現金主義とは~メリット、発生主義との違いを実際に計算~

更新日:2018年03月11日

現金主義と発生主義

会計処理の方法は、「現金主義」と「発生主義」に分類ができます。一般的には発生主義が採用されますが、現金取引が多くを占める小規模事業者などの場合には、現金主義を採用することもあります。

現金主義とは

現金主義による会計処理の場合、現金の支出と収入があった時点で金額を計上します。たとえば10月10日に商取引があり、支払は一ヵ月後の11月10日だったとしましょう。このようなケースでは、現金主義の場合は、実際に支払いがなされた11月10日の日付で、帳簿に支出が記載されます。

現金主義のメリットは、確実性が高いこと

現金主義では、実際に現金が動いた時点で記帳されるため、確実性が高い点はメリットです。一方で、長期的に管理される資産に関しても、支出があった時点しか記録が残されないため、耐用年数に応じた減価償却はできません。また実務上、売上諸掛や仕入諸掛といった取引の機会は多くありますが、それらの会計処理についても記帳できないということになります。

発生主義とは

発生主義による会計処理は、支出・収入の発生が確定した時点で金額を計上する方法です。先ほどの例を再び引用すると、発生主義では、商取引があった10月10日の日付で帳簿に記載されます。その後、実際に支払いがあった11月10日にも支出の記帳がなされます。

発生主義のメリットは、財務状況を正確に把握できること

この方法では売上諸掛や仕入諸掛があった場合、現金のやり取りがなくても記帳できます。また、資産の減価償却も計上可能で、費用を均等に配分できるため、正確な財務状況の把握に役立ちます。このことから、一般的な会計処理においては発生主義が採用されているのです。ただし未収金を計上するという特性上、ともすると不正会計が起こりやすい面は否定できません。

現金主義と発生主義の違いを計算してみる

前述の通り、現金主義と発生主義の明確な違いは、支出や収入を計上するタイミングです。実際の取引を例に、どういう違いが出るのか計算してみます。

  • 11月…10万円の商品を仕入(代金の支払いは翌月)
  • 12月…11月に仕入れた商品の仕入代金10万円の支払、11月に仕入れた商品を15万円で販売(代金は翌1月の回収)

だいぶ単純化した内容ですが、上記の内容は売掛金買掛金での取引です。このときの、12月末の損益を比較してみます。

  • 現金主義…10万円の赤字(12月の仕入れ代金10万円の現金支出のみ)
  • 発生主義…5万円の黒字(12月の売上15万円-11月の仕入10万円)

現金主義では、現金の支出だけが記帳されます。11月と12月の取引で現金が動いたのは、12月の仕入代金の支払のみです。一方の発生主義では、取引が発生した時点で記帳するため、11月の仕入と12月の販売(売上)が計上されます。このような違いが出るため、現金取引が主要ではない場合には、財務状況を正確に把握するめに、発生主義の方が用いられます。

現金主義と発生主義の3つのポイント

  • 会計処理の方法は「現金主義」と「発生主義」に分類できる。
  • 現金主義は実際に現金の支出・収入があった時点、発生主義は支出・収入の発生が確定した時点とで記帳する。
  • 発生主義は掛取引や減価償却などを計上できるため、正確な財務状況の把握に役立つことから、一般的な企業の会計処理には発生主義が採用されている。

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この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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