EBITDAとは?意味や読み方、計算方法をわかりやすく解説

更新日:2025年01月26日

EBITDA

EBITDAとは、企業の価値を測るために欠かせない指標の1つです。企業の決算書類を見る方は、目にする機会も多いでしょう。この記事では、EBITDAの概要と計算方法、利用するメリットと注意点をわかりやすく解説します。投資判断にEBITDAを活用したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

EBITDAとは

EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)は、企業の価値を測るために欠かせない指標といわれます。しかし、決算書類などで目にしたことはあるものの、指標の詳細や計算方法についてはよくわからない、といった方も多いのではないでしょうか。

ここではまずEBITDAの意味と読み方および、EBITとの違いを解説します。

EBITDAの意味と読み方

EBITDAは、企業価値を評価する指標の1つです。「イービットディーエー」や「イービッタ」、「エビーダ」などさまざまに呼ばれており、決まった読み方はありません。

EBITDAは、利払前・税引前・減価償却前利益の合算で求められます。設備投資の影響などを除いた本業での収益性が把握できることから、特に、日本以外を拠点とする企業や、グローバル企業を評価する際に多く利用されるようです。また、M&Aの判断材料として使用されることもあります。

EBITDAとEBITの違い

EBITDAとよく似た指標に、EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)があります。EBITもEBITDAと同様、企業を評価する指標です。税引前の当期純利益に支払利息を加え、受取利息を差し引いて算出されます。

EBITDAとEBITの違いは、以下のとおりです。

  • EBITDA:減価償却費を加えて算出する
  • EBIT:減価償却費と受取利息を除いて算出する

減価償却を考慮して利益を考えるEBITDAは、大きな設備投資を実施する企業の収益性を比較しやすい指標といえます。また、世界の企業と収益性を比較する際も、EBITDAは有効です。

支払利息を除いて算出するEBITは、借入が多くなりがちな企業の収益性を測る際に使用されます。そのため、ベンチャー企業やスタートアップ企業の価値を比較したいときに便利な指標といえるでしょう。

EBITDAの代表的な計算方法

EBITDAの計算式は、決まったものがあるわけではありません。企業によって、以下の代表的な4つの計算式を使い分けています。

【EBITDAの代表的な4つの計算式】

  1. 営業利益+ 減価償却費
  2. 経常利益+ 減価償却費 + 支払利息
  3. 税引前当期純利益 + 減価償却費 + 支払利息 + 特別損失
  4. 当期純利益+ 減価償却費 + 支払利息 + 法人税等

4つの中でも特に多くの企業が採用しているのが、1番目であげた「営業利益 + 減価償却費」です。図で表すと、下図のようになります。

上の図からもわかるように、EBITAはそもそも営業利益を構成する「支払利息 + 税金 + 純利益」に減価償却費を足して構成されています。そのため、「営業利益 + 減価償却費」の計算方法が一般的です。

なお、税制上の違いが収益を大きく左右する企業を評価する際は、3番目の計算式が有効とされます。

EBITDAを把握するメリット

EBITDAの概要を押さえても、実際に活用できなければ意味がありません。ここでは、EBITDAの把握により期待できる、3つのメリットを紹介します。

それぞれのメリットをしっかりと確認し、ぜひ企業を評価する際の材料として活用しましょう。

グローバル企業の業績を比較できる

メリットの1つ目は、グローバル企業の業績を比較できる点です。国際的に企業の業績を評価する難しさの1つに、減価償却費の計算方法や税金や金利の率が異なることがあげられます。

例えば、同じ収益力を持つ企業が2つあるとしましょう。利益に税金を含む場合、税率が高い国に属する企業は利益から税金が大きく引かれるため、一見すると収益性が低く見えてしまうのです。

EBITDAは国ごとに差が発生する金利や税率、減価償却費などの要素を排除したうえで利益を算出します。そのため、海外に拠点を持つ企業や、グローバルな展開を進めている企業の収益性の比較に適しているといえるでしょう。

企業の実質的な収益力を算出できる

メリットの2つ目は減価償却の影響を排除することで、企業の実質的な収益力を知れる点です。減価償却とは、資産ごとの耐用年数に応じて購入額を分割し、毎年の経費として計上する会計処理のことです。

減価償却費を利益に含める場合、積極的に設備投資をしている会社は、減価償却費がかさむことで営業利益が減少します。特に購入した年から数年は、減価償却の割合が大きいため、数字上の利益も減少します。

つまり、積極的な設備投資で一時的に減価償却費が嵩んでいる企業は、投資による将来の収益性向上がいくら見込まれたとしても、稼ぐ力がない企業とみなされてしまうのです。

このように、短期的な利益の大きさではなく、中長期的な企業の収益力や成長性を見たいのであれば、ぜひEBITDAをチェックしましょう。

M&Aの指標として活用できる

メリットの3つ目は、M&Aの指標として活用できる点です。M&Aを実施する際にEBITDAが活用されるのは、減価償却費といった現金の支出がない費用を排除できるためです。

減価償却が利益に含まれると、先述のとおり大きな設備投資を実施した年は、利益が縮小します。また、減価償却費は一般的に年々金額が下がるため、減価償却費が減っているだけにも関わらず、数字上では利益をあげているように見えるといった問題点もあります。

減価償却費を排除したうえで利益を求めるEBITDAは、実際のキャッシュフローにより近い企業の稼ぐ力を判断したいときにおすすめです。

EBITDAのデメリットや注意点

次に、EBITDAを利用する際に気を付けるべき、3つのデメリットや注意点を解説します。メリットと併せてデメリットや注意点も確認することで、より効果的な活用を実現しましょう。

過剰な設備投資による影響を把握しにくい

デメリットの1つ目には、過剰な設備投資による影響を把握しにくい点があげられます。減価償却費を排除して利益を考えるEBITDAは、設備投資などの影響を受けにくいことは先述のとおりです。

ここで覚えておきたいのは、影響を排除できるということは仮に多額の設備投資費が投入されても、把握が難しいという点です。EBITDAを用いる際は、併せて設備投資の実績も確認しましょう。

特に、投資の判断材料にEBITDAを活用する際は、過剰な設備投資によるリスクを見逃さないためにも、財務諸表や決算報告書なども確認することが重要です。

EBITDAは企業会計原則に基づかない指標

デメリットの2つ目には、EBITDAは企業会計原則に基づかない指標である点があげられます。企業会計原則とは、決算書(財務諸表)の作成においてに守るべきルールのことです。

先述のとおりEBITDAの計算方法に明確な規定はなく、主に代表的な4種類を会社ごとに使いわけています。これは、企業会計原則に基づくものとはいえません。EBITDAは企業の財務状況を知る材料にはなるものの、数値はあくまで参考程度に留めておくことが肝心です。

役員報酬や保険料の影響を考慮する

デメリットの3つ目は、役員報酬や保険料の影響を考慮する必要がある点です。役員報酬や保険料は企業活動におけるコストとなるため、利益から差し引かれます。

そのため、役員報酬が一般的な水準より多額だと数値が小さくなり、本来持つ収益性よりも低くなるでしょう。反対に、役員報酬や保険料をほとんど支払っていない場合は、EBITDAは大きめになります。

特に、中小企業の企業評価のためにEBITDAを活用するときは、保険料と役員報酬の影響を除いたうえで通期比較することが大切です。

EBITDAマージンやEBITDA倍率も活用する

EBITDAを使用するのであれば、EBITDAを用いて計算する指標もぜひ活用したいところです。ここでは、EBITDAマージンとEBITDA倍率を解説します。

EBITDAマージン

EBITDAマージンとは、EBITDAを売上高で割った値のことです。EBITDAマージンの意味は、売上からどれくらいの比率のEBITDAを生み出せるかです。一般的にパーセントで表示されることが多く、数値が高いほど企業に稼ぐ力があるとされます。

EBITDAマージンも、減価償却費の影響を除いた企業の収益性を図れます。設備投資に左右されずに企業の稼ぐ力を知りたいときは、EBITDAマージンを利用しましょう。

EBITDA倍率

EV/EBITDA倍率とは、EV(企業価値)がEBITDAの何倍かを表す指標でのことです。企業の買収に必要な時価総額と、買収後の純負債の返済に必要な金額がEBITDAの何年分に相当するかがわかるため、簡易買収倍率とも呼ばれます。なお純負債とは、負債のうち流動資産で返済をし終わった場合に残る負債のことです。

企業を買収した場合のコスト回収率を把握できるため、M&Aや投資の判断材料として使用されることが多いです。

なお、どのくらいの倍率が適正かは一概にはいえません。業種間で倍率を比較し、割安・割高を判断するといった使い方をおすすめします。

EBITDAまとめ

EBITDAとは、企業の収益性を測る指標の1つです。計算方法は企業によって異なりますが、多くの企業が「営業利益+減価償却費」でEBITDAを算出しています。

EBITDAを利用するメリットは、減価償却の影響を受けずに収益性を測れる点です。そのため、グローバルにビジネスを展開する企業の収益生を確認したり、M&Aの際の判断材料として利用されたりします。

EBITDAは、企業会計原則に基づかない指標の1つです。そのため、算出した数値はあくまでも参考程度に止めることは覚えておくべきでしょう。

EBITDAはそのままでも指標として十分使えますが、EBITDAマージンやEBITDA倍率等を活用すれば、さらに詳しく財務状況を把握できます。株式投資やM&Aを検討している方は、ぜひEBITDAを活用した企業評価を実施してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
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