参考:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
文書によっては税抜で判断する
前述のとおり、課税文書に記載されている金額によって、印紙税の納付税額(貼付する収入印紙の金額)が決まります。では、その記載金額は消費税込の金額なのか、税抜きの金額なのかが気になるところです。原則としては、消費税および地方消費税の額を含んだ金額とされます。ただし、以下の2つの条件を満たす場合には、例外的に税抜の記載金額で判断することとされています。
- 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)、第2号文書(請負に関する契約書、第17号文書(金銭または有価証券の受取書)の場合で、かつ
- 課税文書に消費税額が区分記載されているか、税込価格と税抜価格が記載されている場合
ただし、個別消費税(酒税や揮発油税など)の場合は、上記の例外規定は適用されません。
印紙税の対象とは
作成した文書すべてが印紙税の対象となるわけではありません。ここから、課税されるか判断する基準や、対象となる文書について解説します。
課税されるか判断する基準
印紙税法に記載されており、課税事項を証明する目的で作成された文書(課税文書)は、原則として課税されます。課税文書とは、以下3つ全てに該当する文書のことです。
- 課税物件表に掲げられている文書で、課税事項が記載されている
- 当事者間で課税事項を証明する目的で作成した
- 非課税文書に該当しない
課税物件表の非課税物件欄に掲げられている文書や、国・地方公共団体が作成した文書などが、非課税文書に該当します(印紙税法第5条)。
なお、課税文書に該当するかどうかの判断基準は、文書の名称や形式的な記載文言ではなく、記載文言の実質的な意義です。
参考:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
対象となる課税文書は20種類
印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられていることが、課税文書の対象となる一つの要件です。課税物件表には、20種類の文書が掲げられています(2022年4月現在)。
そのうち、今回紹介するのは、以下の3つです。
- 不動産の譲渡等の契約書
- 請負に係る契約書
- 金銭または有価証券の受取書
それぞれの概要を確認していきましょう。
代表例1 不動産の譲渡等の契約書
課税物件表の、第1号文書には「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書」(不動産の譲渡に関する契約書)や「消費貸借に関する契約書」などがあります。不動産の譲渡に関する契約書の具体例は、不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書です。
たとえば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下であれば、2万円の印紙税を納付しなければなりません。ただし、2024年3月31日までに作成するものは、印紙税額が軽減されます。
代表例2 請負に係る契約書
第2号文書として、「請負に関する契約書」が規定されています。スポーツ選手や俳優、ミュージシャンなどが自身の役務を契約するものも「請負」です。
請負に関する契約書の具体例として、建築工事や建設工事などの工事請負契約書や工事注文請書、物品加工注文請書などが挙げられます。
たとえば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下であれば、2万円の印紙税を納付しなければなりません。ただし、建設業法第2条第1項に規定する契約に基づき作成されるもので、2024年3月31日までに作成されるものは、契約書の作成年月日及び記載された契約金額に応じて印紙税額が軽減されます。
代表例3 金銭または有価証券の受取書
第17号文書として、「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」や「売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書」が規定されています。
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書の具体例は、商品販売代金の受取書や不動産の賃貸料の受取書です。また、売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書の具体例として、借入金の受取書や保険金の受取書などが挙げられます。
たとえば、領収書(売上代金に係る受取書)に記載された受取金額が1,000万円超2,000万円以下の場合、印紙税額は4,000円です。
参考:国税庁「印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)」
印紙税納付で知っておくべきこと
印紙税納付で、知っておくべき点は以下のとおりです。
- 収入印紙を貼り忘れると過怠税が課される
- 書損や過誤納付時に還付を受けられる場合がある
それぞれ詳しく解説します。
収入印紙を貼り忘れると過怠税が課される
万が一収入印紙を貼り忘れると、過怠税が課されます。過怠税の額は、納付を怠った金額とその2倍相当の金額の合計です。つまり、本来の印紙税額の3倍徴収されます。
ただし、課税文書の作成者が納付していない旨に自ら気づき、自己申告した場合の過怠税は本来の印紙税額の1.1倍(納付を怠った金額とその10%の金額の合計)です。
書損や過誤納付時に還付を受けられる場合がある
誤って貼付した収入印紙は、過誤納金として還付を受けられる場合があります。対象となるのは、以下のケースです。
- 課税文書に貼り付けた収入印紙が過大だった
- 課税文書に該当しない文書を課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けた
- 課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたが、使用する見込みがなくなった
還付を受けるには、「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」に必要事項を記入し、所轄税務署に提出しなければなりません。
収入印紙の貼り方
収入印紙には、決められた貼り方があります。主なポイントは、以下のとおりです。
- 貼り付け枠や空白に貼る
- 貼り付け時に消印を実施する
各ポイントを簡単に解説します。
貼り付け枠や空白に貼る
収入印紙は、あらかじめ印刷された貼り付け枠に貼りましょう。枠がない場合は、表題の左右どちらかの余白に貼ることが一般的です。
実は、貼り付ける場所について法的な定めはありません。表題の左右どちらかに十分なスペースがなければ、別の空いているスペースでも問題ないです。
なお、複数枚の収入印紙を貼る場合は、一般的に上下もしくは左右に並べて貼ります。
貼り付け時に消印を実施する
収入印紙を貼り付けた後に、消印を実施しましょう。
消印は、本人もしくは代理人の印章や署名で実施します。消印を実施する際は、課税書類と収入印紙にまたがるようにしなければなりません。
署名は通称や商号でも問題ありませんが、「印」や斜線は消印と認められない点に注意が必要です。また、鉛筆で書いていて簡単に消せるものも、消印になりません。
たとえ収入印紙を貼っていても、消印が不十分であれば効力が無効なため注意しましょう。
印紙税や収入印紙にまつわる疑問を解消しよう
印紙税や収入印紙について、以下の疑問を抱えることもあるでしょう。
- 収入印紙はどこで購入できる?
- 電子文書にどのように収入印紙を貼る?
- 印紙税納付が無い書類の有効性は?
それぞれ解説します。
収入印紙はどこで購入できる?
収入印紙は、郵便局や法務局、役所などで購入できます。コンビニでも取り扱っていますが、200円の収入印紙のみのことが一般的です。
なお、購入後未使用の場合や、白紙・封筒のように課税文書でない書類に貼った場合は、収入印紙を郵便局で交換できます。ただし、1枚につき5円の交換手数料を支払わなければなりません。
電子文書にどのように収入印紙を貼る?
一般的に、電子文書とはデジタル情報として作成された文書のことです。電子文書には、収入印紙を貼る必要がありません。
国税庁も、請負契約の注文請書を電子ファイルでメールを使って契約したケースで、印紙税の課税原因は発生しないとの見解について同意しています。ただし、電子文書でも印刷してしまうと課税されかねないため注意が必要です。
参考:国税庁「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」
印紙税納付が無い書類の有効性は?
収入印紙が貼られておらず、印紙税納付が無い契約書や領収書でも、契約の内容自体が違反していなければ効力は有効です。ただし、脱税行為で罰則が課されるため、決して忘れないように心がけましょう。
なお、印紙税を貼ることを知らない場合でも、過怠税を払わなければなりません。また、過怠税は法人税の損金や必要経費の対象外です。
印紙税のまとめ
印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や受取書、領収書などに対して課税される税金です。課税物件表に掲げられている20種類の文書を作成する場合、印紙税を課される可能性があります。
また、印紙税納付を怠ると過怠税が課される点に注意が必要です。印紙税の仕組みや正しい貼り方を理解してから、各種契約を取り交わすようにしましょう。
【記事の執筆と監修について】
この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓
同じカテゴリの記事