資産とは?会計上の種類や意味をわかりやすく解説

更新日:2024年03月31日

資産とは

資産とは個人事業主や企業が所有する、流動資産や固定資産などの財産のことです。この記事では、会計学における資産の種類および資産からわかる財務状況、資産管理に役立つツールを解説します。資産の意味や概要を押さえ、財務状況の把握や経営への活用を目指してください。

目次

資産とは?

資産とは、個人事業主や企業が所有する財産のことです。将来的に金銭が生まれるものをいい、現金や預貯金はもちろん株式や債券などの有価証券や、建物や土地、機械設備といったすべての財産が含まれます。

事業を運営するにあたっては、資産をしっかりと管理することが重要です。資産管理が行われていないと、以下の問題が発生する可能性があります。

  • 減価償却費が計算できない
  • 適切な会計処理ができない
  • 従業員が資産を私物化してしまう
  • 情報漏洩が起きる

資産が管理できていないと、減価償却費の計算ができないなどの理由から適切な会計処理が難しくなる可能性があります。また、パソコンなどの記憶媒体を含むIT資産の紛失が起こると、情報漏洩につながりかねません。これらの問題を防ぐためにも、資産を管理することは非常に重要です。

資産をしっかり管理するには、概要や取り扱いをあらかじめ押さえておくことが重要です。ここではまず、資産の基本事項を確認しましょう。

会社における資産

会社の資産には、主に「純資産」と「総資産」があります。それぞれの概要は、以下のとおりです。

  • 純資産:企業の資産のうち、返済する義務がないもの
  • 総資産:純資産に負債を足したもの。企業が保有するすべての資産

純資産は、大きく「株主資本」と「株主資本以外」に分けられます。株主資本に該当する主な資産は、資本金や資本剰余金、自己株式、利益剰余金などです。株主資本以外には評価・換算差額等および、新株予約権などが該当します。

総資産は、純資産に借入金や社債といった負債を合わせたものです。総資産は、次章で解説する「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分けられます。

参考)純資産とは

参考)負債とは

個人事業主における資産

個人事業主における資産と会社における資産との定義に、大きな違いはありません。これらの相違点は、以下の2つです。

  • 事業主貸勘定がある
  • 貸借対照表での表記方法が異なる

事業主貸勘定は個人事業主特有の勘定科目で、事業用に使用している口座から事業外の支出を振り替える際に使用します。事業外の支出の一例としては、生活費の支払いや個人住民税の支払いなどが挙げられます。

また、貸借対照表における「資産」の表記方法が異なることも、会社と個人事業主の相違点です。会社が貸借対照表を作成する場合、資産を「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに区分します。一方、個人事業主が使用する青色申告決算書では、資産を3つに区分する必要はありません。

参考)青色申告とは

参考)貸借対照表とは

会計学における資産の種類

会計学において、総資産は「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分けられます。ここでは、3つの資産の概要と違いについて詳しく見ていきましょう。

流動資産

流動資産とは、 短期間に出入りする資産です。通常、1年以内に現金化できる資産のことを流動資産と呼びます。現金そのものや、普通預金、当座預金、有価証券、受取手形、売掛金などのほか、商品や製品や原材料、未収金、前払金、立替金、仮払金などが流動資産に該当します。

参考)売掛金とは

固定資産

固定資産とは、 長期間において出入りがない資産です。 通常、1年を超えて現金化されず、長期にわたって使われ続ける資産のことを固定資産といいます。固定資産に該当する資産は、土地や建物、設備などのほか、営業権、商標権、著作権などです。なお、固定資産はさらに、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分けられます。

有形固定資産

有形固定資産とは固定資産のうち形があって目に見えるもので、1年以上の長期にわたり利用される資産をいいます。有形固定資産の一例を、以下で確認しましょう。

資産の種類 詳細
土地 オフィスや工場の土地、駐車場、資材置き場、社宅敷地など
販売目的で所有している土地は該当しない
建物および付属設備 オフィスや店舗に利用する建物
付属設備には電気冷暖房、ガス設備が該当
機械および装置 企業の経営目的のために所有または工場などに設置される製造機械設備
車両および陸上運搬具 営業に使用する自動車や鉄道車両、航空機など
船舶および水上運搬具 営業に使用する漁船やモーターボート、タンカーなど

参考:有形固定資産とは

無形固定資産

無形固定資産とは固定資産のうち目に見える形がないもので、1年以上の長期にわたり利用される資産をいいます。無形固定資産の一例は、以下のとおりです。

資産の種類 詳細
特許権・実用新案権 財産権の一種で、特許を受けた発明を一定期間排他的独占的に実施できる権利
商標権 商品やサービスについて商標(ネーミングやマーク)を排他的独占的に使用できる権利
ソフトウェア コンピューターを動作させるためのプログラム
のれん 企業のブランド的価値のこと
企業が持つノウハウや顧客との関係、従業員の能力などが含まれる

参考)のれんとは

投資その他の資産

投資その他の資産とは、固定資産のうち有形固定資産にも無形固定資産にも該当しない資産をいいます。投資その他の資産の一例は、以下のとおりです。

資産の種類 詳細
投資有価証券 社債や国債、株式などの金融商品のうち長期間で保有されるもの
長期貸付金 1年以上の返済期間がある貸付金
子会社の資金繰りや設備投資における援助、会社役員や従業員への資金援助など
破産債権 破産手続開始前の原因により生じた財産上の請求権
財団債権に属さないもの

繰延資産

繰延資産とは、本来は費用なものの、いったん資産に計上された後、数年間にわたって償却される費用のことです。開業のためにかかった開業費や、社債の発行にかかった社債発行費などは繰延資産に該当します。

参考)繰延資産とは

資産でわかる財務状況

ここでは、「ROA(総資産利益率)」と「ROE(自己資本利益率)」の概要および計算方法を解説します。資産を適切に活用することで、ROAやROEといった指標の算出が可能です。これらは会社の財務状況を把握するために重要な役割を果たします。ROAやROEを活用し、より有効な資金調達や経営判断を実現しましょう。

ROA(総資産利益率または総資本利益率)

ROA(総資産利益率または総資本利益率)とは、総資産に対して企業がどれだけの利益をあげたかを示す指標です。ROAは以下の式で計算します。

ROA(%)=当期純利益÷総資産×100

ROAを見れば、資本に対する効率性と収益性がわかります。ROAが高い企業ほど、効率的に利益を生み出していると考えられるでしょう。一般的に、ROAが5%を超えていると優良な企業といわれますが、業種によって基準となる数値には差があります。ROAを確認する際は、同業他社のROAと比較することが重要です。

ROAを改善したいのであれば仕入れ価格および営業費の見直しや、商品価格の改定などによる収益の向上を図りましょう。収益性をあげることが難しい場合は、総資産の削減も有効です。総資産を減らすには不良在庫の整理や、使用していない不動産や設備の処分を検討してください。

参考)ROAとは

ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)とは、純資産(自己資本)に対してどれだけの利益をあげたかを示す指標です。ROEは以下の式で計算します。

ROE(%)=当期純利益÷純資産(自己資本)×100

ROEを見れば、負債を含めない自己資本に対する効率性と収益性がわかります。ROEが高いと株価の上昇や配当の増加が期待できるため、投資価値がある企業と判断されるでしょう。一般的にROEは8~10%以上で優良企業といわれますが、ROAと同様に業種によっても差があるため、同業他社と比較して見ることが肝心です。

ROEを向上させるには、収益の向上を図りましょう。そのほか、配当の増額や自社株買いによる自己資本の減少も効果的です。

借入金や社債といった負債を利用して事業を拡大する財務レバレッジの活用も、ROEの改善につながります。ただし、負債の増加は経営状況の悪化につながる可能性もあるため、行うかどうかは慎重に判断してください。

参考)ROEとは

参考)当期純利益とは

参考)財務レバレッジとは

資産管理に役立つツール

ここまで解説してきたとおり企業における資産管理の徹底は、計画的な経営戦略を立てるうえで非常に重要です。資産を管理するには、具体的な資産の量や数、所在などをいかに日ごろから把握できるかがポイントとなります。

しかし企業の規模や資産額などによっては、管理が難しいこともあるでしょう。ここでは、資産管理に役立つ3つのツールを紹介します。ぜひ自社の資産管理に活用してください。

表計算ソフト

コストをかけずに速やかに資産管理を行うには、表計算ソフトがおすすめです。表計算ソフトは専門的な知識が不要なため、誰でも比較的スムーズに利用できます。管理項目の追加が簡単にできることから、紙に比べ手間を抑えた管理を実現できるでしょう。

表計算ソフトには、ExcelやGoogleスプレッドシート、Numbersなど色々なものがあります。どれを選んでも構いませんが、従業員間で共有できるようクラウド管理することが肝心です。

資産管理ソフト

企業の規模が大きく保有する資産量が多いときは、専用の資産管理ソフトも選択肢となるでしょう。資産管理ソフトの導入には一定のコストがかかりますが、専用のフォーマットでスムーズに管理ができるため、業務の効率化を図れます。また、会計処理や法改正に対応していることで、会計作業における不備の削減も実現できるでしょう。

資産管理ソフトは、製品やサービスごとにかかる費用が異なります。導入にあたっては、いくつかのソフトを比較検討し、自社に合ったものを選択してください。

会計ソフトの資産管理機能を使う

すでに利用している会計ソフトがある場合や、今後会計ソフトの導入を検討しているときは、会計ソフトに付属している資産管理機能の利用も選択肢の一つです。会計ソフトの資産管理機能を利用すれば、新しく別の資産管理ソフトを導入するためのコストを抑えられます。

会計ソフトでは、資産管理と貸借対照表の作成を同時に実現できます。資産管理の簡略化とあわせて会計業務の手間を軽減したいと考えているのであれば、会計ソフトの資産管理機能の活用を検討してください。

資産の部とは?

「資産」は「負債」と「純資産」とともに、貸借対照表を構成する要素の一つであり、貸借対照表における左側(借方)は「資産の部」と呼ばれます。資産の部は、会社が調達した資金の使い方を示しています。資産の部を見れば、貸方で調達した資金の、ある時点での運用形態を把握できるのです。

なお、資産の部においては、現金化が容易なものから順に上から記載していくことになっています。そのため、固定資産より流動資産が上に記載されます。

資産まとめ

資産とは、個人や企業が所有する財産のことです。資産には流動資産および固定資産、繰延資産があります。資産を正しく管理するには、どの項目にどのような資産が該当するかを押さえておくことが重要です。

資産を把握すると、企業の財務状況を明確にできます。現状を確認し、有効な経営戦略を立てるためにも、日ごろから資産管理は徹底しておきたいところです。手間を抑えた資産管理をしたいと考えるのであれば、表計算ソフトや資産管理ソフト、会計ソフトが便利です。資産の規模や従業員数などに合わせたツールを導入し、業務負担が少ない資産管理を目指しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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